1 梁惠王章句上 liáng huì wáng zhāng jù shàng
章番号 1 章通し番号 1
通し番号 1 章内番号 1 章通し番号 1 識別番号 1_1_1
孟子梁の恵王に見(まみ)ゆ、
通し番号 2 章内番号 2 章通し番号 1 識別番号 1_1_2
王曰く、叟(そう)千里を遠しとせず来る、亦将(まさ)に以て吾国を利すること有らんとするか、
通し番号 3 章内番号 3 章通し番号 1 識別番号 1_1_3
孟子対(こた)えて曰く、王何ぞ必ず利を曰う、亦(ただ)仁義有るのみ、
通し番号 4 章内番号 4 章通し番号 1 識別番号 1_1_4
王曰く何を以て吾国を利せん、大夫曰く何を以て吾家を利せん、士庶人曰く何を以て吾身を利せん、上下交(こもごも)利を征(と)りて国危うし、万乗の国、其君を弑(しい)するは、必ず千乗の家なり、千乗の国、其君を弑(しい)するは、必ず百乗の家なり、万に千を取る、千に百を取る、多からずと爲さず、苟(もし)義を後にし利を先にすることを爲せば、奪わずんば饜(た)らず、
通し番号 5 章内番号 5 章通し番号 1 識別番号 1_1_5
未だ仁にして其親を遺(す)てる者有らざるなり、未だ義にして其君を後にする者有らざるなり、
通し番号 6 章内番号 6 章通し番号 1 識別番号 1_1_6
王亦(ただ)仁義を曰うのみ、何ず必ず利を曰わん、
章番号 2 章通し番号 2
通し番号 7 章内番号 1 章通し番号 2 識別番号 1_2_1
孟子は梁の恵王に見(まみ)ゆ、王は沼の上(ほとり)に立つ、鴻(こう)鴈(がん)麋(び)鹿(ろく)を顧みて曰く、賢者亦此を楽しむか、
通し番号 8 章内番号 2 章通し番号 2 識別番号 1_2_2
孟子対(こた)えて曰く、賢者にして後此を楽しむ、不賢者は此有りと雖も楽しまざるなり、
通し番号 9 章内番号 3 章通し番号 2 識別番号 1_2_3
詩に云う、霊台を経(はか)り始む、之を経(はか)り、之を営す、庶民之を攻(おさ)む、日ならずして之を成す、経(はか)り始むは亟(すみや)かにすること勿(な)けれど、庶民子として来る、王が霊囿(ゆう)に在(お)れば、麀(ゆう)鹿(ろく)の伏(ふ)す攸(ところ)、麀鹿(ゆうろく)は濯濯(たくたく)、白鳥は鶴鶴(かくかく)たり、王が霊沼に在(お)れば、於(ああ)牣(み)ちて魚躍(おど)る、文王民の力を以て台を爲(つく)り沼を爲りて、民之を歓楽す、其台を謂いて霊台と曰い、其沼を謂いて霊沼と曰う、其麋鹿(びろく)魚鼈(べつ)有るを楽しむ、古の人は民と偕(とも)に楽しむ、故に能く楽しむなり、
通し番号 10 章内番号 4 章通し番号 2 識別番号 1_2_4
湯誓に曰く、時(この)日害(いつ)喪びん、予(われ)女(なんじ)及(と)偕(とも)に亡びん、民之と偕(とも)に亡びんと欲す、台池鳥獸有ると雖も、豈に能く独り楽しまんや、
章番号 3 章通し番号 3
通し番号 11 章内番号 1 章通し番号 3 識別番号 1_3_1
梁の恵王曰く、寡人の国に於るや、心を尽くすのみ、河内凶なれば、則ち其民を河東に移し、其粟(ぞく)を河内に移す、河東凶なれば亦然り、鄰国の政を察するに、寡人の心を用いるが如きは無し、鄰国の民少なきを加えず、寡人の民多きを加えず、何ぞや、
通し番号 12 章内番号 2 章通し番号 3 識別番号 1_3_2
孟子対えて曰く、王戦いを好む、請う、戦いを以て喩(たと)えん、塡然(てんぜん)として之に鼓し、兵刃(へいじん)既に接す、甲を棄て兵を曳(ひ)きて走(にげ)る、或いは百歩にして後止(とど)まり、或いは五十歩にして後止まる、五十歩を以て百歩を笑えば、則ち何如(いかん)、曰く、不可なり、直(ただ)に百歩ならざるのみ、是れ亦走(にげ)るなり、曰く、王如(も)し此を知れば、則ち民の鄰国より多きを望むこと無かれ、
通し番号 13 章内番号 3 章通し番号 3 識別番号 1_3_3
農時に違(もと)らざれば、穀勝(あ)げて食うべからざるなり、数罟(さくこ)洿(お)池に入らざれば、魚鼈(ぎょべつ)勝げて食うべからざるなり、斧斤(ふきん)時以て山林に入る、材木勝げて用うべからざるなり、穀と魚鼈勝げて食すべからず、材木勝げて用うべからず、是れ民をして生を養い死に喪(も)して憾(うら)み無からしむなり、生を養い死に喪して憾み無し、王道の始なり、
通し番号 14 章内番号 4 章通し番号 3 識別番号 1_3_4
五畝(ほ)の宅、之に樹(う)えるに桑を以てす、五十は以て帛(きぬ)を衣るべし、雞(けい)豚(とん)狗(こう)彘(てい)の畜は、其時を失なうこと無ければ、七十の者以て肉を食すべし、百畝の田、其時を奪うこと勿(な)ければ、数口の家以て飢えること無かるべし、庠序(しょうじょ)の教えを謹んで、之に申(かさ)ねるに孝悌の義を以てすれば、頒白(はんぱく)の者道路に負戴(たい)せず、七十の者帛を衣(き)て肉を食し、黎(れい)民飢えず寒からず、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、
通し番号 15 章内番号 5 章通し番号 3 識別番号 1_3_5
狗彘(こうてい)人の食を食して検することを知らず、塗(みち)に餓莩(ひょう)有りて発することを知らず、人死ねば、則ち曰く、我に非ざるなり、歳なり、是れ何ぞ人を刺して之を殺して、我に非ざるなり、兵なりと曰うに異ならんや、王歳を罪とすること無ければ、斯(すなわ)ち天下の民至る、
章番号 4 章通し番号 4
通し番号 16 章内番号 1 章通し番号 4 識別番号 1_4_1
梁の恵王曰く、寡人願わくば安んじて教えを承(う)けん、
通し番号 17 章内番号 2 章通し番号 4 識別番号 1_4_2
孟子対えて曰く、人を殺すに梃(つえ)と刃(やいば)を以てするは、以て異なること有るか、曰く、以て異なること無きなり、
通し番号 18 章内番号 3 章通し番号 4 識別番号 1_4_3
刃(やいば)と政を以てするは、以て異なること有るか、曰く、以て異なること無きなり、
通し番号 19 章内番号 4 章通し番号 4 識別番号 1_4_4
曰く、庖(ほう)に肥肉有り、廏(きゅう)に肥馬有り、民に飢色有り、野に餓莩(ひょう)有り、此は獣を率いて人を食べるなり、
通し番号 20 章内番号 5 章通し番号 4 識別番号 1_4_5
獣相(あい)食べる、且(なお)人之を悪(い)む、民の父母と爲(な)りて政を行う、獣を率いて人を食べるを免れず、悪(いず)くにか其民の父母と爲ること在らんや、
通し番号 21 章内番号 6 章通し番号 4 識別番号 1_4_6
仲尼曰く、始めて俑(よう)を作る者は其(それ)後(あと)無きか、其人に象(かたど)りて之を用いる爲なり、之を如何(いかん)ぞ其(そ)れ斯(こ)の民をして飢えて死なしむ、
章番号 5 章通し番号 5
通し番号 22 章内番号 1 章通し番号 5 識別番号 1_5_1
梁の恵王曰く、晋国は天下焉(これ)より強きは莫(な)し、叟(そう)の知る所なり、寡人の身に及んで、東、斉に敗られ、長子死す、西、地を秦に喪(うしな)うこと七百里、南、楚に辱(はずか)しめらる、寡人之を恥ず、願わくば死者の比(ため)に一たび之を洒(そそ)がん、之を如何(いかん)せば則ち可、
通し番号 23 章内番号 2 章通し番号 5 識別番号 1_5_2
孟子対えて曰く、地、方百里にして以て王となるべし
通し番号 24 章内番号 3 章通し番号 5 識別番号 1_5_3
王如(も)し民に仁政を施し、刑罰を省(はぶ)き、税斂(れん)を薄(かる)くし、深く耕やし、易に耨(くさぎ)り、壮者暇日を以て其孝悌忠信を脩め、入れば以て其父兄に事(つか)え、出れば以て其長上に事えれば、梃(つえ)を制して以て秦楚の堅甲利兵を撻(う)たしむべし、
通し番号 25 章内番号 4 章通し番号 5 識別番号 1_5_4
彼は其民の時を奪い、耕し耨(くさぎ)り以て其父母を養うを得ざらしむ、父母凍餓し、兄弟妻子離散す、
通し番号 26 章内番号 5 章通し番号 5 識別番号 1_5_5
彼其民を陥溺す、王往きて之を征すれば、夫(それ)誰か王に敵せん、
通し番号 27 章内番号 6 章通し番号 5 識別番号 1_5_6
故に曰く、仁者は敵無し、王に請う疑うこと勿れ、
章番号 6 章通し番号 6
通し番号 28 章内番号 1 章通し番号 6 識別番号 1_6_1
孟子梁の襄王に見(まみ)ゆ、
通し番号 29 章内番号 2 章通し番号 6 識別番号 1_6_2
出でて人に語りて曰く、之に望むに人君に似ず、之に就(つ)きて畏れる所を見ず、卒然として問いて曰く、天下悪(いずく)に定まらん、吾対(こた)えて曰く、一に定まらん、
通し番号 30 章内番号 3 章通し番号 6 識別番号 1_6_3
孰(たれ)か能く之を一にす、
通し番号 31 章内番号 4 章通し番号 6 識別番号 1_6_4
対えて曰く、人を殺すを嗜(たしな)まざる者、能く之を一にす、
通し番号 32 章内番号 5 章通し番号 6 識別番号 1_6_5
孰(たれ)か能く之に与(くみ)せん、
通し番号 33 章内番号 6 章通し番号 6 識別番号 1_6_6
対えて曰く、天下与(くみ)せざる莫きなり、王夫(か)の苗を知るか、七八月の間(あいだ)旱すれば、則ち苗槁(かれ)る、天油然(ゆうぜん)として雲を作(おこ)し、沛然(はいぜん)として雨を下さば、則ち苗浡然(ぼつぜん)として之に興(おこ)る、其(そ)れ是(か)くの如ければ、孰か能く之を禦(とど)めん、今夫(それ)天下の人牧、未だ人を殺すを嗜まざる者有らざるなり、如(も)し人を殺すを嗜(たしな)まざる者有れば、則ち天下の民、皆領(くび)を引きて之を望まん、誠に是の如くなるや、民之に帰する、由(なお)水の下に就(つ)くがごとし、沛然(はいぜん)として、誰か能く之を禦(とど)めん、
章番号 7 章通し番号 7
通し番号 34 章内番号 1 章通し番号 7 識別番号 1_7_1
斉の宣王問いて曰く、斉桓、晋文の事、聞くことを得(う)べきか、
通し番号 35 章内番号 2 章通し番号 7 識別番号 1_7_2
孟子対えて曰く、仲尼の徒、桓文の事を道(い)う者無し、是を以て後世に伝うること無し、臣未だ之を聞かざるなり、以(や)む無くんば、則ち王か、
通し番号 36 章内番号 3 章通し番号 7 識別番号 1_7_3
曰く、德何如(いかん)せば、則ち以て王たるべき、曰く、民を保(やす)んじて王たらば、之を能く禦(とど)むこと莫きなり、
通し番号 37 章内番号 4 章通し番号 7 識別番号 1_7_4
曰く、寡人の若き者、以て民を保(やす)んずべきか、曰く、可、曰く、何に由(よ)りて吾が可なることを知るや、曰く、臣之を胡齕(ここつ)に聞く、曰く、王堂上に坐す、牛を牽(ひ)きて堂下を過ぐる者有り、王之を見て曰く、牛何(いず)くに之(ゆ)く、対えて曰く、将に以て鐘に釁(ちぬ)らんとす、王曰く、之を舍(や)めろ、吾其の觳觫(こくそく)として、罪無くして死地に就くが若きを忍びず、対えて曰く、然らば則ち鐘に釁(ちぬ)るを廃せんか、曰く、何ぞ廃すべけんや、羊を以て之に易(か)えよ、識(し)らず、諸(これ)有りや、
通し番号 38 章内番号 5 章通し番号 7 識別番号 1_7_5
曰く、之有り、曰く、是の心以て王たるに足る、百姓皆王以て愛(おし)むと爲すなり、臣固より王の忍びざるを知るなり、
通し番号 39 章内番号 6 章通し番号 7 識別番号 1_7_6
王曰く、然(さ)ようか、誠に百姓なる者有り、斉国褊(へん)小と雖も、吾何ぞ一牛を愛(おし)まん、即ち其の觳觫(こくそく)として、罪無くして死地に就くが若きを忍びず、故に羊以て之に易えるなり、
通し番号 40 章内番号 7 章通し番号 7 識別番号 1_7_7
曰く、王、百姓が王以て愛(おし)むと爲すを異(あや)しむこと無かれ、小以て大に易(か)う、彼悪(いずく)んぞ之を知らんや、王若(も)し其の罪無くして死地に就くを隠(いた)まば、則ち牛羊何ぞ択ばん、王は笑いて曰く、是れ誠に何の心かな、我は其の財を愛(おし)みて、之に易えるに羊を以てするに非ざるなり、宜(むべ)なるかな、百姓の我が愛(おし)むと謂うこと、
通し番号 41 章内番号 8 章通し番号 7 識別番号 1_7_8
曰く、傷(そこな)うこと無し、是れ乃ち仁術なり、牛を見て未だ羊を見ざるなり、君子の禽獣に於けるや、其の生を見て、其の死を見るを忍びず、其声を聞きて、其の肉を食らうを忍びず、是を以て君子庖廚(ほうちゅう)を遠ざくなり、
通し番号 42 章内番号 9 章通し番号 7 識別番号 1_7_9
王説(よろこ)びて曰く、詩に云う、他人心有り、予之を忖度(そんたく)す、夫子(ふうし)の謂(いい)なり、夫(それ)我乃ち之を行なう、反(かえり)みて之を求む、吾が心に得ず、夫子之を言う、我が心に於て戚戚有り、此の心の王に合う所以は何ぞや、
通し番号 43 章内番号 10 章通し番号 7 識別番号 1_7_10
曰く、王に復(もう)す者有りて曰く、吾が力以て百鈞(きん)を挙ぐるに足りて、以て一羽を挙ぐるに足らず、明、以て秋毫(しゅうごう)の末を察するに足りて、輿薪(よしん)を見ず、則ち王之を許すか、曰く、否(いな)、今恩以て禽獣に及ぶに足りて、功百姓に至らざるは、独(はた)何ぞや、然れば則ち一羽の挙がらざるは、力を用いざる爲なり、輿薪の見ざるは、明を用いざる爲なり、百姓の保(やす)んぜ見(ら)れざるは、恩を用いざる爲なり、故に王の王たらざるは、爲さざるなり、能わざるに非ざるなり、
通し番号 44 章内番号 11 章通し番号 7 識別番号 1_7_11
曰く、爲さざると能わざるの形、何を以て異なる、曰く、太山を挾(さしはさ)み以て北海を超ゆ、人に語りて曰く、我能わず、是れ誠に能わざるなり、長者の爲に枝を折る、人に語りて曰く、我能わず、是れ爲さざるなり、能わざるに非ざるなり、故に王の王たらざるは、太山を挾(さしはさ)み以て北海を超ゆの類に非ざるなり、王の王たらざるは、是れ枝を折るの類なり、
通し番号 45 章内番号 12 章通し番号 7 識別番号 1_7_12
吾が老を老とし、以て人の老に及ぼす、吾が幼を幼として、以て人の幼に及ぼす、天下掌(たなごごろ)に運(めぐ)らすべし、詩に云う、寡妻に刑となり、兄弟に至る、以て家邦(ほう)を御す、斯(こ)の心を挙げて諸(これ)を彼に加えるを言うのみ、故に恩を推せば以て四海を保(やす)んずるに足り、恩を推されば以て妻子を保んずること無し、古の人大いに人に過ぐる所以は他無し、善く其の爲す所を推すのみ、今恩以て禽獣に及ぶに足りて、功百姓に至らざるは、独(はた)何ぞや、
通し番号 46 章内番号 13 章通し番号 7 識別番号 1_7_13
権して然る後軽重を知る、度して然る後長短を知る、物皆然り、心甚しと爲す、王に請う之を度(はか)るを、
通し番号 47 章内番号 14 章通し番号 7 識別番号 1_7_14
抑(そもそも)王甲兵を興(おこ)し、士臣を危うくし、怨みを諸侯に構(むす)ぶ、然る後心に快きか、
通し番号 48 章内番号 15 章通し番号 7 識別番号 1_7_15
王曰く、否、吾何ぞ是に快きか、将に以て吾が大いに欲する所を求めんとするなり、
通し番号 49 章内番号 16 章通し番号 7 識別番号 1_7_16
曰く、王の大いに欲する所、聞くことを得べきか、王笑いて言わず、曰く、肥甘口に足らざる爲か、軽煖(だん)体に足らざるか、抑(ある)いは采(さい)色目に視るに足らざる爲か、声音耳に聴くに足らざるか、便嬖(べんぺい)前に使令するに足らざるか、王の諸臣皆以て之を供するに足る、王豈(あに)是が爲ならんや、曰く、否、吾是れが爲ならざるなり、曰く、然れば則ち王の大いに欲する所知るべし(已)、土地を辟(ひら)き、秦楚を朝せしめ、中国に莅(のぞ)み四夷を撫(ぶ)せんと欲するなり、若(かくのごと)く爲す所を以て、若(かくのごと)く欲する所を求めれば、猶木に縁(よ)りて魚を求めるごときなり、
通し番号 50 章内番号 17 章通し番号 7 識別番号 1_7_17
王曰く、是の若く其れ甚しきか、曰く、(殆)焉(これ)より甚しきこと有り、木に縁(よ)りて魚を求む、魚を得ずと雖も、後の災無し、若(かくのごと)く爲す所を以て、若(かくのごと)く欲する所を求めれば、心力を尽して之を爲し、後必ず災有り、曰く、聞くことを得べきか、曰く、鄒(すう)人と楚人戦えば、則ち王以て孰れか勝つと爲す、曰く、楚人勝つ、曰く、然らば則ち小固(もと)より以て大に敵(あた)るべからず、寡固より以て衆に敵(あた)るべからず、弱固より以て彊(きょう)に敵(あた)るべからず、海内の地、方千里なるもの九なり、斉集めると其一を有す、一以て八を服す、何ぞ以て鄒が楚に敵(あた)るに異ならんや、(蓋)亦(ただ)其の本に反る、
通し番号 51 章内番号 18 章通し番号 7 識別番号 1_7_18
今王政を発し仁を施す、天下の仕える者をして皆王の朝に立たんことを欲し、耕やす者をして皆王の野に耕やすことを欲し、商賈(こ)をして皆王の市に蔵(たくわ)えることを欲し、行旅をして皆王の塗(みち)に出でんことを欲し、天下の其の君を疾(にく)まんと欲する者をして皆王に赴(おもむ)き愬(うった)えんことを欲せしむ、其れ是くの若ければ、孰(たれ)か能く之を禦(とど)めん、
通し番号 52 章内番号 19 章通し番号 7 識別番号 1_7_19
王曰く、吾惛(くら)し、是に進むこと能わず、願わくば夫子(ふうし)吾が志を輔(たす)けよ、明らかに以て我に教えよ、我不敏と雖も、請う之を嘗試(こころ)みん、
通し番号 53 章内番号 20 章通し番号 7 識別番号 1_7_20
曰く、恒(つね)の産無くして恒(つね)の心有るは、惟(ただ)士能くすることを爲す、民の若きは、則ち恒(つね)の産無ければ、因りて恒(つね)の心無し、苟(もし)恒(つね)の心無ければ、放辟邪侈(ほうへきじゃし)、爲さざる無きのみ、罪に陥るに及びて、然る後従(よ)りて之を刑す、是れ民を罔(あみ)するなり、焉ぞ仁人位に在ること有りて、民を罔して爲すべけんや、
通し番号 54 章内番号 21 章通し番号 7 識別番号 1_7_21
是の故に明君は民の産を制し、必ず仰ぎて以て父母に事(つか)えるに足り、俯して以て妻子を畜(やしな)うに足り、楽歳身を終うるまで飽き、凶年死亡を免かれしむ、然る後駆りて善に之(ゆ)かしむ、故に民の之に従うや軽し、
通し番号 55 章内番号 22 章通し番号 7 識別番号 1_7_22
今や民の産を制し、仰ぎて以て父母に事えるに足らず、俯して以て妻子を畜なうに足らず、楽歳身を終えるまで苦しみ、凶年死亡を免かれず、此惟(ただ)死を救いて贍(た)らざるを恐る、奚(なん)ぞ礼義を治める暇(いとま)あらん、
通し番号 56 章内番号 23 章通し番号 7 識別番号 1_7_23
王之を行なわんと欲せば、則ち盍(なん)ぞ其の本に反(かえ)らざる、
通し番号 57 章内番号 24 章通し番号 7 識別番号 1_7_24
五畝(ほ)の宅、之に樹(う)えるに桑を以てす、五十は以て帛(きぬ)を衣るべし、雞(けい)豚(とん)狗(こう)彘(てい)の畜、其時を失なうこと無ければ、七十の者以て肉を食すべし、百畝の田、其時を奪うこと勿ければ、八口の家以て飢えること無かるべし、庠序(しょうじょ)の敎を謹んで、之に申ねるに孝悌の義を以てすれば、頒白(はんぱく)の者道路に(12負戴せず、老なる者帛(きぬ)を衣(き)て肉を食し、黎(れい)民飢えず寒からず、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、
2 梁惠王章句下 liáng huì wáng zhāng jù xià
章番号 1 章通し番号 8
通し番号 58 章内番号 1 章通し番号 8 識別番号 2_1_1
荘暴、孟子に見(まみ)えて曰く、暴は王に見(まみ)ゆ、王は暴に語るに楽しみを好むを以てす、暴未だ以て対(こた)えること有らざるなり、曰く、楽しみを好む何如(いかん)、孟子曰く、王の楽しみを好むこと甚だしければ、則ち斉国其れ庶幾(ちか)からんか、
通し番号 59 章内番号 2 章通し番号 8 識別番号 2_1_2
他日王に見(まみ)えて曰く、王嘗(かつ)て荘子に語るに楽しみを好むを以てす、諸(これ)有りや、王色を変じて曰く、寡人能く先王の楽しみを好むに非ざるなり、直(ただ)世俗の楽しみを好むのみ、
通し番号 60 章内番号 3 章通し番号 8 識別番号 2_1_3
曰く、王の楽しみを好む甚だしければ、則ち斉其れ庶幾(ちか)からんか、今の楽しみは由(なお)古の楽しみのごときなり、
通し番号 61 章内番号 4 章通し番号 8 識別番号 2_1_4
曰く、聞くことを得べきか、曰く、独り楽しみを楽しむと、人と楽しみを楽しむと、孰(いずれ)か楽しき、曰く、人と与(とも)にするに若(し)かず、曰、少きと楽しみを楽しむと、衆と楽しみを楽しむと、孰(いずれ)か楽しき、曰く、衆と与(とも)にするに若(し)かず、
通し番号 62 章内番号 5 章通し番号 8 識別番号 2_1_5
臣請う王の爲に楽しみを言わん、
通し番号 63 章内番号 6 章通し番号 8 識別番号 2_1_6
今王此に鼓楽せんに、百姓王の鐘(しょう)鼓(こ)の声、管(かん)籥(やく)の音を聞きて、挙(みな)疾首蹙頞(しゅくあつ)して、相い告げて曰く、吾王は鼓楽を好む、夫(それ)何ぞ我をして此の極に至らしめるや、父子相(あい)見ず、兄弟妻子離散す、今王此に田猟す、百姓王の車馬の音を聞き、羽旄(ぼう)の美を見て、挙(みな)疾首蹙頞(しゅくあつ)して、相い告げて曰く、吾王は田猟を好む、夫(それ)何ぞ我をして此の極に至らしめるや、父子相(あい)見ず、兄弟妻子離散す、此他無し、民と楽(たのし)みを同じくせざるなり、
通し番号 64 章内番号 7 章通し番号 8 識別番号 2_1_7
今王此に鼓楽するに、百姓王の鐘鼓の声、管籥(かんやく)の音を聞きて、舉(みな)欣欣然(きんきんぜん)として喜色有りて、相告げて曰く、吾が王疾病無きに庶幾(ちか)きか、何を以て能く鼓楽する、今王此に田猟す、百姓王の車馬の音を聞き、羽旄(ぼう)の美を見て、挙(みな)欣欣然として喜色有り、相告げて曰く、吾が王疾病無きに庶幾(ちか)きか、何を以て能く田猟するや、此他無し、民と楽しみを同じくするなり、
通し番号 65 章内番号 8 章通し番号 8 識別番号 2_1_8
今王百姓と楽しみを同じくすれば、則ち王たり、
章番号 2 章通し番号 9
通し番号 66 章内番号 1 章通し番号 9 識別番号 2_2_1
斉の宣王問いて曰く、文王の囿(ゆう)方七十里、諸(これ)有りや、孟子対えて曰く、伝に之有り、
通し番号 67 章内番号 2 章通し番号 9 識別番号 2_2_2
曰く、是くの若く其れ大か、曰く、民猶以て小と爲すなり、曰く、寡人の囿方四十里、民猶以て大と爲す、何ぞや、曰く、文王の囿方七十里、芻蕘(すうじょう)の者往(ゆ)き、雉(ち)兔(と)の者往く、民と之を同じくす、民以て小と爲す、亦宜(うべ)ならずや、
通し番号 68 章内番号 3 章通し番号 9 識別番号 2_2_3
臣始めて境に至る、国の大禁を問う、然る後敢えて入る、臣聞く、郊関の内囿(ゆう)方四十里有り、其の麋(び)鹿(ろく)を殺す者は人を殺すの罪の如し、則ち是れ方四十里、阱(せい)を国の中に爲(つく)るなり、民以て大と爲す、亦宜(うべ)ならざるや、
章番号 3 章通し番号 10
通し番号 69 章内番号 1 章通し番号 10 識別番号 2_3_1
斉の宣王問いて曰く、鄰国に交わる道有りや、孟子対えて曰く、有り、惟(ただ)仁者能く大以て小に事(つか)えるを爲す、是の故に湯は葛(かつ)に事え、文王は昆夷(こんい)に事える、惟(ただ)智者能く小以て大に事えるを爲す、故に大王は獯鬻(くんいく)に事え、句践は呉に事う、
通し番号 70 章内番号 2 章通し番号 10 識別番号 2_3_2
大以て小に事える者は、天を楽しむ者なり、小以て大に事える者は、天を畏れる者なり、天を楽しむ者は天下を保つ、天を畏れる者は其国を保つ、
通し番号 71 章内番号 3 章通し番号 10 識別番号 2_3_3
詩に云う、天の威を畏る、時(ここ)に之を保つ、
通し番号 72 章内番号 4 章通し番号 10 識別番号 2_3_4
王曰く、大なる哉(かな)言、寡人疾有り、寡人勇を好む、
通し番号 73 章内番号 5 章通し番号 10 識別番号 2_3_5
対えて曰く、王に請う小勇を好むこと無かれ、夫(それ)剣を撫(ぶ)し疾視して曰く、彼悪(いずくん)ぞ敢えて我に当たらんや、此は匹夫の勇、一人に敵(あた)るものなり、王に請う之を大にせよ、
通し番号 74 章内番号 6 章通し番号 10 識別番号 2_3_6
詩に云う、王赫(かく)として斯(ここ)に怒る、爰(ここ)において其旅を整え、以て徂(ゆ)く莒(きょ)を遏(とど)む、以て周の祜(さいわ)いを篤(あつ)くす、以て天下に対(こた)う、此は文王の勇なり、文王一たび怒りて、天下の民を安んず、
通し番号 75 章内番号 7 章通し番号 10 識別番号 2_3_7
書に曰く、天、下民を降(おろ)す、之に君を作り、之に師を作る、惟(これ)其れ上帝を助けよと曰い、之を寵す、四方罪有り罪無し、惟(ただ)我に在り、天下曷(なん)ぞ敢えて厥(その)志を越ゆること有らんや、一人天下に衡行(こうこう)する、武王之を恥ず、此が武王の勇なり、而(すなわ)ち武王亦一たび怒りて天下の民を安んず、
通し番号 76 章内番号 8 章通し番号 10 識別番号 2_3_8
今王亦一たび怒りて、天下の民を安んずれば、民惟(ただ)王の勇を好まざるを恐れるなり、
章番号 4 章通し番号 11
通し番号 77 章内番号 1 章通し番号 11 識別番号 2_4_1
斉の宣王孟子を雪宮に見る、王曰く、賢者亦此楽しみ有るか、孟子対えて曰く、有り、人得ざれば、則ち其上を非(そし)る、
通し番号 78 章内番号 2 章通し番号 11 識別番号 2_4_2
得ずして其上を非(そし)る者は、非なり、民の上と爲りて民と楽しみを同じくせざる者、亦非なり、
通し番号 79 章内番号 3 章通し番号 11 識別番号 2_4_3
民の楽しみを楽しむ者は、民亦其楽しみを楽しむ、民の憂いを憂う者は、民亦其憂いを憂う、楽しむに天下以てし、憂うに天下以てす、然(しか)り而(しこう)して王たらざる者は、未だ之有らざるなり、
通し番号 80 章内番号 4 章通し番号 11 識別番号 2_4_4
昔者(むかし)斉の景公晏子に問いて曰く、吾は転附(てんぷ)、朝儛(ちょうぶ)を観て、海に遵(そ)いて南(みなみ)し、琅邪(ろうや)に放(いた)らんと欲す、吾何を脩(おさ)めて以て先王の観に比すべき、
通し番号 81 章内番号 5 章通し番号 11 識別番号 2_4_5
晏子対えて曰く、善い哉(かな)問や、天子諸侯に適(ゆ)くを巡狩と曰う、巡狩は守る所を巡(めぐ)るなり、諸侯天子に朝するを述職と曰う、述職は職とする所を述べるなり、事に非ざるもの無きは、春は耕を省(み)て足らざるを補ない、秋は斂(れん)を省(み)て給(た)らざるを助く、夏諺(げん)曰く、吾王遊ばずんば、吾何を以て休(いこ)わん、吾王予(たのし)まざれば、吾何以て助からん、一遊一予、諸侯の度と爲る、
通し番号 82 章内番号 6 章通し番号 11 識別番号 2_4_6
今也(や)然らず、師行きて糧食す、飢えるは食らわず、労するは息(いこ)わず、睊睊(けんけん)として胥(みな)讒(そし)る、民乃ち慝(うら)みを作(な)す、命を方(す)て民を虐(しいた)げ、飮食流れるが若し、流連荒亡、諸侯の憂いと爲る、
通し番号 83 章内番号 7 章通し番号 11 識別番号 2_4_7
流に従い下り反(かえ)るを忘る、之を流と謂う、流に従い上り反(かえ)るを忘る、之を連と謂う、獣に従い厭(あ)くこと無し、之を荒と謂う、酒を楽しみ厭(あ)くこと無し、之を亡と謂う、
通し番号 84 章内番号 8 章通し番号 11 識別番号 2_4_8
先王は流連の楽しみ、荒亡の行無し、
通し番号 85 章内番号 9 章通し番号 11 識別番号 2_4_9
惟(ただ)君行う所なり、
通し番号 86 章内番号 10 章通し番号 11 識別番号 2_4_10
景公説(よろこ)ぶ、大いに国に戒(つ)ぐ、出でて郊に舍(お)る、是に於て始めて興発し不足を補なう、大師を召(め)して曰く、我の爲に君臣相(あい)説(よろこ)ぶの楽を作れ、蓋し徵(ち)招角招是れなり、其詩に曰く、君を畜(とど)むは何ぞ尤(とが)めん、君を畜(とど)むは、君を好むなり、
章番号 5 章通し番号 12
通し番号 87 章内番号 1 章通し番号 12 識別番号 2_5_1
斉の宣王問いて曰く、人皆我に明堂を毀(こぼ)てと謂う、諸(これ)を毀たんや、已(や)めんや、
通し番号 88 章内番号 2 章通し番号 12 識別番号 2_5_2
孟子対えて曰く、夫(それ)明堂は、王者の堂なり、王が王政を行なわんと欲せば、則ち之を毀(こぼ)つこと勿れ、
通し番号 89 章内番号 3 章通し番号 12 識別番号 2_5_3
王曰く、王政聞くを得べきか、対えて曰く、昔者(むかし)文王の岐を治めるや、耕やす者は九一なり、仕える者は世禄なり、関市譏(しら)べて征せず、沢梁(りょう)禁無し、人を罪(ばっ)して孥(ど)までせず、老いて妻無し鰥(かん)と曰う、老いて夫無し寡と曰う、老いて子無し独と曰う、幼くして父無し孤と曰う、此四は、天下の窮民にして告ぐること無き者なり、文王政を発し仁を施す、必ず斯(この)四者を先にす、詩に云う、哿(か)なるかな富人、哀(かな)しいかな此煢(けい)独、
通し番号 90 章内番号 4 章通し番号 12 識別番号 2_5_4
王曰く、善(よ)い哉(かな)言や、曰、王如(も)し之を善(よ)しとすれば、則ち何爲(なんす)れぞ行わざる、王曰く、寡人疾有り、寡人貨を好む、対えて曰く、昔公劉貨を好む、詩に云う、乃ち積み乃ち倉にする、乃ち餱(こう)糧を裹(つつ)む、橐(たく)に囊(のう)に、戢(あつ)めて用(もっ)て光するを思う、弓矢斯(すなわ)ち張り、干戈(か)戚(せき)揚(よう)、爰(ここ)に方(はじめ)て啓行す、故に居る者積(し)倉有り、行く者裹(か)糧有るなり、然る後以て爰(ここ)に方(はじめ)て啓行すべし、王如し貨を好めば、百姓と之を同じくすれば、王に於て何か有らん、
通し番号 91 章内番号 5 章通し番号 12 識別番号 2_5_5
王曰く、寡人疾有り、寡人色を好む、対えて曰く、昔大王色を好む、厥(その)妃を愛す、詩に云う、古公亶甫(たんぽ)、来たりて朝に馬を走らす、西水の滸(ほとり)に率(そ)い、岐下に至る、爰(ここ)に姜女及(と)、聿(つい)に来り胥(あい)宇(お)る、是時に当たり、内に怨女無く、外に曠(こう)夫無し、王如し色を好めば、百姓と之を同じくすれば、王に於て何か有らん、
章番号 6 章通し番号 13
通し番号 92 章内番号 1 章通し番号 13 識別番号 2_6_1
孟子斉の宣王に謂いて曰く、王の臣、其妻子を其友に託して、楚に之(ゆ)き遊ぶ者有り、其反るに比(およ)ぶや、則ち其妻子を凍餒(だい)す、則ち之を如何(いかん)、王曰く、之を棄つ、
通し番号 93 章内番号 2 章通し番号 13 識別番号 2_6_2
曰く、士師が士を治める能わず、則ち之を如何(いかん)、王曰く、之を已(や)む、
通し番号 94 章内番号 3 章通し番号 13 識別番号 2_6_3
曰く、四境の内治まらず、則ち之を如何、王左右を顧(かえりみ)て他を言う、
章番号 7 章通し番号 14
通し番号 95 章内番号 1 章通し番号 14 識別番号 2_7_1
孟子齊の宣王に見(まみ)えて曰く、謂う所の故国は、喬(きょう)木有るの謂(いい)を謂うに非ざるなり、世臣有るの謂なり、王親臣無し、昔者(きのう)進める所、今日は其亡(に)ぐるを知らざるなり、
通し番号 96 章内番号 2 章通し番号 14 識別番号 2_7_2
王曰く、吾何を以て其不才を識りて之を舍(す)つ、
通し番号 97 章内番号 3 章通し番号 14 識別番号 2_7_3
曰く、国君賢を進む、已むを得ざるが如くす、将に卑(いや)しきをして尊(とうと)きを踰(こ)え、疏(とお)きをして戚(ちか)きを踰えしめんとす、慎まざるべきか、
通し番号 98 章内番号 4 章通し番号 14 識別番号 2_7_4
左右皆賢と曰う、未だ可ならざるなり、諸大夫皆賢と曰う、未だ可ならざるなり、国人(こくじん)皆賢と曰う、然る後之を察す、賢を見て、然る後之を用いる、左右皆不可と曰う、聴くこと勿れ、諸大夫皆不可と曰う、聴くこと勿れ、国人皆不可と曰う、然る後之を察す、不可を見て、然る後之を去る、
通し番号 99 章内番号 5 章通し番号 14 識別番号 2_7_5
左右皆殺すべしと曰う、聴くこと勿れ、諸大夫皆殺すべしと曰う、聴くこと勿れ、国人皆殺すべしと曰う、然る後之を察す、殺すべきを見て、然る後之を殺す、故に曰く、国人之を殺すなり、
通し番号 100 章内番号 6 章通し番号 14 識別番号 2_7_6
此(かく)の如くして、然る後以て民の父母と爲るべし、
章番号 8 章通し番号 15
通し番号 101 章内番号 1 章通し番号 15 識別番号 2_8_1
斉の宣王問いて曰く、湯は桀を放ち、武王は紂を伐(う)つ、諸(これ)有りや、孟子対えて曰く、伝に之有り、
通し番号 102 章内番号 2 章通し番号 15 識別番号 2_8_2
曰く、臣が其君を弑(しい)す、可か、
通し番号 103 章内番号 3 章通し番号 15 識別番号 2_8_3
曰く、仁を賊(そこな)う者之を賊と謂う、義を賊う者之を残と謂う、残賊の人之を一夫と謂う、一夫紂を誅するを聞く、未だ君を弑するを聞かざるなり、
章番号 9 章通し番号 16
通し番号 104 章内番号 1 章通し番号 16 識別番号 2_9_1
孟子斉の宣王に見(まみ)えて曰く、巨室を爲(つく)る、則ち必ず工師をして大木を求めしむ、工師大木を得れば、則ち王喜び、以て能く其任に勝(た)えると爲すなり、匠人斲(けず)りて之を小さくすれば、則ち王怒り、以て其任に勝(た)えずと爲す、夫(それ)人幼にして之を学び、壮にして之を行なわんと欲す、王姑(しばら)く女(なんじ)の学ぶ所を舍(お)きて我に従えと曰わば、則ち何如(いかん)、
通し番号 105 章内番号 2 章通し番号 16 識別番号 2_9_2
今此に璞(はく)玉有り、万鎰(いつ)と雖も、必ず玉人をして之を彫琢(ちょうたく)せしむ、国家を治めるに至り、則ち姑(しばら)く女(なんじ)の学ぶ所を舍(お)きて我に従えと曰わば、則ち何ぞ以て玉人に玉を彫琢するを教えるに異ならんや、
章番号 10 章通し番号 17
通し番号 106 章内番号 1 章通し番号 17 識別番号 2_10_1
齊人燕を伐(う)ち、之に勝つ、
通し番号 107 章内番号 2 章通し番号 17 識別番号 2_10_2
宣王問いて曰く、或いは寡人に取る勿れと謂い、或いは寡人に之を取れと謂う、万乗の国以て万乗の国を伐つ、五旬(じゅん)にして之を挙(あ)ぐ、人力此に至らず、取らざれば必ず天殃(おう)有り、之を取ること何如(いかん)、
通し番号 108 章内番号 3 章通し番号 17 識別番号 2_10_3
孟子対えて曰く、之を取りて燕の民悦(よろこ)べば、則ち之を取れ、古の人之を行なう者有り、武王是れなり、之を取りて燕の民悦ばざれば、則ち取ること勿れ、古の人之を行う者有り、文王是れなり、
通し番号 109 章内番号 4 章通し番号 17 識別番号 2_10_4
万乗の国を以て万乗の国を伐つ、食(し)を簞(たん)し漿(こしょう)を壺(こ)し、以て王の師を迎う、豈(あ)に他有らんや、水火を避くるなり、如(も)し水益(ますます)深く、如(も)し火益(ますます)熱(あつ)ければ、亦運(めぐ)るのみ、
章番号 11 章通し番号 18
通し番号 110 章内番号 1 章通し番号 18 識別番号 2_11_1
斉人燕を伐ち之を取る、諸侯将(まさ)に燕を救うことを謀らんとす、宣王曰く、諸侯寡人を伐つを謀る者多し、何を以て之を待たん、孟子対えて曰く、臣聞く七十里にして政を天下に爲す者、湯是れなり、未だ千里以て人を畏れる者を聞かざるなり、
通し番号 111 章内番号 2 章通し番号 18 識別番号 2_11_2
書に曰く、湯一(はじ)めて征す、葛自(よ)り始む、天下之を信ず、東面して征すれば西夷怨む、南面して征すれば北狄怨む、曰く、奚爲(なんす)れぞ我を後(のち)にする、民が之を望むこと、大旱(たいかん)の雲霓(げい)を望むが若(ごと)きなり、市に帰(ゆ)く者止(と)まらず、耕す者変(うご)かず、其君を誅して其民を弔(あわ)れむ、時雨の降(ふ)るが若(ごと)し、民大いに悦ぶ、書に曰く、我后(きみ)を徯(ま)つ、后(きみ)来たらば其蘇(よみがえ)らん、
通し番号 112 章内番号 3 章通し番号 18 識別番号 2_11_3
今燕其民を虐(しいた)げる、王往きて之を征せば、民以爲(おも)えらく、将に己を水火の中に拯(すく)わんとするなり、食(し)を簞(たん)し漿(しょう)を壺(こ)し、以て王の師を迎う、若し其父兄を殺し、其子弟を係累し、其宗廟(びょう)を毀(こぼ)ち、其重器を遷(うつ)せば、之を如何(いかん)ぞ其可ならん、天下固より斉の彊(つよ)きを畏(おそ)るなり、今又(さら)に地を倍にして仁政を行なわざれば、是れ天下の兵を動かすなり、
通し番号 113 章内番号 4 章通し番号 18 識別番号 2_11_4
王速(すみやか)に令を出し、其旄倪(ぼうげい)を反し、其重器を止(とど)め、燕の衆に謀り、君を置きて後之を去れば、則ち猶(なお)止(と)めるに及ぶべきなり、
章番号 12 章通し番号 19
通し番号 114 章内番号 1 章通し番号 19 識別番号 2_12_1
鄒、魯と鬨(たたか)う、穆(ぼく)公問いて曰く、吾有司死す者三十三人、而して民之に死すこと莫きなり、之を誅すれば、則ち勝(あ)げて誅すべからず、誅さざれば、則ち其長上の死を疾視して救わず、之を如何(いかん)せば則ち可ならん、
通し番号 115 章内番号 2 章通し番号 19 識別番号 2_12_2
孟子対えて曰く、凶年饑歳に、君の民は、老弱は溝壑(がく)に転ず、壮者は散じて四方に之(ゆ)く者、幾千人、而(しか)るに君の倉廩(りん)実(み)ち、府庫充(み)つ、有司以て告ぐること莫し、是れ上慢(おこた)りて下を残(そこな)うなり、曽子曰く、之を戒(いまし)めよ之を戒めよ、爾(なんじ)に出るものは、爾に反(かえ)るものなり、夫(それ)民今にして後之に反(かえ)すを得るなり、君尤(とが)むること無かれ、
通し番号 116 章内番号 3 章通し番号 19 識別番号 2_12_3
君が仁政を行えば、斯(すなわ)ち民は其上に親しみ、其長に死せん、
章番号 13 章通し番号 20
通し番号 117 章内番号 1 章通し番号 20 識別番号 2_13_1
滕の文公問いて曰く、滕、小国なり、齊、楚を間(へだ)てるなり、斉に事(つか)えんか、楚に事えんか、
通し番号 118 章内番号 2 章通し番号 20 識別番号 2_13_2
孟子対えて曰く、是(この)謀吾能く及ぶ所に非ざるなり、已(や)むこと無ければ、則ち一有り、斯(この)池を鑿(うが)ち、斯城を築(きず)き、民と之を守る、死を效(いた)して民去らざれば、則ち是れ爲すべきなり、
章番号 14 章通し番号 21
通し番号 119 章内番号 1 章通し番号 21 識別番号 2_14_1
滕の文公問いて曰く、斉人將に薛(せつ)に築(きず)かんとす、吾甚だ恐る、之を如何(いかん)せば則ち可ならん、
通し番号 120 章内番号 2 章通し番号 21 識別番号 2_14_2
孟子対えて曰く、昔者(むかし)大王邠(ひん)に居る、狄人(てきじん)之を侵す、去りて岐(き)山の下(もと)に之(ゆ)きて居る、択びて之を取るに非ず、已(や)むを得ざるなり、
通し番号 121 章内番号 3 章通し番号 21 識別番号 2_14_3
苟(もし)善を爲せば、後世子孫必ず王者有らん、君子業を創(はじ)め統を垂(た)れ、継ぐべきを爲すなり、夫(かの)成功の若(ごと)きは、則ち天なり、君は彼を如何(いかん)せんや、善を爲すを彊(つと)めるのみ、
章番号 15 章通し番号 22
通し番号 122 章内番号 1 章通し番号 22 識別番号 2_15_1
滕(とう)の文公問いて曰く、滕は、小国なり、力を竭して以て大国に事う、則(しかる)に免るを得ず、之を如何(いかん)すれば則ち可ならん、孟子対えて曰く、昔者(むかし)大王邠(ひん)に居る、狄人之を侵す、之に事(つか)えるに皮幣を以てし、免るるを得ず、之に事えるに犬馬を以てし、免るるを得ず、之に事えるに珠玉を以てし、免るるを得ず、乃ち其耆(き)老を属(あつ)めて之に告げて曰く、狄人の欲する所は、吾が土地なり、吾之を聞くなり、君子は其の以て人を養う所のものを以て人を害さず、二三子(し)何ぞ君無きを患(うれ)えん、我将に之を去らんとす、邠(ひん)を去り、梁山を踰(こ)え、岐山の下(もと)に邑(ゆう)して居る、邠人曰く、仁人なり、失うべからざるなり、之に従う者市に帰(ゆ)くが如し、
通し番号 123 章内番号 2 章通し番号 22 識別番号 2_15_2
或(あるひと)曰く、世守(せいしゅ)なり、身の能く爲す所に非ざるなり、死を效(いた)して去ること勿れ、
通し番号 124 章内番号 3 章通し番号 22 識別番号 2_15_3
君に請う斯(この)二のもので択べ、
章番号 16 章通し番号 23
通し番号 125 章内番号 1 章通し番号 23 識別番号 2_16_1
魯の平公将に出んとす、嬖人(へいじん)臧倉(ぞうそう)なる者請いて曰く、他日君出ず、則ち必ず有司に之(ゆ)く所を命ず、今乗輿已(すで)に駕(が)す、有司未だ之(ゆ)く所を知らず、敢えて請う、公曰く、将に孟子に見(あ)わんとす、曰く、何ぞや、君が身を軽んじて以て匹夫(ひっぷ)に先だつを爲す所は、賢と以爲(おも)うか、礼義は賢者由(よ)り出ず、而(しか)るに孟子の後の喪(も)、前(さき)の喪を踰(こ)ゆ、君見(あ)うこと無かれ、公曰く、諾(だく)、
通し番号 126 章内番号 2 章通し番号 23 識別番号 2_16_2
楽正子入りて見(まみ)えて曰く、君奚爲(なんす)れぞ孟軻に見(あわ)ざる、曰く、或(あるひと)寡人に告げて曰く、孟子の後の喪、前(さき)の喪に踰(こ)ゆ、是を以て往(ゆ)きて見(あ)わざるなり、曰く、何ぞや、君の謂う所の踰うは、前に士を以てし、後に大夫を以てするか、前に三鼎(てい)を以てし、後に五鼎を以てするか、曰く、否、棺槨(かんかく)衣衾(きん)の美を謂うなり、曰く、謂う所の踰ゆに非ざるなり、貧富同じからざるなり、
通し番号 127 章内番号 3 章通し番号 23 識別番号 2_16_3
楽正子孟子に見えて曰く、克が君に告ぐ、君爲に来たり見(あ)わんとするなり、嬖人(へいじん)に臧倉(ぞうそう)なる者有り、君を沮(と)める、君は是を以て来るを果たさざるなり、曰く、行くは之を使(せし)めること或(あ)り、止まるは之を尼(と)めること或(あ)り、行止人の能くする所に非ざるなり、吾の魯侯に遇(あ)わざるは、天なり、臧氏の子、焉(いずくん)ぞ能く予(われ)をして遇(あ)わざらしめんや、
3 公孫丑章句上 gōng sūn choǔ zhāng jù shàng
章番号 1 章通し番号 24
通し番号 128 章内番号 1 章通し番号 24 識別番号 3_1_1
公孫丑問いて曰く、夫子(ふうし)斉で当路なれば、管仲晏子の功を、復(また)許(き)すべきか、
通し番号 129 章内番号 2 章通し番号 24 識別番号 3_1_2
孟子曰く、子は誠に斉人なり、管仲晏子を知るのみ、
通し番号 130 章内番号 3 章通し番号 24 識別番号 3_1_3
或(あるひと)曽西に問いて曰く、吾子(ごし)は子路と孰(いずれ)か賢(まさ)る、曽西は蹵然(しゅくぜん)として曰く、吾先子の畏る所なり、曰く、然れば則ち吾子管仲と孰か賢る、曽西は艴然(ふつぜん)として悦(よろこ)ばずして曰く、爾(なんじ)何ぞ曽(すなわ)ち予(われ)を管仲に比する、管仲は君を得る、彼(か)の如く其れ専らなり、国政を行う、彼(か)の如く其れ久しきなり、功烈、彼如く其れ卑(ひく)きなり、爾何ぞ曽(すなわ)ち予を是に比する、
通し番号 131 章内番号 4 章通し番号 24 識別番号 3_1_4
曰く、管仲、曽西の爲さざる所なり、而るに子は我が爲に之を願うか、
通し番号 132 章内番号 5 章通し番号 24 識別番号 3_1_5
曰く、管仲其君を以て霸とし、晏子其君を以て顕(あらわ)す、管仲、晏子猶爲(な)すに足らざる与(か)、
通し番号 133 章内番号 6 章通し番号 24 識別番号 3_1_6
曰く、斉以て王たること、由(なお)手を反(かえ)すがごときなり、
通し番号 134 章内番号 7 章通し番号 24 識別番号 3_1_7
曰く、是の若ければ、則ち弟子の惑い滋(ますます)甚し、且(それ)文王の徳を以てして、百年にして後崩ず、猶未だ天下に洽(あまね)からず、武王、周公之を継ぐ、然る後大いに行わる、今王を言うこと易(やす)きが若き然(なり)、則ち文王は法とするに足らざるか、
通し番号 135 章内番号 8 章通し番号 24 識別番号 3_1_8
曰く、文王何ぞ可当(あた)るべけんや、湯由(よ)り武丁に至る、賢聖の君六七作(おこ)る、天下殷に帰すこと久し、久しければ則ち変じ難きなり、武丁諸侯を朝し天下を有(たも)つは、猶之を掌(たなごころ)に運(めぐ)らすがごときなり、紂の武丁を去ること未だ久しからざるなり、其の故家(こか)遺俗(いぞく)、流風善政、猶存するもの有り、又微子、微仲、王子比干、箕子(きし)、膠鬲(こうかく)有り、皆賢人なり、相(あい)与(とも)に之を輔相す、故に久しくして後之を失なうなり、尺地も其有に非ざる莫きなり、一民も其臣に非ざる莫きなり、然り而して文王猶(なお)方百里で起る、是を以て難きなり、
通し番号 136 章内番号 9 章通し番号 24 識別番号 3_1_9
斉人言えること有りて曰く、智慧有りと雖も、勢に乗るに如(し)かず、鎡基(じき)有りと雖も、時を待つに如かず、今の時則ち易(やす)きこと然るなり、
通し番号 137 章内番号 10 章通し番号 24 識別番号 3_1_10
夏后、殷、周の盛、地未だ千里を過(すぐ)るもの有らざるなり、而して斉は其地を有(たも)つ、雞鳴狗吠(ばい)相(あい)聞え、四境に達す、而して斉は其民を有つ、地改め辟(ひら)かず、民改め聚(あつ)めず、仁政を行いて王、之を能く禦(とど)めること莫きなり、
通し番号 138 章内番号 11 章通し番号 24 識別番号 3_1_11
且(また)王者の作(おこ)らざる、未だ此時より疏(なが)きもの有らざるなり、民の虐政に憔悴(しょうすい)すること、未だ此時より甚しきもの有らざるなり、飢なる者食を爲し易く、渴者飮を爲し易し、
通し番号 139 章内番号 12 章通し番号 24 識別番号 3_1_12
孔子曰く、徳の流行、置郵して命を伝えるより速(すみや)かなり、
通し番号 140 章内番号 13 章通し番号 24 識別番号 3_1_13
今の時に当(あた)り、万乗の国仁政を行えば、民の之を悦(よろこ)ぶこと、猶倒懸を解くがごときなり、故に事は古の人に半(なかば)して、功は必ず之に倍す、惟(ただ)此時然りと爲す、
章番号 2 章通し番号 25
通し番号 141 章内番号 1 章通し番号 25 識別番号 3_2_1
公孫丑問いて曰く、夫子に斉の卿相を加え、道を行うを得れば、此に由りて霸王と雖も異(あやし)まず、此如ければ、則ち心を動かすや否や、孟子曰く、否(いな)、我四十にして心を動かさず、
通し番号 142 章内番号 2 章通し番号 25 識別番号 3_2_2
曰、是(かく)の若ければ、則ち夫子孟賁(ほん)に過ぎること遠し、曰く、是れ難からず、告子は我に先だちて心を動かさず、
通し番号 143 章内番号 3 章通し番号 25 識別番号 3_2_3
曰く、心を動かさざるは道有るか、曰く、有り、
通し番号 144 章内番号 4 章通し番号 25 識別番号 3_2_4
北宮黝(ゆう)の勇を養(おさ)めるや、膚撓(たわ)まず、目逃(さ)けず、一豪以て人に挫(はず)かしめらるを思うこと、之を市朝に撻(むちう)つが若し、褐寬博(かつかんぱく)に受けず、亦万乗の君に受けず、万乗の君を刺すを視(み)ること、褐夫を刺すが若し、厳(おそ)れる諸侯無し、悪声至れば必ず之を反(かえ)す、
通し番号 145 章内番号 5 章通し番号 25 識別番号 3_2_5
孟施舍の勇を養(おさ)める所や、曰く、勝たざるを視(み)ること猶勝つがごときなり、敵を量(はか)りて後進む、勝を慮(おもんばか)りて後会す、是れ三軍を畏れる者なり、舍豈能く必ず勝つことを爲さんや、能く懼ること無きのみ、
通し番号 146 章内番号 6 章通し番号 25 識別番号 3_2_6
孟施舍は曾子に似る、北宮黝(ゆう)は子夏に似る、夫(かの)二子の勇、未だ其(その)孰か賢(まさ)るを知らず、然り而して孟施舍、守るは約なり、
通し番号 147 章内番号 7 章通し番号 25 識別番号 3_2_7
昔者(むかし)曾子子襄(じょう)に謂いて曰く、子勇を好むか、吾嘗(かつ)て大勇を夫子(ふうし)に聞く、自(みずから)反(かえり)みて縮(なお)からざれば、褐寬博と雖も、吾惴(おそ)れざらん焉(や)、自反(かえり)みて縮ければ、千万人と雖も、吾往(ゆ)く、
通し番号 148 章内番号 8 章通し番号 25 識別番号 3_2_8
孟施舍の気を守るは、又曽子の約を守るに如かざるなり、
通し番号 149 章内番号 9 章通し番号 25 識別番号 3_2_9
曰く、敢えて問う夫子の不動心と、告子の不動心、聞くことを得べきか、告子曰く、言に得ざれば、心に求めること勿れ、心に得ざれば、気に求めること勿れ、心に得ざれば、気に求めること勿れは可なり、言に得ざれば、心に求めること勿れは不可なり、夫(それ)志、気の帥(すい)なり、気、体の充なり、夫(それ)志は至れり、気次(つ)ぐ、故に曰く、其志を持(じ)して、其気を暴(みだ)すこと無かれ、
通し番号 150 章内番号 10 章通し番号 25 識別番号 3_2_10
既に、志至れり、気次ぐと曰い、又、其志を持して其気を暴(みだ)ること無かれと曰うは、何ぞや、曰く、志壹(いつ)なれば則ち気を動かし、気壹なれば則ち志を動かすなり、今夫(そ)れ蹶(つまず)く者趨(はし)る者は、是れ気なり、而して反(かえっ)て其心を動かす、
通し番号 151 章内番号 11 章通し番号 25 識別番号 3_2_11
敢えて問う、夫子悪(いずく)にか長ぜる、曰く、我言を知る、我善く吾が浩然の気を養う、
通し番号 152 章内番号 12 章通し番号 25 識別番号 3_2_12
敢えて問う、何をか浩然の気と謂う、曰く、言い難きなり、
通し番号 153 章内番号 13 章通し番号 25 識別番号 3_2_13
其気爲(た)るや、至大至剛以て直、養いて害すること無ければ、則ち天地の間に塞(ふさ)がる、
通し番号 154 章内番号 14 章通し番号 25 識別番号 3_2_14
其気と爲(た)るや、義と道に配す、是れ無ければ餒(うえ)るなり、
通し番号 155 章内番号 15 章通し番号 25 識別番号 3_2_15
是れ義を集めて生ずる所のものなり、義は襲(おそ)いて之を取るに非ざるなり、行が心に慊(こころよ)からざること有れば、則ち餒(うえ)る、我故に曰く、告子未だ嘗て義を知らず、其(その)之を外にするを以てなり、
通し番号 156 章内番号 16 章通し番号 25 識別番号 3_2_16
必ず事とすること有りて正(き)すること勿れ、心に忘るること勿れ、助長すること勿れ、宋人の若くすること無かれ(然)、宋人其苗の長(そだ)たざるを閔(うれ)いて、之を揠(ぬ)く者有り、芒芒(ぼうぼう)然として帰り、其人に謂いて曰く、今日病(つか)る、予苗の長(そだ)つを助く、其子趨(はし)りて往きて之を視る、苗則ち槁(かれ)る、天下の苗が長(そだ)つを助けざる者は寡(すくな)し、以て益無しと爲して之を舍(す)てる者は、苗を耘(くさぎ)らざる者なり、之が長(そだ)つを助ける者は、苗を揠(ぬ)く者なり、徒(ただ)益無きに非ずして、又之を害す、
通し番号 157 章内番号 17 章通し番号 25 識別番号 3_2_17
何をか言を知ると謂う、曰く、詖(ひ)辞は其蔽(おお)う所を知る、淫辞は其陥る所を知る、邪辞は其離れる所を知る、遁辞は其窮まる所を知る、其心に生じて、其政に害あり、其政に発して、其事に害あり、聖人復起これば、必ず吾が言に従わん、
通し番号 158 章内番号 18 章通し番号 25 識別番号 3_2_18
宰我、子貢は善(よ)く説辞を爲す、冉牛(ぜんぎゅう)、閔子(びんし)、顏淵は善(よ)く徳行を言う、孔子は之を兼ぬ、曰く、我辞命に於て則ち能わざるなり、然らば則ち夫子既に聖か、
通し番号 159 章内番号 19 章通し番号 25 識別番号 3_2_19
曰く、悪(ああ)是れ何の言ぞや、昔者(むかし)子貢孔子に問いて曰く、夫子聖か、孔子曰く、聖は則ち吾能わず、我は学びて厭(いと)わず、教えて倦(う)まざるなり、子貢曰く、学びて厭(いと)わざるは、智なり、教えて倦(う)まざるは、仁なり、仁且(かつ)智、夫子既に聖たり、夫(それ)聖は、孔子居らず、是れ何の言ぞや、
通し番号 160 章内番号 20 章通し番号 25 識別番号 3_2_20
昔者(むかし)竊(ひそか)に之を聞く、子夏、子游、子張は皆聖人の一体有り、冉牛、閔子、顏淵は則ち体を具(そな)えて微なり、敢えて安(お)る所を問う、
通し番号 161 章内番号 21 章通し番号 25 識別番号 3_2_21
曰く、姑(しばら)く是を舍(お)け、
通し番号 162 章内番号 22 章通し番号 25 識別番号 3_2_22
曰く、伯夷、伊尹何如(いかん)、曰く、道を同じくせず、其君に非ざれば事えず、其民に非ざれば使わず、治まれば則ち進み、乱れば則ち退くは、伯夷なり、何(いず)れに事えるとして君に非ざらん、何(いず)れを使うとして民に非ざらん、治まる亦進み、乱れる亦進むは、伊尹なり、以て仕えるべければ則ち仕え、以て止(や)むべければ則ち止(や)む、以て久しくすべければ則ち久しく、以て速かるべければ則ち速しは、孔子なり、皆古の聖人なり、吾未だ行うこと有る能わず、乃ち願う所は則ち孔子を学ぶなり、
通し番号 163 章内番号 23 章通し番号 25 識別番号 3_2_23
伯夷、伊尹の孔子に於る、是の若く班(ひと)しきか、曰く、否、生民有る自(よ)り以来、未だ孔子有らざるなり、
通し番号 164 章内番号 24 章通し番号 25 識別番号 3_2_24
曰く、然れば則ち同じきこと有るか、曰く、有り、百里の地を得て之に君たらば、皆能く以て諸侯を朝し天下を有(たも)たん、一の不義を行い、一の不辜(こ)を殺して、天下を得るは、皆爲さざるなり、是れ則ち同じ、
通し番号 165 章内番号 25 章通し番号 25 識別番号 3_2_25
曰く、敢えて其の以て異なる所を問う、曰く、宰我、子貢、有若、智は以て聖人を知るに足る、汙にして其好む所に阿(おもね)るに至らず、
通し番号 166 章内番号 26 章通し番号 25 識別番号 3_2_26
宰我曰く、予を以て夫子を観るに、堯舜に賢(まさ)ること遠し、
通し番号 167 章内番号 27 章通し番号 25 識別番号 3_2_27
子貢曰く、其礼を見て其政を知る、其楽を聞きて其徳を知る、百世の後由(よ)り、百世の王を等(くら)ぶるに、之に能く違うこと莫(な)きなり、生民自(よ)り以来、未だ夫子有らざるなり、
通し番号 168 章内番号 28 章通し番号 25 識別番号 3_2_28
有若曰く、豈惟(ただ)民のみならんや、麒麟(きりん)の走獣に於る、鳳凰(ほうおう)の飛鳥に於る、太山の丘垤(てつ)に於る、河海の行潦(りょう)に於る、類なり、聖人の民に於る、亦類なり、其類を出て、其萃(すい)を拔く、生民自(よ)り以来、未だ孔子より盛んなるは有らざるなり、
章番号 3 章通し番号 26
通し番号 169 章内番号 1 章通し番号 26 識別番号 3_3_1
孟子曰く、力を以て仁を仮(か)る者は霸なり、霸は必ず大国を有(たも)つ、徳以て仁を行う者は王なり、王は大を待たず、湯は七十里を以てし、文王は百里を以てす、
通し番号 170 章内番号 2 章通し番号 26 識別番号 3_3_2
力以て人を服する者は、心服に非ざるなり、力贍(た)らざるなり、徳以て人を服する者は、中心悦(よろこ)びて誠に服するなり、七十子の孔子に服するが如きなり、詩に云う、西自(よ)り東自(よ)り、南自(よ)り北自(よ)り、思いて服さざる無し、此の謂(いい)なり、
章番号 4 章通し番号 27
通し番号 171 章内番号 1 章通し番号 27 識別番号 3_4_1
孟子曰く、仁ならば則ち栄なり、不仁ならば則ち辱なり、今辱を悪(にく)んで不仁に居る、是れ猶(なお)湿を悪(にく)んで下に居るがごときなり、
通し番号 172 章内番号 2 章通し番号 27 識別番号 3_4_2
如(も)し之を悪まば、徳を貴(とうと)び士を尊(たっと)び、賢者位に在り、能者職に在るに如くは莫し、国家間暇なり、是時に及び其政刑を明らかにすれば、大国と雖も必ず之を畏る、
通し番号 173 章内番号 3 章通し番号 27 識別番号 3_4_3
詩に云う、天の未だ陰雨せざるに迨(およ)び、彼桑土を徹(と)り、牖戸(ゆうこ)を綢繆(ちゅうびゅう)す、今此下の民、敢えて予を侮ること或(あ)らんや、孔子曰く、此詩を爲(つく)る者、其(そ)れ道を知る(乎)、能く其国家を治めれば、誰か敢えて之を侮どらん、
通し番号 174 章内番号 4 章通し番号 27 識別番号 3_4_4
今国家間暇たり、是時に及び般楽(はんらく)怠敖(たいごう)すれば、是れ自ら禍を求めるなり、
通し番号 175 章内番号 5 章通し番号 27 識別番号 3_4_5
禍福、己自(よ)り之を求めざるもの無し、
通し番号 176 章内番号 6 章通し番号 27 識別番号 3_4_6
詩に云う、永(なが)く言(おも)い命に配(あ)う、自ら多福を求む、太甲に曰く、天の作(な)せる孼(わざわい)は猶(なお)違(さ)くべし、自ら作(な)せる孼(わざわい)は活(い)きるべからず、此の謂(いい)なり、
章番号 5 章通し番号 28
通し番号 177 章内番号 1 章通し番号 28 識別番号 3_5_1
孟子曰く、賢を尊(たっと)び能を使い、俊傑位に在れば、則ち天下の士皆悦(よろこ)び、其朝に立つこを願う、
通し番号 178 章内番号 2 章通し番号 28 識別番号 3_5_2
市は廛(てん)して征(せい)せず、法して廛せざれば、則ち天下の商皆悦(よろこ)びて其市に蔵(たくわ)えんことを願う、
通し番号 179 章内番号 3 章通し番号 28 識別番号 3_5_3
関は譏(しら)べて征せさざれば、則ち天下の旅皆悦(よろこ)び、其路に出でんことを願う、
通し番号 180 章内番号 4 章通し番号 28 識別番号 3_5_4
耕やす者助して税せざれば、則ち天下の農皆悦びて、其野に耕やすことを願う、
通し番号 181 章内番号 5 章通し番号 28 識別番号 3_5_5
廛(てん)夫里の布無ければ、則ち天下の民皆悦(よろこ)び、之が氓(たみ)と爲るこをを願う、
通し番号 182 章内番号 6 章通し番号 28 識別番号 3_5_6
信(まこと)に能く此五なるものを行なえば、則ち鄰国の民、之を仰(あお)ぐこと父母の若し、其子弟を率い、其父母を攻めるは、生民ある自(よ)り以来、未だ能く済(な)す者有らざるなり、此の如ければ、則ち天下に敵無し、天下に敵無き者は、天吏なり、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、
章番号 6 章通し番号 29
通し番号 183 章内番号 1 章通し番号 29 識別番号 3_6_1
孟子曰く、人皆人に忍びざるの心有り、
通し番号 184 章内番号 2 章通し番号 29 識別番号 3_6_2
先王人に忍びざるの心有り、斯(すなわ)ち人に忍びざるの政有り、人に忍びざるの心を以て、人に忍びざるの政を行えば、天下を治むること之を掌(たなごころ)の上に運(めぐ)らすべし、
通し番号 185 章内番号 3 章通し番号 29 識別番号 3_6_3
人皆人に忍びざるの心有りと謂う所以は、今人乍(たちま)ち孺子(じゅし)の将に井に入らんとするを見れば、皆怵惕(じゅつてき)惻(そく)隠(いん)の心有り、交(まじ)わりを孺子の父母に内(むす)ぶ所以に非ざるなり、誉を郷党、朋友に要(もと)める所以に非ざるなり、其声を悪(にく)んで然るに非ざるなり、
通し番号 186 章内番号 4 章通し番号 29 識別番号 3_6_4
是に由りて之を観れば、惻隠の心無きは、人に非ざるなり、羞(しゅう)悪(お)の心無きは、人に非ざるなり、辞讓の心無きは、人に非ざるなり、是非の心無きは、人に非ざるなり、
通し番号 187 章内番号 5 章通し番号 29 識別番号 3_6_5
惻隠の心は、仁の端なり、羞悪の心は、義の端なり、辞譲の心は、礼の端なり、是非の心は、智の端なり、
通し番号 188 章内番号 6 章通し番号 29 識別番号 3_6_6
人の是の四端有るや、猶其の四体有るがごときなり、是四端有りて自ら能わずと謂う者は、自ら賊(そこな)う者なり、其君能わずと謂う者は、其君を賊(そこな)う者なり、
通し番号 189 章内番号 7 章通し番号 29 識別番号 3_6_7
凡そ我に四端有る者、皆拡めて之を充(み)たすことを知れば、火の始めて然(も)え、泉(せん)の始めて達するが若し、苟(もし)能く之を充(み)たせば、以て四海を保つに足る、苟(もし)之を充(み)たさざれば、以て父母に事えるに足らず、
章番号 7 章通し番号 30
通し番号 190 章内番号 1 章通し番号 30 識別番号 3_7_1
孟子曰く、矢人(しじん)は豈函人(かんじん)より不仁ならんや、矢人唯(ただ)人を傷つけざることを恐る、函人唯(ただ)人を傷つけることを恐る、巫(ふ)匠(しょう)亦然り、故に術慎まざるべからず、
通し番号 191 章内番号 2 章通し番号 30 識別番号 3_7_2
孔子曰く、里は仁を美と爲す、択んで仁に処(お)らざれば、焉(いずくん)ぞ智を得ん、夫(それ)仁は、天の尊爵なり、人の安宅なり、之を禦(とど)めること莫くて不仁は、是れ不智なり、
通し番号 192 章内番号 3 章通し番号 30 識別番号 3_7_3
不仁不智、無礼無義は、人の役なり、人役にして役と爲るを恥ず、由(なお)弓人にして弓を爲(つく)るを恥じ、矢人にして矢を爲(つく)るを恥じるがごときなり、
通し番号 193 章内番号 4 章通し番号 30 識別番号 3_7_4
如(も)し之を恥ずれば、仁を爲すに如(し)くは莫し、
通し番号 194 章内番号 5 章通し番号 30 識別番号 3_7_5
仁者は射の如し、射(い)る者は己を正して後に発す、発して中(あた)らず、己に勝つ者を怨(とが)めず、諸(これ)を己に反(かえ)り求めるのみ、
章番号 8 章通し番号 31
通し番号 195 章内番号 1 章通し番号 31 識別番号 3_8_1
孟子曰く、子路、人之に告ぐるに過(あやまち)有るを以てすれば則ち喜ぶ、
通し番号 196 章内番号 2 章通し番号 31 識別番号 3_8_2
禹は善言を聞けば則ち拝す、
通し番号 197 章内番号 3 章通し番号 31 識別番号 3_8_3
大舜焉(これ)より大なるもの有り、善は人と同じくす、己を舍(す)て人に従う、人に取り以て善を爲すを楽しむ、
通し番号 198 章内番号 4 章通し番号 31 識別番号 3_8_4
耕稼(か)陶漁自(よ)り以て帝と爲るに至る、人に取るに非ざるもの無し、
通し番号 199 章内番号 5 章通し番号 31 識別番号 3_8_5
諸(これ)を人に取り以て善を爲すは、是れ人与(と)善を爲す者なり、故に君子は人と善を爲すより大なるものは莫し、
章番号 9 章通し番号 32
通し番号 200 章内番号 1 章通し番号 32 識別番号 3_9_1
孟子曰く、伯夷は其君に非ざれば事えず、其友に非ざれば友とせず、悪人の朝に立たず、悪人と言わず、悪人の朝に立ち、悪人と言えば、朝衣朝冠以て塗炭(とたん)に坐すが如し、悪を悪(にく)むの心思を推せば、郷人と立ち、其冠正しからざれば、望望然と之を去る、将に浼(けが)れんとするが若し、是故に諸侯其辞命を善(よ)くして至る者有りと雖も、受けざるなり、受けざるものは、是れ亦就(つ)くを屑(いさぎよ)しとせず(已)、
通し番号 201 章内番号 2 章通し番号 32 識別番号 3_9_2
柳下恵は汙君を羞(は)じず、小官を卑(いや)しとせず、進んで賢を隠さず、必ず其道を以てす、遺佚(いいつ)されて怨みず、阨(やく)窮して憫(うれ)えず、故に曰く、爾(なんじ)は爾爲(た)り、我は我爲(た)り、我が側(かたわら)で袒裼(たんてき)裸裎(らてい)すると雖も、爾焉ぞ能く我を浼(けが)さんや、故に由由然として之と偕(とも)にして自ら失わず、援(ひ)きて之を止(とど)めて止まる、援(ひ)きて之を止(とど)めて止まるは、是れ亦去るを屑(いさぎよ)しとせず(已)、
通し番号 202 章内番号 3 章通し番号 32 識別番号 3_9_3
孟子曰く、伯夷は隘(あい)なり、柳下恵は不恭なり、隘と不恭は、君子は由らざるなり、
4 公孫丑章句下 gōng sūn choǔ zhāng jù xià
章番号 1 章通し番号 33
通し番号 203 章内番号 1 章通し番号 33 識別番号 4_1_1
孟子曰く、天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず、
通し番号 204 章内番号 2 章通し番号 33 識別番号 4_1_2
三里の城、七里の郭(かく)、環(かこ)みて之を攻めて勝たず、夫(それ)環(かこ)みて之を攻めれば、必ず天の時を得ること有り、然り而して勝たざるのは、是れ天の時は地の利に如かざるなり、
通し番号 205 章内番号 3 章通し番号 33 識別番号 4_1_3
城は高からざるに非ざるなり、池は深からざるに非ざるなり、兵革は堅利ならざるに非ざるなり、米粟(ぞく)は多からざるに非ざるなり、委(す)てて之を去る、是れ地の利は人の和に如かざるなり、
通し番号 206 章内番号 4 章通し番号 33 識別番号 4_1_4
故に曰く、民を域(かぎ)るに封疆(ほうきょう)の界を以てせず、国を固めるに山谿(けい)の険を以てせず、天下を威(い)すに兵革の利を以てせず、道を得る者は助け多し、道を失なう者は助け寡(すくな)し、助け寡(すく)なきの至(いたり)は、親戚之に畔(そむ)く、助け多きの至(いたり)は、天下之に順(したが)う、
通し番号 207 章内番号 5 章通し番号 33 識別番号 4_1_5
天下の順(したが)う所を以て、親戚の畔(そむ)く所を攻む、故に君子戦わざること有り、戦えば必ず勝つ、
章番号 2 章通し番号 34
通し番号 208 章内番号 1 章通し番号 34 識別番号 4_2_1
孟子将に王に朝せんとす、王が人をして来たらしめて曰く、寡人就(おもむ)きて見(あ)うが如きものなり、寒疾有り、以て風すべからず、朝に将に朝を視(み)んとす、識らず、寡人をして見(あ)うことを得せしむべきか、対えて曰く、不幸にして疾有り、朝(あした)に造(ゆ)くこと能わず、
通し番号 209 章内番号 2 章通し番号 34 識別番号 4_2_2
明日(みょうにち)出て東郭氏に弔す、公孫丑曰く、昔者(きのう)辞するに病を以てし、今日弔す、或者(あるいは)可ならざるか、曰く、昔者(きのう)は疾(や)む、今日愈(い)ゆ、之を如何(いかん)ぞ弔せざらんや、
通し番号 210 章内番号 3 章通し番号 34 識別番号 4_2_3
王人をして疾を問い、医を来たらしむ、孟仲子対えて曰く、昔者(きのう)王命有り、采薪(さいしん)の憂(うれ)い有り、朝に造(ゆ)くこと能わず、今病小し愈(い)ゆ、趨(はし)り朝に造(ゆ)く、我能く至るや否やを識らず、数人をして路に要(ま)たしめて曰く、請う必ず帰ること無くて、朝に造(ゆ)け、
通し番号 211 章内番号 4 章通し番号 34 識別番号 4_2_4
已(や)むを得ずして景丑氏に之(ゆ)き宿す、景子曰く、内は則ち父子、外は則ち君臣、人の大倫なり、父子は恩を主とす、君臣は敬を主とす、丑は王の子を敬するを見るなり、未だ以て王を敬する所を見ざるなり、曰く、悪(ああ)、是れ何の言ぞや、斉人は仁義以て王と言う者無し、豈仁義以て美(よ)からずと爲さんや、其心に曰く、是何ぞ与(とも)に仁義を言うに足らんや(云爾)、則ち不敬是より大なること莫し、我堯舜の道に非ざれば、敢えて以て王の前に陳(の)べず、故に斉人は我が王を敬するに如(し)くは莫きなり、
通し番号 212 章内番号 5 章通し番号 34 識別番号 4_2_5
景子曰く、否、此の謂(いい)に非ざるなり、礼に曰く、父が召(め)せば諾(だく)すること無し、君が命じ召せば駕(が)するを俟(ま)たず、固より将に朝せんとするなり、王命を聞きて遂に果たさず、宜(ほとんど)夫(そ)の礼と相(あい)似ざるが若し(然)、
通し番号 213 章内番号 6 章通し番号 34 識別番号 4_2_6
曰、豈是を謂わんや、曽子曰く、晋楚の富、及ぶべからざるなり、彼は其富を以てす、我は吾が仁を以てす、彼は其爵を以てす、我は吾が義を以てす、吾何ぞ慊(すく)ないかな、夫(それ)豈義ならずして曽子之を言わんや、是れ一道或(あ)るなり、天下は達尊三有り、爵は一なり、歯は一なり、徳は一なり、朝廷は爵に如くは莫し、郷党は歯に如くは莫し、世を輔(たす)け民に長たるは徳に如くは莫し、悪んぞ其一を有して、以て其二を慢(あなど)るを得んや、
通し番号 214 章内番号 7 章通し番号 34 識別番号 4_2_7
故に将に大いに爲す有るの君は、必ず召さざる所の臣有り、謀有らんと欲せば、則ち之に就(おもむ)く、其(そ)の徳を尊び道を楽しむ、是(この)如からざれば与(とも)に爲す有るに足らざるなり、
通し番号 215 章内番号 8 章通し番号 34 識別番号 4_2_8
故に湯の伊尹(いいん)に於る、学び而して後之を臣とす、故に労せずして王たり、桓公の管仲に於る、学び而して後之を臣とす、故に労せずして霸たり、
通し番号 216 章内番号 9 章通し番号 34 識別番号 4_2_9
今、天下、地は醜(たぐい)し徳は斉(ひと)し、能く相(あい)尚(すぎ)ること莫し、他無し、其教える所を臣とするを好む、而るに其教えを受くる所を臣とするを好まず、
通し番号 217 章内番号 10 章通し番号 34 識別番号 4_2_10
湯の伊尹に於る、桓公の管仲に於るは、則ち敢えて召さず、管仲且(すら)猶(なお)召すべからず、而るに況んや管仲爲(た)らざる者をや、
章番号 3 章通し番号 35
通し番号 218 章内番号 1 章通し番号 35 識別番号 4_3_1
陳臻(しん)問いて曰く前日斉に於て、王兼金一百を餽(おく)る、而るに受けず、宋に於て七十鎰(いつ)を餽(おく)る、而して受く、薛(せつ)に於て五十鎰を餽(おく)る、而して受く、前日の受けざる是ならば、則ち今日の受くるは非なり、今日の受くる是ならば、則ち前日の受けざるは非なり、夫子(ふうし)必ず一に此に居らん、
通し番号 219 章内番号 2 章通し番号 35 識別番号 4_3_2
孟子曰く、皆是なり、
通し番号 220 章内番号 3 章通し番号 35 識別番号 4_3_3
宋に在るに当たりては、予将に遠く行くこと有らんとす、行く者必ず贐(じん)以てす、辞に曰く、贐を餽(おく)る、予何爲(なんすれ)ぞ受けざらん、
通し番号 221 章内番号 4 章通し番号 35 識別番号 4_3_4
薛(せつ)に在るに当りては、予戒心有り、辞に曰く、戒を聞く、故に兵の爲に之を餽(おく)る、予何爲(なんすれ)ぞ受けざる、
通し番号 222 章内番号 5 章通し番号 35 識別番号 4_3_5
斉に於るが若きは、則ち未だ処すること有らざるなり、処すること無くて之に餽る、是れ之を貨するなり、焉ぞ君子にして貨以て取るべきこと有らんや、
章番号 4 章通し番号 36
通し番号 223 章内番号 1 章通し番号 36 識別番号 4_4_1
孟子は平陸に之(ゆ)き其大夫に謂いて曰く、子の戟(ほこ)を持つの士、一日にして三たび伍を失なえば、則ち之を去るや否や、曰く、三を待たず、
通し番号 224 章内番号 2 章通し番号 36 識別番号 4_4_2
然らば則ち子(し)の伍を失なうこと亦多し、凶年饑歳に、子の民は、老羸(るい)は溝壑(がく)に転ず、壮者は散じて四方に之(ゆ)く者幾千人なり、曰く、此は距心の爲すを得る所に非ざるなり、
通し番号 225 章内番号 3 章通し番号 36 識別番号 4_4_3
曰く、今人の牛羊を受けて之が爲に之を牧する者有り、則ち必ず之が爲に牧と芻(すう)を求む、牧と芻を求めて得ざれば、則ち諸(これ)を其人に反(かえ)すか、抑(ある)いは亦立ちて其死を視るか、曰く、此則ち距心の罪なり、
通し番号 226 章内番号 4 章通し番号 36 識別番号 4_4_4
他日王に見(まみ)えて曰く、王の都を爲(おさ)める者、臣五人を知る、其罪を知る者、惟(ただ)孔距心なり、王の爲に之を誦(い)う、王曰く、此則ち寡人の罪なり、
章番号 5 章通し番号 37
通し番号 227 章内番号 1 章通し番号 37 識別番号 4_5_1
孟子蚔鼃(ちあ)に謂いて曰く、子の霊丘を辞して士師を請うは似るなり、其以て言うべき爲なり、今既に数月、未だ以て言うべからざるか、
通し番号 228 章内番号 2 章通し番号 37 識別番号 4_5_2
蚔は鼃王を諫めて用いられず、臣爲(た)るを致して去る、
通し番号 229 章内番号 3 章通し番号 37 識別番号 4_5_3
斉人曰く、以て蚔鼃の爲にする所は則ち善し、以て自らの爲にする所は、則ち吾知らざるなり、
通し番号 230 章内番号 4 章通し番号 37 識別番号 4_5_4
公都子以て告ぐ、
通し番号 231 章内番号 5 章通し番号 37 識別番号 4_5_5
曰く、吾之を聞くなり、官守有る者は、其職を得ざれば則ち去る、言責有る者は、其言を得ざれば則去る、我官守無く、我言責無きなり、則ち吾が進退、豈綽綽然(しゃくしゃくぜん)として余裕有らざらんや、
章番号 6 章通し番号 38
通し番号 232 章内番号 1 章通し番号 38 識別番号 4_6_1
孟子斉で卿(けい)と爲り、出でて滕に弔す、王は蓋(こう)の大夫王驩(かん)をして輔行爲(た)らしむ、王驩朝暮に見(まみ)ゆ、斉滕の路を反(かえ)り、未だ嘗(かつ)て之と行事を言わざるなり、
通し番号 233 章内番号 2 章通し番号 38 識別番号 4_6_2
公孫丑曰く、斉卿の位、小と爲さず、斉滕の路、近しと爲さず、之を反して未だ嘗て与(とも)に行事を言わざるは何ぞや、曰く、夫(それ)既に之を治めること或(あ)り、予(われ)何をか言わんや、
章番号 7 章通し番号 39
通し番号 234 章内番号 1 章通し番号 39 識別番号 4_7_1
孟子斉自(よ)り魯に葬(ほうむ)る、斉に反(かえ)る、嬴(えい)に止(とど)まる、充虞(じゅうぐ)請いて曰く、前日虞の不肖を知らず、虞をして匠の事を敦(おさ)めしむ、厳なり、虞敢えて請わず、今願わくば竊(ひそ)かに請うこと有るなり、木以(はなは)だ美なるが若き然(なり)、
通し番号 235 章内番号 2 章通し番号 39 識別番号 4_7_2
曰く、古は棺槨に度無し、中古は棺七寸、槨(かく)之に称(かな)う、天子自(よ)り庶人に達す、直(ただ)に観美を爲すに非ざるなり、然る後人の心を尽す、
通し番号 236 章内番号 3 章通し番号 39 識別番号 4_7_3
得ざれば、以て悦(よろこび)を爲すべからず、財無ければ、以て悦(よろこび)を爲すべからず、之を得て財有ると爲せば、古の人皆之を用う、吾何爲(なんすれ)ぞ独り然らざらん、
通し番号 237 章内番号 4 章通し番号 39 識別番号 4_7_4
且(また)化者の比(ため)、土をして膚に親(ちかづ)かしめること無し、人の心に於て独り恔(こころよ)きこと無からんや、
通し番号 238 章内番号 5 章通し番号 39 識別番号 4_7_5
吾之を聞く、君子は天下以て其親に倹せず、
章番号 8 章通し番号 40
通し番号 239 章内番号 1 章通し番号 40 識別番号 4_8_1
沈同(しんどう)其私以て問いて曰く、燕伐(う)つべきか、孟子曰く、可なり、子噲(かい)は人に燕を与えることを得ず、子之(しし)は燕を子噲に受けることを得ず、此に仕有りて、子が之を悦び、王に告げずして、私に之に吾子の祿爵を与う、夫(その)士、亦王命無くて私に之を子に受ければ、則ち可か、何ぞ以て是に異ならん、
通し番号 240 章内番号 2 章通し番号 40 識別番号 4_8_2
斉人燕を伐つ、或ひと問いて曰く、斉に勧め燕を伐つ、諸有りや、曰く、未(いま)だし、沈同問う、燕伐つべきか、吾之に応じて曰く、可、彼然而(しこう)して之を伐つなり、彼如(も)し孰(たれ)か以て之を伐つべしと曰わば、則ち将に之に応じて曰わんとす、天吏爲(た)らば則ち以て之を伐つべし、今人を殺す者有り、或ひと之を問いて曰く、人は殺すべきか、則ち将に之に応じて曰わんとす、可、彼如(も)し孰か以て之を殺すべしと曰わば、則ち將に之に応じて曰わんとす、士師爲(た)らば則ち以て之を殺すべし、今燕以て燕を伐つ、何爲(なんすれ)ぞ之を勧めんや、
章番号 9 章通し番号 41
通し番号 241 章内番号 1 章通し番号 41 識別番号 4_9_1
燕人畔(そむ)く、王曰く、吾甚だ孟子に慙(は)ず、
通し番号 242 章内番号 2 章通し番号 41 識別番号 4_9_2
陳賈(か)曰く、王患(うれ)うること無かれ、王自ら以て周公と孰(いずれ)か仁且(か)つ智と爲す、王曰、悪(ああ)、是れ何の言ぞや、曰く、周公は管叔をして殷を監せしむ、管叔は殷以て畔(そむ)く、知りて之を使(せし)むれば、是れ不仁なり、知らずして之を使(せし)むれば、是れ不智なり、仁智、周公未だ之を尽さざるなり、而るに況んや王に於てをや、賈請う、見(まみ)えて之を解かん、
通し番号 243 章内番号 3 章通し番号 41 識別番号 4_9_3
孟子に見(まみ)えて問いて曰く、周公何人ぞや、曰く、古の聖人なり、曰く、管叔をして殷を監さしむ、管叔殷以て畔(そむ)くなり、諸(これ)有りや、曰く、然り、曰く、周公其将に畔(そむ)かんするを知りて之を使(せ)しむるか、曰く、知らざるなり、然らば則ち聖人且(なお)過(あやまち)有るか、曰く、周公、弟なり、管叔、兄なり、周公の過、亦宜(むべ)ならず乎(や)、
通し番号 244 章内番号 4 章通し番号 41 識別番号 4_9_4
且(また)古の君子、過つ、則ち之を改む、今の君子、過つ、則ち之に順(したが)う、古の君子、其の過(あやま)つや、日月の食するが如し、民皆之を見る、其の更(あらた)めるに及ぶや、民皆之を仰ぐ、今の君子、豈徒(ただ)之に順わんや、又従(よ)りて之が辞を爲す、
章番号 10 章通し番号 42
通し番号 245 章内番号 1 章通し番号 42 識別番号 4_10_1
孟子臣爲(た)るを致して帰る、
通し番号 246 章内番号 2 章通し番号 42 識別番号 4_10_2
王就(おもむ)きて孟子に見(あ)いて曰く、前日見(あ)うを願いて得(う)べからず、侍するを得て同朝(ちょう)甚だ喜ぶ、今又寡人を棄てて帰る、識(し)らず、以て此に継(つ)ぎて見(あ)うを得べきか、対えて曰く、敢えて請わざるのみ、固より願う所なり、
通し番号 247 章内番号 3 章通し番号 42 識別番号 4_10_3
他日王時子に謂いて曰く、我中国に孟子に室を授け、弟子を養うに万鍾を以てし、諸大夫国人(こくじん)をして皆矜式(きょうしき)する所有らしめんと欲す、子盍(なん)ぞ我が爲に之を言わざる、
通し番号 248 章内番号 4 章通し番号 42 識別番号 4_10_4
時子は陳子に因りて以て孟子に告ぐ、陳子は時子の言以て孟子に告ぐ、
通し番号 249 章内番号 5 章通し番号 42 識別番号 4_10_5
孟子曰く、然(さ)ようか、夫(かの)時子悪ぞ其の不可を知らん、如(も)し予をして富を欲せしめば、十万を辞して万を受く、是れ富を欲すと爲すか、
通し番号 250 章内番号 6 章通し番号 42 識別番号 4_10_6
季孫曰く、異(あや)しい哉(かな)子叔疑(ししゅくぎ)、己をして政を爲さしむ、用いざれば則ち亦(ただ)已(や)む、又其子弟をして卿爲らしむ、人亦孰(たれ)か富貴を欲せざらん、而して独り富貴の中に於て、龍断(ろうだん)を私(わたくし)すること有り、
通し番号 251 章内番号 7 章通し番号 42 識別番号 4_10_7
古の市を爲すや、其有る所を以て其無き所に易えるものなり、有司は之を治めるのみ、賎丈夫有り、必ず龍断を求めて之に登る、以て左右を望みて市利を罔(あみ)す、人皆以て賎と爲す、故に従(よ)りて之に征す、商に征すは、此賎丈夫自(よ)り始まる、
章番号 11 章通し番号 43
通し番号 252 章内番号 1 章通し番号 43 識別番号 4_11_1
孟子斉を去り、昼に宿す、
通し番号 253 章内番号 2 章通し番号 43 識別番号 4_11_2
王の爲に行(さ)るを留めんと欲する者有り、坐して言う、応ぜず、几(き)に隠(よ)りて臥す、
通し番号 254 章内番号 3 章通し番号 43 識別番号 4_11_3
客悦(よろこば)ずして曰く、弟子(ていし)斉宿して後敢えて言う、夫子臥して聴かず、請う復(また)敢て見(まみ)ゆること勿(な)し、曰く、坐せよ、我明らかに子(し)に語らん、昔者(むかし)魯の繆公(ぼくこう)子思の側(かたわら)に人無ければ、則ち子思を安ずること能わず、泄柳(せつりゅう)、申詳(しんしょう)は、繆公の側に人無ければ、則ち其身を安ずること能わず、
通し番号 255 章内番号 4 章通し番号 43 識別番号 4_11_4
子長者(ちょうじゃ)の爲に慮(おもんばか)りて、子思に及ばず、子長者を絶つか、長者子を絶つか、
章番号 12 章通し番号 44
通し番号 256 章内番号 1 章通し番号 44 識別番号 4_12_1
孟子斉を去る、尹士(いんし)人に語りて曰く、王の以て湯武と爲るべからざるを識らざれば、則ち是れ不明なり、其不可を識り、然(しこう)して且(なお)至れば、則ち是れ沢を干(もと)めるなり、千里にして王に見(まみ)え、遇(あ)わず、故に去る、三宿して後に昼を出ず、是何ぞ濡滞(じゅたい)なるや、士則ち茲(ここ)に悦(よろこ)ばず、
通し番号 257 章内番号 2 章通し番号 44 識別番号 4_12_2
高子以て告ぐ、
通し番号 258 章内番号 3 章通し番号 44 識別番号 4_12_3
曰く、夫(かの)尹士悪ぞ予を知らんや、千里にして王に見(まみ)ゆ、是れ予欲する所なり、遇(あ)わず、故に去る、豈予欲する所ならんや、予已(や)むを得ざるなり、
通し番号 259 章内番号 4 章通し番号 44 識別番号 4_12_4
予三宿して昼を出ず、予が心に於て猶以て速しと爲す、王庶幾(こいねがわ)くは之を改めよ、王如(も)し諸を改めば、則ち必ず予(われ)を反(かえ)さん、
通し番号 260 章内番号 5 章通し番号 44 識別番号 4_12_5
夫(それ)昼を出でて王予を追わざるなり、予然る後に浩然として帰る志(し)有り、予然りと雖も、豈王を舍(す)てんや、王由(なお)用(もっ)て善を爲すに足る、王如(も)し予を用いれば、則ち豈徒(ただ)斉の民安きのみならんや、天下の民挙(みな)安し、王庶幾(ねがわ)くは之を改めよ、予日に之を望む、
通し番号 261 章内番号 6 章通し番号 44 識別番号 4_12_6
予豈是の小丈夫(じょうふ)の若く然(なら)んや、其君を諫(いさ)めて受けざれば、則ち怒り悻悻(こうこう)然として、其面に見(あら)われ、去れば則ち日の力を窮(つく)して後に宿さんや、
通し番号 262 章内番号 7 章通し番号 44 識別番号 4_12_7
尹士之を聞きて曰く、士誠に小人なり、
章番号 13 章通し番号 45
通し番号 263 章内番号 1 章通し番号 45 識別番号 4_13_1
孟子斉を去る、充虞(じゅうぐ)、路に問いて曰く、夫子(ふうし)不予の色有るが若し(然)、前日虞諸を夫子に聞く、曰く、君子天を怨(うら)まず、人を尤(とが)めず、
通し番号 264 章内番号 2 章通し番号 45 識別番号 4_13_2
曰く、彼一時(じ)、此一時(じ)なり、
通し番号 265 章内番号 3 章通し番号 45 識別番号 4_13_3
五百年必ず王者興(おこ)ること有り、其間必ず世に名ある者有り、
通し番号 266 章内番号 4 章通し番号 45 識別番号 4_13_4
周由(よ)り而來(じらい)、七百有余歳なり、其数以てすれば則ち過ぐ、其時以て之を考えれば則ち可なり、
通し番号 267 章内番号 5 章通し番号 45 識別番号 4_13_5
夫(それ)天未だ天下を平治するを欲せざるなり、如(も)し天下を平治するを欲せば、今の世に当り、我を舍(す)て其誰ぞや、吾何爲(なんすれ)ぞ不予せんや、
章番号 14 章通し番号 46
通し番号 268 章内番号 1 章通し番号 46 識別番号 4_14_1
孟子は斉を去り休に居る、公孫丑問いて曰く、仕えて禄を受けざるは、古の道か、
通し番号 269 章内番号 2 章通し番号 46 識別番号 4_14_2
曰く、非なり、崇に於て吾王に見(まみ)えることを得る、退いて去る志(し)有り、変えることを欲せず、故に受けざるなり、
通し番号 270 章内番号 3 章通し番号 46 識別番号 4_14_3
継(つ)いで師の命有り、以て請うべからず、斉に久しきは、我が志に非ざるなり、
5 滕文公章句上 téng wén gōng zhāng jù shàng
章番号 1 章通し番号 47
通し番号 271 章内番号 1 章通し番号 47 識別番号 5_1_1
滕の文公世子爲(た)り、将に楚に之(ゆ)かんとす、宋を過ぎて孟子に見(あ)う、
通し番号 272 章内番号 2 章通し番号 47 識別番号 5_1_2
孟子性善を道(い)う、言えば必ず堯舜を称す、
通し番号 273 章内番号 3 章通し番号 47 識別番号 5_1_3
世子楚自(よ)り反る、復(また)孟子に見(あ)う、孟子曰く、世子吾が言を疑うか、夫(それ)道は一而已(のみ)、
通し番号 274 章内番号 4 章通し番号 47 識別番号 5_1_4
成覵(けん)斉の景公に謂いて曰く、彼丈夫なり、我丈夫なり、吾何ぞ彼を畏れんや、顔淵曰く、舜何人ぞや、予何人ぞや、爲すこと有る者亦是若し、公明儀曰く、文王我が師なり、周公豈我を欺かんや、
通し番号 275 章内番号 5 章通し番号 47 識別番号 5_1_5
今滕長きを絶(た)ち短きを補わば、将に五十里にならんとするなり、猶以て善(よ)い国と爲すべし、書に曰く、若(もし)薬瞑眩(めんげん)せざれば、厥(その)疾瘳(い)えず、
章番号 2 章通し番号 48
通し番号 276 章内番号 1 章通し番号 48 識別番号 5_2_1
滕の定公薨(こう)ず、世子然友に謂いて曰く、昔者(むかし)孟子嘗て我と宋に於て言う、心に於て終(つい)に忘れず、今や不幸にして大故(たいこ)に至る、吾は子をして孟子に問わしめ、然る後に事を行わんと欲す、
通し番号 277 章内番号 2 章通し番号 48 識別番号 5_2_2
然友鄒に之(ゆ)き孟子に問う、孟子曰く、亦善(よ)からずや、親の喪は固より自(おの)ずから尽す所なり、曽子曰く、生くるに之に事(つか)えるに礼を以てし、死するに之を葬(ほう)むるに礼を以てし、之を祭るに礼を以てすれば、孝と謂うべし、諸侯の礼、吾未だ之を学ばざるなり、然りと雖も、吾嘗て之を聞く、三年の喪(も)、斉疏(しそ)の服、飦粥(せんじゅく)の食、天子自(よ)り庶人に達す、三代之を共(とも)にす、
通し番号 278 章内番号 3 章通し番号 48 識別番号 5_2_3
然友反命する、定むらく、三年の喪を爲さんと、父兄百官皆欲さずして、曰く、吾が宗国魯の先君は之を行うこと莫し、吾が先君亦之を行うこと莫きなり、子(し)の身に至りて之に反するは、不可なり、且(また)志に曰く、喪祭は先祖に従う、曰く、吾之を受くる所有るなり、
通し番号 279 章内番号 4 章通し番号 48 識別番号 5_2_4
然友に謂いて曰く、吾他日(たじつ)未だ嘗て学問せず、好んで馬を馳(は)せ剣を試(もち)う、今や父兄百官、我を足れりとせざるなり、其れ大事を尽すこと能わざるを恐る、子我の爲に孟子に問え、然友復(また)鄒に之(ゆ)き孟子に問う、孟子曰く、然(さ)ようか、以て他に求むべからざるものなり、孔子曰く、君薨(こう)ずれば、冢宰(ちょうさい)に聴(したがわ)しむ、粥を歠(すす)り、面(おもて)は深墨(しんぼく)、位に即(つ)きて哭す、百官有司、敢(あえ)て哀(かな)しまざること莫し、之に先んずるなり、上好む者有れば、下必ず焉(これ)より甚だしき者有り、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり、草は之に風を尚(くわ)えれば必ず偃(ふ)す、是れ世子に在り、
通し番号 280 章内番号 5 章通し番号 48 識別番号 5_2_5
然友反命す、世子曰く、然り、是れ誠に我に在り、五月廬(ろ)に居る、未だ命戒有らず、百官族人可として、謂いて知ると曰う、葬(ほうむ)るに至るに及び、四方より来り之を観る、顔色の戚、哭泣(こくきゅう)の哀、弔する者大いに悦(よろこ)ぶ、
章番号 3 章通し番号 49
通し番号 281 章内番号 1 章通し番号 49 識別番号 5_3_1
滕の文公が国を爲(おさ)めるを問う、
通し番号 282 章内番号 2 章通し番号 49 識別番号 5_3_2
孟子曰、民の事は緩(ゆる)くすべからざるなり、詩に云う、昼は爾(なんじ)于(ゆ)きて茅(かやをか)る、宵(よる)は爾(なんじ)索(なわ)を綯(な)い、亟(すみや)かに其(そ)れ屋に乗れ、其(それ)始めて百穀を播(ま)け、
通し番号 283 章内番号 3 章通し番号 49 識別番号 5_3_3
民の道爲(た)るや、恒(つね)の産有る者は恒(つね)の心有り、恒(つね)の産無き者は恒(つね)の心無し、苟(もし)恒(つね)の心無ければ、放辟邪侈、爲さざる無きのみ、罪に陥いるに及び、然る後従(よ)りて之を刑す、是れ民を罔(あみ)するなり、、焉ぞ仁人位に在る有りて、民を罔すること爲すべけんや、
通し番号 284 章内番号 4 章通し番号 49 識別番号 5_3_4
是故に賢君必ず恭倹にして下に礼し、民に取るに制有り、
通し番号 285 章内番号 5 章通し番号 49 識別番号 5_3_5
陽虎曰く、富を爲せば仁ならず、仁を爲せば富ならず、
通し番号 286 章内番号 6 章通し番号 49 識別番号 5_3_6
夏后氏五十にして貢す、殷人(いんひと)七十にして助す、周人(しゅうひと)百畝にして徹す、其実皆什一なり、徹なるものは、徹なり、助なるものは、藉なり、
通し番号 287 章内番号 7 章通し番号 49 識別番号 5_3_7
龍子曰く、地を治めるは助より善きは莫し、貢より善からざるは莫し、貢は数歳の中を校(はか)り以て常と爲す、楽歳粒米狼戾(ろうれい)、多く之を取りて虐と爲さず、則(しかる)に寡(すくな)く之を取る、凶年其田を糞(つちか)うも足らず、則(しかる)に必ず盈(えい)を取る、民の父母と爲り、民をして盻盻然(けいけいぜん)として、將に終歳勤動し、以て其父母を養うことを得ざらしめんとす、又称貸して之を益(ま)す、老稚(ち)をして溝(こう)壑(がく)に転ぜしむ、悪(いずく)にか在る、其民の父母爲(た)ること、
通し番号 288 章内番号 8 章通し番号 49 識別番号 5_3_8
夫世禄は、滕固より之を行う、
通し番号 289 章内番号 9 章通し番号 49 識別番号 5_3_9
詩に云う、我(わが)公田に雨(あめふ)り、遂(つい)に我(わが)私(わたくし)に及べ、惟(ただ)助のみ公田有りと爲す、此に由り之を観れば、周と雖も亦助なり、
通し番号 290 章内番号 10 章通し番号 49 識別番号 5_3_10
庠(しょう)序学校を設(もう)け爲(つく)り以て之を教う、庠は、養なり、校は、教なり、序は、射なり、夏は校と曰い、殷は序と曰い、周は庠と曰う、学は則ち三代之を共(とも)にす、皆以て人倫を明かにする所なり、人倫上に明かにして、小民下に親む、
通し番号 291 章内番号 11 章通し番号 49 識別番号 5_3_11
王者起こること有れば、必ず来りて法を取る、是れ王者の師と爲るなり、
通し番号 292 章内番号 12 章通し番号 49 識別番号 5_3_12
詩に云う、周旧邦と雖も、其命惟(これ)新し、文王の謂(いい)なり、子力(つと)めて之を行えば、亦以て子の国を新しくす、
通し番号 293 章内番号 13 章通し番号 49 識別番号 5_3_13
畢戦(ひつせん)をして井地を問わしむ、孟子曰く、子の君将に仁政を行わんとす、選択して子を使(せし)む、子必ず之を勉めよ、夫(それ)仁政は、必ず経界自(よ)り始まる、経界正しからざれば、井地均(ひと)しからず、穀禄平(たいら)かならず、是故に暴君汙吏必ず其経界を慢(おこた)る、経界既に正しければ、田を分ち禄を制すること坐して定むべきなり、
通し番号 294 章内番号 14 章通し番号 49 識別番号 5_3_14
夫(それ)滕は壤(じょう)地褊小なり、将(ある)いは君子爲(た)り、将(ある)いは野人爲(た)り、君子無ければ野人を治めること莫し、野人無ければ君子を養うこと莫し、
通し番号 295 章内番号 15 章通し番号 49 識別番号 5_3_15
請う野は九一にして助す、国中(こくちゅう)什一にして自ら賦せしむ、
通し番号 296 章内番号 16 章通し番号 49 識別番号 5_3_16
卿(けい)以下必ず圭田(けいでん)有り、圭田は五十畝(ぽ)なり、
通し番号 297 章内番号 17 章通し番号 49 識別番号 5_3_17
余夫は二十五畝、
通し番号 298 章内番号 18 章通し番号 49 識別番号 5_3_18
死して徙(うつ)り郷を出ずること無し、郷の田は井を同じくすれば、出入相友(したが)い、守望相助け、疾病相扶持(ふじ)す、則ち百姓親睦す、
通し番号 299 章内番号 19 章通し番号 49 識別番号 5_3_19
方里にして井、井は九百畝、其中公田と爲す、八家皆百畝を私す、同じく公田を養う、公事畢(おわ)る、然る後敢て私事を治む、以て野人を別(わか)つ所なり、
通し番号 300 章内番号 20 章通し番号 49 識別番号 5_3_20
此は其大略なり、夫(かの)之を潤沢するが若きは、則ち君と子にあり、
章番号 4 章通し番号 50
通し番号 301 章内番号 1 章通し番号 50 識別番号 5_4_1
神農の言を爲す者許行有り、楚自(よ)り滕に之(ゆ)く、門に踵(いた)りて文公に告げて曰く、遠方の人、君仁政を行うを聞く、願わくば一廛(てん)を受けて氓(たみ)と爲らん、文公之に處(ところ)を与う、其徒数十人、皆褐(かつ)を衣(き)、屨(くつ)を捆(う)ち席を織(お)り以て食と爲す、
通し番号 302 章内番号 2 章通し番号 50 識別番号 5_4_2
陳良の徒陳相(ちんしょう)、其弟辛と、耒耜(らいし)を負いて宋自(よ)り滕に之きて曰く、君聖人の政を行うと聞く、是れ亦聖人なり、願わくば聖人の氓(たみ)と爲らん、
通し番号 303 章内番号 3 章通し番号 50 識別番号 5_4_3
陳相許行に見(あ)い大いに悦(よろこ)ぶ、尽(ことごと)く其学を棄てて学ぶ、陳相孟子に見(あ)い、許行の言を道(い)いて曰く、滕君則ち誠に賢君なり、然りと雖も未だ道を聞かざるなり、賢者民と並(なら)び耕やして食す、饔飧(ようそん)して治む、今也(や)滕倉廩(りん)府庫有り、則ち是民を厲(やま)しめて以て自ら養うなり、悪ぞ賢を得ん、
通し番号 304 章内番号 4 章通し番号 50 識別番号 5_4_4
孟子曰く、許子必ず粟(ぞく)を種(う)えて後食するか、曰く、然り、許子必ず布を織(お)りて後衣(き)るか、曰く、否、許子褐(かつ)を衣る、許子冠するか、曰く、冠す、曰く、奚(なに)を冠す、曰く、素を冠す、曰く、自ら之を織(お)るか、曰く、否、粟以て之に易う、曰く、許子奚爲(なんすれ)ぞ自ら織(お)らざる、曰く、耕に害あり、曰く、許子釜甑(ふしょう)以て爨(もや)し、鉄以て耕すか、曰く、然り、自ら之を爲(つく)るか、曰く、否、粟以て之に易う、
通し番号 305 章内番号 5 章通し番号 50 識別番号 5_4_5
粟以て械器に易えるは、陶冶(や)を厲(や)ましめると爲さず、陶冶亦其械器を以て粟に易えるは、豈農夫を厲(やま)しめると爲さんや、且(また)許子何ぞ陶冶を爲さざる、皆諸(これ)を其宮中に取りて之を用いることを舍(や)めて、何爲(なんすれ)ぞ紛紛然として百工と交易する、何ぞ許子は煩を憚(はばか)らざる、曰く、百工の事、固より耕し且(か)つ爲すべからざるなり、
通し番号 306 章内番号 6 章通し番号 50 識別番号 5_4_6
然らば則ち天下を治めること独(ひと)り耕し且(か)つ爲すべきか、大人の事有り、小人(しょうじん)の事有り、且(ま)た一人の身にして、百工の爲す所備わる、如(も)し必ず自ら爲して後之を用うれば、是れ天下を率(ひき)いて路するなり、故に曰く、或いは心を労し、或いは力を労す、心を労する者は人を治む、力を労する者は人に治めらる、人に治めらる者は人を食(やしな)う、人を治める者は人に食(やしなわ)れる、天下の通義なり、
通し番号 307 章内番号 7 章通し番号 50 識別番号 5_4_7
堯の時に当り、天下猶(なお)未だ平かならず、洪水横流し、天下に氾濫す、草木暢茂(ちょうも)し、禽獣繁殖し、五穀登(みの)らず、禽獣人に偪(せま)る、獣蹄(てい)鳥跡(せき)の道、中国に交わる、堯独り之を憂う、舜を挙げて敷(ほどこ)し治めしむ、舜は益をして火を掌(つかさど)らしむ、益は山沢を烈(もや)し之を焚(や)く、禽獣逃れ匿(かく)る、禹九河(か)を疏(とお)す、済(せい)漯(とう)を瀹(とお)して、諸(これ)を海に注ぐ、汝(じょ)漢を決し、淮泗(わいし)を排して、之を江に注ぐ、然る後中国得て食すべきなり、是時に当るや、禹外に於て八年、三たび其門を過ぎて入らず、耕すことを欲すと雖も得るか、
通し番号 308 章内番号 8 章通し番号 50 識別番号 5_4_8
后稷(こうしょく)民に稼穡(かしょく)を教え、五穀を樹芸す、五穀熟して民人育す、人は道有るなり、飽食、煖衣(だんい)、逸居(いっきょ)して教えること無ければ、則ち禽獣に近し、聖人之を憂うこと有り、契(せつ)をして司徒と爲らしめ、教えるに人倫を以てす、父子親有り、君臣義有り、夫婦別有り、長幼序有り、朋友信有り、放勳(ほうくん)曰く、之を労(ねぎら)う、之を来たす、之を匡(ただ)す、之を直(なお)くす、之を輔(たす)く、之を翼(たす)く、自ずから之を得せしむ、又従(よ)りて之を振徳す、聖人の民を憂うこと此如し、而して耕に暇(いとま)あるか、
通し番号 309 章内番号 9 章通し番号 50 識別番号 5_4_9
堯は舜を得ざるを以て己の憂いと爲す、舜は禹、皐陶(こうよう)を得ざるを以て己の憂いと爲す、夫(それ)百畝の易(おさま)らざるを以て己の憂いと爲す者は、農夫なり、
通し番号 310 章内番号 10 章通し番号 50 識別番号 5_4_10
人に分つに財を以てす、之を恵と謂う、人に教えるに善を以てす、之を忠と謂う、天下の爲に人を得るは、之を仁と謂う、是故に天下以て人に与えるは易く、天下の爲に人を得るは難し、
通し番号 311 章内番号 11 章通し番号 50 識別番号 5_4_11
孔子曰く、大なるかな堯の君爲(た)る、惟(ただ)天大と爲す、惟(ただ)堯之に則(のっと)る、蕩蕩乎(とうとうこ)として民能く名づくること無し、君なるかな舜や、巍巍乎(ぎぎこ)として天下を有(たも)ちて与(あずか)らず、堯舜の天下を治める、豈其心を用いる所無からんや、亦(ただ)耕に用いざるのみ、
通し番号 312 章内番号 12 章通し番号 50 識別番号 5_4_12
吾、夏用(もっ)て夷を変ずるものを聞く、未だ夷に変ぜられるものを聞かざるなり、陳良、楚の産なり、周公、仲尼の道を悦ぶ、北中国に学ぶ、北方の学者、未だ能く之に先んずること或(あ)らざるなり、彼謂う所の豪傑の士なり、子の兄弟之に事えること数十年、師死して遂に之に倍(そむ)く、
通し番号 313 章内番号 13 章通し番号 50 識別番号 5_4_13
昔者(むかし)孔子没す、三年の外(そと)、門人任(じん)を治め将に帰らんとす、入りて子貢に揖(ゆう)し、相嚮(むか)いて哭す、皆声を失ない、然る後帰る、子貢反る、室を場に築き、独り居ること三年、然る後帰る、他日子夏、子張、子游は、有若が聖人に似るを以て、孔子に事(つか)える所を以て之に事(つか)えんと欲す、曽子に彊(し)う、曽子曰く、不可、江漢以て之を濯(あら)い、秋陽以て之を暴(さら)す、皜皜乎(こうこうこ)として尚(くわ)うべからざるのみ、
通し番号 314 章内番号 14 章通し番号 50 識別番号 5_4_14
今や南蛮鴃(げき)舌の人、先王の道に非ず、子子の師に倍(そむ)きて之に学ぶ、亦曽子に異なる、
通し番号 315 章内番号 15 章通し番号 50 識別番号 5_4_15
吾幽谷を出で喬木に遷(うつ)るものを聞く、未だ喬木を下りて幽谷に入るものを聞かざるなり、
通し番号 316 章内番号 16 章通し番号 50 識別番号 5_4_16
魯頌に曰く、戎狄(じゅうてき)是れ膺(う)ち、荊(けい)舒(じょ)是れ懲(こら)しめる、周公方且(まさ)に之を膺(う)たんとす、子是を之学ぶ、(亦)善く変ぜずと爲す、
通し番号 317 章内番号 17 章通し番号 50 識別番号 5_4_17
許子の道に従えば、則ち市賈(か)貳(じ)ならず、国中僞無し、五尺の童をして市に適(ゆ)かしむと雖も、之を欺くこと或(あ)る莫し、布(ふ)帛(はく)長短同じならば、則ち賈相(あい)若(し)く、麻縷(まる)絲(し)絮(じょ)軽重同じならば、則ち賈(か)相(あい)若(し)く、五穀多寡同じならば、則ち賈相若く、屨(くつ)大小同じならば、則ち賈相若く、
通し番号 318 章内番号 18 章通し番号 50 識別番号 5_4_18
曰く、夫(それ)物の斉(ひとし)からざるは、物の情なり、或いは相(あい)倍蓰(し)し、或いは相什伯(はく)し、或いは相千万す、子比して之を同じくす、是れ天下を乱るなり、巨屨(く)小屨賈を同じくすれば、人豈之を爲(つく)らんや、許子の道に従えば、相(あい)率(もち)いて僞を爲すものなり、悪ぞ能く国家を治めん、
章番号 5 章通し番号 51
通し番号 319 章内番号 1 章通し番号 51 識別番号 5_5_1
墨者夷之(いし)、徐辟(じょへき)に因りて孟子に見(あ)うことを求む、孟子曰く、吾固(もと)より見(あ)うことを願う、今吾尙(なお)病む、病愈(い)ゆれば、我且(まさ)に往きて見(あ)わんとす、夷子来らざれ、
通し番号 320 章内番号 2 章通し番号 51 識別番号 5_5_2
他日又孟子に見(あ)うことを求む、孟子曰く、吾今則ち以て見(あ)うべし、直(ただ)さざれば則ち道見(あらわ)れず、我且(まさ)に之を直(ただ)さんとす、吾聞く、夷子墨者、墨の喪を治めるや、薄以て其道と爲すなり、夷子以て天下を易えんと思う、豈以て是(ぜ)に非ずと爲して貴ばざらんや、然り而して夷子其親を葬(ほうむ)ること厚し、則ち是れ賎しむ所を以て親に事えるなり、
通し番号 321 章内番号 3 章通し番号 51 識別番号 5_5_3
徐子以て夷子に告ぐ、夷子曰く、儒者の道は、古の人は赤子を保(やす)んずるが若し、此言何の謂(いい)ぞ、之(し)則ち以て愛は差等無しと爲す、施すこと親由(よ)り始まる、徐子以て孟子に告ぐ、孟子曰く、夫(かの)夷子信に人の其兄の子を親(あい)すること、其鄰(となり)の赤子を親(あい)する若く爲すと以爲(おも)うか、彼取ること有りて爾(しか)るなり、赤子匍匐(ほふく)し将に井に入らんとす、赤子の罪に非ざるなり、且(また)天の物を生ずるや、之をして本を一にせしむ、而るに夷子本を二にする故なり、
通し番号 322 章内番号 4 章通し番号 51 識別番号 5_5_4
(蓋)上世嘗て其親葬(ほうむ)らざる者有り、其の親死すれば、則ち挙げて之を壑(みぞ)に委(す)つ、他日之を過ぐ、狐狸(こり)之を食(くら)い、蠅(よう)蚋(ぜい)姑(こ)之を嘬(くら)う、其の顙(ひたい)泚(せい)すること有り、睨(げい)して視ず、夫泚や、人の爲に泚(せい)するに非ず、中心より面目に達す、(蓋)帰り虆梩(らり)を反(くつがえ)して之を掩(おお)う、之を掩(おお)うこと誠に是なら、則ち孝子仁人の其親を掩うこと、亦必ず道有り、
通し番号 323 章内番号 5 章通し番号 51 識別番号 5_5_5
徐子以て夷子に告ぐ、夷子憮然(ぶぜん)として間を爲して曰く、之(し)に命(おし)えり、
6 滕文公章句下 téng wén gōng zhāng jù xià
章番号 1 章通し番号 52
通し番号 324 章内番号 1 章通し番号 52 識別番号 6_1_1
陳代(ちんだい)曰く、諸侯に見(まみ)えざるは、宜(ほとんど)小なるが若き然(なり)、今一たび之に見(まみ)えれば、大は則ち以て王たり、小は則ち以て霸たり、且(また)志に曰く、尺を枉(ま)げて尋(じん)を直(なお)くす、宜しく爲すべきが若きなり、
通し番号 325 章内番号 2 章通し番号 52 識別番号 6_1_2
孟子曰く、昔齊の景公田(かり)す、虞人(ぐじん)を招(まね)くに旌(せい)を以てす、至らず、將に之を殺さんとす、志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず、勇士は其元を喪(うしな)うを忘れず、孔子奚(なに)をか取る、其招に非ずして往かざるを取るなり、如(も)し其招を待たずして往けば、何ぞや、
通し番号 326 章内番号 3 章通し番号 52 識別番号 6_1_3
且(また)夫(それ)尺を枉(ま)げて尋を直(なお)くするは、利以て言うなり、如(も)し利以てすれば、則ち尋を枉(ま)げ尺を直(なお)くして利あらば、亦爲すべきか、
通し番号 327 章内番号 4 章通し番号 52 識別番号 6_1_4
昔者(むかし)趙簡子は王良をして嬖奚(へいけい)と乗らしむ、終日にして一禽を獲(え)ず、嬖奚反命して曰く、天下の賎工なり、或ひと以て王良に告ぐ、良曰く、請う之を復(また)せん、彊(し)いて後可(き)く、一朝にして十禽を獲る、嬖奚(へいけい)反命して曰く、天下の良工なり、簡子曰く、我女(なんじ)と乗ることを掌(つかさ)どらしむ、王良に謂う、良可(き)かず、曰く、吾之が爲に範して我馳駆(ちく)すれば、終日にして一を獲ず、之が爲に詭遇(きぐう)すれば、一朝にして十を獲る、詩に云う、其馳を失わず、矢を舍(はな)ち破るが如し、我小人と乗ることに貫(な)れず、請う辞せん、
通し番号 328 章内番号 5 章通し番号 52 識別番号 6_1_5
御者且(すら)射る者と比するを羞(は)ず、比(おもね)て禽獣を得ること、丘陵の若きと雖も爲さざるなり、道を枉げて彼に従うが如きは、何ぞや、且(また)子過(あやま)てり、己を枉げる者は未だ能く人を直くすること有らざるなり、
章番号 2 章通し番号 53
通し番号 329 章内番号 1 章通し番号 53 識別番号 6_2_1
景春曰く、公孫衍(えん)、張儀豈誠の大丈夫ならずや、一たび怒りて諸侯懼(おそ)る、安居して天下熄(や)む、
通し番号 330 章内番号 2 章通し番号 53 識別番号 6_2_2
孟子曰く、是焉ぞ大丈夫と爲(た)るを得んや、子未だ礼を学ばざるか、丈夫の冠するや、父之を命ず、女子の嫁するや、母之に命ず、往きて之を門に送る、之を戒(いまし)めて曰く、往きて女(なんじ)の家に之(ゆ)き、必ず敬(うやま)い必ず戒(つつし)み、夫子に違うこと無かれ、順以て正と爲すものは、妾婦の道なり、
通し番号 331 章内番号 3 章通し番号 53 識別番号 6_2_3
天下の広居に居り、天下の正位に立ち、天下の大道を行う、志を得れば民と之に由る、志を得ざれば独り其道を行う、富貴淫(うご)かすこと能わず、貧賤移すこと能わず、威武屈すること能わず、此を之大丈夫と謂う、
章番号 3 章通し番号 54
通し番号 332 章内番号 1 章通し番号 54 識別番号 6_3_1
周霄(しょう)問いて曰く、古の君子仕えるか、孟子曰く、仕える、伝に曰く、孔子三月君無ければ、則ち皇皇如たり、疆(きょう)を出ずれば必ず質(し)を載(の)す、公明儀曰く、古の人三月君無ければ則ち弔す、
通し番号 333 章内番号 2 章通し番号 54 識別番号 6_3_2
三月君無ければ則ち弔す、以(はなは)だ急ならざるか、
通し番号 334 章内番号 3 章通し番号 54 識別番号 6_3_3
曰く、士の位を失うや、猶諸侯の国家を失うがごときなり、礼に曰く、諸侯耕助(こうじょ)し、以て粢盛(しせい)に供す、夫人蚕繅(さんそう)し、以て衣服を爲(つく)る、犧牲成らず、粢盛潔(きよ)からず、衣服備わざれば、敢て以て祭らず、惟(これ)士田無ければ、則ち亦祭らず、牲殺器皿(べい)衣服備らざれば、敢て以て祭らず、則ち敢て以て宴せず、亦弔するに足らざるか、
通し番号 335 章内番号 4 章通し番号 54 識別番号 6_3_4
疆(きょう)を出ずれば必ず質(し)を載(の)すは、何ぞや、
通し番号 336 章内番号 5 章通し番号 54 識別番号 6_3_5
曰く、士の仕えるや、猶農夫の耕すがごときなり、農夫豈疆を出る爲に其耒耜(らいし)を舍(す)てんや、
通し番号 337 章内番号 6 章通し番号 54 識別番号 6_3_6
曰く、晋国亦仕国なり、未だ嘗て仕えるこ此の如く其急なるを聞かず、仕えること此の如く其急なり、君子の仕え難きは、何ぞや、曰く、丈夫生まれて之が爲に室有るを願う、女子生まれて之が爲に家有るを願う、父母の心、人皆之有り、父母の命、媒妁の言を待たずして、穴隙(けつげき)を鑽(き)り相窺(うかが)う、牆(かき)を踰(こ)え相従う、則ち父母国人皆之を賎(いやし)む、古の人未だ嘗て仕えることを欲せずんばあらざるなり、又其道に由らざるを悪(にく)む、其道に由らずして往く者は、穴隙を鑽(き)ると之類なり、
章番号 4 章通し番号 55
通し番号 338 章内番号 1 章通し番号 55 識別番号 6_4_1
彭更(ほうこう)問いて曰く、後車数十乗、従者数百人、以て伝(うつ)りて諸侯に食す、以(はなは)だ泰(おご)らずや、孟子曰く、其道に非ざれば、則ち一簞(たん)の食(し)人に受くべからず、如(も)し其道ならば、則ち舜が堯の天下を受くるは、以て泰(おご)ると爲さず、子以て泰ると爲すか、
通し番号 339 章内番号 2 章通し番号 55 識別番号 6_4_2
曰く、否、士事えること無くて食するは、不可なり、
通し番号 340 章内番号 3 章通し番号 55 識別番号 6_4_3
曰、子が功を通じ事を易え、羡(あま)りを以て不足を補わざれば、則ち農余粟(ぞく)有り、女余布有り、子が如(も)し之を通ずれば、則ち梓匠(ししょう)輪輿(りんよ)皆食を子に得る、此に人有り、入れば則ち孝、出ずれば則ち悌(てい)、先王の道を守り、以て後の学ぶ者を待つ、而るに食を子に得ざれば、子何ぞ梓匠輪輿を尊(たっと)びて、仁義を爲す者を軽んずるや、
通し番号 341 章内番号 4 章通し番号 55 識別番号 6_4_4
曰く、梓匠輪輿は、其志将に以て食を求めんとするなり、君子の道を爲すや、其志は亦将に以て食を求めんとするか、曰く、子何ぞ其志を以て爲すや、其(そ)の子(し)に功有れば、食(やしな)うべくして之を食(やしな)う、且(また)子志を食(やしな)うか、功を食(やしな)うか、曰く、志を食(やしな)う、
通し番号 342 章内番号 5 章通し番号 55 識別番号 6_4_5
曰く、人此に有り、瓦するに毀(やぶ)り墁(まん)するに画す、其志将に以て食を求めんとするなり、則ち子之を食(やしな)うか、曰く、否、曰く、然らば則ち子は志を食(やしな)うに非ざるなり、功を食(やしな)うなり、
章番号 5 章通し番号 56
通し番号 343 章内番号 1 章通し番号 56 識別番号 6_5_1
万章問いて曰く、宋は小国なり、今将に王政を行わんとす、斉楚悪みて之を伐てば、則ち之を如何(いかん)、
通し番号 344 章内番号 2 章通し番号 56 識別番号 6_5_2
孟子曰く、湯は亳(はく)に居り、葛(かつ)と鄰爲(た)り、葛伯は放(ほしいまま)にして祀(まつ)らず、湯は人をして之に問わしめて曰く、何爲(なんす)れぞ祀らざる、曰く、以て犧牲に供する無きなり、湯之に牛羊を遺(おく)らしむ、葛伯之を食べる、又以て祀(まつ)らず、湯又人をして之に問わしめて曰く、何爲(なんす)れぞ祀らざる、曰く、以て粢盛(しせい)に供する無きなり、湯亳の衆をして往きて之が爲に耕やしめ、老弱をして食を饋(おく)らしむ、葛伯其民を率い、其酒食黍稲(しょとう)有る者を要(おびやか)し之を奪う、授(あた)えざる者は之を殺す、童子(どうし)有り、黍(しょ)肉以て餉(おく)る、殺して之を奪う、書に曰く、葛伯は餉(しょう)を仇(かたき)とする、此を之謂うなり、
通し番号 345 章内番号 3 章通し番号 56 識別番号 6_5_3
其(その)是(この)童子を殺す爲にして之を征す、四海の内皆曰く、天下を富とするに非ざるなり、匹夫匹婦の爲に讎(あだ)に復(むく)いるなり、
通し番号 346 章内番号 4 章通し番号 56 識別番号 6_5_4
湯始めて征すること、葛自(よ)り載(はじ)む、十一征して天下に敵無し、東面して征すれば、西夷怨む、南面して征すれば、北狄(てき)怨む、曰く、奚爲(なんす)れぞ我を後にする、民の之を望むこと、大旱(たいかん)の雨を望むが若きなり、市に帰(ゆ)く者止(と)まらず、芸(くさぎ)る者変(うご)かず、其君を誅して其民を弔(あわ)れむ、時雨の降るが如し、民大いに悦ぶ、書に曰く、我が后(きみ)を徯(ま)つ、后(きみ)来たらば其罰無からん、
通し番号 347 章内番号 5 章通し番号 56 識別番号 6_5_5
臣と爲らざる攸(ところ)有り、東征し厥(その)士女を綏(やす)んず、厥(その)玄黄(げんこう)を匪(はこ)にし、我が周王に紹(つか)え休(よ)きを見る、惟(これ)大邑周に臣附す、其君子玄黄を匪(はこ)に実(み)たし、以て其君子を迎う、其小人食(し)を簞(たん)し漿(しょう)を壺(こ)して、以て其小人を迎う、民を水火の中に救い、其残(そこな)うものを取るのみ、
通し番号 348 章内番号 6 章通し番号 56 識別番号 6_5_6
太誓(たいせい)に曰く、我(わが)武惟(これ)揚(あが)り、之が疆(さかい)を侵す、則ち残を取り、殺伐し用(もっ)て張る、湯于(より)光有り、
通し番号 349 章内番号 7 章通し番号 56 識別番号 6_5_7
王政を行わず(云爾)、苟(もし)王政を行わば、四海の内皆首(あたま)を挙げて之を望み、以て君と爲さんと欲す、斉、楚大と雖も、何ぞ畏れん、
章番号 6 章通し番号 57
通し番号 350 章内番号 1 章通し番号 57 識別番号 6_6_1
孟子は戴不勝(たいふしょう)に謂いて曰く、子は子の王の善を欲するか、我明かに子に告げん、此に楚の大夫有り、其子の斉語を欲するや、則ち斉人をして諸に傅(おし)えしむか、楚人をして諸に傅(おし)えしむか、曰く、斉人をして之に傅(おし)えしむ、曰く、一斉人之に傅(おし)う、衆(おお)くの楚人之に咻(かまび)すし、日に撻(むちう)ちて其斉を求めると雖も、得べからず、引きて之を荘嶽(がく)の間(あいだ)に置くこと数年、日に撻(むちう)ちて其楚を求めると雖も、亦得べからず、
通し番号 351 章内番号 2 章通し番号 57 識別番号 6_6_2
子は薛居州(せつきょしゅう)を善士と謂うなり、之をして王の所に居らしむ、王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州なるや、王誰と与(とも)に不善を爲さん、王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州に非ざるや、王誰と与(とも)に善を爲さん、一の薛居州、独り宋王を如何(いかん)せん、
章番号 7 章通し番号 58
通し番号 352 章内番号 1 章通し番号 58 識別番号 6_7_1
公孫丑問いて曰く、諸侯に見(まみ)えざるは何の義ぞ、孟子曰く、古は臣爲(た)らざれば見(まみ)えず、
通し番号 353 章内番号 2 章通し番号 58 識別番号 6_7_2
段干木は垣を踰えて之を辟(さ)く、泄柳(せつりゅう)は門を閉じて内(い)れず、是れ皆已甚(はなは)だし、迫らば斯(すなわ)ち以て見(まみ)えるべし、
通し番号 354 章内番号 3 章通し番号 58 識別番号 6_7_3
陽貨孔子に見(あ)わんと欲して、礼無きことを悪(にく)む、大夫士に賜(たま)うこと有り、其家に受くることを得ざれば、則ち往きて其門に拝す、陽貨孔子の亡(な)きを矙(うかが)いて孔子に蒸豚(むしぶた)を饋(おく)る、孔子亦其亡(な)きを矙(うかが)いて、往きて之を拝す、是時に当り、陽貨先なり、豈見(あ)わざるを得んや、
通し番号 355 章内番号 4 章通し番号 58 識別番号 6_7_4
曽子曰く、肩を脅(すぼ)め諂(へつら)い笑うは、夏畦(けい)于(より)病(つか)れる、子路曰く、未だ同じからずして言う、其色を観るに赧赧然(たんたんぜん)たり、由(ゆう)の知る所に非ざるなり、是に由りて之を観れば、則ち君子の養う所、知るべきのみ
章番号 8 章通し番号 59
通し番号 356 章内番号 1 章通し番号 59 識別番号 6_8_1
戴盈之(たいえいし)曰く、什一にして、関市の征を去るは、今茲(きんじ)未だ能わず、請う、之を軽くし、以て来年を待ち、然る後已(や)む、何如(いかん)、
通し番号 357 章内番号 2 章通し番号 59 識別番号 6_8_2
孟子曰く、今、人日に其鄰の雞(けい)を攘(ぬす)む者有り、或ひと之に告げて曰く、是れ君子の道に非ず、曰く、請う、之を損し、月に一雞を攘み、以て来年を待ち、然る後已(や)めん、
通し番号 358 章内番号 3 章通し番号 59 識別番号 6_8_3
如(も)し其義に非ざるを知れば、斯(すなわ)ち速(すみやか)に已(や)む、何ぞ来年を待たん、
章番号 9 章通し番号 60
通し番号 359 章内番号 1 章通し番号 60 識別番号 6_9_1
公都子曰く、外人皆夫子(ふうし)弁(べん)を好むと称(い)う、敢えて問う何ぞや、孟子曰く、予(われ)豈弁を好まんや、予已(や)むを得ざるなり、天下の生久し、一たびは治まり一たびは乱る、
通し番号 360 章内番号 2 章通し番号 60 識別番号 6_9_2
堯の時に当り、水逆行し、中国に氾濫す、蛇(だ)龍之に居る、民定まる所無し、下は巣を爲(つく)り、上は営窟(えいくつ)を爲(つく)る、書に曰く、洚水(こうすい)余(われ)を警(いまし)む、洚水は、洪水なり、
通し番号 361 章内番号 3 章通し番号 60 識別番号 6_9_3
禹をして之を治めしむ、禹は地を掘りて之を海に注ぐ、蛇龍を駆りて之を菹(そ)に放つ、水地中に由(よ)り行く、江、淮(わい)、河(か)、漢是れなり、険阻既に遠ざかる、鳥獣の人を害するもの消える、然る後人平土を得て之に居る、
通し番号 362 章内番号 4 章通し番号 60 識別番号 6_9_4
堯舜既に没す、聖人の道衰える、暴君代(かわるがわる)作(おこ)る、宮室を壊し以て汙池(おち)と爲す、民安息する所無し、田を棄て以て園囿(えんゆう)と爲す、民をして衣食を得ざらしむ、邪説暴行又作(おこ)る、園囿汙池沛沢多し、而して禽獸至る、紂の身に及び、天下又大いに乱る、
通し番号 363 章内番号 5 章通し番号 60 識別番号 6_9_5
周公武王を相(たす)け紂を誅(ちゅう)す、奄(えん)を伐つ、三年にして其君を討つ、飛廉(ひれん)を海隅に駆りて之を戮(りく)す、国を滅すもの五十、虎豹犀象を駆りて之を遠ざく、天下大いに悦ぶ、書に曰く、丕(おお)いに顯(あきら)かなるかな文王の謨(はかりごと)、丕(おお)いに承(う)くるかな武王の烈、我が後人を佑(たす)け啓(ひら)き、咸(みな)正を以てし欠くること無し、
通し番号 364 章内番号 6 章通し番号 60 識別番号 6_9_6
世衰え道微にして、邪說暴行有(また)作(おこ)る、臣其君を弑(しい)する者之有り、子其父を弑する者之有り、
通し番号 365 章内番号 7 章通し番号 60 識別番号 6_9_7
孔子懼れて春秋を作る、春秋は天子の事なり、是故に孔子曰く、我を知る者は其れ惟(ただ)春秋か、我を罪(つみ)する者は其れ惟春秋か、
通し番号 366 章内番号 8 章通し番号 60 識別番号 6_9_8
聖王作(おこ)らず、諸侯放恣(ほうし)、処士(しょし)横議す、楊朱、墨翟(ぼくてき)の言天下に盈(み)つ、天下の言、楊に帰せざれば則ち墨に帰す、楊氏は我が爲にす、是れ君無きなり、墨氏は兼愛す、是れ父無きなり、父無く君無し、是れ禽獣なり、公明儀曰く、庖に肥肉有り、廏(きゅう)に肥馬有り、民に飢色有り、野に餓莩(がひょう)有り、此は獣を率いて人を食べるなり、楊墨の道息(や)まず、孔子の道著(あきら)かならず、是れ邪説民を誣(あざむ)き、仁義を充塞するなり、仁義充塞すれば、則ち獣を率い人を食べる、人将に相食べんとす、
通し番号 367 章内番号 9 章通し番号 60 識別番号 6_9_9
吾此が爲に懼れ、先聖の道を閑(まも)り、楊墨を距(ふせ)ぎ、淫辞を放つ、邪説は作(おこ)ることを得ず、其心に作(お)これば、其事に害あり、其事に作(おこ)れば、其政に害あり、聖人復(また)起これば、吾言を易(か)えず、
通し番号 368 章内番号 10 章通し番号 60 識別番号 6_9_10
昔者(むかし)禹洪水を抑(おさ)えて、天下平かなり、周公夷狄を兼(あわ)せ、猛獣を駆りて、百姓寧(やすら)かなり、孔子春秋を成(な)して、乱臣賊子懼る、
通し番号 369 章内番号 11 章通し番号 60 識別番号 6_9_11
詩に云う、戎狄(じゅうてき)是れ膺(う)ち、荊(けい)舒(じょ)是れ懲(こら)す、則ち我に敢て承(あた)ること莫し、父無し、君無しは、是れ周公膺(う)つ所なり、
通し番号 370 章内番号 12 章通し番号 60 識別番号 6_9_12
我亦人の心を正し、邪説を息(や)め、詖行(ひこう)を距(ふせ)ぎ、淫辞を放(はな)ち、以て三聖者を承(つ)がんと欲す、豈弁を好まんや、予已(や)むを得ざるなり、
通し番号 371 章内番号 13 章通し番号 60 識別番号 6_9_13
能く言いて楊墨を距(ふせ)ぐ者は、聖人の徒なり、
章番号 10 章通し番号 61
通し番号 372 章内番号 1 章通し番号 61 識別番号 6_10_1
匡章(きょうしょう)曰く、陳仲子は豈誠の廉士ならずや、於陵(おりょう)に居り、三日食せず、耳聞くこと無く、目見ること無きなり、井上に李(り)有り、螬(そう)実を食うもの半(なかば)に過ぐ、匍匐(ほふく)して往き将(と)りて之を食べる、三たび咽(の)みて、然る後耳聞くこと有り、目見ること有り、
通し番号 373 章内番号 2 章通し番号 61 識別番号 6_10_2
孟子曰く、斉国の士に於て、吾必ず仲子以て巨擘(きょはく)と爲す、然りと雖も、仲子悪(いずく)んぞ能く廉ならん、仲子の操を充(み)たせば、則ち蚓(いん)にして後可なるものなり、
通し番号 374 章内番号 3 章通し番号 61 識別番号 6_10_3
夫(それ)蚓は、上は槁壤(こうじょう)を食べ、下は黄泉(こうせん)を飮む、仲子居る所の室、伯夷の築(きず)く所か、抑(ある)いは亦盜跖(とうせき)の築く所か、食べる所の粟、伯夷の樹(う)える所か、抑(あるい)は亦盜跖の樹える所か、是れ未だ知るべからざるなり、
通し番号 375 章内番号 4 章通し番号 61 識別番号 6_10_4
曰、是れ何ぞ傷(そこな)わんや、彼は身(みずか)ら屨(くつ)を織(お)り、妻は纑(ろ)を辟(へき)して、以て之に易(か)えるなり、
通し番号 376 章内番号 5 章通し番号 61 識別番号 6_10_5
曰く、仲子斉の世家なり、兄戴(たい)、蓋(こう)の禄万鍾なり、兄の禄以て不義の禄と爲して食さざるなり、兄の室以て不義の室と爲して居らざるなり、兄を辟(さ)け母を離れ、於陵に処(お)る、他日帰れば、則ち其兄に生鵝(が)を饋(おく)る者有り、己(おのれ)頻顣(ひんしゅく)して曰く、悪ぞ是(この)鶃鶃(ぎつぎつ)なるものを用いることを爲さんや、他日其母是鵝を殺すなり、之に与えれば之を食す、其兄外自(よ)り至りて曰く、是れ鶃鶃(ぎつぎつ)の肉なり、出でて之を哇(は)く、
通し番号 377 章内番号 6 章通し番号 61 識別番号 6_10_6
母以てすれば則ち食せず、妻以てすれば則ち之を食す、兄の室以てすれば則ち居らず、於陵以てすれば則ち之に居る、是れ尚(なお)能く其類を充(み)たすと爲すか、仲子の若き者は、蚓にして後其操を充(み)たす者なり、
7 離婁章句上 lí lóu zhāng jù shàng
章番号 1 章通し番号 62
通し番号 378 章内番号 1 章通し番号 62 識別番号 7_1_1
孟子曰く、離婁(りろう)の明、公輸子の巧、規矩(きく)以てせざれば、方員(えん)を成すこと能わず、師曠(しこう)の聡(そう)、六律以てせざれば、五音(ごいん)を正すこと能わず、堯舜の道は、仁政以てせざれば、天下を平治すること能わず
通し番号 379 章内番号 2 章通し番号 62 識別番号 7_1_2
今仁心仁聞有り、而るに民其沢を被(こうむ)らず、後世に於て法とすべからざるは、先王の道を行わざるなり、
通し番号 380 章内番号 3 章通し番号 62 識別番号 7_1_3
故に曰く、徒善(とぜん)は以て政を爲すに足らず、徒法は以て自ずから行うこと能わず、
通し番号 381 章内番号 4 章通し番号 62 識別番号 7_1_4
詩に云う、愆(あやま)らず忘れず、旧章に率(したが)い由(よ)る、先王の法に遵(したが)いて過(あやま)つ者は、未だ之有らざるなり、
通し番号 382 章内番号 5 章通し番号 62 識別番号 7_1_5
聖人既に目力を竭(つく)し、之に継(つ)ぐに規矩準縄(じょう)を以て、以て方員(えん)平直を爲(つく)れば、勝(あ)げて用うべからざるなり、既に耳力を竭(つく)し、之に継(つ)ぐに六律を以て、五音を正せば、勝(あ)げて用うべからざるなり、既に心思を竭(つく)し、之に継(つ)ぐに人に忍(しの)びざるの政を以てす、而して仁天下を覆(おお)う、
通し番号 383 章内番号 6 章通し番号 62 識別番号 7_1_6
故に曰く、高きを爲(つく)るは必ず丘陵に因る、下(ひく)きを爲(つく)るは必ず川沢に因る、政を爲すに先王の道に因らざれば、智と謂うべけんや(乎)、
通し番号 384 章内番号 7 章通し番号 62 識別番号 7_1_7
是を以て惟(ただ)仁者宜(よろ)しく高位に在るべし、不仁にして高位に在るは、是れ其悪を衆に播(ま)くなり、
通し番号 385 章内番号 8 章通し番号 62 識別番号 7_1_8
上は道揆(き)無きなり、下は法守無きなり、朝は道を信ぜず、工は度を信ぜず、君子は義を犯し、小人は刑を犯して、国の存する所は幸いなり、
通し番号 386 章内番号 9 章通し番号 62 識別番号 7_1_9
故に曰く、城郭(じょうかく)完(まった)からず、兵甲多からざるは、国の災(わざわい)に非ざるなり、田野辟(ひら)けず、貨財聚(あつ)まらざるは、国の害に非ざるなり、上は礼が無く、下は学ぶことが無ければ、賊民興り、喪(ほろ)ぶこと日無し、
通し番号 387 章内番号 10 章通し番号 62 識別番号 7_1_10
詩に曰う、天の方(まさ)に蹶(くつがえ)らんとす、然(しか)く泄泄(えいえい)とすること無かれ、
通し番号 388 章内番号 11 章通し番号 62 識別番号 7_1_11
泄泄(えいえい)、猶沓沓(とうとう)のごときなり、
通し番号 389 章内番号 12 章通し番号 62 識別番号 7_1_12
君に事(つか)え義無し、進退礼無し、言えば則ち先王の道を非(そし)る者は、猶沓沓(とうとう)のごときなり、
通し番号 390 章内番号 13 章通し番号 62 識別番号 7_1_13
故に曰く、難を君に責めるは、之を恭と謂う、善を陳(の)べ邪を閉ずるは、之を敬と謂う、吾君能わずというは、之を賊と謂う、
章番号 2 章通し番号 63
通し番号 391 章内番号 1 章通し番号 63 識別番号 7_2_1
孟子曰く、規矩は、方員(えん)の至りなり、聖人は、人倫の至りなり、
通し番号 392 章内番号 2 章通し番号 63 識別番号 7_2_2
君爲(た)るを欲せば君の道を尽す、臣爲(た)るを欲せば臣の道を尽す、二なるものは皆堯舜に法(のっと)るのみ、舜の以て堯に事(つか)える所を以て君に事(つか)えざるは、其君を敬せざる者なり、堯の以て民を治める所を以て民を治めざるは、其民を賊(そこな)う者なり、
通し番号 393 章内番号 3 章通し番号 63 識別番号 7_2_3
孔子曰く、道は二、仁と不仁のみ、
通し番号 394 章内番号 4 章通し番号 63 識別番号 7_2_4
其民を暴(そこな)うこと甚しければ、則ち身弑(しい)せられ国亡ぶ、甚しからざれば、則ち身危うく国削(けず)らる、之を名づけて幽(ゆう)厲(れい)と曰う、孝子慈孫と雖も、百世改めること能わざるなり、
通し番号 395 章内番号 5 章通し番号 63 識別番号 7_2_5
詩に云う、殷鑒(かん)遠からず、夏后の世に在り、此を之謂うなり、
章番号 3 章通し番号 64
通し番号 396 章内番号 1 章通し番号 64 識別番号 7_3_1
孟子曰く、三代の天下を得るや、仁を以てす、其天下を失うや、不仁を以てす、
通し番号 397 章内番号 2 章通し番号 64 識別番号 7_3_2
国の廃興存亡する所以のもの亦然り、
通し番号 398 章内番号 3 章通し番号 64 識別番号 7_3_3
天子不仁なれば、四海を保たず、諸侯不仁なれば、社稷を保たず、卿大夫不仁なれば、宗廟を保たず、士庶人不仁なれば、四体を保たず、
通し番号 399 章内番号 4 章通し番号 64 識別番号 7_3_4
今死亡を悪(にく)みて不仁を楽しむ、是れ猶醉を悪(にく)みて酒を強いるがごとし、
章番号 4 章通し番号 65
通し番号 400 章内番号 1 章通し番号 65 識別番号 7_4_1
孟子曰く、人を愛して親(あい)さざれば、其仁に反(かえ)る、人を治めて治まらざれば、其智に反る、人を礼して答えざれば、其敬に反る、
通し番号 401 章内番号 2 章通し番号 65 識別番号 7_4_2
行いて得ざるもの有れば、皆諸(これ)を己に反り求む、其身正しくして天下之に帰す、
通し番号 402 章内番号 3 章通し番号 65 識別番号 7_4_3
詩に云う、永(なが)く言(おも)い命に配(あ)う、自ら多福を求む、
章番号 5 章通し番号 66
通し番号 403 章内番号 1 章通し番号 66 識別番号 7_5_1
孟子曰く、人恆(つね)の言有り、皆曰う、天下国家、天下の本は国に在り、国の本は家に在り、家の本は身に在り、
章番号 6 章通し番号 67
通し番号 404 章内番号 1 章通し番号 67 識別番号 7_6_1
孟子曰く、政を爲すは難からず、罪を巨室に得ず、巨室の慕(むか)う所、一国之に慕(むか)う、一国の慕(むか)う所、天下之に慕(むか)う、故に沛然(はいぜん)として徳教四海に溢(あふ)る、
章番号 7 章通し番号 68
通し番号 405 章内番号 1 章通し番号 68 識別番号 7_7_1
孟子曰く、天下道れば、小徳は大徳に役(えき)し、小賢は大賢に役する、天下道無ければ、小は大に役し、弱は強に役す、斯二なるものは天なり、天に順う者は存し、天に逆らう者は亡ぶ、
通し番号 406 章内番号 2 章通し番号 68 識別番号 7_7_2
斉景公曰く、既に令すること能わず、又命を受けざるは、是れ物を絶つなり、涕(なみだ)出て呉に女(めあわ)す、
通し番号 407 章内番号 3 章通し番号 68 識別番号 7_7_3
今や小国は大国を師とす、而して命を受くるを恥ず、是れ猶弟子にして先師に命を受くるを恥ずるがごときなり、
通し番号 408 章内番号 4 章通し番号 68 識別番号 7_7_4
如し之を恥じれば、文王を師とするに若(し)くは莫し、文王を師とすれば、大国は五年、小国は七年にして、必ず政を天下に爲す、
通し番号 409 章内番号 5 章通し番号 68 識別番号 7_7_5
詩に云う、商の孫子、其麗(かず)億のみならず、上帝既に命ず、侯(これ)周に服す、侯(これ)周に服すは、天命常靡(な)し、殷士膚(ふ)で敏なるは、京に祼(かん)して将(たす)く、孔子曰く、仁には衆を爲すべからざるなり、夫(それ)国君仁を好めば、天下敵無し、
通し番号 410 章内番号 6 章通し番号 68 識別番号 7_7_6
今や天下に敵無きを欲して、仁以てせず、是れ猶熱きを執(と)る、而るに以て濯(あら)わざるがごときなり、詩に云う、誰か能く熱きを執るに、逝(ここ)に以て濯(あら)わざる、
章番号 8 章通し番号 69
通し番号 411 章内番号 1 章通し番号 69 識別番号 7_8_1
孟子曰く、不仁者、与(とも)に言うべきや、其危(あや)うきに安んじて其菑(わざわ)いを利とす、其の以て亡ぶ所のものを楽しむ、不仁にして与(とも)言うべければ、則ち何ぞ国を亡ぼし家を敗ること之有らん、
通し番号 412 章内番号 2 章通し番号 69 識別番号 7_8_2
孺子(じゅし)有り、歌いて曰く、滄浪(そうろう)の水清(す)めば(兮)、以て我纓(えい)を濯(あら)うべし、滄浪の水濁(にご)らば、以て我足を濯(あら)うべし、
通し番号 413 章内番号 3 章通し番号 69 識別番号 7_8_3
孔子曰く、小子之を聴け、清(す)めば斯(すなわ)ち纓(えい)を濯(あら)う、濁れば斯(すなわ)ち足を濯う、自ら之を取るなり、
通し番号 414 章内番号 4 章通し番号 69 識別番号 7_8_4
夫(それ)人必ず自ら侮る、然る後人之を侮る、家必ず自ら毀(やぶ)る、而して後人之を毀(やぶ)る、国必ず自ら伐(う)つ、而して後人之を伐(う)つ、
通し番号 415 章内番号 5 章通し番号 69 識別番号 7_8_5
太甲に曰く、天の作(な)せる孼(わざわい)は猶(なお)違(さ)くべし、自ら作(な)せる孼(わざわい)は活(い)くべからず、此を之謂(い)うなり、
章番号 9 章通し番号 70
通し番号 416 章内番号 1 章通し番号 70 識別番号 7_9_1
孟子曰く、桀紂の天下を失なうや、其民を失なうなり、其民を失うは、其心を失なうなり、天下を得るに道有り、其民を得れば、斯(すなわ)ち天下を得る、其民を得るに道有り、其心を得れば、斯ち民を得る、其心を得るに道有り、欲する所は之を与え之を聚(あつ)む、悪(にく)む所は施すこと勿(な)き爾(のみ)なり、
通し番号 417 章内番号 2 章通し番号 70 識別番号 7_9_2
民の仁に帰するや、猶水の下に就(つ)き、獣の壙(こう)を走るがごときなり、
通し番号 418 章内番号 3 章通し番号 70 識別番号 7_9_3
故に淵の爲に魚を敺(か)るものは、獺(かわうそ)なり、叢の爲に爵(すずめ)を敺るものは、鸇(はやぶさ)なり、湯武の爲に民を敺(か)るものは、桀と紂なり、
通し番号 419 章内番号 4 章通し番号 70 識別番号 7_9_4
今天下の君、仁を好む者有れば、則ち諸侯皆之が爲に敺(か)る、王たること無からんと欲すと雖も、得べからざるのみ、
通し番号 420 章内番号 5 章通し番号 70 識別番号 7_9_5
今の王たるを欲する者は、猶七年の病に三年の艾(もぐさ)を求めるがごときなり、苟(もし)畜えざるを爲せば、終身得ず、苟(も)し仁に志さざれば、終身憂辱し、以て死亡に陥る、
通し番号 421 章内番号 6 章通し番号 70 識別番号 7_9_6
詩に云う、其何ぞ能く淑(よ)からん、載(すなわ)ち胥(あい)及(とも)に溺る、此を之謂うなり、
章番号 10 章通し番号 71
通し番号 422 章内番号 1 章通し番号 71 識別番号 7_10_1
孟子曰く、自ら暴(そこな)う者、与(とも)に言うこと有るべからざるなり、自ら棄てる者、与(とも)に爲すこと有るべからざるなり、言は礼義を非(そし)る、之を自ら暴(そこな)うと謂うなり、吾が身は仁に居り義に由ること能わず、之を自ら棄てると謂うなり、
通し番号 423 章内番号 2 章通し番号 71 識別番号 7_10_2
仁は、人の安宅なり、義は、人の正路なり、
通し番号 424 章内番号 3 章通し番号 71 識別番号 7_10_3
安宅を曠(むな)しくして居らず、正路を舍(す)てて由らず、哀(かな)しいかな、
章番号 11 章通し番号 72
通し番号 425 章内番号 1 章通し番号 72 識別番号 7_11_1
孟子曰く、道は爾(ちか)きに在り、而るに諸を遠きに求む、事は易(やす)きに在り、而るに諸を難きに求む、人人其親を親(あい)し、其長を長(すす)む、而して天下平かなり、
章番号 12 章通し番号 73
通し番号 426 章内番号 1 章通し番号 73 識別番号 7_12_1
孟子曰く、下位に居りて上に獲(え)られざれば、民得て治むべからざるなり、上に獲(え)られるに道有り、友に信ぜられざれば、上に獲られず、友に信ぜられるに道有り、親に事(つか)えて悦(よろこ)ばざれば、友に信ぜられず、親を悦(よろこ)すに道有り、身に反り誠ならざれば、親に悦(よろこ)ばれず、身に誠なるに道有り、善に明らかならざれば、其身に誠ならず、
通し番号 427 章内番号 2 章通し番号 73 識別番号 7_12_2
是故に誠は、天の道なり、誠を思うは、人の道なり、
通し番号 428 章内番号 3 章通し番号 73 識別番号 7_12_3
至誠にして動かざるものは、未だ之有らざるなり、誠ならずして、未だ能く動くもの有らざるなり、
章番号 13 章通し番号 74
通し番号 429 章内番号 1 章通し番号 74 識別番号 7_13_1
孟子曰く、伯夷は紂を辟(さ)け、北海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞き、曰く盍(なん)ぞ帰らざる(来)、吾聞く、西伯善く老を養う者と、太公紂を辟(さ)け、東海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞き、曰く盍(なん)ぞ帰らざる、吾聞く、西伯善く老を養(おさ)める者と、
通し番号 430 章内番号 2 章通し番号 74 識別番号 7_13_2
二老は、天下の大老なり、而して之に帰す、是れ天下の父之に帰するなり、天下の父之に帰す、其子焉(いず)くに往かん、
通し番号 431 章内番号 3 章通し番号 74 識別番号 7_13_3
諸侯文王の政を行うもの有れば、七年の内、必ず政を天下に爲す、
章番号 14 章通し番号 75
通し番号 432 章内番号 1 章通し番号 75 識別番号 7_14_1
孟子曰く、求や季氏の宰(さい)と爲る、能く其徳を改めること無し、而して粟(ぞく)を賦(ふ)すること他日に倍す、孔子曰く、求は我徒に非ざるなり、小子鼓を鳴らして之を攻めて可なり、
通し番号 433 章内番号 2 章通し番号 75 識別番号 7_14_2
此に由り之を観れば、君仁政を行わずして、之を富ますは、皆孔子に棄てられる者なり、況んや之が爲に戦を強(し)い、地を争い以て戦い、人を殺し野に盈(み)ち、城を争い以て戦い、人を殺し城に盈(み)つるに於てをや、此は謂う所の土地を率いて人肉を食べる、罪は死に容(い)らず、
通し番号 434 章内番号 3 章通し番号 75 識別番号 7_14_3
故に善く戦う者は上刑に服す、諸侯を連(つら)ねる者之に次ぐ、草萊(そうらい)を辟(ひら)き、土地を任ずる者は之に次ぐ、
章番号 15 章通し番号 76
通し番号 435 章内番号 1 章通し番号 76 識別番号 7_15_1
孟子曰く、人に存するものは、眸子(ぼうし)於(より)良きは莫し、眸子其悪を掩(おお)うこと能わず、胸中正しければ、則ち眸子瞭(あきら)かなり、胸中正しからざれば、則ち眸子眊(くら)し、
通し番号 436 章内番号 2 章通し番号 76 識別番号 7_15_2
其言を聴くや、其眸子(ぼうし)を観る、人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや、
章番号 16 章通し番号 77
通し番号 437 章内番号 1 章通し番号 77 識別番号 7_16_1
孟子曰く、恭なる者人を侮らず、倹なる者人から奪わず、人を侮奪するの君、惟順(したが)わざるを恐る、悪(いずくん)ぞ恭倹を爲すを得ん、恭倹は豈(あに)声音笑貌以て爲すべけんや、
章番号 17 章通し番号 78
通し番号 438 章内番号 1 章通し番号 78 識別番号 7_17_1
淳于髠(じゅんうこん)曰く、男女授受親(みずか)らせず、礼か、孟子曰く、礼なり、曰く、嫂(そう)溺れば則ち之を援(すく)うに手を以てするか、曰く、嫂(そう)溺れて援(すく)わざるは、是れ豺狼(さいろう)なり、男女授受親(みずか)らせずは、礼なり、嫂溺れ之を援(すく)うに手を以てするは、権なり、
通し番号 439 章内番号 2 章通し番号 78 識別番号 7_17_2
曰く、今天下溺る、夫子(ふうし)の援(すく)わざる、何ぞや、
通し番号 440 章内番号 3 章通し番号 78 識別番号 7_17_3
曰く、天下溺るれば、之を援(すく)うに道を以てす、嫂溺るれば、之を援うに手を以てす、子は手にて天下を援(すく)わんと欲するか、
章番号 18 章通し番号 79
通し番号 441 章内番号 1 章通し番号 79 識別番号 7_18_1
公孫丑曰く、君子の子を教えざるは、何ぞや、
通し番号 442 章内番号 2 章通し番号 79 識別番号 7_18_2
孟子曰く、勢(いきおい)行われざるなり、教えは必ず正以てす、正以て行われず、之に継ぐに怒以てす、之に継ぐに怒以てすれば、則ち反(かえっ)て夷(そこな)う、夫子我に教えるに正以てす、夫子未だ正に出でざるなり、則ち是れ父子相夷(そこな)うなり、父子相(あい)夷えば、則ち悪(あ)し、
通し番号 443 章内番号 3 章通し番号 79 識別番号 7_18_3
古は子を易(か)えて之を教える、
通し番号 444 章内番号 4 章通し番号 79 識別番号 7_18_4
父子の間は善を責めず、善を責めれば則ち離る、離るれば則ち祥(よ)からざるは焉(これ)より大なるは莫(な)し、
章番号 19 章通し番号 80
通し番号 445 章内番号 1 章通し番号 80 識別番号 7_19_1
孟子曰く、事える孰(いず)れか大と爲す、親に事える大と爲す、守る孰れか大と爲す、身を守る大と爲す、其身を失わずして、能く其親に事える者は、吾之を聞く、其身を失ないて、能く其親に事える者は、吾未だ之を聞かざるなり、
通し番号 446 章内番号 2 章通し番号 80 識別番号 7_19_2
孰れか事えると爲さざらん、親に事えるは、事えるの本なり、孰れか守ると爲さざらん、身を守るは、守るの本なり、
通し番号 447 章内番号 3 章通し番号 80 識別番号 7_19_3
曽子が曽皙(せき)を養う、必ず酒肉有り、将に徹せんとし、必ず与える所を請う、余有るやを問えば、必ず有りと曰う、曽皙死す、曽元が曽子を養う、必ず酒肉有り、将に徹せんとし、与える所を請わず、余有るやを問えば、亡(な)しと曰う、将に以て復(また)進めんとするなり、此謂う所の口体を養う者なり、曽子の若きは、則ち志を養うと謂うべきなり、
通し番号 448 章内番号 4 章通し番号 80 識別番号 7_19_4
親に事えること曽子の若き者は、可なり、
章番号 20 章通し番号 81
通し番号 449 章内番号 1 章通し番号 81 識別番号 7_20_1
孟子曰く、人は与(もっ)て適(せ)むるに足らざるなり、政は間(そし)るに足らざるなり、惟(ただ)大人能く君心の非を格(ただ)すことを爲す、君仁なれば仁ならざる莫し、君義なれば義ならざる莫し、君正なれば正ならざる莫(な)し、一たび君を正して国定まる、
章番号 21 章通し番号 82
通し番号 450 章内番号 1 章通し番号 82 識別番号 7_21_1
孟子曰く、虞(はか)らざるの誉(ほまれ)有り、全(まった)きを求めるの毀(そし)り有り、
章番号 22 章通し番号 83
通し番号 451 章内番号 1 章通し番号 83 識別番号 7_22_1
孟子曰く、人の其言に易(おろそ)かなるは、責無きのみ、
章番号 23 章通し番号 84
通し番号 452 章内番号 1 章通し番号 84 識別番号 7_23_1
孟子曰く、人の患、好んで人の師と爲ることに在り、
章番号 24 章通し番号 85
通し番号 453 章内番号 1 章通し番号 85 識別番号 7_24_1
楽正子(がくせいし)子敖(しごう)に従い斉に之(ゆ)く、
通し番号 454 章内番号 2 章通し番号 85 識別番号 7_24_2
楽正子孟子に見(まみ)ゆ、孟子曰く、子亦来り我に見(あ)うか、曰く、先生何爲(なんすれ)ぞ此言を出すや、曰く、子来る幾(いく)日ぞ、曰く、昔者(きのう)なり、曰く、昔者(きのう)ならば、則ち我此言を出すや、亦宜(うべ)ならざるか、曰く、舍館未だ定まらず、曰く、子之を聞くや、舍館定まり、然る後長者に見(まみ)ゆるを求めるか、
通し番号 455 章内番号 3 章通し番号 85 識別番号 7_24_3
曰く、克(こく)罪有り、
章番号 25 章通し番号 86
通し番号 456 章内番号 1 章通し番号 86 識別番号 7_25_1
孟子楽正子に謂いて曰く、子の子敖(しごう)に従い来るは、徒(ただ)餔啜(ほせつ)するなり、我は、子が古の道を学びて、以て餔啜すると意(おも)わざるなり、
章番号 26 章通し番号 87
通し番号 457 章内番号 1 章通し番号 87 識別番号 7_26_1
孟子曰く、不孝に三有り、後無き大と爲す、
通し番号 458 章内番号 2 章通し番号 87 識別番号 7_26_2
舜告げずして娶(めと)るは、後無き爲なり、君子以て猶告ぐるがごときと爲すなり、
章番号 27 章通し番号 88
通し番号 459 章内番号 1 章通し番号 88 識別番号 7_27_1
孟子曰く、仁の実、親に事える是れなり、義の実、兄に従う是れなり、
通し番号 460 章内番号 2 章通し番号 88 識別番号 7_27_2
智の実、斯(この)二なるものを知り、去らざる是れなり、礼の実、斯二なるものを節文する是れなり、楽(がく)の実、斯二なるものを楽しむ、楽しめば則ち生ず、生ずれば則ち悪ぞ已むべけんや、悪ぞ已むべくんば、則ち足の之を踏み、手の之に舞うを知らず、
章番号 28 章通し番号 89
通し番号 461 章内番号 1 章通し番号 89 識別番号 7_28_1
孟子曰く、天下大いに悦びて将に己に帰さんとす、天下悦びて己に帰するを視ること、猶草芥のごときなり、惟(ただ)舜然りと爲す、親に得られざれば、以て人と爲るべからず、親に順ならざれば、以て子と爲るべからず、
通し番号 462 章内番号 2 章通し番号 89 識別番号 7_28_2
舜親に事えるの道を尽して、瞽瞍(こそう)予(よろこ)びを厎(いた)す、瞽瞍予(よろこび)を厎(いた)して、天下化す、瞽瞍予(よろこ)びを厎(いた)して、天下の父子爲(た)る者定まる、此を之大孝と謂う、
8 離婁章句下 lí lóu zhāng jù xià
章番号 1 章通し番号 90
通し番号 463 章内番号 1 章通し番号 90 識別番号 8_1_1
孟子曰く、舜は諸馮(しょひょう)に生まれ、負夏に遷(うつ)り、鳴條に卒(おわ)る、東夷の人なり、
通し番号 464 章内番号 2 章通し番号 90 識別番号 8_1_2
文王は岐周(きしゅう)に生まれ、畢郢(ひつえい)に卒(おわ)る、西夷の人なり、
通し番号 465 章内番号 3 章通し番号 90 識別番号 8_1_3
地の相去るや、千有余里、世の相後(おく)るや、千有余歳、志を得て中国に行う、符節を合わせるが若し、
通し番号 466 章内番号 4 章通し番号 90 識別番号 8_1_4
先聖後聖、其揆(き)一なり、
章番号 2 章通し番号 91
通し番号 467 章内番号 1 章通し番号 91 識別番号 8_2_1
子産は鄭国の政を聴く、其乗輿(じょうよ)を以て人を溱(しん)洧(い)に済(わた)す、
通し番号 468 章内番号 2 章通し番号 91 識別番号 8_2_2
孟子曰く、恵にして政を爲すを知らず、
通し番号 469 章内番号 3 章通し番号 91 識別番号 8_2_3
歳(とし)の十一月徒杠成る、十二月輿梁(よりょう)成る、民未だ渉(わた)るを病まざるなり、
通し番号 470 章内番号 4 章通し番号 91 識別番号 8_2_4
君子其政を平(おさ)む、行くに人を辟(ひら)くも可なり、焉ぞ人人にして之を済(わた)すことを得ん、
通し番号 471 章内番号 5 章通し番号 91 識別番号 8_2_5
故に政を爲す者、人每(ごと)にして之を悦ばせば、日も亦足らず、
章番号 3 章通し番号 92
通し番号 472 章内番号 1 章通し番号 92 識別番号 8_3_1
孟子斉の宣王に告げて曰く、君の臣を視ること手足の如ければ、則ち臣が君を視ること腹心の如し、君の臣を視ること犬馬の如ければ、則ち臣が君を視ること国人の如し、君の臣を視ること土芥(かい)の如ければ、則ち臣が君を視ること寇讎(こうしゅう)の如し、
通し番号 473 章内番号 2 章通し番号 92 識別番号 8_3_2
王曰く、礼には旧君の爲に服有り、何如(いか)なれば斯(すなわ)ち爲に服すべし、
通し番号 474 章内番号 3 章通し番号 92 識別番号 8_3_3
曰く、諫行われ言聴かれ、膏沢(こうたく)民に下る、故(ゆえ)有りて去る、則ち君は人をして之を導き疆(さかい)を出だしむ、又其往く所に先んず、去りて三年反らず、然る後其田里を收む、此を之三有礼と謂う、此如ければ、則ち之が爲に服す、
通し番号 475 章内番号 4 章通し番号 92 識別番号 8_3_4
今や臣と爲り、諫(いさ)めれば則ち行われず、言えば則ち聴かれず、膏沢民に下らず、故有りて去れば則ち君之を搏執(はくしつ)す、又之を其往く所に於て極む、之を去るの日、遂に其田里を收む、此を之寇讎(こうしゅう)と謂う、寇讎何ぞ服すること之有らん、
章番号 4 章通し番号 93
通し番号 476 章内番号 1 章通し番号 93 識別番号 8_4_1
孟子曰く、罪無くして士を殺さば、則ち大夫以て去ることは可なり、罪無くして民を戮(ころ)さば、則ち士以て徙(うつ)ることは可なり、
章番号 5 章通し番号 94
通し番号 477 章内番号 1 章通し番号 94 識別番号 8_5_1
孟子曰く、君が仁なれば仁ならざること莫し、君が義ならば義ならざること莫し、
章番号 6 章通し番号 95
通し番号 478 章内番号 1 章通し番号 95 識別番号 8_6_1
孟子曰く、礼に非ざるの礼、義に非ざるの義、大人爲さず、
章番号 7 章通し番号 96
通し番号 479 章内番号 1 章通し番号 96 識別番号 8_7_1
孟子曰く、中は不中を養う、才は不才を養う、故に人は賢父兄有るを楽しむなり、如し中は不中を棄て、才は不才を棄てれば、則ち賢不肖の相去ること、其間寸以てすること能わず、
章番号 8 章通し番号 97
通し番号 480 章内番号 1 章通し番号 97 識別番号 8_8_1
孟子曰く、人爲さざること有るなり、而して後以て爲すこと有るべし、
章番号 9 章通し番号 98
通し番号 481 章内番号 1 章通し番号 98 識別番号 8_9_1
孟子曰く、人の不善を言えば、当に後の患えを如何(いかん)すべき、
章番号 10 章通し番号 99
通し番号 482 章内番号 1 章通し番号 99 識別番号 8_10_1
孟子曰く、仲尼(ちゅうじ)は已甚(はなは)だしきを爲さず、
章番号 11 章通し番号 100
通し番号 483 章内番号 1 章通し番号 100 識別番号 8_11_1
孟子曰く、大人なる者は、言は信を必(ひつ)とせず、行は果を必とせず、惟(ただ)義在る所のままにす、
章番号 12 章通し番号 101
通し番号 484 章内番号 1 章通し番号 101 識別番号 8_12_1
孟子曰く、大人は、其赤子の心を失わざる者なり、
章番号 13 章通し番号 102
通し番号 485 章内番号 1 章通し番号 102 識別番号 8_13_1
孟子曰く、生を養うは以て大事に当たるに足らず、惟(ただ)死を送るは以て大事に当たるべし
、
章番号 14 章通し番号 103
通し番号 486 章内番号 1 章通し番号 103 識別番号 8_14_1
孟子曰く、君子深く之に造(いた)るに道を以てす、其自ずから之を得るを欲するなり、自ずから之を得れば、則ち之に居ること安し、之に居ること安ければ、則ち之に資(よ)ること深し、之に資(よ)ること深ければ、則ち之を左右に取り其原(みなもと)に逢(あ)う、故に君子其自(おのずか)ら之を得ることを欲するなり、
章番号 15 章通し番号 104
通し番号 487 章内番号 1 章通し番号 104 識別番号 8_15_1
孟子曰く、博く学びて詳しく之を説く、将に以て反り約を説かんとするなり、
章番号 16 章通し番号 105
通し番号 488 章内番号 1 章通し番号 105 識別番号 8_16_1
孟子曰く、善以て人を服する者は、未だ能く人を服する者有らざるなり、善以て人を養う、然る後能く天下を服す、天下心服せずして王たる者、未だ之有らざるなり、
章番号 17 章通し番号 106
通し番号 489 章内番号 1 章通し番号 106 識別番号 8_17_1
孟子曰く、言が実無きは不祥なり、不祥の実は、賢を蔽うもの之に当たる、
章番号 18 章通し番号 107
通し番号 490 章内番号 1 章通し番号 107 識別番号 8_18_1
徐子曰く、仲尼亟(しばしば)水を称して曰く、水なるかな、水なるかな、何ぞ水に取るや、
通し番号 491 章内番号 2 章通し番号 107 識別番号 8_18_2
孟子曰く、原泉混混として、昼夜舍(いこ)わず、科(あな)を盈(みた)して後進み、四海に放(いた)る、本有る者是如し、是を之取るのみ、
通し番号 492 章内番号 3 章通し番号 107 識別番号 8_18_3
苟(もし)本無しと爲せば、七八月の間雨集まり、溝澮(こうかい)皆盈(み)つ、其涸(か)るるや、立ちて待つべきなり、故に声聞情に過ぐは、君子之を恥ず、
章番号 19 章通し番号 108
通し番号 493 章内番号 1 章通し番号 108 識別番号 8_19_1
孟子曰く、人の禽獣に異なる所以のものは幾希(すくな)し、庶民之を去る、君子之を存す、
通し番号 494 章内番号 2 章通し番号 108 識別番号 8_19_2
舜は庶物に明らかなり、人倫に察(つまびら)かなり、仁と義に由り行う、仁と義を行うに非ざるなり、
章番号 20 章通し番号 109
通し番号 495 章内番号 1 章通し番号 109 識別番号 8_20_1
孟子曰く、禹は旨(し)酒を悪(にく)みて、善言を好む、
通し番号 496 章内番号 2 章通し番号 109 識別番号 8_20_2
湯は中を執(と)り、賢を立てるに方無し、
通し番号 497 章内番号 3 章通し番号 109 識別番号 8_20_3
文王民を視ること傷(いた)めるが如し、道を望み未だ之を見ざるが而(ごと)し、
通し番号 498 章内番号 4 章通し番号 109 識別番号 8_20_4
武王邇(ちか)きに泄(な)れず、遠きを忘れず、
通し番号 499 章内番号 5 章通し番号 109 識別番号 8_20_5
周公三王を兼ね、以て四事を施さんことを思う、其合わざるもの有れば、仰ぎて之を思う、夜以て日に継ぐ、幸いにして之を得れば、坐し以て旦(たん)を待つ、
章番号 21 章通し番号 110
通し番号 500 章内番号 1 章通し番号 110 識別番号 8_21_1
孟子曰く、王者の跡熄(や)みて詩亡ぶ、詩亡(ほろ)び然る後春秋作(おこ)る、
通し番号 501 章内番号 2 章通し番号 110 識別番号 8_21_2
晉の乗、楚の檮杌(とうこつ)、魯の春秋、一なり、
通し番号 502 章内番号 3 章通し番号 110 識別番号 8_21_3
其事則ち斉桓、晋文なり、其文則ち史なり、孔子曰く、其義則ち丘竊(ひそか)に之を取る、
章番号 22 章通し番号 111
通し番号 503 章内番号 1 章通し番号 111 識別番号 8_22_1
孟子曰く、君子の沢五世にして斬(た)つ、小人の沢五世にして斬(た)つ、
通し番号 504 章内番号 2 章通し番号 111 識別番号 8_22_2
予未だ孔子の徒と爲ることを得ざるなり、予私(ひそか)に諸を人に淑(よ)くするなり、
章番号 23 章通し番号 112
通し番号 505 章内番号 1 章通し番号 112 識別番号 8_23_1
孟子曰く、以て取ること可、以て取ること無しも可、取れば廉を傷(そこな)う、以て与えること可、以て与えること無しも可、与えれば恵を傷(そこな)う、以て死ぬこと可、以て死ぬこと無しも可、死ねば勇を傷(そこな)う、
章番号 24 章通し番号 113
通し番号 506 章内番号 1 章通し番号 113 識別番号 8_24_1
逢蒙(ほうもう)射を羿(げい)に学ぶ、羿の道を尽す、思えらく、天下惟(ただ)羿己に愈(まさ)ると爲す、是に於て羿を殺す、孟子曰く、是れ亦羿罪有り、公明儀曰く、宜(よろ)しく罪無きが若し、曰く、薄きかと云うのみ、悪ぞ罪無きを得ん、
通し番号 507 章内番号 2 章通し番号 113 識別番号 8_24_2
鄭人は子濯孺子(したくじゅし)をして衛を侵さしむ、衛は庾公之斯(ゆこうしし)をして之を追わしむ、子濯孺子曰く、今日我疾作(おこ)る、以て弓を執(と)るべからず、吾死せん夫(かな)、其僕に問いて曰く、我を追う者誰ぞや、其僕曰く、庾公之斯なり、曰く、吾生きん、其僕曰く、庾公之斯は衛の善く射る者なり、夫子曰く、吾生く、何の謂(いい)ぞや、曰く、庾公之斯は射を尹公之他(いんこうした)に学ぶ、尹公之他射を我に学ぶ、夫(その)尹公之他は端人なり、其友を取る必ず端なり、庾公之斯至る、曰、夫子何爲(なんすれ)ぞ弓を執らざる、曰、今日我疾作(おこ)る、以て弓を執るべからず、曰く、小人射を尹公之他に学ぶ、尹公之他射を夫子に学ぶ、我は夫子の道を以て反て夫子を害することを忍びず、然りと雖も、今日の事君の事なり、我敢て廃せず、矢を抽(ぬ)き輪(わ)に扣(たた)き、其金を去り、乗矢を発して後反る、
章番号 25 章通し番号 114
通し番号 508 章内番号 1 章通し番号 114 識別番号 8_25_1
孟子曰く、西子不潔を蒙(こうむ)れば、則ち人皆鼻を掩(おお)いて之を過ぐ、
通し番号 509 章内番号 2 章通し番号 114 識別番号 8_25_2
悪人有りと雖も、斉戒(さいかい)沐(もく)浴すれば、則ち以て上帝を祀(まつ)るべし、
章番号 26 章通し番号 115
通し番号 510 章内番号 1 章通し番号 115 識別番号 8_26_1
孟子曰く、天下の性を言うや、則ち故のみ、故は利以て本と爲す、
通し番号 511 章内番号 2 章通し番号 115 識別番号 8_26_2
智に於て悪(にく)む所のものは、其鑿(うが)つの爲なり、如し智が禹の水を行(や)るが若くなれば、則ち智に於て悪(にく)むこと無し、禹の水を行(や)るや、其事無き所に行(や)るなり、如し智亦其事無き所に行(や)れば、則ち智亦大なり、
通し番号 512 章内番号 3 章通し番号 115 識別番号 8_26_3
天は高きなり、星辰は遠きなり、苟(まこと)に其故を求めれば、千歳の日至、坐して致すべきなり、
章番号 27 章通し番号 116
通し番号 513 章内番号 1 章通し番号 116 識別番号 8_27_1
公行子、子の喪(も)有り、右師(ゆうし)往きて弔す、門に入る、進みて右師と言う者有り、右師の位に就きて右師と言う者有り、
通し番号 514 章内番号 2 章通し番号 116 識別番号 8_27_2
孟子右師と言わず、右師悦ばずして曰く、諸君子皆驩と言う、孟子独り驩と言わず、是驩に簡なり、
通し番号 515 章内番号 3 章通し番号 116 識別番号 8_27_3
孟子之を聞きて曰く、礼は、朝廷位を歴(こ)えて相与(とも)に言わず、階を踰(こ)えて相揖(ゆう)せざるなり、我は礼を行わんと欲す、子敖(しごう)は我を以て簡と爲す、亦異ならずや、
章番号 28 章通し番号 117
通し番号 516 章内番号 1 章通し番号 117 識別番号 8_28_1
孟子曰く、君子が人に異なる所以のものは、其心に存するを以てなり、君子は仁以て心に存し、礼以て心に存す、
通し番号 517 章内番号 2 章通し番号 117 識別番号 8_28_2
仁者は人を愛す、礼有る者は人を敬う、
通し番号 518 章内番号 3 章通し番号 117 識別番号 8_28_3
人を愛する者は人恒(つね)に之を愛す、人を敬う者は人恒(つね)に之を敬う、
通し番号 519 章内番号 4 章通し番号 117 識別番号 8_28_4
此に人有り、其我を待つに横逆以てすれば、則ち君子必ず自ら反(かえり)みるなり、我必ず不仁なり、必ず無礼なり、此物奚(なん)ぞ宜(よろし)く至るべけんや、
通し番号 520 章内番号 5 章通し番号 117 識別番号 8_28_5
其自ら反(かえり)みて仁なり、自ら反て礼有り、其横逆由(なお)是のごときなり、君子必ず自ら反るなり、我必ず不忠なり、
通し番号 521 章内番号 6 章通し番号 117 識別番号 8_28_6
自ら反みて忠なり、其横逆由(なお)是ごときなり、君子曰く、此亦(ただ)妄人なるのみ、此如ければ則ち禽獣と奚(なん)ぞ択ばん、禽獣に於て又何ぞ難ぜん、
通し番号 522 章内番号 7 章通し番号 117 識別番号 8_28_7
是故に君子は終身の憂い有り、一朝の患(うれ)い無きなり、(乃若)憂う所は則ち之有り、舜は人なり、我も亦人なり、舜は法を天下に爲し、後世に伝えるべし、我由(なお)未だ郷人爲(た)るを免れざるなり、是れ則ち憂うべきなり、之を憂えば如何(いかん)、舜の如くなるのみ、夫(かの)君子の若きは患う所は則ち亡(な)し、仁に非ざれば爲すこと無きなり、礼に非ざれば行うこと無きなり、如(も)し一朝の患い有れば、則ち君子患えず、
章番号 29 章通し番号 118
通し番号 523 章内番号 1 章通し番号 118 識別番号 8_29_1
禹稷平世に当り、三たび其門を過ぎて入らず、孔子之を賢とす、
通し番号 524 章内番号 2 章通し番号 118 識別番号 8_29_2
顔子乱世に当り、陋巷(ろうこう)に居り、一簞(たん)の食(し)、一瓢(ひょう)の飮、人其憂いに堪えず、顔子其楽しみを改めず、孔子之を賢とす、
通し番号 525 章内番号 3 章通し番号 118 識別番号 8_29_3
孟子曰く、禹稷、顔回道を同じくす、
通し番号 526 章内番号 4 章通し番号 118 識別番号 8_29_4
禹は天下溺れる者有れば、由(なお)己之を溺らすがごとく思うなり、稷は天下飢える者有れば、由(なお)己之を飢やすがごとく思うなり、是を以て是(かく)の如く其急なり、
通し番号 527 章内番号 5 章通し番号 118 識別番号 8_29_5
禹稷、顔子地を易えれば則ち皆然り、
通し番号 528 章内番号 6 章通し番号 118 識別番号 8_29_6
今同室の人鬭(たたか)う者有り、之を救(とめ)るに、被髮に冠を纓(えい)して之を救(とめ)ると雖も、可なり、
通し番号 529 章内番号 7 章通し番号 118 識別番号 8_29_7
郷鄰に鬭(たたか)う者有り、被髮に冠を纓(えい)して往きて之を救(とめ)れば、則ち惑(まど)いなり、戸を閉ずと雖も可なり、
章番号 30 章通し番号 119
通し番号 530 章内番号 1 章通し番号 119 識別番号 8_30_1
公都子曰く、匡章、国を通じて皆不孝と称(い)う、夫子(ふうし)之と遊ぶ、又従いて之を礼貌す、敢えて問う何ぞや、
通し番号 531 章内番号 2 章通し番号 119 識別番号 8_30_2
孟子曰く、世俗謂う所の不孝なるもの五あり、其四支を惰(おこた)り、父母の養を顧ず、一の不孝なり、博弈(ばくえき)し飮酒を好み、父母の養を顧ず、二の不孝なり、貨財を好み、妻子を私(あい)し、父母の養を顧ず、三の不孝なり、耳目の欲に従(ほしいまま)にして、以て父母の戮(りく)を爲す、四の不孝なり、勇を好み鬭(とう)很(こん)し、以って父母を危うくす、五の不孝なり、章子是に於て一有るか、
通し番号 532 章内番号 3 章通し番号 119 識別番号 8_30_3
夫(かの)章子は、子父が善を責めて、相遇(あ)わざるなり、
通し番号 533 章内番号 4 章通し番号 119 識別番号 8_30_4
善を責むるは、朋友の道なり、父子が善を責むは、恩を賊(そこな)うの大なるものなり、
通し番号 534 章内番号 5 章通し番号 119 識別番号 8_30_5
夫(かの)章子、豈夫妻子母の属有ることを欲せざらんや、罪を父に得て、近づくを得ざるが爲なり、妻を出し子を屛(しりぞ)け、終身養われず、其心を設(もう)くるに、以て是(かく)の若からざるを爲せば、是れ則ち罪の大なるものなり、是れ則ち章子のみ、
章番号 31 章通し番号 120
通し番号 535 章内番号 1 章通し番号 120 識別番号 8_31_1
曽子は武城に居る、越の寇(こう)有り、或るひと曰く、寇(こう)至る、盍(なん)ぞ諸(これ)を去らざる、曰く、人を我が室に寓(やど)し、其薪木を毀傷すること無かれ、寇退けば則ち曰く、我が牆屋(しょうおく)を脩めよ、我に将に反らんとす、寇退き、曽子反る、左右曰く、先生を待つこと、此如く其忠且(か)つ敬なり、寇至れば則ち先に去る、以て民の望を爲す、寇退けば則ち反る、不可に殆(ちか)し、沈猶行(しんゆうこう)曰く、是れ汝の知る所に非ざるなり、昔沈猶に負芻の禍有り、先生に従う者七十人、未だ与(あずか)ること有らず、
通し番号 536 章内番号 2 章通し番号 120 識別番号 8_31_2
子思は衛に居る、斉の寇有り、或るひと曰く、寇至る、盍(なん)ぞ諸(これ)を去らざる、子思曰く、如し伋(きゅう)去らば、君誰と与(とも)に守る、
通し番号 537 章内番号 3 章通し番号 120 識別番号 8_31_3
孟子曰く、曽子、子思道を同じくす、曽子、師なり、父兄なり、子思、臣なり、微なり、曽子、子思地を易えれば則ち皆然り、
章番号 32 章通し番号 121
通し番号 538 章内番号 1 章通し番号 121 識別番号 8_32_1
儲子(ちょし)曰く、王は人をして夫子(ふうし)を瞯(うかが)わしむ、果たして以て人に異なること有るか、孟子曰く、何を以てか人に異ならんや、堯舜人と同じきのみ、
章番号 33 章通し番号 122
通し番号 539 章内番号 1 章通し番号 122 識別番号 8_33_1
斉人一妻一妾にて室に処(お)る者有り、其良人(おっと)出ずれば、則ち必ず酒肉に饜(あ)きて後反る、其妻与(とも)に飮食する所の者を問えば、則ち尽く富貴なり、其妻其妾に告げて曰く、良人出ずれば、則ち必ず酒肉に饜(あ)きて後反る、其与(とも)に飮食する者を問えば、尽く富貴なり、而るに未だ嘗て顕者来ること有らず、吾将に良人の之く所を瞯(うかが)わんとするなり、蚤(つと)に起き、施(ななめ)に良人の之く所に従う、国中に徧(あまね)くして与(ともに)立談する者無し、卒(つい)に東郭(かく)の墦(はん)間に之き祭る者に之く、其余を乞う、足らざれば、又顧みて他に之く、此其饜(えん)足を爲すの道なり、其妻帰り、其妾に告げて曰く、良人は、仰ぎ望みて身を終える所なり、今此若し、其妾と其良人を訕(そし)りて、中庭に於て相泣く、而るに良人未だ之を知らざるなり、施施として外従(よ)り来り、其妻妾に驕る、
通し番号 540 章内番号 2 章通し番号 122 識別番号 8_33_2
君子由り之を観れば、則ち人の以て富貴利達を求める所のものは、其妻妾羞(は)じずして相泣かざるものは、幾希(すくな)し、
9 萬章章句上 wàn zhāng zhāng jù shàng
章番号 1 章通し番号 123
通し番号 541 章内番号 1 章通し番号 123 識別番号 9_1_1
万章(ばんしょう)問いて曰く、舜が田に往き、旻天(びんてん)に号泣す、何爲(なんすれ)ぞ其号泣するや、孟子曰く、怨慕なり、
通し番号 542 章内番号 2 章通し番号 123 識別番号 9_1_2
万章曰く、父母之を愛すれば、喜びて忘れず、父母之を悪(にく)めば、労(うれ)えて怨みず、然らば則ち舜怨みたるか、曰く、長息は公明高に問いて曰く、舜田に往く、則ち吾既に命を聞くことを得る、旻天に父母に号泣するは、則ち吾知らざるなり、公明高曰く、是れ爾(なんじ)の知る所に非ざるなり、夫(それ)公明高は孝子の心以て、是(かく)の若く恝(かつ)ならずと爲す、我力を竭し田を耕す、子爲(た)るの職を共(つつし)む、父母の我を愛さざる、我に於て何ぞや、
通し番号 543 章内番号 3 章通し番号 123 識別番号 9_1_3
帝其子九男二女をして、百官牛羊倉廩(そうりん)を備え、以て舜に畎畝(けんぽ)の中に於て事(つか)えしむ、天下の士、之に就く者多し、帝将に天下を胥(み)て之に遷(うつ)さんとす、父母に順ならざる爲に、窮人の帰する所無きが如し、
通し番号 544 章内番号 4 章通し番号 123 識別番号 9_1_4
天下の士之に悦(したが)うは、人の欲する所なり、而るに以て憂いを解くに足らず、好色は、人の欲する所なり、帝の二女を妻として、以て憂いを解くに足らず、富は、人の欲する所なり、富は天下を有つ、而るに以て憂いを解くに足らず、貴は、人の欲する所なり、貴は天子と爲る、而るに以て憂いを解くに足らず、人之に悦(したがう)、好色富貴、以て憂いを解くに足るもの無し、惟(ただ)父母に順なれば、以て憂いを解くべし、
通し番号 545 章内番号 5 章通し番号 123 識別番号 9_1_5
人少(おさな)ければ、則ち父母を慕(おも)う、色を好むを知れば、則ち少艾(しょうがい)を慕(おも)う、妻子有れば、則ち妻子を慕(おも)う、仕えれば則ち君を慕(おも)う、君に得られざれば則ち熱中す、大孝は終身父母を慕(おも)う、五十にして慕(おも)う者、予は大舜に於て之を見る、
章番号 2 章通し番号 124
通し番号 546 章内番号 1 章通し番号 124 識別番号 9_2_1
万章問いて曰く、詩云う、妻を娶(めと)るは之を如何(いかん)、必ず父母に告ぐ、信(まこと)に斯言ならば、宜しく舜の如く莫かるべし、舜の告げずして娶るは、何ぞや、孟子曰く、告げれば則ち娶ることを得ず、男女室に居る、人の大倫なり、如し告げれば、則ち人の大倫を廃し、以て父母を懟(うら)む、是を以て告げざるなり、
通し番号 547 章内番号 2 章通し番号 124 識別番号 9_2_2
万章曰く、舜の告げずして娶るは、則ち吾既に命を聞くことを得る、帝の舜に妻(めあわ)せて告げざるは、何ぞや、曰く、帝亦告ぐれば則ち妻(めあわ)すことを得ざるを知るなり、
通し番号 548 章内番号 3 章通し番号 124 識別番号 9_2_3
万章曰く、父母舜をして廩(くら)を完(おさ)めしむ、階(はしご)を捐(さ)り、瞽瞍(こそう)廩を焚(や)く、井を浚(さら)えしむ、出ず、従いて之を揜(おお)う、象(しょう)曰く、都君を蓋(おお)うことを謨(はか)るは咸(みな)我が績(いさお)なり、牛羊は父母、倉廩は父母、干戈(かんか)は朕(われ)、琴は朕、弤(てい)は朕、二嫂(そう)朕が棲(せい)を治めしむ、象は往きて舜の宮に入る、舜牀(ゆか)に在りて琴ひく、象曰く、鬱陶(うっとう)として君を思うのみ、忸怩(じくじ)たり、舜曰く、惟(これ)茲(この)臣庶(しんしょ)、汝其れ予(われ)が于(ため)に治めよ、識らず、舜は象の将に己を殺さんとするを知らざるか、曰く、奚(なん)ぞ知らざらん、象憂えば亦憂う、象喜べば亦喜ぶ、
通し番号 549 章内番号 4 章通し番号 124 識別番号 9_2_4
曰く、然らば則ち舜僞(いつわ)りて喜ぶ者か、曰く、否、昔者(むかし)生魚を鄭の子産に饋(おく)ること有り、子産校人をして之を池に畜(やしな)わしむ、校人之を烹る、反命して曰く、始め之を舍(はな)てば圉圉焉(ぎょぎょえん)たり、少(しばらく)すれば則ち洋洋焉(ようようえん)たり、攸然(ゆうぜん)として逝(ゆ)く、子産曰く、其所を得たるかな、其所を得たるかな、校人出でて曰く、孰(たれ)か子産を智と謂う、予既に烹て之を食べる、曰く、其所を得たるかな、其所を得たるかな、故に君子は欺むくに其方を以てするは可なり、罔(くら)ますに其道に非ざるを以てし難し、彼は兄を愛するの道以て来る、故に誠に信じて之を喜ぶ、奚ぞ僞(いつわ)らん、
章番号 3 章通し番号 125
通し番号 550 章内番号 1 章通し番号 125 識別番号 9_3_1
万章問いて曰く、象は日に舜を殺すを以て事と爲す、立ちて天子と爲れば、則ち之を放つ、何ぞや、孟子曰く、之を封(ほう)ずるなり、或るひと放つと曰う、
通し番号 551 章内番号 2 章通し番号 125 識別番号 9_3_2
万章曰く、舜共工を幽州に流し、驩兜(かんとう)を崇山(すうざん)に放ち、三苗を三危に殺し、鯀(こん)を羽山に殛(きょく)す、四罪(しざい)して天下咸(みな)服す、不仁を誅(ばっ)するなり、象至りて不仁なり、之を有庳に封ず、有庳の人奚(なん)の罪かある、仁人固より是の如きか、他人に在れば則ち之を誅(ばっ)す、弟に在れば則ち之を封ず、曰く、仁人の弟に於るや、怒りを蔵(たくわ)えず、怨みを宿さず、之を親愛するのみ、之に親しめば其貴を欲するなり、之を愛せば其富を欲するなり、之を有庳に封ずるは、之を富貴にするなり、身天子と爲り、弟匹夫(ひっぷ)爲(た)れば、之を親愛すると謂うべきか、
通し番号 552 章内番号 3 章通し番号 125 識別番号 9_3_3
敢えて問う、或るひと放つと曰うは、何の謂(いい)ぞや、曰く、象其国に於て爲すこと有るを得ず、天子吏をして其国を治め、其貢税を納(い)れしむ、故に之を放つと謂う、豈彼(かの)民を暴(そこな)うことを得んや、然りと雖も、常常にして之に見(あ)わんと欲す、故に源源として来り、貢に及ばず、政を以て有庳に接す、此を之謂うなり、
章番号 4 章通し番号 126
通し番号 553 章内番号 1 章通し番号 126 識別番号 9_4_1
咸丘蒙(かんきゅうもう)問いて曰く、語に云う、盛徳の士、君得て臣とせず、父得て子とせず、舜南面して立つ、堯諸侯を帥(ひき)い、北面して之に朝す、瞽瞍(こそう)亦北面して之に朝す、舜瞽瞍を見る、其容蹙(しゅく)有り、孔子曰く、斯時に於てや、天下殆(あやう)いかな、岌岌乎(きゅうきゅうこ)たり、識(し)らず、此語誠に然るか、孟子曰く、否、此は君子の言に非ず、斉の東の野人の語なり、堯老いて舜摂するなり、堯典に曰く、二十有八載、放勲(ほうくん)乃ち徂落(そらく)す、百姓は考妣(こうひ)を喪するが如し、三年四海は八音を遏密(あつみつ)す、孔子曰く、天に二日(じつ)無く、民に二王無し、舜既に天子と爲り、又天下の諸侯を帥い、以て堯の三年の喪を爲せば、是れ二天子なり、
通し番号 554 章内番号 2 章通し番号 126 識別番号 9_4_2
咸丘蒙曰く、舜の堯を臣とせずは、則ち吾既に命を聞くことを得る、詩に云う、普天の下、王土に非ざる莫し、率土の浜、王の臣に非ざる莫し、而して舜既に天子と爲る、敢えて問う、瞽瞍の臣に非ざるは、如何(いかん)、曰く、是詩や、是の謂(いい)に非ざるなり、王の事に労して、父母を養うことを得ざるなり、曰く、此(これ)王の事に非ざるは莫し、我独り賢として労するなり、故に詩を説くは、文以て辞を害さず、辞以て志を害さず、意以て志を逆(むか)う、是れ之を得ると爲す、如(も)し辞のみを以てすれば、雲漢の詩に曰く、周の余(のち)の黎民(れいみん)、孑(けつ)遺(い)有ること靡(な)し、斯言を信ずれば、是れ周に遺民無きなり、
通し番号 555 章内番号 3 章通し番号 126 識別番号 9_4_3
孝子の至りは、親を尊(たっと)ぶより大なるは莫し、親を尊ぶの至りは、天下以て養うより大なるは莫し、天子の父と爲るは、尊ぶの至りなり、天下以て養うは、養うの至りなり、詩に曰く、永く言(ここ)に孝を思う、孝を思えば維(これ)則とす、此を之謂うなり、
通し番号 556 章内番号 4 章通し番号 126 識別番号 9_4_4
書に曰く、載(こと)を祗(つつし)み瞽瞍(こそう)を見る、夔夔(きき)斉栗(せいりつ)、瞽瞍亦允(しん)じ若(したが)う、是れ父得て子とせずと爲すなり、
章番号 5 章通し番号 127
通し番号 557 章内番号 1 章通し番号 127 識別番号 9_5_1
万章曰く、堯は天下以て舜に与う、諸有りや、孟子曰く、否、天子は天下以て人に与えること能わず、
通し番号 558 章内番号 2 章通し番号 127 識別番号 9_5_2
然らば則ち舜天下を有つや、孰か之を与う、曰く、天之を与う、
通し番号 559 章内番号 3 章通し番号 127 識別番号 9_5_3
天之を与えるは、諄諄然(じゅんじゅんぜん)として之を命(つ)げるか、
通し番号 560 章内番号 4 章通し番号 127 識別番号 9_5_4
曰く、否、天言わず、行と事を以て之に示すのみ、
通し番号 561 章内番号 5 章通し番号 127 識別番号 9_5_5
曰く、行と事を以て之を示すは之を如何(いかん)、曰く、天子能く人を天に薦(すす)む、天をして之に天下を与えしむること能わず、諸侯能く人を天子に薦(すす)む、天子をして之に諸侯を与えしむること能わず、大夫能く人を諸侯に薦(すす)む、諸侯をして之に大夫を与えしむること能わず、昔者(むかし)堯舜を天に薦む、而して天之を受く、之を民に暴(あらわ)して、民之を受く、故に曰く、天言わず、行と事を以て之に示すのみ、
通し番号 562 章内番号 6 章通し番号 127 識別番号 9_5_6
曰く、敢えて問う、之を天に薦めて天之を受く、之を民に暴(あら)わして民之を受くは、如何、曰く、之をして祭を主(つかさど)らしめて百神之を享(う)く、是れ天之を受く、之をして事を主(つかさど)らしめて事治まり、百姓之に安んず、是れ民之を受くるなり、天之に与え、人之に与う、故に曰く、天子は天下以て人に与えること能わず、
通し番号 563 章内番号 7 章通し番号 127 識別番号 9_5_7
舜堯に相たること二十有八載、人の能く爲す所に非ざるなり、天なり、堯崩ず、三年の喪畢(おわ)る、舜は堯の子を南河の南に避く、天下の諸侯朝覲(きん)する者、堯の子に之かずして舜に之く、訟獄(しょうごく)する者、堯の子に之かずして舜に之く、謳歌(おうか)する者、堯の子を謳歌せずして舜を謳歌す、故に曰く、天なり、夫(それ)然る後に中国に之き、天子の位を践(ふ)む、而(しか)るに堯の宮に居り、堯の子に逼(せま)らば、是れ簒(うば)うなり、天が与えるに非ざるなり、
通し番号 564 章内番号 8 章通し番号 127 識別番号 9_5_8
太誓(たいせい)に曰く、天の視は我が民の視に自(したが)う、天の聴は我が民の聴に自(したが)う、此の謂(いい)なり、
章番号 6 章通し番号 128
通し番号 565 章内番号 1 章通し番号 128 識別番号 9_6_1
万章問いて曰く、人言有り、禹に至りて徳衰う、賢に伝えずして子に伝う、諸有りや、孟子曰く、否、然らざるなり、天、賢に与えれば、則ち賢に与う、天、子に与えれば、則ち子に与う、昔者(むかし)舜が禹を天に薦むること、十有七年、舜崩ず、三年の喪畢(おわ)る、禹は舜の子を陽城に避く、天下の民之に従う、堯崩ずるの後、堯の子に従わずして舜に従うが若きなり、禹が益を天に薦(すす)むこと、七年、禹崩ず、三年の喪畢(おわ)る、益、禹の子を箕山(きざん)の陰に避く、朝覲(ちょうきん)訟獄(しょうごく)する者、益に之かずして啓に之く、曰く、吾君の子なり、謳歌する者、益を謳歌せずして啓を謳歌す、曰く、吾君の子なり、
通し番号 566 章内番号 2 章通し番号 128 識別番号 9_6_2
丹朱之(は)不肖なり、舜の子亦不肖なり、舜の堯に相たる、禹の舜に相たるや、年を歴(へ)ること多し、沢を民に施すこと久し、啓は賢にして能く敬(つつし)み、禹の道を承継す、益の禹に相たるや、年を歴ること少し、沢を民に施すこと未だ久しからず、舜、禹、益、相去ること久遠なり、其子の賢不肖、皆天なり、人の能く爲す所に非ざるなり、之を爲すこと莫くして爲るものは、天なり、之を致すこと莫くして至るものは、命なり、
通し番号 567 章内番号 3 章通し番号 128 識別番号 9_6_3
匹夫にして天下を有(たも)つ者は、徳必ず舜禹の若くして、又天子之を薦(すす)めること有り、故に仲尼天下を有(たも)たず、
通し番号 568 章内番号 4 章通し番号 128 識別番号 9_6_4
世を継(つ)ぎて天下を有つ、天の廃する所は、必ず桀紂の若き者なり、故に益、伊尹、周公天下を有たず、
通し番号 569 章内番号 5 章通し番号 128 識別番号 9_6_5
伊尹は湯に相(しょう)として、以て天下に王とす、湯崩ず、太丁(たいてい)未だ立たず、外丙(がいへい)二年、仲壬(ちゅうじん)四年、太甲は湯の典刑を顚覆(てんぷく)す、伊尹之を桐に放つこと三年なり、太甲過を悔い、自ら怨み自ら艾(おさ)め、桐に於て仁に処(お)り義に遷(うつ)ること、三年、以て伊尹の己に訓(おし)えるを聴くなり、亳(はく)に復帰す、
通し番号 570 章内番号 6 章通し番号 128 識別番号 9_6_6
周公の天下を有さざるは、猶益の夏に於る、伊尹の殷に於るがごときなり、
通し番号 571 章内番号 7 章通し番号 128 識別番号 9_6_7
孔子曰く、唐虞(ぐ)禅(ゆず)り、夏后(かこう)殷周継ぐ、其義一なり、
章番号 7 章通し番号 129
通し番号 572 章内番号 1 章通し番号 129 識別番号 9_7_1
万章問いて曰く、人、言有り、伊尹は割烹(かっぽう)以て湯に要(もと)む、諸(これ)有りや、
通し番号 573 章内番号 2 章通し番号 129 識別番号 9_7_2
孟子曰く、否、然らず、伊尹、有莘(しん)の野に耕やして、堯舜の道を楽しむ、其義に非ず、其道に非ざれば、之を禄するに天下以てすれども、顧みざるなり、繫馬(けいば)千駟(し)、視ざるなり、其義に非ず、其道に非ざれば、一介以て人に与えず、一介以て諸を人に取らず、
通し番号 574 章内番号 3 章通し番号 129 識別番号 9_7_3
湯人をして幣(へい)以て之を聘(へい)せしむ、囂囂然(ごうごうぜん)として曰く、我何ぞ湯の聘幣以て爲さんや、我豈畎畝(けんぽ)の中に処(お)り、是に由り以て堯舜の道を楽しむことに若(し)かんや、
通し番号 575 章内番号 4 章通し番号 129 識別番号 9_7_4
湯三たび往(ゆ)きて之を聘(へい)せしむ、既にして幡然(はんぜん)として改めて曰く、我畎畝の中に処(お)り、是に由りて以て堯舜の道を楽しむ与(より)、吾豈是君をして堯舜の君爲(た)らしめるに若かんや、吾豈是民をして堯舜の民爲らしめるに若かんや、吾豈吾身に於て親(みずか)ら之を見るに若かんや、
通し番号 576 章内番号 5 章通し番号 129 識別番号 9_7_5
天の此民を生ずるや、先知をして後知を覚(さと)らしめ、先覚をして後覚を覚(さと)らしめるなり、予は天の民の先覚なる者なり、予は将に斯道を以て斯民を覚(さと)さんとするなり、予之を覚すに非ずして誰ぞや、
通し番号 577 章内番号 6 章通し番号 129 識別番号 9_7_6
思うに、天下の民、匹夫匹婦堯舜の沢を被(こうむ)らざる者有れば、己推して之を溝中に内(い)るるが若し、其自ら任ずるに天下の重きを以てすること此如し、故に湯に就きて之に説き、以て夏を伐ち民を救う、
通し番号 578 章内番号 7 章通し番号 129 識別番号 9_7_7
吾未だ己を枉(ま)げて人を正す者を聞かざるなり、況んや己を辱(はずか)しめて以て天下を正す者をや、聖人の行同じからざるなり、或いは遠ざかり或いは近づく、或いは去り或いは去らず、其身を潔(きよ)くするに帰するのみ、
通し番号 579 章内番号 8 章通し番号 129 識別番号 9_7_8
吾其堯舜の道以て湯に要(もと)めるを聞く、未だ割烹以てするを聞かざるなり、
通し番号 580 章内番号 9 章通し番号 129 識別番号 9_7_9
伊訓に曰く、天誅造(はじ)めて攻めるは牧宮自(よ)りす、朕は亳(はく)自(よ)り載(はじ)む
章番号 8 章通し番号 130
通し番号 581 章内番号 1 章通し番号 130 識別番号 9_8_1
万章問いて曰く、或るひと謂う、孔子衛に於て癰疽(ようそ)を主とし、齊に於ては侍人(じじん)瘠環(せきかん)を主とす、諸(これ)有るか、孟子曰く、否、然らざるなり、事を好む者之を爲すなり、
通し番号 582 章内番号 2 章通し番号 130 識別番号 9_8_2
衛に於て顔讎由(がんしゅうゆう)を主とす、彌子(びし)の妻は、子路の妻と、兄弟なり、彌子子路に謂いて曰く、孔子我を主とすれば、衛の卿得べきなり、子路以て告ぐ、孔子曰く、命有り、孔子進むに礼を以てす、退くに義を以てす、之を得る得ざるは、命有りと曰う、而るに癰疽(ようそ)と侍人瘠環(せきかん)を主とせば、是れ義無く命無きなり、
通し番号 583 章内番号 3 章通し番号 130 識別番号 9_8_3
孔子魯衛に於て悦(よろこ)ばれず、宋の桓司馬将に要(ま)ちて之を殺さんとするに遭う、微服して宋を過ぐ、是時孔子阨(やく)に当る、司城貞子、陳侯周の臣爲(た)るを主とす、
通し番号 584 章内番号 4 章通し番号 130 識別番号 9_8_4
吾聞く、近臣を観るは、其主と爲る所を以てし、遠臣を観るは、其主とする所を以てす、若(もし)孔子癰疽(ようそ)と侍人(じじん)瘠環(せきかん)を主とせば、何を以て孔子と爲さん、
章番号 9 章通し番号 131
通し番号 585 章内番号 1 章通し番号 131 識別番号 9_9_1
万章問いて曰く、或るひと曰く、百里奚(ひゃくりけい)自ら秦の牲を養う者に於て、五羊の皮に鬻(ひさ)ぎ、牛を食(やしな)い、以て秦の穆公に要(もと)む、信か、孟子曰く、否、然らず、事を好む者之を爲すなり、
通し番号 586 章内番号 2 章通し番号 131 識別番号 9_9_2
百里奚は、虞の人なり、晉人垂棘(すいきょく)の璧(へき)、屈産の乗を以て、道を虞(ぐ)に仮(か)り以て虢(はく)を伐つ、宮之奇(きゅうしき)は諫(いさ)め、百里奚は諫めず、
通し番号 587 章内番号 3 章通し番号 131 識別番号 9_9_3
虞公の諫むべからざるを知りて、去りて秦に之く、年已に七十なり、曽(かつ)て以て牛を食(やしな)い秦の穆公に干(もと)めるの汙と爲すを知らざれば、智と謂うべきか、諫むべからずして諫めず、不智と謂うべきか、虞公の将に亡びんとするを知りて、先に之を去る、不智と謂うべからざるなり、時に秦に挙げられ、穆公(ぼくこう)の与(とも)に行うこと有るべきを知りて之に相(しょう)たり、不智と謂うべきか、秦に相(しょう)として其君を天下に顕(あらわ)し、後世に伝うべし、不賢にして之を能くするか、自ら鬻(う)り以て其君を成すは、郷党の自ら好くする者爲さず、而るに賢者之を爲すと謂うか、
10 萬章章句下 wàn zhāng zhāng jù xià
章番号 1 章通し番号 132
通し番号 588 章内番号 1 章通し番号 132 識別番号 10_1_1
孟子曰く、伯夷は目悪色を視ず、耳悪声を聴かず、其君に非ざれば事(つか)えず、其民に非ざれば使わず、治まれば則ち進み、乱れば則ち退く、横政の出ずる所、横民の止(とど)まる所、居るに忍びざるなり、思うに、郷人と処(お)ること、朝衣朝冠以て塗炭に坐するが如きなり、紂の時に当り、北海の浜に居り、以て天下の清(おさ)まるを待つなり、故に伯夷の風を聞く者は、頑夫(がんぷ)は廉(れん)、懦夫(だふ)は志を立てること有り、
通し番号 589 章内番号 2 章通し番号 132 識別番号 10_1_2
伊尹曰く、何(いず)れに事えるとして君に非ざる、何(いず)れを使うとして民に非ざる、治まる亦進み、乱る亦進む、曰く、天の斯民を生ずるや、先知をして後知を覚(さと)らしめ、先覚をして後覚を覚(さと)らしむ、予(われ)は天民の先覚なる者なり、予将に此道以て此民を覚さんとするなり、思うに天下の民、匹夫匹婦、堯舜の沢を被(こうむ)るに与(あずか)らざる者有れば、己推して之を溝中に内(い)るるが若し、其自ら任ずるに天下の重きを以てするなり、
通し番号 590 章内番号 3 章通し番号 132 識別番号 10_1_3
柳下恵は汙君を羞(は)じず、小官を辞せず、進んで賢を隠さず、必ず其道を以てす、遺佚(いいつ)されて怨みず、阨(やく)窮して憫(うれ)えず、郷人と処(お)るに、由由然として去ることを忍びざるなり、爾(なんじ)は爾(なんじ)爲(た)り、我は我爲(た)り、我側(かたわら)で袒裼(たんてき)裸裎(らてい)すると雖も、爾焉ぞ能く我を浼(けが)さんや、故に柳下恵の風を聞く者は、鄙夫(ひふ)は寬(ひろ)く、薄夫は敦(あつ)し、
通し番号 591 章内番号 4 章通し番号 132 識別番号 10_1_4
孔子の斉を去るは、淅を接(う)けて行(さ)る、魯を去るに曰く、遅遅として吾行(さ)るなり、父母の国を去るの道なり、以て速(すみや)かなるべくして速(すみや)か、以て久しかるべくして久し、以て処(お)るべくして処り、以て仕えるべくして仕えるは、孔子なり、
通し番号 592 章内番号 5 章通し番号 132 識別番号 10_1_5
孟子曰く、伯夷は、聖の清なる者なり、伊尹は、聖の任なる者なり、柳下恵は、聖の和なる者なり、孔子は、聖の時なる者なり、
通し番号 593 章内番号 6 章通し番号 132 識別番号 10_1_6
孔子之集めて大成すと謂う、集めて大成するは、金が声(の)べて玉が之を振(おさ)むなり、金が声(の)ぶは、条理を始めるなり、玉が之を振(おさ)めるは、条理を終えるなり、条理を始めるは、智の事なり、条理を終えるは、聖の事なり、
通し番号 594 章内番号 7 章通し番号 132 識別番号 10_1_7
智は譬(たとえ)ば則ち巧なり、聖は譬えば則ち力なり、由(なお)百歩の外に於て射(い)るがごときなり、其(その)至るは爾(なんじ)の力なり、其中(あた)るは爾の力に非ざるなり、
章番号 2 章通し番号 133
通し番号 595 章内番号 1 章通し番号 133 識別番号 10_2_1
北宮錡(ほくきゅうき)問いて曰く、周室爵禄を班(つら)ねるや、之を如何、
通し番号 596 章内番号 2 章通し番号 133 識別番号 10_2_2
孟子曰く、其詳は聞くことを得べからざるなり、諸侯其(その)己を害するを悪(にく)みて、皆其籍を去る、然り而して軻(か)は、嘗て其略を聞くなり、
通し番号 597 章内番号 3 章通し番号 133 識別番号 10_2_3
天子一位、公一位、侯一位、伯一位、子男(しだん)同じく一位、凡(みな)で五等なり、君一位、卿(けい)一位、大夫(たいふ)一位、上士一位、中士一位、下士一位、凡(みな)で六等なり、
通し番号 598 章内番号 4 章通し番号 133 識別番号 10_2_4
天子の制は、地方千里、公侯は皆方百里、伯は七十里、子男(しだん)は五十里、凡(みな)で四等なり、五十里なること能わずは、天子に達せず、諸侯に附し、附庸(ふよう)と曰う、
通し番号 599 章内番号 5 章通し番号 133 識別番号 10_2_5
天子の卿(けい)、地を受くること侯に視(なぞら)う、大夫地を受くること伯に視(なぞら)う、元士(げんし)地を受くること子男に視(なぞら)う、
通し番号 600 章内番号 6 章通し番号 133 識別番号 10_2_6
大国は地方百里、君は卿の禄を十にし、卿の禄は大夫を四にし、大夫は上士に倍し、上士は中士に倍し、中士は下士に倍し、下士は庶人の官に在る者と禄を同じくす、禄は以て其耕に代(か)うるに足るなり、
通し番号 601 章内番号 7 章通し番号 133 識別番号 10_2_7
次国は地方七十里、君は卿の禄を十にし、卿の禄は大夫を三にし、大夫は上士に倍し、上士は中士に倍し、中士は下士に倍し、下士は庶人の官に在る者と禄を同じくす、禄は以て其耕に代(か)うるに足るなり、
通し番号 602 章内番号 8 章通し番号 133 識別番号 10_2_8
小国は地方五十里、君は卿の禄を十にし、卿の禄は大夫を二にし、大夫は上士に倍し、上士は中士に倍し、中士は下士に倍し、下士は庶人の官に在る者と禄を同じくす、禄以て其耕に代(か)うるに足るなり、
通し番号 603 章内番号 9 章通し番号 133 識別番号 10_2_9
耕やす者の獲(え)る所は、一夫百畝なり、百畝之糞(つちか)えば、上農夫は九人を食(やしな)う、上の次は八人を食(やしな)う、中は七人を食(やしな)う、中の次は六人を食(やしな)う、下は五人を食(やしな)う、庶人官に在る者、其禄是を以て差と爲す、
章番号 3 章通し番号 134
通し番号 604 章内番号 1 章通し番号 134 識別番号 10_3_1
万章問いて曰く、敢えて友を問う、孟子曰く、長を挾(さしはさ)まず、貴を挾(さしはさ)まず、兄弟を挾(さしはさ)まずして友とす、友なるは、其徳を友とするなり、以て挾(さしはさ)むこと有るべからざるなり、
通し番号 605 章内番号 2 章通し番号 134 識別番号 10_3_2
孟献子(もうけんし)は、百乗の家なり、友五人有り、楽正裘(がくせいきゅう)、牧仲、其三人、則ち予之を忘る、献子の此五人者と友なるや、献子の家なるもの無きなり、此五人の者、亦献子の家有れば、則ち之と友ならず、
通し番号 606 章内番号 3 章通し番号 134 識別番号 10_3_3
惟(ただ)百乗の家のみ然りと爲すに非ざるなり、小国の君と雖も亦之有り、費恵公曰く、吾は子思に於て則ち之を師とす、吾は顔般(がんはん)に於ては則ち之を友とす、王順、長息は、則ち我に事(つか)える者なり、
通し番号 607 章内番号 4 章通し番号 134 識別番号 10_3_4
惟小国の君のみ然りと爲すに非ざるなり、大国の君と雖も亦之有り、晋の平公の亥唐(がいとう)に於るや、入れと云えば則ち入り、坐れと云えば則ち坐り、食べろと云えば則ち食べる、疏食(そし)菜羹(さいこう)と雖も、未だ嘗て飽かずんばあらず、蓋し敢えて飽かずんばあらざるなり、然れども此に終わるのみ、与(とも)に天位を共(とも)にせざるなり、与(とも)に天職を治めざるなり、与(とも)に天禄を食さざるなり、士の賢を尊ぶものなり、王公の賢を尊ぶに非ざるなり、
通し番号 608 章内番号 5 章通し番号 134 識別番号 10_3_5
舜尚(のぼ)り帝に見(まみ)ゆ、帝は甥(せい)を貳室(じしつ)に館す、亦舜を饗(きょう)す、迭(かわるがわる)賓主と爲る、是れ天子にして匹夫を友とするなり、
通し番号 609 章内番号 6 章通し番号 134 識別番号 10_3_6
下を用(もっ)て上を敬す、之を貴を貴(とうと)ぶと謂う、上用(もっ)て下を敬す、之を賢を尊(たっと)ぶと謂う、貴を貴(とうと)び、賢を尊(たっと)ぶは、其義一なり、
章番号 4 章通し番号 135
通し番号 610 章内番号 1 章通し番号 135 識別番号 10_4_1
万章問いて曰く、敢えて問う、交際は何をか心とする、孟子曰く、恭なり、
通し番号 611 章内番号 2 章通し番号 135 識別番号 10_4_2
曰く、之を卻(しりぞ)く、之を卻(しりぞ)くは、恭ならずと爲す、何ぞや、尊者之に賜う、其取る所のもの義か、不義かを曰い、而る後之を受く、是を以て恭ならずと爲す、故に卻(しりぞ)けざるなり、
通し番号 612 章内番号 3 章通し番号 135 識別番号 10_4_3
曰く、請う、辞以て之を卻(しりぞ)くこと無く、心以て之を卻け、其諸(これ)を民に取るの不義を曰うなり、而るに他辞以て受けること無し、不可か、曰く、其交わるに道以てし、其接するに礼以てすれば、斯(すなわ)ち孔子之を受く、
通し番号 613 章内番号 4 章通し番号 135 識別番号 10_4_4
万章曰く、今人を国門の外に禦(とど)める者有り、其交わるに道以てし、其餽(おく)るに礼以てすれば、斯(すなわ)ち禦(とど)めるを受くべきか、曰く、不可、康誥(こうこう)に曰く、人を貨に殺し越(おと)し、閔(びん)として死を畏れず、凡そ民譈(うら)みざる罔(な)し、是れ教を待たずして誅する者なり、殷は夏に受け、周は殷に受く、辞さざる所なり、今に於て烈と爲す、之を如何ぞ其之を受けん、
通し番号 614 章内番号 5 章通し番号 135 識別番号 10_4_5
曰く、今の諸侯は、之を民に取るや、猶禦(とど)めるがごときなり、苟(もし)其礼際を善くすれば、斯(すなわ)ち君子之を受く、敢えて問う、何の説ぞや、曰く、子以爲(おも)えらく、王なる者作(おこ)ること有れば、将に今の諸侯を比(つら)ねて之を誅せんとするか、其之に教(めい)じて改めず、而る後之を誅するか、夫(それ)其有にあらずして之を取る者は盗なりと謂うは、類を充(み)たし義の尽るに至るなり、孔子の魯に仕えるや、魯人猟較すれば、孔子亦猟較す、猟較猶可なり、況んや其賜を受くることをや、
通し番号 615 章内番号 6 章通し番号 135 識別番号 10_4_6
曰く、然らば則ち孔子の仕えるや、道を事とするに非ざるか、曰く、道を事とするなり、道を事として奚(なん)ぞ猟較するや、曰く、孔子先(ま)ず祭器を簿正し、四方の食以て簿正に供さず、曰く、奚ぞ去らざるや、曰く、之が兆(きざし)を爲すなり、兆以て行うに足る、而るに行われず、而して後去る、是を以て未だ嘗て三年を終わるまで淹(とど)まる所有らざるなり、
通し番号 616 章内番号 7 章通し番号 135 識別番号 10_4_7
孔子は見行可の仕有り、際可の仕有り、公養の仕有るなり、季桓子(きかんし)に於ては、見行可の仕なり、衛の霊公に於ては、際可の仕なり、衛の孝公に於ては、公養の仕なり、
章番号 5 章通し番号 136
通し番号 617 章内番号 1 章通し番号 136 識別番号 10_5_1
孟子曰く、仕えるは貧の爲に非ざるなり、而るに時有りて貧の爲乎(に)する、妻を娶(めと)るは養の爲にするに非ざるなり、而るに時有りて養の爲にする、
通し番号 618 章内番号 2 章通し番号 136 識別番号 10_5_2
貧の爲なる者は、尊を辞し卑に居る、富を辞し貧に居る、
通し番号 619 章内番号 3 章通し番号 136 識別番号 10_5_3
尊を辞し卑に居り、富を辞し貧に居るは、悪(いずく)にか宜(よろ)しき、抱関(ほうかん)撃柝(げきたく)なり、
通し番号 620 章内番号 4 章通し番号 136 識別番号 10_5_4
孔子嘗て委吏(いり)と爲る、曰く、会計当たるのみ、嘗て乗田と爲る、曰く、牛羊茁(さつ)として壮長するのみ、
通し番号 621 章内番号 5 章通し番号 136 識別番号 10_5_5
位卑(ひく)くして言高きは、罪なり、人の本朝に立ちて、道行われざるは、恥なり、
章番号 6 章通し番号 137
通し番号 622 章内番号 1 章通し番号 137 識別番号 10_6_1
万章曰く、士の諸侯に託せざるは、何ぞや、孟子曰く、敢えてせざるなり、諸侯が国を失い、而して後諸侯に託するは、礼なり、士の諸侯に託すは、礼にあらざるなり、
通し番号 623 章内番号 2 章通し番号 137 識別番号 10_6_2
万章曰く、君が之に粟を餽(おく)れば、則ち之を受けるか、曰く、之を受ける、之を受けるは何の義なるか、曰く、君の氓(たみ)に於るや、固(もと)より之を周(すく)う、
通し番号 624 章内番号 3 章通し番号 137 識別番号 10_6_3
曰く、之を周(すく)えば則ち受け、之に賜(たま)えば則ち受けず、何ぞや、曰く、敢えてせざるなり、曰く、敢えて問う、其敢えてせざるは何ぞや、曰く、抱関(ほうかん)撃柝(げきたく)の者、皆常職有りて以て上に食す、常職無くて上於(より)賜(たま)わる者は、以て不恭と爲すなり、
通し番号 625 章内番号 4 章通し番号 137 識別番号 10_6_4
曰く、君之を餽(おく)れば、則ち之を受けるのは、識らず、常に継(つづ)けるべきか、曰く、繆(ぼく)公の子思に於るや、亟(しばしば)問い、亟(しばしば)鼎肉(ていにく)を餽(おく)る、子思は悦(よろこ)ばず、卒(おわり)に於て、使者を摽(さしまね)き諸(これ)を大門の外に出し、北面、稽首(けいしゅ)、再拝して受けず、曰く、今にして後、君が犬馬にて伋(きゅう)を畜(やしな)うを知る、蓋し是自(よ)り台餽(おく)ること無きなり、賢を悦び挙げること能わず、亦養うこと能わざるなり、賢を悦ぶと謂うべきか、
通し番号 626 章内番号 5 章通し番号 137 識別番号 10_6_5
曰く、敢えて問う、国君が君子を養わんと欲すれば、如何(いか)なれば斯(すなわ)ち養うと謂うべし、曰く、君命以て之を将(おく)る、再拝、稽首して受ける、其後廩人(りんじん)粟を継(つづ)け、庖人(ほうじん)肉を継(つづ)け、君命以て之を将(おく)らず、子思以爲(おも)えらく、鼎肉は己をして僕僕爾(ぼくぼくじ)として亟(しばしば)拝せしめるなり、君子を養うの道に非ざるなり、
通し番号 627 章内番号 6 章通し番号 137 識別番号 10_6_6
堯の舜に於るや、其子九男は之に事(つか)えしめ、二女は焉(これ)に女(めあわ)せ、百官牛羊倉廩(りん)を備え、以て舜を畎畝(けんぽ)の中に養う、後に挙げて諸(これ)に上位を加う、故に曰く、王公が賢を尊ぶ者なり、
章番号 7 章通し番号 138
通し番号 628 章内番号 1 章通し番号 138 識別番号 10_7_1
万章曰く、敢えて問う、諸侯に見(まみ)えざるは、何の義ぞや、孟子曰く、国に在るを市井の臣と曰う、野に在るを草莽(そうもう)の臣と曰う、皆庶人を謂う、庶人は質(し)を伝(つた)え臣と爲らざれば、敢えて諸侯に見(まみ)えず、礼なり、
通し番号 629 章内番号 2 章通し番号 138 識別番号 10_7_2
万章曰く、庶人は之を召し役すれば、則ち往きて役す、君之に見(あ)うことを欲して之を召せば、則ち往きて之に見(まみ)えざるは、何ぞや、曰く、往きて役すは、義なり、往きて見(まみ)えるは、義ならざるなり、
通し番号 630 章内番号 3 章通し番号 138 識別番号 10_7_3
且(また)君の之に見(あ)わんと欲するや、何の爲ぞや、曰く、其多聞の爲なり、其賢の爲なり、曰く、其多聞の爲なるや、則ち天子師を召さず、而るに況んや諸侯をや、其賢の爲なるや、則ち吾未だ賢に見(あ)うことを欲して之を召すを聞かざるなり、
通し番号 631 章内番号 4 章通し番号 138 識別番号 10_7_4
繆公(ぼくこう)は亟(しばしば)子思に見(あ)いて曰く、古は千乗の国以て士を友とす、何如(いかん)、子思悦ばずして曰く、古の人言有り、曰く之に事(つか)えると云うか、豈(あに)之を友とすると云うことを曰わんや、子思の悦びざるや、豈曰わざらんや、位以てすれば則ち子は君なり我は臣なり、何ぞ敢えて君と友たるや、徳以てすれば則ち子は我に事える者なり、奚(なん)ぞ以て我と友たるべし、千乗の君之と友たるを求めて、得るべからざるなり、而るに況んや召すべきか、
通し番号 632 章内番号 5 章通し番号 138 識別番号 10_7_5
齊の景公田(かり)す、虞人(ぐじん)を招(まね)くに旌(せい)を以てし、至らず、将に之を殺さんとす、志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず、勇士は其元を喪(うしな)うを忘れず、孔子奚(なに)をか取る、其招に非ずして往かざるを取るなり、
通し番号 633 章内番号 6 章通し番号 138 識別番号 10_7_6
曰く、敢えて問う、虞人を招すは何を以てする、曰く、皮冠を以てす、庶人(しょじん)は旃(せん)を以てす、士は旂(き)を以てす、大夫は旌(せい)を以てす、
通し番号 634 章内番号 7 章通し番号 138 識別番号 10_7_7
大夫の招以て虞人(ぐじん)を招(まね)けば、虞人は死すとも敢えて往(ゆ)かず、士の招以て庶人を招けば、庶人豈敢えて往かんや、況んや不賢人の招以て賢人を招くに乎(おいて)をや、
通し番号 635 章内番号 8 章通し番号 138 識別番号 10_7_8
賢人に見(あ)わんと欲して其道以てせざるは、猶其入るを欲して之が門を閉じるがごときなり、夫(それ)義は路なり、礼は門なり、惟君子能く是(この)路に由り、是(この)門を出入するなり、詩に云う、周道は厎(し)の如し、其直は矢の如し、君子が履(ふ)む所なり、小人が視る所なり、
通し番号 636 章内番号 9 章通し番号 138 識別番号 10_7_9
万章曰く、孔子は、君が命じ召せば、駕(が)を俟(ま)たずして行く、然れば則ち孔子は非か、曰く、孔子は仕えるに当たり官職有りて、其官以て之を召すなり、
章番号 8 章通し番号 139
通し番号 637 章内番号 1 章通し番号 139 識別番号 10_8_1
孟子万章に謂いて曰く、一郷の善士は、斯(すなわ)ち一郷の善士を友とす、一国の善士は、斯(すなわ)ち一国の善士を友とす、天下の善士は、斯(すなわ)ち天下の善士を友とす、
通し番号 638 章内番号 2 章通し番号 139 識別番号 10_8_2
天下の善士を友とするを以て未だ足らずと爲す、又尚(のぼ)りて古の人を論じ、其詩を頌(しょう)し、其書を読む、其人を知らずして可か、是を以て其世を論ずるなり、是れ尚友なり、
章番号 9 章通し番号 140
通し番号 639 章内番号 1 章通し番号 140 識別番号 10_9_1
斉の宣王卿を問う、孟子曰く、王何の卿を之問うや、王曰く、卿同じからざるか、曰く、同じからず、貴戚(きせき)の卿有り、異姓の卿有り、王曰く、貴戚の卿を請い問う、曰く、君大過有れば則ち諫む、之を反覆して聴かざれば、則ち位を易(か)える、
通し番号 640 章内番号 2 章通し番号 140 識別番号 10_9_2
王勃然(ぼつぜん)として色を変ず、
通し番号 641 章内番号 3 章通し番号 140 識別番号 10_9_3
曰く、王、異(あや)しむこと勿れ、王が臣に問う、臣は敢えて正以て対(こた)えずんばあらず、
通し番号 642 章内番号 4 章通し番号 140 識別番号 10_9_4
王、色定まる、然る後異姓の卿を請い問う、曰く、君が過ち有れば則ち諫(いさ)む、之を反覆して聴かざれば、則ち去る、
11 告子章句上 gaò zǐ zhāng jù shàng
章番号 1 章通し番号 141
通し番号 643 章内番号 1 章通し番号 141 識別番号 11_1_1
告子曰く、性は、猶杞柳(きりゅう)のごときなり、義は、猶桮棬(はいけん)のごときなり、人の性以て仁義と爲すは、猶杞柳以て桮棬と爲すがごとし、
通し番号 644 章内番号 2 章通し番号 141 識別番号 11_1_2
孟子曰く、子能く杞柳の性に順(したが)いて、以て桮棬(はいけん)を爲(つく)るか、将(ある)いは杞柳(きりゅう)を戕賊(しょうぞく)して、後に以て桮棬(はいけん)を爲(つく)るか、如(も)し将(まさ)に杞柳を戕賊して、以て桮棬を爲らんとすれば、則ち亦将に人を戕賊して、以て仁義を爲さんとするか、天下の人を率(ひき)いて、仁義に禍(わざわい)するものは、必ず子の言なるかな、
章番号 2 章通し番号 142
通し番号 645 章内番号 1 章通し番号 142 識別番号 11_2_1
告子曰く、性は猶湍水(たんすい)のごときなり、諸を東方に決すれば則ち東に流れ、諸を西方に決すれば則ち西に流る、人の性の善、不善に於て分かれること無きや、猶水の東西に於て分かれること無きがごときなり、
通し番号 646 章内番号 2 章通し番号 142 識別番号 11_2_2
孟子曰く、水は信(まこと)に東西に於て分かれること無し、上下に於て分かれること無きか、人の性の善なるや、猶水の下に就(つ)くがごときなり、人は善ならざること有ること無し、水は下らざること有ること無し、
通し番号 647 章内番号 3 章通し番号 142 識別番号 11_2_3
今夫(それ)水は、搏(う)ちて之を躍(おど)らせば、顙(ひたい)を過ぎせしむべし、激して之を行(や)らば、山に在らしむべし、是れ豈水の性なるや、其勢則ち然るなり、人は不善を爲さしむべし、其性は亦猶是のごときなり、
章番号 3 章通し番号 143
通し番号 648 章内番号 1 章通し番号 143 識別番号 11_3_1
告子曰く、生を之性と謂う、
通し番号 649 章内番号 2 章通し番号 143 識別番号 11_3_2
孟子曰く、生を之性と謂うや、猶白を之白と謂うがごときか、曰く、然り、白羽の白や、猶白雪の白のごとし、白雪の白は、猶白玉の白のごときか、曰く、然り、
通し番号 650 章内番号 3 章通し番号 143 識別番号 11_3_3
然らば則ち犬の性は、猶牛の性のごとく、牛の性は、猶人の性のごときか、
章番号 4 章通し番号 144
通し番号 651 章内番号 1 章通し番号 144 識別番号 11_4_1
告子曰く、食色、性なり、仁は、内なり、外に非ざるなり、義は、外なり、内に非ざるなり、
通し番号 652 章内番号 2 章通し番号 144 識別番号 11_4_2
孟子曰く、何を以て仁は内、義は外と謂うや、曰く、彼は長(としうえ)にて我は之を長(としうえ)とす、長(としうえ)は我に有るに非ざるなり、猶彼は白くして我は之を白しとするがごとし、其白は外に従(よ)るなり、故に之を外と謂うなり、
通し番号 653 章内番号 3 章通し番号 144 識別番号 11_4_3
曰く、(異於)馬の白を白しとするや、以て人の白を白しとするに異なること無きなり、識らず、馬の長(としうえ)を長(としうえ)とするや、以て人の長(としうえ)を長(としうえ)とするに異なること無きか、且(また)謂(おも)え、長(としうえ)の者が義か、之を長(としうえ)とするものが義か、
通し番号 654 章内番号 4 章通し番号 144 識別番号 11_4_4
曰く、吾弟は則ち之を愛す、秦人の弟は則ち愛さざるなり、是れ我以て悦を爲すものなり、故に之を内と謂う、楚人の長(としうえ)を長(としうえ)とし、亦吾の長(としうえ)を長(としうえ)とする、是れ長(としうえ)以て悦を爲すものなり、故に之を外と謂うなり、
通し番号 655 章内番号 5 章通し番号 144 識別番号 11_4_5
曰く、秦人の炙(しゃ)を耆(たしな)むは、以て吾が炙を耆むに異なること無し、夫(それ)物も則ち亦然るもの有るなり、然らば則ち炙を耆(たしな)むは亦外に有るか、
章番号 5 章通し番号 145
通し番号 656 章内番号 1 章通し番号 145 識別番号 11_5_1
孟季子(もうきし)は公都子に問いて曰く、何を以て義は内と謂う、
通し番号 657 章内番号 2 章通し番号 145 識別番号 11_5_2
曰く、吾が敬を行う、故に之を内と謂うなり、
通し番号 658 章内番号 3 章通し番号 145 識別番号 11_5_3
郷人が伯兄(はくけい)於(より)一歳長ずれば、則ち誰をか敬す、曰く、兄を敬す、酌めば則ち誰をか先にす、曰く、先に郷人に酌む、敬する所は此に在り、長ずる所は彼に在り、果たして外に在り、内に由るに非ざるなり、
通し番号 659 章内番号 4 章通し番号 145 識別番号 11_5_4
公都子答えること能わず、以て孟子に告ぐ、孟子曰く、叔父(しゅくふ)を敬するか、弟を敬するか、彼将に曰わんとす、叔父を敬す、曰く、弟が尸(し)爲(た)らば、則ち誰をか敬す、彼将に曰わん弟を敬すと、子曰へ、悪くにか在る其叔父を敬すること、彼将に曰わん、位に在る故なり、子亦曰え、位に在る故なり、庸(つね)の敬は兄に在り、斯須(ししゅ)の敬は郷人に在り、
通し番号 660 章内番号 5 章通し番号 145 識別番号 11_5_5
季子は之を聞きて曰く、叔父を敬すときは則ち敬し、弟を敬するときは則ち敬す、果たして外に在り、内に由るに非ざるなり、公都子曰く、冬日は則ち湯を飮み、夏日は則ち水を飮む、然らば則ち飮食亦外に在るなり、
章番号 6 章通し番号 146
通し番号 661 章内番号 1 章通し番号 146 識別番号 11_6_1
公都子曰く、告子曰く、性は善無く不善無きなり、
通し番号 662 章内番号 2 章通し番号 146 識別番号 11_6_2
或るひと曰く、性は以て善と爲るべし、以て不善と爲るべし、是故に文武興れば、則ち民善を好む、幽厲(ゆうれい)興れば、則ち民暴を好む、
通し番号 663 章内番号 3 章通し番号 146 識別番号 11_6_3
或るひと曰く、性善なること有り、性不善なること有り、是の故に堯を以て君と爲して象(しょう)有り、瞽瞍(こそう)以て父と爲して舜有り、紂以て兄の子と爲し、且(かつ)以て君と爲して、微子啓、王子比干有り、
通し番号 664 章内番号 4 章通し番号 146 識別番号 11_6_4
今、性善を曰う、然らば則ち彼皆非か、
通し番号 665 章内番号 5 章通し番号 146 識別番号 11_6_5
孟子曰く、(乃若)其情は、則ち以て善を爲すべし、乃ち謂う所の善なり、
通し番号 666 章内番号 6 章通し番号 146 識別番号 11_6_6
夫(かの)不善を爲すが若きは、才の罪に非ざるなり、
通し番号 667 章内番号 7 章通し番号 146 識別番号 11_6_7
惻隠の心は、人皆之有り、羞悪(しゅうお)の心は、人皆之有り、恭敬の心は、人皆之有り、是非の心は、人皆之有り、惻隠の心は、仁なり、羞悪の心は、義なり、恭敬の心は、礼なり、是非の心は、智なり、仁義礼智は、外由(よ)り我を鑠(と)かすに非ざるなり、我固より之を有するなり、思わざるのみ、故に曰く、求めれば則ち之を得て、舍(す)てれば則ち之を失う、或いは相倍蓰(し)して算無きは、其才を尽すこと能わざるものなり、
通し番号 668 章内番号 8 章通し番号 146 識別番号 11_6_8
詩に曰く、天は蒸民を生ず、物有れば則(のり)有り、民は夷(い)を秉(と)り、是(この)懿(い)徳を好む、孔子曰く、此詩を爲(つく)る者、其(それ)道を知る乎(かな)、故に物有れば必ず則有り、民は夷(い)を秉(と)るなり、故に是(この)懿德を好む、
章番号 7 章通し番号 147
通し番号 669 章内番号 1 章通し番号 147 識別番号 11_7_1
孟子曰く、富歳は、子弟頼ること多く、凶歳は、子弟暴(そこな)うこと多し、天の才を降すは爾(かくのごと)く殊(こと)なるに非ざるなり、其以て其心を陥溺する所のもの然るなり、
通し番号 670 章内番号 2 章通し番号 147 識別番号 11_7_2
今夫(それ)麰麦(ぼうばく)、種を播(ま)きて之を耰(おお)う、其地同じく、之を樹えるの時も又同じければ、浡然(ぼつぜん)として生じ、日至の時に至り、皆熟す、同じからざる有りと雖も、則ち地に肥磽(こう)有りて、雨露の養、人事が斉(ひとし)からざるなり、
通し番号 671 章内番号 3 章通し番号 147 識別番号 11_7_3
故に凡そ類を同じくするものは、挙(みな)相い似るなり、何ぞ独り人に至りて之を疑わん、聖人は我と類を同じくするものなり、
通し番号 672 章内番号 4 章通し番号 147 識別番号 11_7_4
故に龍子曰く、足を知らずして屨(くつ)を爲(つく)り、我其蕢(あじか)を爲(つく)らざるを知るなり、屨の相似るは、天下の足同じければなり、
通し番号 673 章内番号 5 章通し番号 147 識別番号 11_7_5
口の味に於る、同じく耆(たしな)むもの有るなり、易牙は先に我が口の耆(たしな)む所を得る者なり、如(も)し口の味に於けるや、其性人と殊(こと)なること、犬馬の我と類を同じくせざる若からしめば、則ち天下何ぞ耆(たしな)むこと皆易牙の味に従わんや、味に至りては、天下易牙に期す、是れ天下の口相(あい)似たるなり、
通し番号 674 章内番号 6 章通し番号 147 識別番号 11_7_6
惟(これ)耳亦然り、声に至りては、天下師曠(こう)に期す、是れ天下の耳相似たるなり、
通し番号 675 章内番号 7 章通し番号 147 識別番号 11_7_7
惟(これ)目亦然り、子都に至りて、天下其姣(こう)を知らざる莫きなり、子都の姣を知らざる者は、目無き者なり、
通し番号 676 章内番号 8 章通し番号 147 識別番号 11_7_8
故に曰く、口の味に於るや、同じく耆(たしな)むこと有り、耳の声に於るや、同じく聴くこと有り、目の色に於るや、同じく美とすること有り、心に至りては、独り同じく然りとする所無きか、心の同じく然りとする所のものは何ぞや、謂う、理なり、義なり、聖人先ず我心の同じく然りとする所を得るのみ、故に理義の我が心を悦ばすことは、猶芻豢(すうかん)の我が口を悦ばすがごとし、
章番号 8 章通し番号 148
通し番号 677 章内番号 1 章通し番号 148 識別番号 11_8_1
孟子曰く、牛山の木嘗て美(うつく)しきなり、其大国に郊たることを以て、斧斤(ふきん)之を伐(き)る、以て美(うつく)しと爲すべけんや、是れ其日夜の息する所、雨露の潤(うるお)す所、萌蘖(ほうげつ)の生じること無きに非ず、牛羊又従(よ)りて之に牧す、是を以て彼(かの)若く濯濯(たくたく)なり、人其濯濯を見るや、以て未だ嘗て材有らずと爲す、此豈山の性ならんや、
通し番号 678 章内番号 2 章通し番号 148 識別番号 11_8_2
人に存するものと雖も、豈仁義の心無からんや、其良心を放つ所以のものは、亦猶斧斤の木に於るがごときなり、旦旦(たんたん)にして之を伐(き)る、以て美しと爲すべきか、其日夜の息する所、平旦の気、其好悪人と相近きもの幾希(すくな)きは、則ち其旦昼の爲す所、之を梏(こく)し亡くすること有り、之を梏すること反覆すれば、則ち其夜気以て存するに足らず、夜気以て存するに足らざれば、則ち其禽獣と違うこと遠からず、人其禽獣を見るや、以て未だ嘗て才有らずと爲すは、是れ豈人の情ならんや、
通し番号 679 章内番号 3 章通し番号 148 識別番号 11_8_3
故に苟(もし)其養を得れば、物、長(そだ)たざること無し、苟(もし)其養を失えば、物消えざること無し、
通し番号 680 章内番号 4 章通し番号 148 識別番号 11_8_4
孔子曰く、操(と)れば則ち存し、舍(す)てれば則ち亡(うしな)う、出入に時無し、其郷を知ること莫し、惟(これ)心の謂(いい)か、
章番号 9 章通し番号 149
通し番号 681 章内番号 1 章通し番号 149 識別番号 11_9_1
孟子曰く、王の不智或(あや)しむこと無かれ、
通し番号 682 章内番号 2 章通し番号 149 識別番号 11_9_2
天下生じ易き物有りと雖も、一日之を暴(あたた)め、十日之を寒(ひや)せば、未だ能く生ずるもの有らざるなり、吾見(まみ)えること亦(ただ)罕(まれ)なり、吾退きて之を寒(ひや)す者至る、吾萌(きざ)すこと有るを如何(いかん)せんや、
通し番号 683 章内番号 3 章通し番号 149 識別番号 11_9_3
今夫(それ)弈(えき)の数(わざ)爲るや、小さき数(わざ)なり、心を専らにし志(し)を致さざれば、則ち得ざるなり、弈秋は、国を通じての弈を善くする者なり、弈秋をして二人に弈を誨(おし)えしむ、其一人心を専らにして志を致す、惟弈秋之聴くことを爲す、一人之を聴くと雖も、一心に以爲(おも)えらく鴻鵠(こうこく)有りて将に至らんとす、弓繳(きゅうしゃく)を援(ひ)きて之を射んことを思わば、之と倶(とも)に学ぶと雖も、之に若かず、是れ其智若かざる爲か、曰く、然るに非ざるなり、
章番号 10 章通し番号 150
通し番号 684 章内番号 1 章通し番号 150 識別番号 11_10_1
孟子曰く、魚、我欲する所なり、熊掌(ゆうしょう)、亦我欲する所なり、二なるもの兼ねるを得べからざれば、魚を舍(す)てて熊掌を取るものなり、生、亦我欲する所なり、義、亦我欲する所なり、二なるもの兼ねるを得べからざれば、生を舍(す)てて義を取るものなり、
通し番号 685 章内番号 2 章通し番号 150 識別番号 11_10_2
生亦我欲する所、欲する所、生於(より)甚だしきもの有り、故に苟(いやしく)も得るを爲さざるなり、死亦我悪(にく)む所、悪む所死於(より)甚だしきもの有り、故に患(うれ)い辟(さ)けざる所有るなり、
通し番号 686 章内番号 3 章通し番号 150 識別番号 11_10_3
如(も)し人の欲する所、生より甚だしきもの莫からしめば、則ち凡そ以て生を得べきもの、何ぞ用いざらんや、人の悪む所、死より甚だしきもの莫からしめば、則ち凡そ以て患いを辟(さ)くべきもの、何ぞ爲さざらんや、
通し番号 687 章内番号 4 章通し番号 150 識別番号 11_10_4
是に由れば則ち生く、而るに用いざること有るなり、是に由れば則ち以て患いを辟(さ)くべし、而るに爲さざること有るなり、
通し番号 688 章内番号 5 章通し番号 150 識別番号 11_10_5
是故に欲する所、生より甚だしきもの有り、悪む所、死より甚だしきもの有り、独り賢者是心有るに非ざるなり、人皆之有り、賢者能く喪(うしな)うことなきのみ、
通し番号 689 章内番号 6 章通し番号 150 識別番号 11_10_6
一簞(たん)の食、一豆の羹(こう)、之を得れば則ち生く、得ざれば則ち死す、嘑爾(こじ)として之を与えれば、道を行く人受けず、蹴爾(しゅくじ)として之を与えれば、乞人(きつじん)屑(いさぎよ)しとせざるなり、
通し番号 690 章内番号 7 章通し番号 150 識別番号 11_10_7
万鍾は則ち礼義を弁ぜすして之を受く、万鍾我に何をか加えん、宮室の美、妻妾の奉、識る所の窮乏の者我に得る爲か、
通し番号 691 章内番号 8 章通し番号 150 識別番号 11_10_8
郷(さき)に身死するが爲にして受けず、今宮室の美の爲に之を爲す、郷(さき)に身死するが爲にして受けず、今妻妾の奉の爲に之を爲す、郷(さき)に身死するが爲にして受けず、今識る所の窮乏の者我に得る爲に之を爲す、是れ亦以て已(や)むべからざるか、此を之其本心を失うと謂う、
章番号 11 章通し番号 151
通し番号 692 章内番号 1 章通し番号 151 識別番号 11_11_1
孟子曰く、仁は、人の心なり、義は、人の路(みち)なり、
通し番号 693 章内番号 2 章通し番号 151 識別番号 11_11_2
其路を舍(す)てて由らず、其心を放ちて求めることを知らず、哀しいかな、
通し番号 694 章内番号 3 章通し番号 151 識別番号 11_11_3
人は雞犬の放(はな)れること有れば、則ち之を求めることを知る、心を放つこと有りて、求めることを知らず、
通し番号 695 章内番号 4 章通し番号 151 識別番号 11_11_4
学問の道他無し、其放心を求めるのみ、
章番号 12 章通し番号 152
通し番号 696 章内番号 1 章通し番号 152 識別番号 11_12_1
孟子曰く、今無名の指、屈して信(の)びざる有り、疾痛し事を害するに非ざるなり、如(も)し能く之を信(の)ばす者有れば、則ち秦楚の路を遠しとせず、指の人に若かざる爲なり、
通し番号 697 章内番号 2 章通し番号 152 識別番号 11_12_2
指人に若かざれば、則ち之を悪(にく)むを知る、心人に若かざれば、則ち悪むを知らず、此を之類を知らずと謂うなり、
章番号 13 章通し番号 153
通し番号 698 章内番号 1 章通し番号 153 識別番号 11_13_1
孟子曰く、拱(きょう)把(は)の桐(どう)梓(し)、人苟(いやしく)も之を生かさんと欲すれば、皆以て之を養う所のものを知る、身に至りて、以て養う所のものを知らず、豈身を愛すること桐梓に若かざらんや、思わざること甚だしきなり、
章番号 14 章通し番号 154
通し番号 699 章内番号 1 章通し番号 154 識別番号 11_14_1
孟子曰く、人の身に於るや、兼(おな)じく愛する所なり、兼(おな)じく愛する所なれば、則ち兼(おな)じく養う所なり、尺寸の膚も愛さざること無ければ、則ち尺寸の膚も養わざること無きなり、以て其善不善を考える所は、豈他に有らんや、己に於て之を取るのみ、
通し番号 700 章内番号 2 章通し番号 154 識別番号 11_14_2
体に貴賎有り、小大有り、小以て大を害すること無かれ、賎以て貴を害すること無かれ、其小を養う者は小人と爲る、其大を養う者は大人と爲る、
通し番号 701 章内番号 3 章通し番号 154 識別番号 11_14_3
今場師有り、其梧(ご)檟(か)を舍(す)て、其樲棘(じきょく)を養わば、則ち賎場師と爲す、
通し番号 702 章内番号 4 章通し番号 154 識別番号 11_14_4
其一指を養いて其肩背を失う、而して知らざるなり、則ち狼疾の人と爲すなり、
通し番号 703 章内番号 5 章通し番号 154 識別番号 11_14_5
飮食の人、則ち人之を賎(いや)しむ、其小を養い以て大を失う爲なり、
通し番号 704 章内番号 6 章通し番号 154 識別番号 11_14_6
飮食の人、失うこと有ること無ければ、則ち口腹豈適(ただ)に尺寸の膚の爲ならんや、
章番号 15 章通し番号 155
通し番号 705 章内番号 1 章通し番号 155 識別番号 11_15_1
公都子問いて曰く、鈞(ひと)しく是れ人なり、或いは大人と爲り、或いは小人と爲る、何ぞや、孟子曰く、其大体に従えば大人と爲る、其小体に従えば小人と爲る、
通し番号 706 章内番号 2 章通し番号 155 識別番号 11_15_2
曰く、鈞(ひと)しく是れ人なり、或いは其大体に従い、或いは其小体に従う、何ぞや、曰く、耳目の官は思わずして、物に蔽(おお)われる、物が物に交われば、則ち之を引くのみ、心の官は則ち思う、思えば則ち之を得る、思わざれば則ち得ざるなり、此は天の我に与える所のものにして、先に其大なるものに乎(おい)て立てば、則ち其小なるもの奪うこと能わざるなり、此は大人と爲るのみ、
章番号 16 章通し番号 156
通し番号 707 章内番号 1 章通し番号 156 識別番号 11_16_1
孟子曰く、天爵なるもの有り、人爵なるもの有り、仁義忠信、善を楽しみ倦(う)まざるは、此天爵なり、公卿大夫は、此人爵なり、
通し番号 708 章内番号 2 章通し番号 156 識別番号 11_16_2
古の人は、其天爵を脩めて、人爵之に従う、
通し番号 709 章内番号 3 章通し番号 156 識別番号 11_16_3
今の人、其天爵を脩め、以て人爵を要(もと)む、既に人爵を得て、其天爵を棄てるは、則ち惑の甚だしき者なり、終に亦必ず亡(うしな)うのみ、
章番号 17 章通し番号 157
通し番号 710 章内番号 1 章通し番号 157 識別番号 11_17_1
孟子曰く、貴を欲するは、人の同じ心なり、人人己に貴(とうと)きもの有り、思わざるのみ、
通し番号 711 章内番号 2 章通し番号 157 識別番号 11_17_2
人が貴(とうと)くする所のものは、良貴に非ざるなり、趙孟の貴くする所は、趙孟能く之を賎(いや)しくす、
通し番号 712 章内番号 3 章通し番号 157 識別番号 11_17_3
詩に云う、既に酔うに酒を以てし、既に飽(あ)くに徳を以てす、仁義に飽くを言うなり、人の膏(こう)粱(りょう)の味を願わざる所以なり、令聞広誉身に施す、人の文繡(ぶんしゅう)を願わざる所以なり、
章番号 18 章通し番号 158
通し番号 713 章内番号 1 章通し番号 158 識別番号 11_18_1
孟子曰く、仁の不仁に勝つや、猶水が火に勝つがごとし、今の仁を爲す者は、猶一杯の水を以て、一車の薪(しん)の火を救(とめ)るがごときなり、熄(や)まざれば、則ち之を水は火に勝たずと謂う、此は又不仁に与(くみす)るの甚だしきものなり、
通し番号 714 章内番号 2 章通し番号 158 識別番号 11_18_2
亦終(つい)に必ず亡(うしな)うのみ、
章番号 19 章通し番号 159
通し番号 715 章内番号 1 章通し番号 159 識別番号 11_19_1
孟子曰く、五穀は、種の美なるものなり、苟(もし)熟さずと爲せば、荑稗(ていはい)に如かず、夫(それ)仁亦之を熟するに在るのみ、
章番号 20 章通し番号 160
通し番号 716 章内番号 1 章通し番号 160 識別番号 11_20_1
孟子曰く、羿(げい)の人に射を教えるは、必ず彀(こう)に志す、学ぶ者亦必ず彀に志す、
通し番号 717 章内番号 2 章通し番号 160 識別番号 11_20_2
大匠(たいしょう)人に誨(おし)えるに、必ず規矩(きく)を以てす、学者亦必ず規矩を以てす、
12 告子章句下 gaò zǐ zhāng jù xià
章番号 1 章通し番号 161
通し番号 718 章内番号 1 章通し番号 161 識別番号 12_1_1
任(じん)人屋廬子(おくろし)に問うこと有りて曰く、礼と食孰れが重し、曰く、礼重し、
通し番号 719 章内番号 2 章通し番号 161 識別番号 12_1_2
色と礼と孰れが重し、
通し番号 720 章内番号 3 章通し番号 161 識別番号 12_1_3
曰く、礼重し、曰く、礼以て食すれば、則ち飢えて死す、礼以て食さざれば、則ち食を得る、必ず礼以てするか、親迎(しんげい)すれば、則ち妻を得ず、親迎せざれば、則ち妻を得る、必ず親迎するか、
通し番号 721 章内番号 4 章通し番号 161 識別番号 12_1_4
屋廬子対(こた)えること能わず、明日(みょうにち)鄒(すう)に之(ゆ)き以て孟子に告ぐ、孟子曰く、是に答えるに於(おい)て何か有らん、
通し番号 722 章内番号 5 章通し番号 161 識別番号 12_1_5
其本を揣(はか)らずして其末を斉(ひと)しくせば、方寸の木、岑樓(しんろう)より、高からしむべし
通し番号 723 章内番号 6 章通し番号 161 識別番号 12_1_6
金(かね)が羽より重きは、豈一鉤(こう)の金と一輿(よ)の羽の謂(いい)を謂わんや、
通し番号 724 章内番号 7 章通し番号 161 識別番号 12_1_7
食の重きものを取りて、礼の軽きものと之を比せば、奚ぞ翅(ただ)に食重きのみならんや、色の重きものを取りて、礼の軽きものと之を比せば、奚ぞ翅(ただ)に色重きのみならんや、
通し番号 725 章内番号 8 章通し番号 161 識別番号 12_1_8
往きて之に応(こた)えて曰え、兄の臂(うで)を紾(ねじ)りて之が食を奪えば、則ち食を得る、紾(ねじ)らざれば、則ち食を得ず、則ち将に之を紾(ねじ)らんとするか、東家の牆(かき)を踰(こ)えて其処子を摟(ひ)けば、則ち妻を得る、摟(ひ)かざれば、則ち妻を得ず、則ち将に之を摟(ひ)かんとするか、
章番号 2 章通し番号 162
通し番号 726 章内番号 1 章通し番号 162 識別番号 12_2_1
曹交問いて曰く、人皆以て堯舜と爲るべし、諸有りや、孟子曰く、然り、
通し番号 727 章内番号 2 章通し番号 162 識別番号 12_2_2
交聞く、文王十尺、湯九尺、今、交九尺四寸以て長し、粟(ぞく)を食するのみ、如何(いかん)すれば則ち可か、
通し番号 728 章内番号 3 章通し番号 162 識別番号 12_2_3
曰く、奚(なん)ぞ是に有らん、亦(ただ)之を爲すのみ、人此に有り、力、一匹雛(ぼくすう)に勝(た)えること能わざれば、則ち力無き人と爲す、今、百鈞(きん)を挙げると曰わば、則ち力有る人と爲す、然らば則ち烏獲(うかく)の任を挙げれば、是亦烏獲爲(た)るのみ、夫人豈勝(た)えざる以て患いと爲さんや、爲さざるのみ、
通し番号 729 章内番号 4 章通し番号 162 識別番号 12_2_4
徐行して長者に後る、之を弟と謂う、疾行して長者に先んず、之を不弟と謂う、夫(それ)徐行は、豈人の能わざる所かな、爲さざる所なり、堯舜の道は、孝弟のみ、
通し番号 730 章内番号 5 章通し番号 162 識別番号 12_2_5
子堯の服を服し、堯の言を誦(い)い、堯の行を行えば、是れ堯のみ、子桀の服を服とし、桀の言を誦(い)い、桀の行を行えば、是れ桀のみ、
通し番号 731 章内番号 6 章通し番号 162 識別番号 12_2_6
曰く、交は鄒(すう)君に見(まみ)えることを得ば、以て館を仮るべし、願わくば留まりて業を門に受けん、
通し番号 732 章内番号 7 章通し番号 162 識別番号 12_2_7
曰く、夫(それ)道は、大路の若き然(なり)、豈知り難きかな、人、求めざるを病(や)むのみ、子帰りて之を求めれば、余師有り、
章番号 3 章通し番号 163
通し番号 733 章内番号 1 章通し番号 163 識別番号 12_3_1
公孫丑問いて曰く、高子曰く、小弁は、小人の詩なり、孟子曰く、何を以て之を言う、曰く、怨む、
通し番号 734 章内番号 2 章通し番号 163 識別番号 12_3_2
曰く、固なるかな、高叟(そう)の詩を爲(おさ)めるや、人此に有り、越人弓を関(ひ)きて之を射る、則ち己談(かた)り笑いて之を道(い)わん、他無し、之に疏(とお)きなり、其兄弓を関(ひ)きて之を射る、則己涕(なみだ)を垂(た)らし、泣いて之を道(い)わん、他無し、之と戚なり、小弁の怨は、親(おや)を親(あい)するなり、親を親(あい)すは、仁なり、固なる夫(かな)、高叟の詩を爲(おさ)めるや、
通し番号 735 章内番号 3 章通し番号 163 識別番号 12_3_3
曰く、凱風(がいふう)何を以て怨みざる、
通し番号 736 章内番号 4 章通し番号 163 識別番号 12_3_4
曰く、凱風は、親(おや)の過ち小なるものなり、小弁は、親の過ち大なるものなり、親の過ち大にして怨みざるは、是れ愈(ますます)疏(うと)きなり、親の過ち小にして怨むは、是れ磯(き)すべからざるなり、愈(ますます)疏きは、不孝なり、磯すべからざるは、亦不孝なり、
通し番号 737 章内番号 5 章通し番号 163 識別番号 12_3_5
孔子曰く、舜は其至孝なり、五十にして慕(おも)う、
章番号 4 章通し番号 164
通し番号 738 章内番号 1 章通し番号 164 識別番号 12_4_1
宋牼(そうこう)将に楚に之かんとす、孟子は石丘に於て遇(あ)う、
通し番号 739 章内番号 2 章通し番号 164 識別番号 12_4_2
曰く、先生将に何(いずく)に之(ゆ)かんとす、
通し番号 740 章内番号 3 章通し番号 164 識別番号 12_4_3
曰く、吾秦楚兵を構(かま)うと聞く、我将に楚王に見(まみ)え、説(と)いて之を罷(や)めんとす、楚王悦(よろこ)ばざれば、我將に秦王に見え、説きて之を罷めんとす、二王我将に遇(あ)う所有らんとす、
通し番号 741 章内番号 4 章通し番号 164 識別番号 12_4_4
曰く、軻や請う、其詳を問うこと無し、願わくば其指を聞かん、之に説くに将に何如(いかん)せんとす、曰く、我将に其利ならざるを言わんとするなり、曰く、先生の志は則ち大なり、先生の号は則ち不可なり、
通し番号 742 章内番号 5 章通し番号 164 識別番号 12_4_5
先生利以て秦楚の王に説けば、秦楚の王利に悦んで、以て三軍の師を罷(や)む、是れ三軍の士罷(や)めるを楽しみて利を悦ぶなり、人臣爲(た)る者、利を懐(おも)い以て其君に事える、人の子爲(た)る者、利を懐(おも)い以て其父に事える、人の弟爲(た)る者、利を懐(おも)い以て其兄に事える、是れ君臣父子兄弟、終(つい)に仁義を去り、利を懐(おも)い以て相接す、然り而して亡びざる者、未だ之有らざるなり、
通し番号 743 章内番号 6 章通し番号 164 識別番号 12_4_6
先生仁義以て秦楚の王に説けば、秦楚の王仁義に悦びて、三軍の師を罷める、是れ三軍の士罷めるを楽しみて仁義を悦ぶなり、人臣爲(た)る者、仁義を懐(おも)い以て其君に事える、人の子爲(た)る者、仁義を懐(おも)い以て其父に事える、人の弟爲る者、仁義を懐(おも)い以て其兄に事える、是れ君臣父子兄弟、利を去り仁義を懐(おも)い以て相接するなり、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、何ぞ必ず利を曰わん、
章番号 5 章通し番号 165
通し番号 744 章内番号 1 章通し番号 165 識別番号 12_5_1
孟子鄒に居る、季任(きじん)任の処守(しょしゅ)爲(た)り、幣以て交わる、之を受けて報ぜず、平陸に処(お)る、儲子(ちょし)相爲(た)り、幣以て交わる、之を受けて報ぜず、
通し番号 745 章内番号 2 章通し番号 165 識別番号 12_5_2
他日鄒由(よ)り任に之(ゆ)く、季子に見(あ)う、平陸由(よ)り斉に之く、儲子(きし)に見(あ)わず、屋廬子(おくろし)喜んで曰く、連、間を得る、
通し番号 746 章内番号 3 章通し番号 165 識別番号 12_5_3
問いて曰く、夫子(ふうし)任(じん)に之き季子に見(あ)う、斉に之き儲子(ちょし)に見(あ)わず、其相爲(た)る爲(ため)か、
通し番号 747 章内番号 4 章通し番号 165 識別番号 12_5_4
曰く、非なり、書に曰く、享(きょう)は儀(ぎ)を多くす、儀が物に及ばざるは享さずと曰う、惟(これ)志(こころ)を享に役(もち)いず、
通し番号 748 章内番号 5 章通し番号 165 識別番号 12_5_5
其享(きょう)を成さざる爲(ため)なり、
通し番号 749 章内番号 6 章通し番号 165 識別番号 12_5_6
屋廬子悦ぶ、或るひと之に問う、屋廬子曰く、季子は鄒に之くことを得ず、儲子は平陸に之くことを得る、
章番号 6 章通し番号 166
通し番号 750 章内番号 1 章通し番号 166 識別番号 12_6_1
淳于髠(じゅんうこん)曰く、名実を先にする者は、人の爲(ため)にするなり、名実を後にする者は、自らの爲(ため)にするなり、夫子三卿の中に在り、名実未だ上下に加(くわ)わらずして之を去る、仁者固より此如きか、
通し番号 751 章内番号 2 章通し番号 166 識別番号 12_6_2
孟子曰く、下位に居り、賢以て不肖に事えざる者は、伯夷なり、五たび湯に就き、五たび桀に就く者は、伊尹なり、汙君を悪まず、小官を辞せざる者は、柳下恵なり、三子(し)は道を同じくせず、其趨(すう)一なり、一は何ぞや、曰く、仁なり、君子亦(ただ)仁のみ、何ぞ必ず同じからん、
通し番号 752 章内番号 3 章通し番号 166 識別番号 12_6_3
曰く、魯の繆公(ぼくこう)の時、公儀子が政を爲す、子柳、子思臣爲(た)り、魯の削らるるや滋(ますます)甚だし、是若きか、賢者の国に益無きや、
通し番号 753 章内番号 4 章通し番号 166 識別番号 12_6_4
曰く、虞(ぐ)は百里奚(ひゃくりけい)を用いずして亡ぶ、秦の穆公は之を用いて霸たり、賢を用いざれば則ち亡ぶ、削らるることを何ぞ得べきか、
通し番号 754 章内番号 5 章通し番号 166 識別番号 12_6_5
曰く、昔者(むかし)王豹(おうひょう)淇(き)に処(お)る、而して河西善く謳(うた)う、綿駒(めんく)高唐に処(お)る、而して斉右善く歌う、華周、杞梁(きりょう)の妻善く其夫を哭(こく)す、而して国俗を変える、諸を内に有すれば、必ず諸を外に形(あらわ)す、其事を爲して其功無き者は、髠未だ嘗て之を睹(み)ざるなり、是(この)故に賢者無きなり、有れば則ち髠必ず之を識る、
通し番号 755 章内番号 6 章通し番号 166 識別番号 12_6_6
曰く、孔子魯の司寇(しこう)と爲る、用いられず、従いて祭る、燔肉(はんにく)至らず、冕(べん)を税(ぬ)がずして行(さ)る、知らざる者は以て肉の爲(ため)と爲すなり、其知る者は以て礼無き爲(ため)と爲すなり、乃(そこ)で孔子は則ち微罪以て行(さ)ることを欲す、苟(いやしく)も去るを爲すを欲せず、君子の爲す所は、衆人固より識らざるなり、
章番号 7 章通し番号 167
通し番号 756 章内番号 1 章通し番号 167 識別番号 12_7_1
孟子曰く、五霸は、三王の罪人なり、今の諸侯は、五霸の罪人なり、今の大夫は、今の諸侯の罪人なり、
通し番号 757 章内番号 2 章通し番号 167 識別番号 12_7_2
天子が諸侯に適くを巡狩(じゅんしゅ)と曰う、諸侯が天子に朝するを述職(じゅつしょく)と曰う、春は耕を省(み)て足らざるを補う、秋は斂(れん)を省(み)て給(た)らざるを助く、其疆に入り、土地辟(ひら)け、田野治まり、老を養い賢を尊び、俊傑位に在れば、則ち慶有り、慶するに地を以てする、其疆に入り、土地荒蕪(こうぶ)、老を遺(す)て賢を失い、掊克(ほうこく)位に在れば、則ち讓(せめ)有り、一たび朝さざれば、則ち其爵を貶(おと)し、再び朝さざれば、則ち其地を削る、三たび朝さざれば、則ち六師之を移す、是故に天子は討(とう)して伐(ばつ)せず、諸侯は伐して討せず、五霸は、諸侯を摟(ひ)き以て諸侯を伐つものなり、故に曰く、五霸は、三王の罪人なり、
通し番号 758 章内番号 3 章通し番号 167 識別番号 12_7_3
五霸は、桓公盛と爲す、葵丘の(ききゅう)の会、諸侯は牲を束(しば)り、書を載(の)せて血を歃(すす)らず、初命に曰く、不孝を誅(せ)めよ、樹子を易えること無かれ、妾以て妻と爲すこと無かれ、再命に曰く、賢を尊び才を育(はぐく)み、以て有徳を彰(あきら)かにせよ、三命に曰く、老を敬(うやま)い幼を慈(いつくし)め、賓旅を忘れること無かれ、四命に曰く、士は官を世(よよ)にすること無かれ、官の事摂(か)ねること無かれ、士を取るは必ず得よ、専(もっぱ)ら大夫を殺すこと無かれ、五命に曰く、防(つつみ)を曲げること無かれ、糴(てき)するを遏(と)めること無かれ、封(ほう)有りて告げざること無かれ、曰く、凡そ我同盟の人は、既に盟(ちか)うの後、言(ここ)に好(よしみ)に帰す、今の諸侯は、皆此五禁を犯す、故に曰く、今の諸侯は、五霸の罪人なり、
通し番号 759 章内番号 4 章通し番号 167 識別番号 12_7_4
君の悪を長(そだ)てるは其罪小なり、君の悪を逢(むか)えるは其罪大なり、今の大夫は、皆君の悪を逢(むか)える、故に曰く、今の大夫は、今の諸侯の罪人なり、
章番号 8 章通し番号 168
通し番号 760 章内番号 1 章通し番号 168 識別番号 12_8_1
魯、慎子をして將軍爲(た)らしめんと欲す、
通し番号 761 章内番号 2 章通し番号 168 識別番号 12_8_2
孟子曰く、民を教えずして之を用いる、之を民に殃(わざわ)いすと謂う、民に殃する者は、堯舜の世に於て容(い)れられず、
通し番号 762 章内番号 3 章通し番号 168 識別番号 12_8_3
一たび戦い斉に勝ち、遂に南陽を有(たも)つ、然れども且(なお)不可なり、
通し番号 763 章内番号 4 章通し番号 168 識別番号 12_8_4
慎子勃然(ぼつぜん)として悦(よろこ)ばずして曰く、此則ち滑釐(かつり)の識らざる所なり、
通し番号 764 章内番号 5 章通し番号 168 識別番号 12_8_5
曰く、吾明かに子に告げん、天子の地方千里なり、千里ならざれば、以て諸侯を待つに足らず、諸侯の地方百里、百里ならざれば、以て宗廟の典籍を守るに足らず、
通し番号 765 章内番号 6 章通し番号 168 識別番号 12_8_6
周公の魯に封ぜられるは、方百里爲(た)るなり、地足らざるに非ず、而るに百里に倹す、太公の斉に封ぜられるや、亦方百里爲(た)るなり、地足らざるに非ざるなり、而るに百里に倹す、
通し番号 766 章内番号 7 章通し番号 168 識別番号 12_8_7
今魯方百里なるもの五、子以爲(おも)えらく、王者作(おこ)ること有れば、則ち魯損(へ)る所在るか、益(ま)す所在るか、
通し番号 767 章内番号 8 章通し番号 168 識別番号 12_8_8
徒(ただ)諸を彼に取り以て此に与えるは、然(すなわ)ち且(なお)仁者爲さず、況んや人を殺し以て之を求めるに於てをや、
通し番号 768 章内番号 9 章通し番号 168 識別番号 12_8_9
君子の君に事えるや、務めて其君を引き、以て道に当たり、仁に志さしむのみ、
章番号 9 章通し番号 169
通し番号 769 章内番号 1 章通し番号 169 識別番号 12_9_1
孟子曰く、今の君に事える者曰く、我能く君の爲に土地を辟(ひら)き、府庫を充(みた)す、今の謂う所の良臣は、古の謂う所の民の賊なり、君が道に郷(むか)わず、仁に志さずして、之を富ますを求む、是れ桀を富ますなり、
通し番号 770 章内番号 2 章通し番号 169 識別番号 12_9_2
我能く君の爲に与国を約し、戦えば必ず克(か)つ、今謂う所の良臣なり、古謂う所の民の賊なり、君道に郷(むか)わず、仁に志さずして、之が爲に強いて戦うをことを求めれば、是れ桀を輔(たす)けるなり、
通し番号 771 章内番号 3 章通し番号 169 識別番号 12_9_3
今の道に由り、今の俗を変えること無ければ、之に天下を与えると雖も、一朝も居ること能わざるなり、
章番号 10 章通し番号 170
通し番号 772 章内番号 1 章通し番号 170 識別番号 12_10_1
白圭曰く、吾二十にして一を取らんと欲す、何如(いかん)、
通し番号 773 章内番号 2 章通し番号 170 識別番号 12_10_2
孟子曰く、子の道は、貉(はく)の道なり、
通し番号 774 章内番号 3 章通し番号 170 識別番号 12_10_3
万室の国、一人陶(とう)す、則ち可か、曰く、不可、器(うつわ)用に足らざるなり、
通し番号 775 章内番号 4 章通し番号 170 識別番号 12_10_4
曰く、夫(それ)貉は、五穀生ぜず、惟黍(きび)之に生ず、城郭宮室、宗廟祭祀の礼無し、諸侯の幣帛(へいはく)饔飧(ようそん)無し、百官(6有司無し、故に二十に一を取りて足るなり、
通し番号 776 章内番号 5 章通し番号 170 識別番号 12_10_5
今中国に居り、人倫を去(す)て、君子無ければ、之如何(いかん)ぞ其可ならん、
通し番号 777 章内番号 6 章通し番号 170 識別番号 12_10_6
陶以て寡なければ、且(なお)以て国を爲(おさ)むべからず、況んや君子無きをや、
通し番号 778 章内番号 7 章通し番号 170 識別番号 12_10_7
之を堯舜の道より軽くせんと欲する者は、大貉(はく)、小貉なり、之を堯舜の道より重くせんと欲する者は、大桀、小桀なり、
章番号 11 章通し番号 171
通し番号 779 章内番号 1 章通し番号 171 識別番号 12_11_1
白圭曰く、丹の水を治めるや禹に愈(まさ)る、
通し番号 780 章内番号 2 章通し番号 171 識別番号 12_11_2
孟子曰く、子過(あやま)てり、禹の水を治めるは、水の道なり、
通し番号 781 章内番号 3 章通し番号 171 識別番号 12_11_3
是故に禹は四海以て壑(がく)と爲す、今吾子(ごし)鄰国以て壑と爲す、
通し番号 782 章内番号 4 章通し番号 171 識別番号 12_11_4
水が逆行する、之を洚水(こうずい)と謂う、洚水は、洪水なり、仁人の悪む所なり、吾子過てり、
章番号 12 章通し番号 172
通し番号 783 章内番号 1 章通し番号 172 識別番号 12_12_1
孟子曰く、君子は亮(りょう)ならず、執を悪(にく)む、
章番号 13 章通し番号 173
通し番号 784 章内番号 1 章通し番号 173 識別番号 12_13_1
魯は楽正子(がくせいし)をして政を爲さしめんと欲す、孟子曰く、吾之を聞き、喜びて寐(ねむ)らず、
通し番号 785 章内番号 2 章通し番号 173 識別番号 12_13_2
公孫丑曰く、楽正子強か、曰く、否、知慮有るか、曰く、否、聞識多きか、曰く、否、
通し番号 786 章内番号 3 章通し番号 173 識別番号 12_13_3
然らば則ち奚爲(なんす)れぞ喜びて寐(ねむ)らず、
通し番号 787 章内番号 4 章通し番号 173 識別番号 12_13_4
曰く、其人と爲りや善を好む、
通し番号 788 章内番号 5 章通し番号 173 識別番号 12_13_5
善を好めば足るか、
通し番号 789 章内番号 6 章通し番号 173 識別番号 12_13_6
曰く、善を好めば天下に優たり、而して況んや魯国をや、
通し番号 790 章内番号 7 章通し番号 173 識別番号 12_13_7
夫(それ)苟(もし)善を好めば、則ち四海の内、皆将に千里を軽しとして来たり、之に告げるに善を以てす、
通し番号 791 章内番号 8 章通し番号 173 識別番号 12_13_8
夫(それ)苟(もし)善を好まざれば、則ち人将に曰わんとす、訑訑(いい)として、予は既已(すで)に之を知る、訑訑(いい)の声音顔色は、人を千里の外に距(と)める、士千里の外に止(と)まれば、則ち讒諂(ざんてん)面諛(めんゆ)の人至る、讒諂(ざんてん)面諛(めんゆ)の人と居れば、国治まることを欲して、得べきか、
章番号 14 章通し番号 174
通し番号 792 章内番号 1 章通し番号 174 識別番号 12_14_1
陳子曰く、古の君子、何如(いかん)せば則ち仕う、孟子曰く、就(つ)く所三、去る所三、
通し番号 793 章内番号 2 章通し番号 174 識別番号 12_14_2
之を迎えるに敬を致し以て礼有り、将に其言を行わんとすると言うならば、則ち之に就く、礼貌未だ衰えずとも、言行われざるや、則ち之を去る、
通し番号 794 章内番号 3 章通し番号 174 識別番号 12_14_3
其次は、未だ其言行わずと雖も、之を迎えるに敬を致し以て礼有れば、則ち之に就く、礼貌衰えば、則ち之を去る、
通し番号 795 章内番号 4 章通し番号 174 識別番号 12_14_4
其下、朝食せず、夕食せず、飢餓で門戸を出ること能わず、君之を聞きて曰く、吾大なるものは其道を行うこと能わず、又其言に従うこと能わざるなり、我が土地に飢餓せしむるは、吾之を恥ず、之を周(すく)えば、亦受けるべきなり、死を免れるのみ、
章番号 15 章通し番号 175
通し番号 796 章内番号 1 章通し番号 175 識別番号 12_15_1
孟子曰く、舜は畎畝(けんぽ)の中に発(おこ)り、傅説(ふえつ)は版築の閒に挙げられ、膠鬲(こうかく)は魚塩の中に挙げられ、管夷吾は士に挙げられ、孫叔敖(そんしゅくごう)は海に挙げられ、百里奚(ひゃくりけい)は市に挙げられる、
通し番号 797 章内番号 2 章通し番号 175 識別番号 12_15_2
故に天将に大任を是人に降さんとするや、必ず先ず其心志を苦しめ、其筋骨を労し、其体膚を餓やし、其身を空乏し、行えば其爲す所を拂乱(ふつらん)す、以て心を動かし性を忍び、其能わざる所を曽益(ぞうえき)する所なり、
通し番号 798 章内番号 3 章通し番号 175 識別番号 12_15_3
人は恒(よ)く、過ちて然る後能く改む、心に困(くる)しみ、慮に衡(よこたわ)り、而して後作(おこ)る、色に徵し、声に発して、而して後喩(さと)る、
通し番号 799 章内番号 4 章通し番号 175 識別番号 12_15_4
入れば則ち法家拂士(ひつし)無く、出ずれば則ち敵国外患無きものは、国恒(よ)く亡ぶ、
通し番号 800 章内番号 5 章通し番号 175 識別番号 12_15_5
然る後知る、生ずは憂患に於てなり、死すは安楽に於てなり、
章番号 16 章通し番号 176
通し番号 801 章内番号 1 章通し番号 176 識別番号 12_16_1
孟子曰く、教え亦多術なり、予之を教誨するを屑(いさぎよ)しとせざるは、是れ亦之を教誨(きょうかい)するのみ、
13 盡心章句上 jìn xīn zhāng jù shàng
章番号 1 章通し番号 177
通し番号 802 章内番号 1 章通し番号 177 識別番号 13_1_1
孟子曰く、其心を尽す者は、其性を知るなり、其性を知れば、則ち天を知る、
通し番号 803 章内番号 2 章通し番号 177 識別番号 13_1_2
其心を存し、其性を養うは、以て天に事える所なり、
通し番号 804 章内番号 3 章通し番号 177 識別番号 13_1_3
殀寿(ようじゅ)貳(に)とせず、身を脩め以て之を俟(ま)つ、以て命を立てる所なり、
章番号 2 章通し番号 178
通し番号 805 章内番号 1 章通し番号 178 識別番号 13_2_1
孟子曰く、命に非ざる莫きなり、順(したが)い其正を受ける、
通し番号 806 章内番号 2 章通し番号 178 識別番号 13_2_2
是の故に命を知る者は、巌牆(がんしょう)の下に立たず、
通し番号 807 章内番号 3 章通し番号 178 識別番号 13_2_3
其道を尽して死ぬは、正命なり、
通し番号 808 章内番号 4 章通し番号 178 識別番号 13_2_4
桎梏(しっこく)して死するは、正命に非ざるなり、
章番号 3 章通し番号 179
通し番号 809 章内番号 1 章通し番号 179 識別番号 13_3_1
孟子曰く、求めれば則ち之を得る、舍(す)てれば則ち之を失う、是れ求めて得るに益有るなり、求めることが我に在るものなり、
通し番号 810 章内番号 2 章通し番号 179 識別番号 13_3_2
之を求めるに道有り、之を得るに命有り、是れ求めて得るに益無きなり、求めることが外に在るものなり、
章番号 4 章通し番号 180
通し番号 811 章内番号 1 章通し番号 180 識別番号 13_4_1
孟子曰く、万物皆我に備わる、
通し番号 812 章内番号 2 章通し番号 180 識別番号 13_4_2
身に反(かえ)りて誠、楽(たの)しみ焉(これ)より大なるは莫し、
通し番号 813 章内番号 3 章通し番号 180 識別番号 13_4_3
恕を強(つと)めて行う、仁を求めるは焉(これ)より近きは莫し、
章番号 5 章通し番号 181
通し番号 814 章内番号 1 章通し番号 181 識別番号 13_5_1
孟子曰く、之を行いて著(あきら)かならず、習いて察(つまびら)かならず、終身之に由りて、其道を知らざる者衆(おお)きなり、
章番号 6 章通し番号 182
通し番号 815 章内番号 1 章通し番号 182 識別番号 13_6_1
孟子曰く、人以て恥無かるべからず、恥ずること無きを之恥ずれば、恥無し、
章番号 7 章通し番号 183
通し番号 816 章内番号 1 章通し番号 183 識別番号 13_7_1
孟子曰く、恥の人に於るや大なり、
通し番号 817 章内番号 2 章通し番号 183 識別番号 13_7_2
機変の巧を爲す者は、恥を用いる所無し、
通し番号 818 章内番号 3 章通し番号 183 識別番号 13_7_3
恥じざるが人に若かざれば、何ぞ人に若くこと有らん、
章番号 8 章通し番号 184
通し番号 819 章内番号 1 章通し番号 184 識別番号 13_8_1
孟子曰く、古の賢王は善を好みて勢を忘る、古の賢士何ぞ独り然らざらん、其道を楽しみて人の勢を忘る、故に王公は敬を致し礼を尽さざれば、則ち亟(しばしば)之に見(あ)うことを得ず、見(あ)うこと且(すら)猶(なお)亟(しばしば)することを得ず、而して況んや得て之を臣とすることをや、
章番号 9 章通し番号 185
通し番号 820 章内番号 1 章通し番号 185 識別番号 13_9_1
孟子、宋句践に謂いて曰く、子、遊を好む乎(かな)、吾子に遊を語らん、
通し番号 821 章内番号 2 章通し番号 185 識別番号 13_9_2
人之を知る、亦(ただ)囂囂(ごうごう)たり、人知らず、亦(ただ)囂囂たり、
通し番号 822 章内番号 3 章通し番号 185 識別番号 13_9_3
曰く、何如(いか)なれば斯(すなわ)ち以て囂囂(ごうごう)たるべし、曰く、徳を尊(たっと)び義を楽しめば、則ち以て囂囂たるべし、
通し番号 823 章内番号 4 章通し番号 185 識別番号 13_9_4
故に士は窮して義を失わず、達して道を離れず、
通し番号 824 章内番号 5 章通し番号 185 識別番号 13_9_5
窮して義を失わず、故に士は己を得る、達して道を離れず、故に民は望みを失わず、
通し番号 825 章内番号 6 章通し番号 185 識別番号 13_9_6
古の人は、志を得れば、沢民に加わる、志を得ざれば、身を脩め世に見(あらわ)る、窮すれば則ち独り其身を善くす、達すれば則ち天下を兼(おな)じく善くす、
章番号 10 章通し番号 186
通し番号 826 章内番号 1 章通し番号 186 識別番号 13_10_1
孟子曰く、文王を待ちて後興る者は、凡民なり、夫(かの)豪傑の士の若きは、文王無しと雖も猶興る、
章番号 11 章通し番号 187
通し番号 827 章内番号 1 章通し番号 187 識別番号 13_11_1
孟子曰く、之に附すに韓魏の家を以てす、如(も)し其自ら視ること欿然(かんぜん)たらば、則ち人に過ぐること遠し、
章番号 12 章通し番号 188
通し番号 828 章内番号 1 章通し番号 188 識別番号 13_12_1
孟子曰く、佚道以て民を使えば、労すと雖も怨みず、生道以て民を殺せば、死すと雖も殺す者を怨まず、
章番号 13 章通し番号 189
通し番号 829 章内番号 1 章通し番号 189 識別番号 13_13_1
孟子曰く、霸者の民は、驩虞如(かんぐじょ)なり、王者の民は、皞皞如(こうこうじょ)なり、
通し番号 830 章内番号 2 章通し番号 189 識別番号 13_13_2
之を殺して怨みず、之を利して庸とせず、民日に善に遷(うつ)りて之を爲すものを知らず、
通し番号 831 章内番号 3 章通し番号 189 識別番号 13_13_3
夫(それ)君子は過ぎる所の者化し、存する所のもの神なり、上下天地と流れを同じくす、豈之を小補すと曰わんや、
章番号 14 章通し番号 190
通し番号 832 章内番号 1 章通し番号 190 識別番号 13_14_1
孟子曰く、仁言は、仁声の人に入るの深きに如かざるなり、
通し番号 833 章内番号 2 章通し番号 190 識別番号 13_14_2
善政は、善教の民を得るに如かざるなり、
通し番号 834 章内番号 3 章通し番号 190 識別番号 13_14_3
善政は民之を畏る、善教は民之を愛す、善政は民の財を得る、善教は民の心を得る、
章番号 15 章通し番号 191
通し番号 835 章内番号 1 章通し番号 191 識別番号 13_15_1
孟子曰く、人の学ばずして能くする所のものは、其良能なり、慮らずして知る所のものは、其良知なり、
通し番号 836 章内番号 2 章通し番号 191 識別番号 13_15_2
孩提(がいてい)の童、其親を愛することを知らざる無きなり、其長ずるに及ぶや、其兄を敬することを知らざる無きなり、
通し番号 837 章内番号 3 章通し番号 191 識別番号 13_15_3
親を親(あい)するは、仁なり、長を敬するは、義なり、他無し、之を天下に達するなり、
章番号 16 章通し番号 192
通し番号 838 章内番号 1 章通し番号 192 識別番号 13_16_1
孟子曰く、舜が深山の中に居り、木石と居り、鹿豕(ろくし)と遊ぶ、其以て深山の野人と異なる所のものは幾希(すくな)し、其一善言を聞き、一善行を見るに及び、江河を決するが若し、沛然として之を能く禦(とど)めること莫きなり、
章番号 17 章通し番号 193
通し番号 839 章内番号 1 章通し番号 193 識別番号 13_17_1
孟子曰く、其爲さざる所を爲すこと無し、其欲さざる所を欲すること無し、此如きのみ、
章番号 18 章通し番号 194
通し番号 840 章内番号 1 章通し番号 194 識別番号 13_18_1
孟子曰く、人の德慧術知有る者、恒(つね)にに疢疾(ちんしつ)に存す、
通し番号 841 章内番号 2 章通し番号 194 識別番号 13_18_2
独り孤臣孼子(げっし)は、其心を操(と)るや危(はや)く、其患を慮るや深し、故に達す、
章番号 19 章通し番号 195
通し番号 842 章内番号 1 章通し番号 195 識別番号 13_19_1
孟子曰く、君に事(つか)える人なる者有り、是君に事えれば則ち容悦を爲す者なり、
通し番号 843 章内番号 2 章通し番号 195 識別番号 13_19_2
社稷を安んずる臣なる者有り、社稷を安んずるを以て悦と爲す者なり、
通し番号 844 章内番号 3 章通し番号 195 識別番号 13_19_3
天民なる者有り、達して天下に行うべくして、後に之を行う者なり、
通し番号 845 章内番号 4 章通し番号 195 識別番号 13_19_4
大人なる者有り、己を正して物正しき者なり、
章番号 20 章通し番号 196
通し番号 846 章内番号 1 章通し番号 196 識別番号 13_20_1
孟子曰く、君子に三楽有り、而して天下に王たるは与(あずか)り存せず、
通し番号 847 章内番号 2 章通し番号 196 識別番号 13_20_2
父母倶(とも)に存し、兄弟故無し、一楽なり、
通し番号 848 章内番号 3 章通し番号 196 識別番号 13_20_3
仰いで天に愧(は)じず、俯して人に怍(は)じず、二楽なり、
通し番号 849 章内番号 4 章通し番号 196 識別番号 13_20_4
天下の英才を得て之を教育する、三楽なり、
通し番号 850 章内番号 5 章通し番号 196 識別番号 13_20_5
君子三楽有り、而るに天下に王たるは与(あずか)り存せず、
章番号 21 章通し番号 197
通し番号 851 章内番号 1 章通し番号 197 識別番号 13_21_1
孟子曰く、広き土(ち)衆(おお)き民、君子之を欲す、楽しむ所は存らず、
通し番号 852 章内番号 2 章通し番号 197 識別番号 13_21_2
天下に中(ちゅう)して立ち、四海の民を定む、君子之を楽しむ、性とする所は存せず、
通し番号 853 章内番号 3 章通し番号 197 識別番号 13_21_3
君子が性とする所は、大いに行われると雖も加わらず、窮居すると雖も損(へ)らず、分定まる故なり、
通し番号 854 章内番号 4 章通し番号 197 識別番号 13_21_4
君子が性とする所は、仁義礼智が、心に根ざす、其色を生ずるや、睟然(すいぜん)として面(おもて)に見(あらわ)れ、背に盎(あふ)れ、四体に施(ゆきわた)る、四体言わずして喩(さと)る、
章番号 22 章通し番号 198
通し番号 855 章内番号 1 章通し番号 198 識別番号 13_22_1
孟子曰く、伯夷紂を辟(さ)け、北海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞きて曰く、曰く盍(なん)ぞ帰らざる(来)、吾聞く、西伯善く老を養う者と、大公紂を辟(さ)け、東海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞き、曰く盍(なん)ぞ帰らざる、吾聞く、西伯善く老を養う者と、天下善く老を養うこと有れば、則ち仁人以て己の帰と爲す、
通し番号 856 章内番号 2 章通し番号 198 識別番号 13_22_2
五畝(ほ)の宅、牆(かき)の下に樹(う)えるに桑を以てす、匹婦之を蚕(さん)すれば、則ち老なる者以て帛(きぬ)を衣るに足る、五母雞(けい)、二母彘(てい)、其時を失うこと無ければ、老なる者以て肉を失うこと無きに足る、百畝の田、匹夫之を耕せば、八口の家以て飢えること無かるべし、
通し番号 857 章内番号 3 章通し番号 198 識別番号 13_22_3
謂う所の西伯善く老を養うは、其田里を制し、之に樹畜を教え、其妻子を導き、其老を養わしむ、五十は帛(きぬ)に非ざれば煖(あたたま)らず、七十は肉に非ざれば飽かず、煖(あたたま)らず飽かず、之を凍餒(とうだい)と謂う、文王の民は、凍餒の老いる者無し、此を之謂うなり、
章番号 23 章通し番号 199
通し番号 858 章内番号 1 章通し番号 199 識別番号 13_23_1
孟子曰く、其田疇(ちゅう)を易(おさ)め、其税斂(れん)を薄(かる)くす、民富ましむべきなり、
通し番号 859 章内番号 2 章通し番号 199 識別番号 13_23_2
之を食するに時を以てし、之を用いるに礼を以てすれば、財勝(あ)げて用うべからざるなり、
通し番号 860 章内番号 3 章通し番号 199 識別番号 13_23_3
民水火あるに非ざれば生活せず、昏暮(こんぼ)に人の門戸を叩(たた)き、水火を求む、与ざる者無し、至りて足る、聖人天下を治める、菽粟(しゅくぞく)をして水火の如く有らしむ、菽粟水火の如ければ、民焉ぞ不仁なる者有らんや、
章番号 24 章通し番号 200
通し番号 861 章内番号 1 章通し番号 200 識別番号 13_24_1
孟子曰く、孔子東山に登りて魯を小とす、太山に登りて天下を小とす、故に海を観る者は水と爲し難し、聖人の門に遊ぶ者は言と爲し難し、
通し番号 862 章内番号 2 章通し番号 200 識別番号 13_24_2
水を観るに術有り、必ず其瀾(らん)を観る、日月明有り、容光必ず照らす、
通し番号 863 章内番号 3 章通し番号 200 識別番号 13_24_3
流水の物爲(た)るや、科(あな)を盈(み)たさざれば行かず、君子の道を志すや、章を成さざれば達せず、
章番号 25 章通し番号 201
通し番号 864 章内番号 1 章通し番号 201 識別番号 13_25_1
孟子曰く、雞鳴(けいめい)にして起き、孳孳(しし)として善を爲す者は、舜の徒なり、
通し番号 865 章内番号 2 章通し番号 201 識別番号 13_25_2
雞鳴にして起き、孳孳(しし)として利を爲す者は、蹠(せき)の徒なり、
通し番号 866 章内番号 3 章通し番号 201 識別番号 13_25_3
舜と蹠の分を知らんと欲せば、他無し、利と善の間なり、
章番号 26 章通し番号 202
通し番号 867 章内番号 1 章通し番号 202 識別番号 13_26_1
孟子曰く、楊子は我が爲に取る、一毛を拔いて天下を利するは、爲さざるなり、
通し番号 868 章内番号 2 章通し番号 202 識別番号 13_26_2
墨子兼愛す、頂を摩(ま)し踵(かかと)に放(いた)り天下を利すは、之を爲す、
通し番号 869 章内番号 3 章通し番号 202 識別番号 13_26_3
子莫(しばく)は中を執(と)る、中を執るは之に近しと爲す、中を執り権無ければ、猶一を執るがごときなり、
通し番号 870 章内番号 4 章通し番号 202 識別番号 13_26_4
一を執るを悪(にく)む所は、其道を賊(そこな)う爲なり、一を挙げて百を廃するなり、
章番号 27 章通し番号 203
通し番号 871 章内番号 1 章通し番号 203 識別番号 13_27_1
孟子曰く、飢える者食を甘(うま)しとす、渴する者飮を甘(うま)しとす、是れ未だ飮食の正を得ざるなり、飢渴之を害するなり、豈(あに)惟口腹のみ飢渴の害有らんや、人心亦皆害有り、
通し番号 872 章内番号 2 章通し番号 203 識別番号 13_27_2
人能く飢渴の害以て心の害と爲すこと無ければ、則ち人に及ばざるを憂いと爲さず、
章番号 28 章通し番号 204
通し番号 873 章内番号 1 章通し番号 204 識別番号 13_28_1
孟子曰く、柳下恵は三公以て其介を易(か)えず、
章番号 29 章通し番号 205
通し番号 874 章内番号 1 章通し番号 205 識別番号 13_29_1
孟子曰く、爲す有る者は辟(たと)えば井を掘るが若し、井を掘ること九軔(じん)、而るに泉(せん)に及ばざれば、猶井を棄てると爲すがごときなり、
章番号 30 章通し番号 206
通し番号 875 章内番号 1 章通し番号 206 識別番号 13_30_1
孟子曰く、堯舜は之を性とするなり、湯武は之を身とするなり、五霸は之を仮るなり、
通し番号 876 章内番号 2 章通し番号 206 識別番号 13_30_2
久しく仮りて帰(かえ)さず、悪ぞ其有に非ざるを知らんや、
章番号 31 章通し番号 207
通し番号 877 章内番号 1 章通し番号 207 識別番号 13_31_1
公孫丑曰く、伊尹曰く、予不順に狎(な)れず、太甲を桐に放つ、民大いに悦ぶ、太甲賢にして又之を反す、民大いに悦ぶ、
通し番号 878 章内番号 2 章通し番号 207 識別番号 13_31_2
賢者の人臣爲るや、其君賢ならざれば、則ち固より放つべきか、
通し番号 879 章内番号 3 章通し番号 207 識別番号 13_31_3
孟子曰く、伊尹の志有れば、則ち可、伊尹の志無ければ、則ち簒(さん)なり、
章番号 32 章通し番号 208
通し番号 880 章内番号 1 章通し番号 208 識別番号 13_32_1
公孫丑曰く、詩に曰う、素餐(そさん)せず、君子の耕さずして食すは、何ぞや、孟子曰く、君子が是国に居るや、其君之を用いれば、則ち安富尊栄なり、其子弟之に従えば、則ち孝弟忠信なり、素餐せず、孰(いず)れか是より大ならん、
章番号 33 章通し番号 209
通し番号 881 章内番号 1 章通し番号 209 識別番号 13_33_1
王子墊(てん)問いて曰く、士は何をか事とする、
通し番号 882 章内番号 2 章通し番号 209 識別番号 13_33_2
孟子曰く、志を尚(たか)くす、
通し番号 883 章内番号 3 章通し番号 209 識別番号 13_33_3
曰く、何をか志を尚(たか)くすると謂う、曰く、仁義のみ、一無罪を殺すは、仁に非ざるなり、其有に非ずして之を取るは、義に非ざるなり、居悪(いずく)にか在る、仁是れなり、路悪(いずく)にか在る、義是れなり、仁に居り義に由る、大人の事備わる、
章番号 34 章通し番号 210
通し番号 884 章内番号 1 章通し番号 210 識別番号 13_34_1
孟子曰く、仲子は不義にして之に斉国を与えて受けず、人皆之を信ず、是れ簞食(たんし)豆羹(とうこう)を舍(す)てるの義なり、人は親戚君臣上下亡き焉(より)大なるは莫(な)し、其小なるものを以て其大なるのものを信ず、奚ぞ可ならんや、
章番号 35 章通し番号 211
通し番号 885 章内番号 1 章通し番号 211 識別番号 13_35_1
桃応問いて曰く、舜天子爲(た)り、皐陶(こうよう)士爲(た)り、瞽瞍(こそう)人を殺せば、則ち之を如何(いかん)、
通し番号 886 章内番号 2 章通し番号 211 識別番号 13_35_2
孟子曰く、之を執(とら)えるのみ、
通し番号 887 章内番号 3 章通し番号 211 識別番号 13_35_3
然らば則ち舜禁ぜざるか、
通し番号 888 章内番号 4 章通し番号 211 識別番号 13_35_4
曰く、夫(それ)舜悪ぞ得て之を禁ぜん、夫(それ)之を受ける所有るなり、
通し番号 889 章内番号 5 章通し番号 211 識別番号 13_35_5
然らば則ち舜之を如何(いかん)、
通し番号 890 章内番号 6 章通し番号 211 識別番号 13_35_6
曰く、舜は天下を棄てるを視ること、猶敝(へい)蹝(し)を棄てるがごときなり、竊(ひそ)かに負いて逃れ、海の浜(ほとり)に遵(そ)いて処(お)り、終身訢(きん)然と、楽しみて天下を忘る、
章番号 36 章通し番号 212
通し番号 891 章内番号 1 章通し番号 212 識別番号 13_36_1
孟子范(はん)自(よ)り斉に之(ゆ)く、斉王の子を望み見て、喟然(きぜん)として歎じて曰く、居は気を移し、養は体を移す、大なるかな居乎(や)、夫(それ)尽(ことごと)く人の子に非ざるか、
通し番号 892 章内番号 2 章通し番号 212 識別番号 13_36_2
孟子曰く、
通し番号 893 章内番号 3 章通し番号 212 識別番号 13_36_3
王子は宮室車馬衣服、多く人と同じ、而るに王子彼(かの)若きは、其居之をして然らしむるなり、況んや天下の広居に居る者をや、
通し番号 894 章内番号 4 章通し番号 212 識別番号 13_36_4
魯君宋に之く、垤沢(てつたく)の門に於て呼ぶ、守る者曰く、此は吾君に非ざるなり、何ぞ其声の我君に似るや、此は他無し、居相似たるなり、
章番号 37 章通し番号 213
通し番号 895 章内番号 1 章通し番号 213 識別番号 13_37_1
孟子曰く、食(やしな)いて愛せざるは、豕(ぶた)として之に交わるなり、愛して敬せざるは、獣として之を畜(やしな)うなり、
通し番号 896 章内番号 2 章通し番号 213 識別番号 13_37_2
恭敬は、幣の未だ將(ささ)げざるものなり、
通し番号 897 章内番号 3 章通し番号 213 識別番号 13_37_3
恭敬にして実無ければ、君子虛にして拘(とど)めるべからず、
章番号 38 章通し番号 214
通し番号 898 章内番号 1 章通し番号 214 識別番号 13_38_1
孟子曰く、形色は、天性なり、惟聖人にして、然る後以て形を践(ふ)むべし、
章番号 39 章通し番号 215
通し番号 899 章内番号 1 章通し番号 215 識別番号 13_39_1
斉の宣王は喪を短くせんと欲す、公孫丑曰く、朞(き)の喪を爲すは、猶已(や)むに愈(まさ)るか、
通し番号 900 章内番号 2 章通し番号 215 識別番号 13_39_2
孟子曰く、是れ猶或るひと其兄の臂(うで)を紾(ねじ)るに、子之に姑(しばら)く徐徐にせよと謂うがごとし(云爾)、亦(ただ)之に孝弟を教えるのみ、
通し番号 901 章内番号 3 章通し番号 215 識別番号 13_39_3
王子其母死す者有り、其傅(ふ)之が爲に数月の喪を請う、公孫丑曰く、此若きもの、何如(いかん)、
通し番号 902 章内番号 4 章通し番号 215 識別番号 13_39_4
曰く、是れ之を終えるを欲して、得(う)べからざるなり、一日を加うと雖も已(や)むに愈(まさ)る、夫(かの)之を禁ずる莫(な)くて爲さざる者を謂うなり、
章番号 40 章通し番号 216
通し番号 903 章内番号 1 章通し番号 216 識別番号 13_40_1
孟子曰く、君子の以て教える所のもの五なり、
通し番号 904 章内番号 2 章通し番号 216 識別番号 13_40_2
時雨之を化すが如きもの有り、
通し番号 905 章内番号 3 章通し番号 216 識別番号 13_40_3
徳を成すもの有り、財を達するもの有り、
通し番号 906 章内番号 4 章通し番号 216 識別番号 13_40_4
問うに答えるもの有り、
通し番号 907 章内番号 5 章通し番号 216 識別番号 13_40_5
私(ひそ)かに淑(よ)くし艾(おさ)める者有り、
通し番号 908 章内番号 6 章通し番号 216 識別番号 13_40_6
此五なるものは、君子の以て教える所なり、
章番号 41 章通し番号 217
通し番号 909 章内番号 1 章通し番号 217 識別番号 13_41_1
公孫丑曰く、道は則ち高し、美(うるわ)し、宜(ほとんど)天に登るが若き然(なり)、及ぶべからざるに似るなり、何ぞ彼をして幾(ちか)づき及ぶべきを爲して、日に孳孳(しし)せざらしめざるや、
通し番号 910 章内番号 2 章通し番号 217 識別番号 13_41_2
孟子曰く、大匠は拙工の爲に縄墨(じょうぼく)を改め廃せず、羿(げい)は拙射の爲に其彀率(こうりつ)を変ぜず、
通し番号 911 章内番号 3 章通し番号 217 識別番号 13_41_3
君子は引きて発さず、躍如(やくじょ)なり、道に中(あた)りて立つ、能なる者之に従う、
章番号 42 章通し番号 218
通し番号 912 章内番号 1 章通し番号 218 識別番号 13_42_1
孟子曰く、天下道有れば、道以て身に殉(したが)わしむ、天下道無ければ、身以て道に殉わしむ、
通し番号 913 章内番号 2 章通し番号 218 識別番号 13_42_2
未だ道以て人に殉(したが)わしめるものを聞かざるなり、
章番号 43 章通し番号 219
通し番号 914 章内番号 1 章通し番号 219 識別番号 13_43_1
公都子曰く、滕更(とうこう)の門に在るや、礼とする所在るが若し、而るに答えず、何ぞや、
通し番号 915 章内番号 2 章通し番号 219 識別番号 13_43_2
孟子曰く、貴を挾(さしはさ)みて問う、賢を挾(さしはさ)みて問う、長を挾(さしはさ)みて問う、勲労有るを挾(さしはさ)みて問う、故を挾(さしはさ)みて問う、皆答えざる所なり、滕更は二有り、
章番号 44 章通し番号 220
通し番号 916 章内番号 1 章通し番号 220 識別番号 13_44_1
孟子曰く、已(や)むべからずに於て已むは、已まざる所無し、厚き所のものに於て薄きは、薄からざる所無きなり、
通し番号 917 章内番号 2 章通し番号 220 識別番号 13_44_2
其進むこと鋭(はや)きは、其退くこと速(はや)し、
章番号 45 章通し番号 221
通し番号 918 章内番号 1 章通し番号 221 識別番号 13_45_1
孟子曰く、君子の物に於るや、之を愛して仁ならず、民に於るや、之を仁(いつくし)みて親(した)しまず、親(しん)に親しみて民を仁(いつくし)む、民を仁(いつくし)みて物を愛す、
章番号 46 章通し番号 222
通し番号 919 章内番号 1 章通し番号 222 識別番号 13_46_1
孟子曰く、知者は知らざる無きなり、当に務むべし之急と爲す、仁者愛さざる無きなり、急に賢に親しむ之務めと爲す、堯舜の知にして物に徧(あまね)からず、先務を急とするなり、堯舜の仁にして人を愛すること徧(あまね)からず、親賢を急とするなり、
通し番号 920 章内番号 2 章通し番号 222 識別番号 13_46_2
三年の喪を能(よ)くせずして、緦(し)、小功之察す、放飯流歠(せつ)して、歯決無きを問う、是を之務めを知らずと謂う、
14 盡心章句下 jìn xīn zhāng jù xià
章番号 1 章通し番号 223
通し番号 921 章内番号 1 章通し番号 223 識別番号 14_1_1
孟子曰く、不仁なるかな、梁の恵王や、仁者は其愛する所以て、其愛さざる所に及ぼす、不仁者は其愛さざる所を以て、其愛する所に及ぼす、
通し番号 922 章内番号 2 章通し番号 223 識別番号 14_1_2
公孫丑曰く、何の謂(いい)ぞや、梁の恵王は土地の故を以て、其民を糜爛(びらん)して之を戦わす、大敗す、将に之に復(むく)わんとす、勝つ能わざるを恐る、故に其愛する所の子弟を駆り以て之に殉(したが)わしむ、是を之其愛さざる所を以て、其愛する所に及ぼすと謂うなり、
章番号 2 章通し番号 224
通し番号 923 章内番号 1 章通し番号 224 識別番号 14_2_1
孟子曰く、春秋義戦無なし、彼が此より善きは、則ち之有り、
通し番号 924 章内番号 2 章通し番号 224 識別番号 14_2_2
征は上が下を伐つなり、敵(たぐい)する国は相征さざるなり、
章番号 3 章通し番号 225
通し番号 925 章内番号 1 章通し番号 225 識別番号 14_3_1
孟子曰く、尽く書を信ずるは、則ち書無きに如かず、
通し番号 926 章内番号 2 章通し番号 225 識別番号 14_3_2
吾武成に於て、二三策を取るのみ、
通し番号 927 章内番号 3 章通し番号 225 識別番号 14_3_3
仁人は天下に敵無し、至仁以て至不仁を伐つ、而るに何ぞ其血の杵(きね)を流さんや、
章番号 4 章通し番号 226
通し番号 928 章内番号 1 章通し番号 226 識別番号 14_4_1
孟子曰く、人有りて曰く、我善く陳を爲す、我善く戦いを爲す、大罪なり、
通し番号 929 章内番号 2 章通し番号 226 識別番号 14_4_2
国君が仁を好めば、天下に敵無し、
通し番号 930 章内番号 3 章通し番号 226 識別番号 14_4_3
南面して征すれば北狄怨む、東面して征すれば西夷怨む、曰く、奚爲(なんすれ)ぞ我を後にす、
通し番号 931 章内番号 4 章通し番号 226 識別番号 14_4_4
武王の殷を伐つや、革車三百両、虎賁(こほん)三千人、
通し番号 932 章内番号 5 章通し番号 226 識別番号 14_4_5
王曰く、畏れること無かれ、爾(なんじ)を寧(やす)んずるなり、百姓に敵するに非ざるなり、崩(くず)るが若く角(ひたい)を厥(たお)し稽首す、
通し番号 933 章内番号 6 章通し番号 226 識別番号 14_4_6
征の言爲(た)るは、正なり、各(おのおの)己を正さんと欲するなり、焉ぞ戦いを用いん、
章番号 5 章通し番号 227
通し番号 934 章内番号 1 章通し番号 227 識別番号 14_5_1
孟子曰く、梓匠(ししょう)輪輿(りんよ)、能く人に規矩を与える、人をして巧ならしめること能わず、
章番号 6 章通し番号 228
通し番号 935 章内番号 1 章通し番号 228 識別番号 14_6_1
孟子曰く、舜の糗(ほしいい)を飯(た)べ草を茹(た)べるや、将に身を終えんとするが若し、其天子と爲るに及ぶや、袗衣(しんい)を被(き)、琴を鼓(ひ)き、二女果(はべ)る、固より之を有するが若し、
章番号 7 章通し番号 229
通し番号 936 章内番号 1 章通し番号 229 識別番号 14_7_1
孟子曰く、吾今にして後、人の親(しん)を殺すの重きを知るなり、人の父を殺せば、人亦其父を殺す、人の兄を殺せば、人亦其兄を殺す、然らば則ち自ら之を殺すに非ざるや、一間のみ、
章番号 8 章通し番号 230
通し番号 937 章内番号 1 章通し番号 230 識別番号 14_8_1
孟子曰く、古の関を爲(つく)るや、将に以て暴を禦(ふせ)がんとす、
通し番号 938 章内番号 2 章通し番号 230 識別番号 14_8_2
今の関を爲(つく)るや、将に以て暴を爲さんとす、
章番号 9 章通し番号 231
通し番号 939 章内番号 1 章通し番号 231 識別番号 14_9_1
孟子曰く、身道を行わざれば、妻子に於ても行われず、人を使うに道以てせざれば、妻子に於ても行うこと能わず、
章番号 10 章通し番号 232
通し番号 940 章内番号 1 章通し番号 232 識別番号 14_10_1
孟子曰く、利に周(いた)る者は、凶年殺すこと能わず、徳に周(いた)る者は、邪世乱すこと能わず、
章番号 11 章通し番号 233
通し番号 941 章内番号 1 章通し番号 233 識別番号 14_11_1
孟子曰く、名を好むの人は、能く千乗の国を讓る、苟(もし)其人に非ざれば、簞食(たんし)豆羹(とうこう)色に見(あらわ)る、
章番号 12 章通し番号 234
通し番号 942 章内番号 1 章通し番号 234 識別番号 14_12_1
孟子曰く、仁賢を信じざれば、則ち国空虚なり、
通し番号 943 章内番号 2 章通し番号 234 識別番号 14_12_2
礼義無ければ、則ち上下乱る、
通し番号 944 章内番号 3 章通し番号 234 識別番号 14_12_3
政事無ければ、則ち財用足らず、
章番号 13 章通し番号 235
通し番号 945 章内番号 1 章通し番号 235 識別番号 14_13_1
孟子曰く、不仁にして国を得る者、之有り、不仁にして天下を得るは、未だ之有らざるなり、
章番号 14 章通し番号 236
通し番号 946 章内番号 1 章通し番号 236 識別番号 14_14_1
孟子曰く、民は貴(たっと)しと爲す、社稷は之に次ぐ、君は軽しと爲す、
通し番号 947 章内番号 2 章通し番号 236 識別番号 14_14_2
是故に丘民に得る、而して天子と爲る、天子に得て諸侯と爲る、諸侯に得て大夫と爲る、
通し番号 948 章内番号 3 章通し番号 236 識別番号 14_14_3
諸侯が社稷を危うくすれば、則ち変えて置く、
通し番号 949 章内番号 4 章通し番号 236 識別番号 14_14_4
犧牲既に成る、粢盛(しせい)既に潔(きよ)し、祭祀は時を以てす、然り而して旱乾(かんかん)水溢(すいいつ)すれば、則ち社稷を変えて置く、
章番号 15 章通し番号 237
通し番号 950 章内番号 1 章通し番号 237 識別番号 14_15_1
孟子曰く、聖人は、百世の師なり、伯夷、柳下恵是れなり、故に伯夷の風を聞く者は、頑夫(がんぷ)は廉、懦夫(だふ)は志を立つること有り、柳下恵の風を聞く者は、薄夫は敦(あつ)く、鄙夫(ひふ)は寬(ひろ)し、百世の上に奮い、百世の下、聞く者興起せざる莫きなり、聖人に非ずして能く是の若きか、而るに況んや之に親炙(しんしゃ)する者に於てをや、
章番号 16 章通し番号 238
通し番号 951 章内番号 1 章通し番号 238 識別番号 14_16_1
孟子曰く、仁なるは、人なり、合わせて之を言えば、道なり、
章番号 17 章通し番号 239
通し番号 952 章内番号 1 章通し番号 239 識別番号 14_17_1
孟子曰く、孔子が魯を去るに曰く、遅遅として吾行くなり、父母の国を去るの道なり、斉を去るに、淅を接(う)けて行く、他国を去るの道なり、
章番号 18 章通し番号 240
通し番号 953 章内番号 1 章通し番号 240 識別番号 14_18_1
孟子曰く、君子が陳蔡の間に於て戹(くる)しむは、上下の交無きなり、
章番号 19 章通し番号 241
通し番号 954 章内番号 1 章通し番号 241 識別番号 14_19_1
貉稽曰く、稽大いに口に理ならず、
通し番号 955 章内番号 2 章通し番号 241 識別番号 14_19_2
孟子曰く、傷むこと無かれ、士は茲(この)多口に憎まれる、
通し番号 956 章内番号 3 章通し番号 241 識別番号 14_19_3
詩に云う、憂う心が悄悄(しょうしょう)、羣小に慍(いか)られる、孔子なり、肆(つい)に厥(その)慍(いか)りを殄(た)たず、亦厥(その)問を隕(お)とさず、文王なり、
章番号 20 章通し番号 242
通し番号 957 章内番号 1 章通し番号 242 識別番号 14_20_1
孟子曰く、賢者は其昭昭以て、人をして昭昭せしむ、今は其昏昏以て、人をして昭昭せしむ、
章番号 21 章通し番号 243
通し番号 958 章内番号 1 章通し番号 243 識別番号 14_21_1
孟子は高子に謂いて曰く、山径の蹊(けい)、間(しばら)く介然として之を用いて路を成す、間(しばら)く用いざるを爲せば、則ち茅(ちがや)之を塞(ふさ)ぐ、今茅子の心を塞ぐ、
章番号 22 章通し番号 244
通し番号 959 章内番号 1 章通し番号 244 識別番号 14_22_1
高子曰く、禹の声、文王の声に尚(まさ)る、
通し番号 960 章内番号 2 章通し番号 244 識別番号 14_22_2
孟子曰く、何を以て之を言う、曰く、追(たい)の蠡(むしば)むを以てなり、
通し番号 961 章内番号 3 章通し番号 244 識別番号 14_22_3
曰く、是奚ぞ足らんや、城門の軌は、両馬の力か、
章番号 23 章通し番号 245
通し番号 962 章内番号 1 章通し番号 245 識別番号 14_23_1
斉饑える、陳臻(ちんしん)曰く、国人皆以(おも)えらく、夫子(ふうし)将に復(また)爲に棠(とう)を発せんとす、殆ど復(ふたた)びすべからず、
通し番号 963 章内番号 2 章通し番号 245 識別番号 14_23_2
孟子曰く、是れ馮婦(ひょうふ)を爲すなり、晋人馮婦なる者有り、善く虎を搏(とら)う、卒に善士と爲る、則ち野に之(ゆ)く、衆虎を逐う有り、虎嵎(ぐう)に負(よ)り、之に敢えて攖(ふ)れること莫し、馮婦を望見して、趨(はし)りて之を迎う、馮婦臂(うで)を攘(まく)り下車す、衆皆之を悦ぶ、其士爲る者之を笑う、
章番号 24 章通し番号 246
通し番号 964 章内番号 1 章通し番号 246 識別番号 14_24_1
孟子曰く、口の味に於る、目の色に於る、耳の声に於る、鼻の臭(におい)に於る、四肢の安佚に於るは、性なり、命有り、君子は性と謂わざるなり、
通し番号 965 章内番号 2 章通し番号 246 識別番号 14_24_2
仁の父子に於る、義の君臣に於る、礼の賓主に於る、智の賢者に於る、聖人の天道に於るは、命なり、性有り、君子は命と謂わざるなり、
章番号 25 章通し番号 247
通し番号 966 章内番号 1 章通し番号 247 識別番号 14_25_1
浩生不害問いて曰く、楽正子何人ぞや、孟子曰く、善人なり、信人なり、
通し番号 967 章内番号 2 章通し番号 247 識別番号 14_25_2
何をか善と謂う、何をか信と謂う、
通し番号 968 章内番号 3 章通し番号 247 識別番号 14_25_3
曰く、欲すべし之善と謂う、
通し番号 969 章内番号 4 章通し番号 247 識別番号 14_25_4
諸(これ)を己に有(たも)つ之信と謂う、
通し番号 970 章内番号 5 章通し番号 247 識別番号 14_25_5
充実する之美と謂う、
通し番号 971 章内番号 6 章通し番号 247 識別番号 14_25_6
充実して光輝有り之大と謂う、
通し番号 972 章内番号 7 章通し番号 247 識別番号 14_25_7
大にして之を化す之聖と謂う、
通し番号 973 章内番号 8 章通し番号 247 識別番号 14_25_8
聖にして之を知るべからず之神と謂う、
通し番号 974 章内番号 9 章通し番号 247 識別番号 14_25_9
楽正子、二の中、四の下なり、
章番号 26 章通し番号 248
通し番号 975 章内番号 1 章通し番号 248 識別番号 14_26_1
孟子曰く、墨を逃(のが)れば必ず楊に帰す、楊を逃れば必ず儒に帰す、帰すれば斯(すなわ)ち之を受くるのみ、
通し番号 976 章内番号 2 章通し番号 248 識別番号 14_26_2
今の楊墨と弁ずる者は、放豚(とん)を追うが如し、既に其苙(おり)に入る、又(さら)に従(よ)りて之を招(つな)ぐ、
章番号 27 章通し番号 249
通し番号 977 章内番号 1 章通し番号 249 識別番号 14_27_1
孟子曰く、布(ふ)縷(る)の征、粟米の征、力役の征有り、君子其一を用い、其二を緩(ゆる)くす、其二を用いて民殍(ひょう)有り、其三を用いて父子離る、
章番号 28 章通し番号 250
通し番号 978 章内番号 1 章通し番号 250 識別番号 14_28_1
孟子曰く、諸侯の宝三、土地、人民、政事なり、珠玉を宝とする者は、殃(わざわい)必ず身に及ぶ、
章番号 29 章通し番号 251
通し番号 979 章内番号 1 章通し番号 251 識別番号 14_29_1
盆成括(ぼんせいかつ)斉に仕う、孟子曰く、死なん盆成括、盆成括殺さ見(る)、門人問いて曰く、夫子何を以て其将に殺されんとするを知るか、曰く、其人と爲りや小し才有り、未だ君子の大道を聞かざるなり、則ち以て其軀(み)を殺すに足るのみ、
章番号 30 章通し番号 252
通し番号 980 章内番号 1 章通し番号 252 識別番号 14_30_1
孟子滕に之き、上宮に館す、業屨(く)牖上(ゆうじょう)に有り、館人之を求め得ず、
通し番号 981 章内番号 2 章通し番号 252 識別番号 14_30_2
或るひと之を問いて曰く、是の若きか従者の廋(かく)すや、曰く、子是れ屨(くつ)を竊(ぬす)む爲に来ると以(おも)えるか、曰く、殆(ほとん)ど非なり、夫子(ふうし)の科を設けるや、往く者追わず、来る者距(こば)まず、苟(もし)是心以て至れば、斯(すなわ)ち之を受けるのみ、
章番号 31 章通し番号 253
通し番号 982 章内番号 1 章通し番号 253 識別番号 14_31_1
孟子曰く、人皆忍びざる所有り、之を其忍ぶ所に達するは、仁なり、人皆爲さざる所有り、之を其爲す所に達するは、義なり、
通し番号 983 章内番号 2 章通し番号 253 識別番号 14_31_2
人能く人を害するを欲すること無しの心を充(み)たせば、仁勝(あ)げて用うべからざるなり、人能く穿踰(せんゆ)無しの心を充たせば、義勝げて用うべからざるなり、
通し番号 984 章内番号 3 章通し番号 253 識別番号 14_31_3
人能く爾汝(じじょ)を受けること無しの実を充たせば、往く所として義と爲さざる無きなり、
通し番号 985 章内番号 4 章通し番号 253 識別番号 14_31_4
士未だ以て言うべからずして言う、是れ言以て之を餂(と)るなり、以て言うべくして言わず、是れ言わざる以て之を餂(と)るなり、是れ皆穿踰の類なり、
章番号 32 章通し番号 254
通し番号 986 章内番号 1 章通し番号 254 識別番号 14_32_1
孟子曰く、言近くして指遠きは、善言なり、守り約にして施(ゆきわた)ること博(ひろ)きは、善道なり、君子の言や、帯を下らずして道存す、
通し番号 987 章内番号 2 章通し番号 254 識別番号 14_32_2
君子の守り、其身を脩めて天下平かなり、
通し番号 988 章内番号 3 章通し番号 254 識別番号 14_32_3
人其田を舍(す)てて人の田を芸(くさぎ)るを病とす、人に求める所のもの重くして、以て自ら任ずる所のもの軽し、
章番号 33 章通し番号 255
通し番号 989 章内番号 1 章通し番号 255 識別番号 14_33_1
孟子曰く、堯舜は、性なるものなり、湯武は、之に反るなり、
通し番号 990 章内番号 2 章通し番号 255 識別番号 14_33_2
動容周旋して礼に中(あた)る者は、盛德の至りなり、死を哭して哀(かな)しむは、生きる者の爲に非ざるなり、徳を経(つね)とし回(よこし)まならざるは、以て禄を干(もと)めるに非ざるなり、言語必ず信なるは、以て行を正しくするに非ざるなり、
通し番号 991 章内番号 3 章通し番号 255 識別番号 14_33_3
君子は法を行い、以て命を俟(ま)つのみ、
章番号 34 章通し番号 256
通し番号 992 章内番号 1 章通し番号 256 識別番号 14_34_1
孟子曰く、大人に説くは、則ち之を藐(ちい)さくする、其巍巍(ぎぎ)然を視ることが勿(な)し、
通し番号 993 章内番号 2 章通し番号 256 識別番号 14_34_2
堂の高さが数仞(じん)、榱(たるき)の題が数尺は、我は志を得るとも爲さざるなり、食が前に方丈、侍妾が数百人は、我は志を得るとも爲さざるなり、般楽(はんらく)飲酒し、駆騁(くてい)田猟し、後車が千乗は、我は志を得るも爲さざるなり、彼に在るもの、皆我爲さざる所なり、我に在るもの、皆古の制なり、吾何ぞ彼を畏れんや、
章番号 35 章通し番号 257
通し番号 994 章内番号 1 章通し番号 257 識別番号 14_35_1
孟子曰く、心を養うは寡欲より善きは莫し、其人と爲りや寡欲なれば、存せざるもの有りと雖も、寡(すくな)し、其人と爲りや多欲なれば、存するもの有りと雖も、寡し、
章番号 36 章通し番号 258
通し番号 995 章内番号 1 章通し番号 258 識別番号 14_36_1
曽皙(そうせき)は羊棗(ようそう)を嗜(たしな)む、而して曽子は羊棗を食べるを忍びず、
通し番号 996 章内番号 2 章通し番号 258 識別番号 14_36_2
公孫丑問いて曰く、膾(かい)炙(しゃ)と羊棗と孰か美(うま)し、孟子曰く、膾炙かな、公孫丑曰く、然らば則ち曽子何爲(なんすれ)ぞ膾炙を食べて羊棗を食べざる、曰く、膾炙は同じくする所なり、羊棗は独りする所なり、名を諱(い)みて姓を諱(い)まず、姓は同じくする所なり、名は独りする所なり、l
章番号 37 章通し番号 259
通し番号 997 章内番号 1 章通し番号 259 識別番号 14_37_1
万章問いて曰く、孔子陳に在りて曰く、盍(なん)ぞ帰らざる(来)、吾党の士は狂簡にして、進みて取り、其初を忘れず、孔子陳に在りて、何ぞ魯の狂士を思う、
通し番号 998 章内番号 2 章通し番号 259 識別番号 14_37_2
孟子曰く、孔子中道を得て之に与(くみ)せざれば、必ずや狂獧(乎)、狂なる者は進みて取り、獧なる者は爲さざる所有るなり、孔子豈中道を欲さざらんや、必ずしも得べからず、故に其次を思うなり、
通し番号 999 章内番号 3 章通し番号 259 識別番号 14_37_3
敢えて問う、何如なれば斯(すなわ)ち狂と謂うべし、
通し番号 1000 章内番号 4 章通し番号 259 識別番号 14_37_4
曰く、琴張、曽皙、牧皮の如き者、孔子の謂う所の狂なり、
通し番号 1001 章内番号 5 章通し番号 259 識別番号 14_37_5
何を以て之を狂と謂うや、
通し番号 1002 章内番号 6 章通し番号 259 識別番号 14_37_6
曰く、其志嘐嘐然(こうこうぜん)として曰く、古の人、古の人、其行を夷考して、掩(おお)わざるものなり、
通し番号 1003 章内番号 7 章通し番号 259 識別番号 14_37_7
狂なる者又得べからず、不潔を屑(いさぎよ)しとせざるの士を得て之に与することを欲す、是れ獧(けん)なり、是れ又其次なり、
通し番号 1004 章内番号 8 章通し番号 259 識別番号 14_37_8
孔子曰く、我門を過ぎて我室に入らず、我憾(うら)みざる者は、其惟郷原(乎)、郷原は、徳の賊なり、曰く、何如(いかん)すれば斯(すなわ)ち之を郷原と謂うべし、
通し番号 1005 章内番号 9 章通し番号 259 識別番号 14_37_9
曰く、何を以て是れ嘐嘐(こうこう)たるや、言は行を顧みず、行は言を顧みず、則ち曰く、古の人、古の人、行何爲(なんすれ)ぞ踽踽(くく)涼涼(りょうりょう)たる、斯(この)世に生まれるや、斯世を爲すなり、善しとせらるれば斯(すなわ)ち可なり、閹然(えんぜん)として世に媚びる者は、是れ郷原なり、
通し番号 1006 章内番号 10 章通し番号 259 識別番号 14_37_10
万章曰く、一郷皆原人と称(い)う、往く所として原人と爲さざる無し、孔子以て徳の賊と爲す、何ぞや、
通し番号 1007 章内番号 11 章通し番号 259 識別番号 14_37_11
曰く、之を非(そし)るに挙げること無きなり、之を刺(せめ)るに刺(せめ)ること無きなり、流俗に同じ、汙世に合う、之に居り忠信に似る、之を行い廉潔に似る、衆皆之を悦ぶ、自ら以て是と爲して、与(とも)に堯舜の道に入るべからず、故に曰く、徳の賊なり、
通し番号 1008 章内番号 12 章通し番号 259 識別番号 14_37_12
孔子曰く、似て非なるものを悪(い)む、莠(ゆう)を悪むは、其の苗を乱すを恐れるなり、佞を悪むは、其義を乱すを恐れるなり、利口を悪むは、其信を乱すを恐れるなり、鄭声を悪むは、其楽を乱すを恐れるなり、紫を悪むは、其朱を乱すを恐れるなり、郷原を悪むは、其徳を乱すを恐れるなり、
通し番号 1009 章内番号 13 章通し番号 259 識別番号 14_37_13
君子は経に反るのみ、経正しければ、則ち庶民興る、庶民興れば、斯(すなわ)ち邪慝(とく)無し、
章番号 38 章通し番号 260
通し番号 1010 章内番号 1 章通し番号 260 識別番号 14_38_1
孟子曰く、堯舜由り湯に至る、五百有余歳なり、禹、皐陶(こうよう)の若きは、則ち見て之を知る、湯の若きは、則ち聞きて之を知る、
通し番号 1011 章内番号 2 章通し番号 260 識別番号 14_38_2
湯由(よ)り文王に至る、五百有余歳なり、伊尹、萊朱(らいしゅ)の若きは、則ち見て之を知る、文王の若きは、則ち聞きて之を知る、
通し番号 1012 章内番号 3 章通し番号 260 識別番号 14_38_3
文王由り孔子に至る、五百有余歳、太公望、散宜生(さんぎせい)の若きは、則ち見て之を知る、孔子の若きは、則ち聞きて之を知る、
通し番号 1013 章内番号 4 章通し番号 260 識別番号 14_38_4
孔子由(よ)り而来(じらい)今に至る、百有余歳なり、聖人の世を去ること、此若く其(それ)未だ遠からざるなり、聖人の居に近きこと、此若く其甚だしきなり、然り而して有ること無ければ(乎)(爾)、則ち亦有ること無し(乎)(爾)、