1 梁惠王章句上 liáng huì wáng zhāng jù shàng

章番号 1 章通し番号 1

通し番号 1 章内番号 1 章通し番号 1 識別番号 1_1_1
1孟子見梁惠王、
孟子梁の恵王に見(まみ)ゆ、

通し番号 2 章内番号 2 章通し番号 1 識別番号 1_1_2
1王曰、2叟、3不遠千里而來、4亦將有以利吾國乎、
王曰く、叟(そう)千里を遠しとせず来る、亦将(まさ)に以て吾国を利すること有らんとするか、

通し番号 3 章内番号 3 章通し番号 1 識別番号 1_1_3
1孟子對曰、2王何必曰利、3亦有仁義而已矣、
孟子対(こた)えて曰く、王何ぞ必ず利を曰う、亦(ただ)仁義有るのみ、

通し番号 4 章内番号 4 章通し番号 1 識別番号 1_1_4
1王曰何以利吾國、2大夫曰何以利吾家、3士庶人曰何以利吾身、4上下交征利而國危矣、5萬乘之國、6弑其君者、7必千乘之家、8千乘之國、9弑其君者、10必百乘之家、11萬取千焉、12千取百焉、13不爲不多矣、14苟爲後義而先利、15不奪不饜、
王曰く何を以て吾国を利せん、大夫曰く何を以て吾家を利せん、士庶人曰く何を以て吾身を利せん、上下交(こもごも)利を征(と)りて国危うし、万乗の国、其君を弑(しい)するは、必ず千乗の家なり、千乗の国、其君を弑(しい)するは、必ず百乗の家なり、万に千を取る、千に百を取る、多からずと爲さず、苟(もし)義を後にし利を先にすることを爲せば、奪わずんば饜(た)らず、

通し番号 5 章内番号 5 章通し番号 1 識別番号 1_1_5
1未有仁而遺其親者也、2未有義而後其君者也、
未だ仁にして其親を遺(す)てる者有らざるなり、未だ義にして其君を後にする者有らざるなり、

通し番号 6 章内番号 6 章通し番号 1 識別番号 1_1_6
1王亦曰仁義而已矣、2何必曰利、
王亦(ただ)仁義を曰うのみ、何ず必ず利を曰わん、


章番号 2 章通し番号 2

通し番号 7 章内番号 1 章通し番号 2 識別番号 1_2_1
1孟子見梁惠王、2王立於沼上、3顧鴻鴈麋鹿曰、4賢者亦樂此乎、
孟子は梁の恵王に見(まみ)ゆ、王は沼の上(ほとり)に立つ、鴻(こう)鴈(がん)麋(び)鹿(ろく)を顧みて曰く、賢者亦此を楽しむか、

通し番号 8 章内番号 2 章通し番号 2 識別番号 1_2_2
1孟子對曰、2賢者而後樂此、3不賢者、4雖有此不樂也、
孟子対(こた)えて曰く、賢者にして後此を楽しむ、不賢者は此有りと雖も楽しまざるなり、

通し番号 9 章内番号 3 章通し番号 2 識別番号 1_2_3
1詩云、2經始靈臺、3經之營之、4庶民攻之、5不日成之、6經始勿亟、7庶民子來、8王在靈囿、9麀鹿攸伏、10麀鹿濯濯、11白鳥鶴鶴、12王在靈沼、13於牣魚躍、14文王以民力爲臺爲沼、15而民歡樂之、16謂其臺曰靈臺、17謂其沼曰靈沼、18樂其有麋鹿魚鼈、19古之人與民偕樂、20故能樂也、
詩に云う、霊台を経(はか)り始む、之を経(はか)り、之を営す、庶民之を攻(おさ)む、日ならずして之を成す、経(はか)り始むは亟(すみや)かにすること勿(な)けれど、庶民子として来る、王が霊囿(ゆう)に在(お)れば、麀(ゆう)鹿(ろく)の伏(ふ)す攸(ところ)、麀鹿(ゆうろく)は濯濯(たくたく)、白鳥は鶴鶴(かくかく)たり、王が霊沼に在(お)れば、於(ああ)牣(み)ちて魚躍(おど)る、文王民の力を以て台を爲(つく)り沼を爲りて、民之を歓楽す、其台を謂いて霊台と曰い、其沼を謂いて霊沼と曰う、其麋鹿(びろく)魚鼈(べつ)有るを楽しむ、古の人は民と偕(とも)に楽しむ、故に能く楽しむなり、

通し番号 10 章内番号 4 章通し番号 2 識別番号 1_2_4
1湯誓曰、2時日害喪、3予及女偕亡、4民欲與之偕亡、5雖有臺池鳥獸、6豈能獨樂哉、
湯誓に曰く、時(この)日害(いつ)喪びん、予(われ)女(なんじ)及(と)偕(とも)に亡びん、民之と偕(とも)に亡びんと欲す、台池鳥獸有ると雖も、豈に能く独り楽しまんや、


章番号 3 章通し番号 3

通し番号 11 章内番号 1 章通し番号 3 識別番号 1_3_1
1梁惠王曰、2寡人之於國也、3盡心焉耳矣、4河内凶、5則移其民於河東、6移其粟於河内、7河東凶亦然、8察鄰國之政、9無如寡人之用心者、10鄰國之民不加少、11寡人之民不加多、12何也、
梁の恵王曰く、寡人の国に於るや、心を尽くすのみ、河内凶なれば、則ち其民を河東に移し、其粟(ぞく)を河内に移す、河東凶なれば亦然り、鄰国の政を察するに、寡人の心を用いるが如きは無し、鄰国の民少なきを加えず、寡人の民多きを加えず、何ぞや、

通し番号 12 章内番号 2 章通し番号 3 識別番号 1_3_2
1孟子對曰、2王好戰、3請以戰喩、4塡然鼓之、5兵刃旣接、6棄甲曳兵而走、7或百歩而後止、8或五十歩而後止、9以五十歩笑百歩、10則何如、11曰、12不可、13直不百歩耳、14是亦走也、15曰、16王如知此、17則無望民之多於鄰國也、
孟子対えて曰く、王戦いを好む、請う、戦いを以て喩(たと)えん、塡然(てんぜん)として之に鼓し、兵刃(へいじん)既に接す、甲を棄て兵を曳(ひ)きて走(にげ)る、或いは百歩にして後止(とど)まり、或いは五十歩にして後止まる、五十歩を以て百歩を笑えば、則ち何如(いかん)、曰く、不可なり、直(ただ)に百歩ならざるのみ、是れ亦走(にげ)るなり、曰く、王如(も)し此を知れば、則ち民の鄰国より多きを望むこと無かれ、

通し番号 13 章内番号 3 章通し番号 3 識別番号 1_3_3
1不違農時、2穀不可勝食也、3數罟不入洿池、4魚鼈不可勝食也、5斧斤以時入山林、6材木不可勝用也、7穀與魚鼈不可勝食、8材木不可勝用、9是使民養生喪死無憾也、10養生喪死無憾、11王道之始也、
農時に違(もと)らざれば、穀勝(あ)げて食うべからざるなり、数罟(さくこ)洿(お)池に入らざれば、魚鼈(ぎょべつ)勝げて食うべからざるなり、斧斤(ふきん)時以て山林に入る、材木勝げて用うべからざるなり、穀と魚鼈勝げて食すべからず、材木勝げて用うべからず、是れ民をして生を養い死に喪(も)して憾(うら)み無からしむなり、生を養い死に喪して憾み無し、王道の始なり、

通し番号 14 章内番号 4 章通し番号 3 識別番号 1_3_4
1五畝之宅、2樹之以桑、3五十者可以衣帛矣、4雞豚狗彘之畜、5無失其時、6七十者可以食肉矣、7百畝之田、8勿奪其時、9數口之家可以無飢矣、10謹庠序之敎、11申之以孝悌之義、12頒白者不負戴於道路矣、13七十者衣帛食肉、14黎民不飢不寒、15然而不王者、16未之有也、
五畝(ほ)の宅、之に樹(う)えるに桑を以てす、五十は以て帛(きぬ)を衣るべし、雞(けい)豚(とん)狗(こう)彘(てい)の畜は、其時を失なうこと無ければ、七十の者以て肉を食すべし、百畝の田、其時を奪うこと勿(な)ければ、数口の家以て飢えること無かるべし、庠序(しょうじょ)の教えを謹んで、之に申(かさ)ねるに孝悌の義を以てすれば、頒白(はんぱく)の者道路に負戴(たい)せず、七十の者帛を衣(き)て肉を食し、黎(れい)民飢えず寒からず、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、

通し番号 15 章内番号 5 章通し番号 3 識別番号 1_3_5
1狗彘食人食而不知檢、2塗有餓莩而不知發、3人死、4則曰、5非我也、6歳也、7是何異於刺人而殺之、8曰非我也、9兵也、10王無罪歳、11斯天下之民至焉、
狗彘(こうてい)人の食を食して検することを知らず、塗(みち)に餓莩(ひょう)有りて発することを知らず、人死ねば、則ち曰く、我に非ざるなり、歳なり、是れ何ぞ人を刺して之を殺して、我に非ざるなり、兵なりと曰うに異ならんや、王歳を罪とすること無ければ、斯(すなわ)ち天下の民至る、


章番号 4 章通し番号 4

通し番号 16 章内番号 1 章通し番号 4 識別番号 1_4_1
1梁惠王曰、2寡人願安承敎、
梁の恵王曰く、寡人願わくば安んじて教えを承(う)けん、

通し番号 17 章内番号 2 章通し番号 4 識別番号 1_4_2
1孟子對曰、2殺人以梃與刃、3有以異乎、4曰、5無以異也、
孟子対えて曰く、人を殺すに梃(つえ)と刃(やいば)を以てするは、以て異なること有るか、曰く、以て異なること無きなり、

通し番号 18 章内番号 3 章通し番号 4 識別番号 1_4_3
1以刃與政、2有以異乎、3曰、4無以異也、
刃(やいば)と政を以てするは、以て異なること有るか、曰く、以て異なること無きなり、

通し番号 19 章内番号 4 章通し番号 4 識別番号 1_4_4
1曰、2庖有肥肉、3廏有肥馬、4民有飢色、5野有餓莩、6此率獸而食人也、
曰く、庖(ほう)に肥肉有り、廏(きゅう)に肥馬有り、民に飢色有り、野に餓莩(ひょう)有り、此は獣を率いて人を食べるなり、

通し番号 20 章内番号 5 章通し番号 4 識別番号 1_4_5
1獸相食、2且人惡之、3爲民父母行政、4不免於率獸而食人、5惡在其爲民父母也、
獣相(あい)食べる、且(なお)人之を悪(い)む、民の父母と爲(な)りて政を行う、獣を率いて人を食べるを免れず、悪(いず)くにか其民の父母と爲ること在らんや、

通し番号 21 章内番号 6 章通し番号 4 識別番号 1_4_6
1仲尼曰、2始作俑者、3其無後乎、4爲其象人而用之也、5如之何其使斯民飢而死也、
仲尼曰く、始めて俑(よう)を作る者は其(それ)後(あと)無きか、其人に象(かたど)りて之を用いる爲なり、之を如何(いかん)ぞ其(そ)れ斯(こ)の民をして飢えて死なしむ、


章番号 5 章通し番号 5

通し番号 22 章内番号 1 章通し番号 5 識別番号 1_5_1
1梁惠王曰、2晉國天下莫強焉、3叟之所知也、4及寡人之身、5東敗於齊、6長子死焉、7西喪地於秦七百里、8南辱於楚、9寡人恥之、10願比死者一洒之、11如之何則可、
梁の恵王曰く、晋国は天下焉(これ)より強きは莫(な)し、叟(そう)の知る所なり、寡人の身に及んで、東、斉に敗られ、長子死す、西、地を秦に喪(うしな)うこと七百里、南、楚に辱(はずか)しめらる、寡人之を恥ず、願わくば死者の比(ため)に一たび之を洒(そそ)がん、之を如何(いかん)せば則ち可、

通し番号 23 章内番号 2 章通し番号 5 識別番号 1_5_2
1孟子對曰、地方百里而可以王、
孟子対えて曰く、地、方百里にして以て王となるべし

通し番号 24 章内番号 3 章通し番号 5 識別番号 1_5_3
1王如施仁政於民、2省刑罰、3薄稅斂、4深耕易耨、5壯者以暇日脩其孝悌忠信、6入以事其父兄、7出以事其長上、8可使制梃以撻秦楚之堅甲利兵矣、
王如(も)し民に仁政を施し、刑罰を省(はぶ)き、税斂(れん)を薄(かる)くし、深く耕やし、易に耨(くさぎ)り、壮者暇日を以て其孝悌忠信を脩め、入れば以て其父兄に事(つか)え、出れば以て其長上に事えれば、梃(つえ)を制して以て秦楚の堅甲利兵を撻(う)たしむべし、

通し番号 25 章内番号 4 章通し番号 5 識別番号 1_5_4
1彼奪其民時、2使不得耕耨以養其父母、3父母凍餓、4兄弟妻子離散、
彼は其民の時を奪い、耕し耨(くさぎ)り以て其父母を養うを得ざらしむ、父母凍餓し、兄弟妻子離散す、

通し番号 26 章内番号 5 章通し番号 5 識別番号 1_5_5
1彼陷溺其民、2王往而征之、3夫誰與王敵、
彼其民を陥溺す、王往きて之を征すれば、夫(それ)誰か王に敵せん、

通し番号 27 章内番号 6 章通し番号 5 識別番号 1_5_6
1故曰、2仁者無敵、3王請勿疑、
故に曰く、仁者は敵無し、王に請う疑うこと勿れ、


章番号 6 章通し番号 6

通し番号 28 章内番号 1 章通し番号 6 識別番号 1_6_1
1孟子見梁襄王、
孟子梁の襄王に見(まみ)ゆ、

通し番号 29 章内番号 2 章通し番号 6 識別番号 1_6_2
1出語人曰、2望之不似人君、3就之而不見所畏焉、4卒然問曰、5天下惡乎定、6吾對曰、7定于一、
出でて人に語りて曰く、之に望むに人君に似ず、之に就(つ)きて畏れる所を見ず、卒然として問いて曰く、天下悪(いずく)に定まらん、吾対(こた)えて曰く、一に定まらん、

通し番号 30 章内番号 3 章通し番号 6 識別番号 1_6_3
1孰能一之、
孰(たれ)か能く之を一にす、

通し番号 31 章内番号 4 章通し番号 6 識別番号 1_6_4
1對曰、2不嗜殺人者能一之、
対えて曰く、人を殺すを嗜(たしな)まざる者、能く之を一にす、

通し番号 32 章内番号 5 章通し番号 6 識別番号 1_6_5
1孰能與之、
孰(たれ)か能く之に与(くみ)せん、

通し番号 33 章内番号 6 章通し番号 6 識別番号 1_6_6
1對曰、2天下莫不與也、3王知夫苗乎、4七八月之閒旱、5則苗槁矣、6天油然作雲、7沛然下雨、8則苗浡然興之矣、9其如是、10孰能禦之、11今夫天下之人牧、12未有不嗜殺人者也、13如有不嗜殺人者、14則天下之民、15皆引領而望之矣、16誠如是也、17民歸之、18由水之就下、19沛然誰能禦之、
対えて曰く、天下与(くみ)せざる莫きなり、王夫(か)の苗を知るか、七八月の間(あいだ)旱すれば、則ち苗槁(かれ)る、天油然(ゆうぜん)として雲を作(おこ)し、沛然(はいぜん)として雨を下さば、則ち苗浡然(ぼつぜん)として之に興(おこ)る、其(そ)れ是(か)くの如ければ、孰か能く之を禦(とど)めん、今夫(それ)天下の人牧、未だ人を殺すを嗜まざる者有らざるなり、如(も)し人を殺すを嗜(たしな)まざる者有れば、則ち天下の民、皆領(くび)を引きて之を望まん、誠に是の如くなるや、民之に帰する、由(なお)水の下に就(つ)くがごとし、沛然(はいぜん)として、誰か能く之を禦(とど)めん、


章番号 7 章通し番号 7

通し番号 34 章内番号 1 章通し番号 7 識別番号 1_7_1
1齊宣王問曰、2齊桓、3晉文之事、4可得聞乎、
斉の宣王問いて曰く、斉桓、晋文の事、聞くことを得(う)べきか、

通し番号 35 章内番号 2 章通し番号 7 識別番号 1_7_2
1孟子對曰、2仲尼之徒、3無道桓文之事者、4是以後世無傳焉、5臣未之聞也、6無以、7則王乎、
孟子対えて曰く、仲尼の徒、桓文の事を道(い)う者無し、是を以て後世に伝うること無し、臣未だ之を聞かざるなり、以(や)む無くんば、則ち王か、

通し番号 36 章内番号 3 章通し番号 7 識別番号 1_7_3
1曰、2德何如、3則可以王矣、4曰、5保民而王、6莫之能禦也、
曰く、德何如(いかん)せば、則ち以て王たるべき、曰く、民を保(やす)んじて王たらば、之を能く禦(とど)むこと莫きなり、

通し番号 37 章内番号 4 章通し番号 7 識別番号 1_7_4
1曰、2若寡人者、3可以保民乎哉、4曰、5可、6曰、7何由知吾可也、8曰、9臣聞之胡齕、10曰、11王坐於堂上、12有牽牛而過堂下者、13王見之曰、14牛何之、15對曰、16將以釁鐘、17王曰、18舍之、19吾不忍其觳觫、20若無罪而就死地、21對曰、22然則廢釁鐘與、23曰、24何可廢也、25以羊易之、26不識有諸、
曰く、寡人の若き者、以て民を保(やす)んずべきか、曰く、可、曰く、何に由(よ)りて吾が可なることを知るや、曰く、臣之を胡齕(ここつ)に聞く、曰く、王堂上に坐す、牛を牽(ひ)きて堂下を過ぐる者有り、王之を見て曰く、牛何(いず)くに之(ゆ)く、対えて曰く、将に以て鐘に釁(ちぬ)らんとす、王曰く、之を舍(や)めろ、吾其の觳觫(こくそく)として、罪無くして死地に就くが若きを忍びず、対えて曰く、然らば則ち鐘に釁(ちぬ)るを廃せんか、曰く、何ぞ廃すべけんや、羊を以て之に易(か)えよ、識(し)らず、諸(これ)有りや、

通し番号 38 章内番号 5 章通し番号 7 識別番号 1_7_5
1曰、2有之、3曰、4是心足以王矣、5百姓皆以王爲愛也、6臣固知王之不忍也、
曰く、之有り、曰く、是の心以て王たるに足る、百姓皆王以て愛(おし)むと爲すなり、臣固より王の忍びざるを知るなり、

通し番号 39 章内番号 6 章通し番号 7 識別番号 1_7_6
1王曰、2然、3誠有百姓者、4齊國雖褊小、5吾何愛一牛、6卽不忍其觳觫、7若無罪而就死地、8故以羊易之也、
王曰く、然(さ)ようか、誠に百姓なる者有り、斉国褊(へん)小と雖も、吾何ぞ一牛を愛(おし)まん、即ち其の觳觫(こくそく)として、罪無くして死地に就くが若きを忍びず、故に羊以て之に易えるなり、

通し番号 40 章内番号 7 章通し番号 7 識別番号 1_7_7
1曰、2王無異於百姓之以王爲愛也、3以小易大、4彼惡知之、5王若隱其無罪而就死地、6則牛羊何擇焉、7王笑曰、8是誠何心哉、9我非愛其財、10而易之以羊也、11宜乎百姓之謂我愛也、
曰く、王、百姓が王以て愛(おし)むと爲すを異(あや)しむこと無かれ、小以て大に易(か)う、彼悪(いずく)んぞ之を知らんや、王若(も)し其の罪無くして死地に就くを隠(いた)まば、則ち牛羊何ぞ択ばん、王は笑いて曰く、是れ誠に何の心かな、我は其の財を愛(おし)みて、之に易えるに羊を以てするに非ざるなり、宜(むべ)なるかな、百姓の我が愛(おし)むと謂うこと、

通し番号 41 章内番号 8 章通し番号 7 識別番号 1_7_8
1曰、2無傷也、3是乃仁術也、4見牛未見羊也、5君子之於禽獸也、6見其生、7不忍見其死、8聞其聲、9不忍食其肉、10是以君子遠庖廚也、
曰く、傷(そこな)うこと無し、是れ乃ち仁術なり、牛を見て未だ羊を見ざるなり、君子の禽獣に於けるや、其の生を見て、其の死を見るを忍びず、其声を聞きて、其の肉を食らうを忍びず、是を以て君子庖廚(ほうちゅう)を遠ざくなり、

通し番号 42 章内番号 9 章通し番号 7 識別番号 1_7_9
1王說曰、2詩云、3他人有心、4予忖度之、5夫子之謂也、6夫我乃行之、7反而求之、8不得吾心、9夫子言之、10於我心有戚戚焉、11此心之所以合於王者何也、
王説(よろこ)びて曰く、詩に云う、他人心有り、予之を忖度(そんたく)す、夫子(ふうし)の謂(いい)なり、夫(それ)我乃ち之を行なう、反(かえり)みて之を求む、吾が心に得ず、夫子之を言う、我が心に於て戚戚有り、此の心の王に合う所以は何ぞや、

通し番号 43 章内番号 10 章通し番号 7 識別番号 1_7_10
1曰、2有復於王者曰、3吾力足以舉百鈞、4而不足以舉一羽、5明足以察秋毫之末、6而不見輿薪、7則王許之乎、8曰、9否、10今恩足以及禽獸、11而功不至於百姓者、12獨何與、13然則一羽之不舉、14爲不用力焉、15輿薪之不見、16爲不用明焉、17百姓之不見保、18爲不用恩焉、19故王之不王、20不爲也、21非不能也、
曰く、王に復(もう)す者有りて曰く、吾が力以て百鈞(きん)を挙ぐるに足りて、以て一羽を挙ぐるに足らず、明、以て秋毫(しゅうごう)の末を察するに足りて、輿薪(よしん)を見ず、則ち王之を許すか、曰く、否(いな)、今恩以て禽獣に及ぶに足りて、功百姓に至らざるは、独(はた)何ぞや、然れば則ち一羽の挙がらざるは、力を用いざる爲なり、輿薪の見ざるは、明を用いざる爲なり、百姓の保(やす)んぜ見(ら)れざるは、恩を用いざる爲なり、故に王の王たらざるは、爲さざるなり、能わざるに非ざるなり、

通し番号 44 章内番号 11 章通し番号 7 識別番号 1_7_11
1曰、2不爲者與不能者之形、3何以異、4曰、5挾太山以超北海、6語人曰、7我不能、8是誠不能也、9爲長者折枝、10語人曰、11我不能、12是不爲也、13非不能也、14故王之不王、15非挾太山以超北海之類也、16王之不王、17是折枝之類也、
曰く、爲さざると能わざるの形、何を以て異なる、曰く、太山を挾(さしはさ)み以て北海を超ゆ、人に語りて曰く、我能わず、是れ誠に能わざるなり、長者の爲に枝を折る、人に語りて曰く、我能わず、是れ爲さざるなり、能わざるに非ざるなり、故に王の王たらざるは、太山を挾(さしはさ)み以て北海を超ゆの類に非ざるなり、王の王たらざるは、是れ枝を折るの類なり、

通し番号 45 章内番号 12 章通し番号 7 識別番号 1_7_12
1老吾老、2以及人之老、3幼吾幼、4以及人之幼、5天下可運於掌、6詩云、7刑于寡妻、8至于兄弟、9以御于家邦、10言舉斯心加諸彼而已、11故推恩足以保四海、12不推恩無以保妻子、13古之人所以大過人者無他焉、14善推其所爲而已矣、15今恩足以及禽獸、16而功不至於百姓者、17獨何與、
吾が老を老とし、以て人の老に及ぼす、吾が幼を幼として、以て人の幼に及ぼす、天下掌(たなごごろ)に運(めぐ)らすべし、詩に云う、寡妻に刑となり、兄弟に至る、以て家邦(ほう)を御す、斯(こ)の心を挙げて諸(これ)を彼に加えるを言うのみ、故に恩を推せば以て四海を保(やす)んずるに足り、恩を推されば以て妻子を保んずること無し、古の人大いに人に過ぐる所以は他無し、善く其の爲す所を推すのみ、今恩以て禽獣に及ぶに足りて、功百姓に至らざるは、独(はた)何ぞや、

通し番号 46 章内番号 13 章通し番号 7 識別番号 1_7_13
1權然後知輕重、2度然後知長短、3物皆然、4心爲甚、5王請度之、
権して然る後軽重を知る、度して然る後長短を知る、物皆然り、心甚しと爲す、王に請う之を度(はか)るを、

通し番号 47 章内番号 14 章通し番号 7 識別番号 1_7_14
1抑王興甲兵、2危士臣、3構怨於諸侯、4然後快於心與、
抑(そもそも)王甲兵を興(おこ)し、士臣を危うくし、怨みを諸侯に構(むす)ぶ、然る後心に快きか、

通し番号 48 章内番号 15 章通し番号 7 識別番号 1_7_15
1王曰、2否、3吾何快於是、4將以求吾所大欲也、
王曰く、否、吾何ぞ是に快きか、将に以て吾が大いに欲する所を求めんとするなり、

通し番号 49 章内番号 16 章通し番号 7 識別番号 1_7_16
1曰、2王之所大欲、3可得聞與、4王笑而不言、5曰、6爲肥甘不足於口與、7輕煖不足於體與、8抑爲采色不足視於目與、9聲音不足聽於耳與、10便嬖不足使令於前與、11王之諸臣皆足以供之、12而王豈爲是哉、13曰、14否、15吾不爲是也、16曰、17然則王之所大欲可知已、18欲辟土地、19朝秦楚、20莅中國而撫四夷也、21以若所爲、22求若所欲、23猶緣木而求魚也、
曰く、王の大いに欲する所、聞くことを得べきか、王笑いて言わず、曰く、肥甘口に足らざる爲か、軽煖(だん)体に足らざるか、抑(ある)いは采(さい)色目に視るに足らざる爲か、声音耳に聴くに足らざるか、便嬖(べんぺい)前に使令するに足らざるか、王の諸臣皆以て之を供するに足る、王豈(あに)是が爲ならんや、曰く、否、吾是れが爲ならざるなり、曰く、然れば則ち王の大いに欲する所知るべし(已)、土地を辟(ひら)き、秦楚を朝せしめ、中国に莅(のぞ)み四夷を撫(ぶ)せんと欲するなり、若(かくのごと)く爲す所を以て、若(かくのごと)く欲する所を求めれば、猶木に縁(よ)りて魚を求めるごときなり、

通し番号 50 章内番号 17 章通し番号 7 識別番号 1_7_17
1王曰、2若是其甚與、3曰、4殆有甚焉、5緣木求魚、6雖不得魚、7無後災、8以若所爲、9求若所欲、10盡心力而爲之、11後必有災、12曰、13可得聞與、14曰、15鄒人與楚人戰、16則王以爲孰勝、17曰、18楚人勝、19曰、20然則小固不可以敵大、21寡固不可以敵衆、22弱固不可以敵彊、23海内之地、24方千里者九、25齊集有其一、26以一服八、27何以異於鄒敵楚哉、28蓋亦反其本矣、
王曰く、是の若く其れ甚しきか、曰く、(殆)焉(これ)より甚しきこと有り、木に縁(よ)りて魚を求む、魚を得ずと雖も、後の災無し、若(かくのごと)く爲す所を以て、若(かくのごと)く欲する所を求めれば、心力を尽して之を爲し、後必ず災有り、曰く、聞くことを得べきか、曰く、鄒(すう)人と楚人戦えば、則ち王以て孰れか勝つと爲す、曰く、楚人勝つ、曰く、然らば則ち小固(もと)より以て大に敵(あた)るべからず、寡固より以て衆に敵(あた)るべからず、弱固より以て彊(きょう)に敵(あた)るべからず、海内の地、方千里なるもの九なり、斉集めると其一を有す、一以て八を服す、何ぞ以て鄒が楚に敵(あた)るに異ならんや、(蓋)亦(ただ)其の本に反る、

通し番号 51 章内番号 18 章通し番号 7 識別番号 1_7_18
1今王發政施仁、2使天下仕者皆欲立於王之朝、3耕者皆欲耕於王之野、4商賈皆欲藏於王之市、5行旅皆欲出於王之塗、6天下之欲疾其君者皆欲赴愬於王、7其若是、8孰能禦之、
今王政を発し仁を施す、天下の仕える者をして皆王の朝に立たんことを欲し、耕やす者をして皆王の野に耕やすことを欲し、商賈(こ)をして皆王の市に蔵(たくわ)えることを欲し、行旅をして皆王の塗(みち)に出でんことを欲し、天下の其の君を疾(にく)まんと欲する者をして皆王に赴(おもむ)き愬(うった)えんことを欲せしむ、其れ是くの若ければ、孰(たれ)か能く之を禦(とど)めん、

通し番号 52 章内番号 19 章通し番号 7 識別番号 1_7_19
1王曰、2吾惛、3不能進於是矣、4願夫子輔吾志、5明以敎我、6我雖不敏、7請嘗試之、
王曰く、吾惛(くら)し、是に進むこと能わず、願わくば夫子(ふうし)吾が志を輔(たす)けよ、明らかに以て我に教えよ、我不敏と雖も、請う之を嘗試(こころ)みん、

通し番号 53 章内番号 20 章通し番号 7 識別番号 1_7_20
1曰、2無恆產而有恆心者、3惟士爲能、4若民、5則無恆產、6因無恆心、7苟無恆心、8放辟邪侈、9無不爲已、10及陷於罪、11然後從而刑之、12是罔民也、13焉有仁人在位、14罔民而可爲也、
曰く、恒(つね)の産無くして恒(つね)の心有るは、惟(ただ)士能くすることを爲す、民の若きは、則ち恒(つね)の産無ければ、因りて恒(つね)の心無し、苟(もし)恒(つね)の心無ければ、放辟邪侈(ほうへきじゃし)、爲さざる無きのみ、罪に陥るに及びて、然る後従(よ)りて之を刑す、是れ民を罔(あみ)するなり、焉ぞ仁人位に在ること有りて、民を罔して爲すべけんや、

通し番号 54 章内番号 21 章通し番号 7 識別番号 1_7_21
1是故明君制民之產、2必使仰足以事父母、3俯足以畜妻子、4樂歳終身飽、5凶年免於死亡、6然後驅而之善、7故民之從之也輕、
是の故に明君は民の産を制し、必ず仰ぎて以て父母に事(つか)えるに足り、俯して以て妻子を畜(やしな)うに足り、楽歳身を終うるまで飽き、凶年死亡を免かれしむ、然る後駆りて善に之(ゆ)かしむ、故に民の之に従うや軽し、

通し番号 55 章内番号 22 章通し番号 7 識別番号 1_7_22
1今也制民之產、2仰不足以事父母、3俯不足以畜妻子、4樂歳終身苦、5凶年不免於死亡、6此惟救死而恐不贍、7奚暇治禮義哉、
今や民の産を制し、仰ぎて以て父母に事えるに足らず、俯して以て妻子を畜なうに足らず、楽歳身を終えるまで苦しみ、凶年死亡を免かれず、此惟(ただ)死を救いて贍(た)らざるを恐る、奚(なん)ぞ礼義を治める暇(いとま)あらん、

通し番号 56 章内番号 23 章通し番号 7 識別番号 1_7_23
1王欲行之、2則盍反其本矣、
王之を行なわんと欲せば、則ち盍(なん)ぞ其の本に反(かえ)らざる、

通し番号 57 章内番号 24 章通し番号 7 識別番号 1_7_24
1五畝之宅、2樹之以桑、3五十者可以衣帛矣、4雞豚狗彘之畜、5無失其時、6七十者可以食肉矣、7百畝之田、8勿奪其時、9八口之家可以無飢矣、10謹庠序之敎、11申之以孝悌之義、12頒白者不負戴於道路矣、13老者衣帛食肉、14黎民不飢不寒、15然而不王者、16未之有也、
五畝(ほ)の宅、之に樹(う)えるに桑を以てす、五十は以て帛(きぬ)を衣るべし、雞(けい)豚(とん)狗(こう)彘(てい)の畜、其時を失なうこと無ければ、七十の者以て肉を食すべし、百畝の田、其時を奪うこと勿ければ、八口の家以て飢えること無かるべし、庠序(しょうじょ)の敎を謹んで、之に申ねるに孝悌の義を以てすれば、頒白(はんぱく)の者道路に(12負戴せず、老なる者帛(きぬ)を衣(き)て肉を食し、黎(れい)民飢えず寒からず、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、


2 梁惠王章句下 liáng huì wáng zhāng jù xià

章番号 1 章通し番号 8

通し番号 58 章内番号 1 章通し番号 8 識別番号 2_1_1
1莊暴見孟子曰、2暴見於王、3王語暴以好樂、4暴未有以對也、5曰、6好樂何如、7孟子曰、8王之好樂甚、9則齊國其庶幾乎、
荘暴、孟子に見(まみ)えて曰く、暴は王に見(まみ)ゆ、王は暴に語るに楽しみを好むを以てす、暴未だ以て対(こた)えること有らざるなり、曰く、楽しみを好む何如(いかん)、孟子曰く、王の楽しみを好むこと甚だしければ、則ち斉国其れ庶幾(ちか)からんか、

通し番号 59 章内番号 2 章通し番号 8 識別番号 2_1_2
1他日見於王曰、2王嘗語莊子以好樂、3有諸、4王變乎色曰、5寡人非能好先王之樂也、6直好世俗之樂耳、
他日王に見(まみ)えて曰く、王嘗(かつ)て荘子に語るに楽しみを好むを以てす、諸(これ)有りや、王色を変じて曰く、寡人能く先王の楽しみを好むに非ざるなり、直(ただ)世俗の楽しみを好むのみ、

通し番号 60 章内番号 3 章通し番号 8 識別番号 2_1_3
1曰、2王之好樂甚、3則齊其庶幾乎、4今之樂由古之樂也、
曰く、王の楽しみを好む甚だしければ、則ち斉其れ庶幾(ちか)からんか、今の楽しみは由(なお)古の楽しみのごときなり、

通し番号 61 章内番号 4 章通し番号 8 識別番号 2_1_4
1曰、2可得聞與、3曰、4獨樂樂、5與人樂樂、6孰樂、7曰、8不若與人、9曰、10與少樂樂、11與衆樂樂、12孰樂、13曰、14不若與衆、
曰く、聞くことを得べきか、曰く、独り楽しみを楽しむと、人と楽しみを楽しむと、孰(いずれ)か楽しき、曰く、人と与(とも)にするに若(し)かず、曰、少きと楽しみを楽しむと、衆と楽しみを楽しむと、孰(いずれ)か楽しき、曰く、衆と与(とも)にするに若(し)かず、

通し番号 62 章内番号 5 章通し番号 8 識別番号 2_1_5
1臣請爲王言樂、
臣請う王の爲に楽しみを言わん、

通し番号 63 章内番号 6 章通し番号 8 識別番号 2_1_6
1今王鼓樂於此、2百姓聞王鐘鼓之聲、3管籥之音、4舉疾首蹙頞、5而相告曰、6吾王之好鼓樂、7夫何使我至於此極也、8父子不相見、9兄弟妻子離散、10今王田獵於此、11百姓聞王車馬之音、12見羽旄之美、13舉疾首蹙頞、14而相告曰、15吾王之好田獵、16夫何使我至於此極也、17父子不相見、18兄弟妻子離散、19此無他、20不與民同樂也、
今王此に鼓楽せんに、百姓王の鐘(しょう)鼓(こ)の声、管(かん)籥(やく)の音を聞きて、挙(みな)疾首蹙頞(しゅくあつ)して、相い告げて曰く、吾王は鼓楽を好む、夫(それ)何ぞ我をして此の極に至らしめるや、父子相(あい)見ず、兄弟妻子離散す、今王此に田猟す、百姓王の車馬の音を聞き、羽旄(ぼう)の美を見て、挙(みな)疾首蹙頞(しゅくあつ)して、相い告げて曰く、吾王は田猟を好む、夫(それ)何ぞ我をして此の極に至らしめるや、父子相(あい)見ず、兄弟妻子離散す、此他無し、民と楽(たのし)みを同じくせざるなり、

通し番号 64 章内番号 7 章通し番号 8 識別番号 2_1_7
1今王鼓樂於此、2百姓聞王鐘鼓之聲、3管籥之音、4舉欣欣然有喜色、5而相告曰、6吾王庶幾無疾病與、7何以能鼓樂也、8今王田獵於此、9百姓聞王車馬之音、10見羽旄之美、11舉欣欣然有喜色、12而相告曰、13吾王庶幾無疾病與、14何以能田獵也、15此無他、16與民同樂也、
今王此に鼓楽するに、百姓王の鐘鼓の声、管籥(かんやく)の音を聞きて、舉(みな)欣欣然(きんきんぜん)として喜色有りて、相告げて曰く、吾が王疾病無きに庶幾(ちか)きか、何を以て能く鼓楽する、今王此に田猟す、百姓王の車馬の音を聞き、羽旄(ぼう)の美を見て、挙(みな)欣欣然として喜色有り、相告げて曰く、吾が王疾病無きに庶幾(ちか)きか、何を以て能く田猟するや、此他無し、民と楽しみを同じくするなり、

通し番号 65 章内番号 8 章通し番号 8 識別番号 2_1_8
1今王與百姓同樂、2則王矣、
今王百姓と楽しみを同じくすれば、則ち王たり、


章番号 2 章通し番号 9

通し番号 66 章内番号 1 章通し番号 9 識別番号 2_2_1
1齊宣王問曰、2文王之囿方七十里、3有諸、4孟子對曰、5於傳有之、
斉の宣王問いて曰く、文王の囿(ゆう)方七十里、諸(これ)有りや、孟子対えて曰く、伝に之有り、

通し番号 67 章内番号 2 章通し番号 9 識別番号 2_2_2
1曰、2若是其大乎、3曰、4民猶以爲小也、5曰、6寡人之囿方四十里、7民猶以爲大、8何也、9曰、10文王之囿方七十里、11芻蕘者往焉、12雉兔者往焉、13與民同之、14民以爲小、15不亦宜乎、
曰く、是くの若く其れ大か、曰く、民猶以て小と爲すなり、曰く、寡人の囿方四十里、民猶以て大と爲す、何ぞや、曰く、文王の囿方七十里、芻蕘(すうじょう)の者往(ゆ)き、雉(ち)兔(と)の者往く、民と之を同じくす、民以て小と爲す、亦宜(うべ)ならずや、

通し番号 68 章内番号 3 章通し番号 9 識別番号 2_2_3
1臣始至於境、2問國之大禁、3然後敢入、4臣聞、5郊關之内有囿方四十里、6殺其麋鹿者如殺人之罪、7則是方四十里、8爲阱於國中、9民以爲大、10不亦宜乎、
臣始めて境に至る、国の大禁を問う、然る後敢えて入る、臣聞く、郊関の内囿(ゆう)方四十里有り、其の麋(び)鹿(ろく)を殺す者は人を殺すの罪の如し、則ち是れ方四十里、阱(せい)を国の中に爲(つく)るなり、民以て大と爲す、亦宜(うべ)ならざるや、


章番号 3 章通し番号 10

通し番号 69 章内番号 1 章通し番号 10 識別番号 2_3_1
1齊宣王問曰、2交鄰國有道乎、3孟子對曰、4有、5惟仁者爲能以大事小、6是故湯事葛、7文王事昆夷、8惟智者爲能以小事大、9故大王事獯鬻、10句踐事吳、
斉の宣王問いて曰く、鄰国に交わる道有りや、孟子対えて曰く、有り、惟(ただ)仁者能く大以て小に事(つか)えるを爲す、是の故に湯は葛(かつ)に事え、文王は昆夷(こんい)に事える、惟(ただ)智者能く小以て大に事えるを爲す、故に大王は獯鬻(くんいく)に事え、句践は呉に事う、

通し番号 70 章内番号 2 章通し番号 10 識別番号 2_3_2
1以大事小者、2樂天者也、3以小事大者、4畏天者也、5樂天者保天下、6畏天者保其國、
大以て小に事える者は、天を楽しむ者なり、小以て大に事える者は、天を畏れる者なり、天を楽しむ者は天下を保つ、天を畏れる者は其国を保つ、

通し番号 71 章内番号 3 章通し番号 10 識別番号 2_3_3
1詩云、2畏天之威、3于時保之、
詩に云う、天の威を畏る、時(ここ)に之を保つ、

通し番号 72 章内番号 4 章通し番号 10 識別番号 2_3_4
1王曰、2大哉言矣、3寡人有疾、4寡人好勇、
王曰く、大なる哉(かな)言、寡人疾有り、寡人勇を好む、

通し番号 73 章内番号 5 章通し番号 10 識別番号 2_3_5
1對曰、2王請無好小勇、3夫撫劍疾視曰、4彼惡敢當我哉、5此匹夫之勇、6敵一人者也、7王請大之、
対えて曰く、王に請う小勇を好むこと無かれ、夫(それ)剣を撫(ぶ)し疾視して曰く、彼悪(いずくん)ぞ敢えて我に当たらんや、此は匹夫の勇、一人に敵(あた)るものなり、王に請う之を大にせよ、

通し番号 74 章内番号 6 章通し番号 10 識別番号 2_3_6
1詩云、2王赫斯怒、3爰整其旅、4以遏徂莒、5以篤周祜、6以對于天下、7此文王之勇也、8文王一怒、9而安天下之民、
詩に云う、王赫(かく)として斯(ここ)に怒る、爰(ここ)において其旅を整え、以て徂(ゆ)く莒(きょ)を遏(とど)む、以て周の祜(さいわ)いを篤(あつ)くす、以て天下に対(こた)う、此は文王の勇なり、文王一たび怒りて、天下の民を安んず、

通し番号 75 章内番号 7 章通し番号 10 識別番号 2_3_7
1書曰、2天降下民、3作之君、4作之師、5惟曰其助上帝、6寵之、7四方有罪無罪、8惟我在、9天下曷敢有越厥志、10一人衡行於天下、11武王恥之、12此武王之勇也、13而武王亦一怒而安天下之民、
書に曰く、天、下民を降(おろ)す、之に君を作り、之に師を作る、惟(これ)其れ上帝を助けよと曰い、之を寵す、四方罪有り罪無し、惟(ただ)我に在り、天下曷(なん)ぞ敢えて厥(その)志を越ゆること有らんや、一人天下に衡行(こうこう)する、武王之を恥ず、此が武王の勇なり、而(すなわ)ち武王亦一たび怒りて天下の民を安んず、

通し番号 76 章内番号 8 章通し番号 10 識別番号 2_3_8
1今王亦一怒、2而安天下之民、3民惟恐王之不好勇也、
今王亦一たび怒りて、天下の民を安んずれば、民惟(ただ)王の勇を好まざるを恐れるなり、


章番号 4 章通し番号 11

通し番号 77 章内番号 1 章通し番号 11 識別番号 2_4_1
1齊宣王見孟子於雪宮、2王曰、3賢者亦有此樂乎、4孟子對曰、5有、6人不得、7則非其上矣、
斉の宣王孟子を雪宮に見る、王曰く、賢者亦此楽しみ有るか、孟子対えて曰く、有り、人得ざれば、則ち其上を非(そし)る、

通し番号 78 章内番号 2 章通し番号 11 識別番号 2_4_2
1不得而非其上者、2非也、3爲民上而不與民同樂者、4亦非也、
得ずして其上を非(そし)る者は、非なり、民の上と爲りて民と楽しみを同じくせざる者、亦非なり、

通し番号 79 章内番号 3 章通し番号 11 識別番号 2_4_3
1樂民之樂者、2民亦樂其樂、3憂民之憂者、4民亦憂其憂、5樂以天下、6憂以天下、7然而不王者、8未之有也、
民の楽しみを楽しむ者は、民亦其楽しみを楽しむ、民の憂いを憂う者は、民亦其憂いを憂う、楽しむに天下以てし、憂うに天下以てす、然(しか)り而(しこう)して王たらざる者は、未だ之有らざるなり、

通し番号 80 章内番号 4 章通し番号 11 識別番号 2_4_4
1昔者齊景公問於晏子曰、2吾欲觀於轉附、3朝儛、4遵海而南、5放于琅邪、6吾何脩而可以比於先王觀也、
昔者(むかし)斉の景公晏子に問いて曰く、吾は転附(てんぷ)、朝儛(ちょうぶ)を観て、海に遵(そ)いて南(みなみ)し、琅邪(ろうや)に放(いた)らんと欲す、吾何を脩(おさ)めて以て先王の観に比すべき、

通し番号 81 章内番号 5 章通し番号 11 識別番号 2_4_5
1晏子對曰、2善哉問也、3天子適諸侯曰巡狩、4巡狩者巡所守也、5諸侯朝於天子曰述職、6述職者述所職也、7無非事者、8春省耕而補不足、9秋省斂而助不給、10夏諺曰、11吾王不遊、12吾何以休、13吾王不豫、14吾何以助、15一遊一豫、16爲諸侯度、
晏子対えて曰く、善い哉(かな)問や、天子諸侯に適(ゆ)くを巡狩と曰う、巡狩は守る所を巡(めぐ)るなり、諸侯天子に朝するを述職と曰う、述職は職とする所を述べるなり、事に非ざるもの無きは、春は耕を省(み)て足らざるを補ない、秋は斂(れん)を省(み)て給(た)らざるを助く、夏諺(げん)曰く、吾王遊ばずんば、吾何を以て休(いこ)わん、吾王予(たのし)まざれば、吾何以て助からん、一遊一予、諸侯の度と爲る、

通し番号 82 章内番号 6 章通し番号 11 識別番号 2_4_6
1今也不然、2師行而糧食、3飢者弗食、4勞者弗息、5睊睊胥讒、6民乃作慝、7方命虐民、8飮食若流、9流連荒亡、10爲諸侯憂、
今也(や)然らず、師行きて糧食す、飢えるは食らわず、労するは息(いこ)わず、睊睊(けんけん)として胥(みな)讒(そし)る、民乃ち慝(うら)みを作(な)す、命を方(す)て民を虐(しいた)げ、飮食流れるが若し、流連荒亡、諸侯の憂いと爲る、

通し番号 83 章内番号 7 章通し番号 11 識別番号 2_4_7
1從流下而忘反、2謂之流、3從流上而忘反、4謂之連、5從獸無厭、6謂之荒、7樂酒無厭、8謂之亡、
流に従い下り反(かえ)るを忘る、之を流と謂う、流に従い上り反(かえ)るを忘る、之を連と謂う、獣に従い厭(あ)くこと無し、之を荒と謂う、酒を楽しみ厭(あ)くこと無し、之を亡と謂う、

通し番号 84 章内番号 8 章通し番号 11 識別番号 2_4_8
1先王無流連之樂、2荒亡之行、
先王は流連の楽しみ、荒亡の行無し、

通し番号 85 章内番号 9 章通し番号 11 識別番号 2_4_9
1惟君所行也、
惟(ただ)君行う所なり、

通し番号 86 章内番号 10 章通し番号 11 識別番号 2_4_10
1景公說、2大戒於國、3出舍於郊、4於是始興發補不足、5召大師曰、6爲我作君臣相說之樂、7蓋徵招角招是也、8其詩曰、9畜君何尤、10畜君者、11好君也、
景公説(よろこ)ぶ、大いに国に戒(つ)ぐ、出でて郊に舍(お)る、是に於て始めて興発し不足を補なう、大師を召(め)して曰く、我の爲に君臣相(あい)説(よろこ)ぶの楽を作れ、蓋し徵(ち)招角招是れなり、其詩に曰く、君を畜(とど)むは何ぞ尤(とが)めん、君を畜(とど)むは、君を好むなり、


章番号 5 章通し番号 12

通し番号 87 章内番号 1 章通し番号 12 識別番号 2_5_1
1齊宣王問曰、2人皆謂我毀明堂、3毀諸、4已乎、
斉の宣王問いて曰く、人皆我に明堂を毀(こぼ)てと謂う、諸(これ)を毀たんや、已(や)めんや、

通し番号 88 章内番号 2 章通し番号 12 識別番号 2_5_2
1孟子對曰、2夫明堂者、3王者之堂也、4王欲行王政、5則勿毀之矣、
孟子対えて曰く、夫(それ)明堂は、王者の堂なり、王が王政を行なわんと欲せば、則ち之を毀(こぼ)つこと勿れ、

通し番号 89 章内番号 3 章通し番号 12 識別番号 2_5_3
1王曰、2王政可得聞與、3對曰、4昔者文王之治岐也、5耕者九一、6仕者世祿、7關市譏而不征、8澤梁無禁、9罪人不孥、10老而無妻曰鰥、11老而無夫曰寡、12老而無子曰獨、13幼而無父曰孤、14此四者、15天下之窮民而無告者、16文王發政施仁、17必先斯四者、18詩云、19哿矣富人、20哀此煢獨、
王曰く、王政聞くを得べきか、対えて曰く、昔者(むかし)文王の岐を治めるや、耕やす者は九一なり、仕える者は世禄なり、関市譏(しら)べて征せず、沢梁(りょう)禁無し、人を罪(ばっ)して孥(ど)までせず、老いて妻無し鰥(かん)と曰う、老いて夫無し寡と曰う、老いて子無し独と曰う、幼くして父無し孤と曰う、此四は、天下の窮民にして告ぐること無き者なり、文王政を発し仁を施す、必ず斯(この)四者を先にす、詩に云う、哿(か)なるかな富人、哀(かな)しいかな此煢(けい)独、

通し番号 90 章内番号 4 章通し番号 12 識別番号 2_5_4
1王曰、2善哉言乎、3曰、4王如善之、5則何爲不行、6王曰、7寡人有疾、8寡人好貨、9對曰、10昔者公劉好貨、11詩云、12乃積乃倉、13乃裹餱糧、14于橐于囊、15思戢用光、16弓矢斯張、17干戈戚揚、18爰方啓行、19故居者有積倉、20行者有裹糧也、21然後可以爰方啓行、22王如好貨、23與百姓同之、24於王何有、
王曰く、善(よ)い哉(かな)言や、曰、王如(も)し之を善(よ)しとすれば、則ち何爲(なんす)れぞ行わざる、王曰く、寡人疾有り、寡人貨を好む、対えて曰く、昔公劉貨を好む、詩に云う、乃ち積み乃ち倉にする、乃ち餱(こう)糧を裹(つつ)む、橐(たく)に囊(のう)に、戢(あつ)めて用(もっ)て光するを思う、弓矢斯(すなわ)ち張り、干戈(か)戚(せき)揚(よう)、爰(ここ)に方(はじめ)て啓行す、故に居る者積(し)倉有り、行く者裹(か)糧有るなり、然る後以て爰(ここ)に方(はじめ)て啓行すべし、王如し貨を好めば、百姓と之を同じくすれば、王に於て何か有らん、

通し番号 91 章内番号 5 章通し番号 12 識別番号 2_5_5
1王曰、2寡人有疾、3寡人好色、4對曰、5昔者大王好色、6愛厥妃、7詩云、8古公亶甫、9來朝走馬、10率西水滸、11至于岐下、12爰及姜女、13聿來胥宇、14當是時也、15内無怨女、16外無曠夫、17王如好色、18與百姓同之、19於王何有、
王曰く、寡人疾有り、寡人色を好む、対えて曰く、昔大王色を好む、厥(その)妃を愛す、詩に云う、古公亶甫(たんぽ)、来たりて朝に馬を走らす、西水の滸(ほとり)に率(そ)い、岐下に至る、爰(ここ)に姜女及(と)、聿(つい)に来り胥(あい)宇(お)る、是時に当たり、内に怨女無く、外に曠(こう)夫無し、王如し色を好めば、百姓と之を同じくすれば、王に於て何か有らん、


章番号 6 章通し番号 13

通し番号 92 章内番号 1 章通し番号 13 識別番号 2_6_1
1孟子謂齊宣王曰、2王之臣、3有託其妻子於其友、4而之楚遊者、5比其反也、6則凍餒其妻子、7則如之何、8王曰、9棄之、
孟子斉の宣王に謂いて曰く、王の臣、其妻子を其友に託して、楚に之(ゆ)き遊ぶ者有り、其反るに比(およ)ぶや、則ち其妻子を凍餒(だい)す、則ち之を如何(いかん)、王曰く、之を棄つ、

通し番号 93 章内番号 2 章通し番号 13 識別番号 2_6_2
1曰、2士師不能治士、3則如之何、4王曰、5已之、
曰く、士師が士を治める能わず、則ち之を如何(いかん)、王曰く、之を已(や)む、

通し番号 94 章内番号 3 章通し番号 13 識別番号 2_6_3
1曰、2四境之内不治、3則如之何、4王顧左右而言他、
曰く、四境の内治まらず、則ち之を如何、王左右を顧(かえりみ)て他を言う、


章番号 7 章通し番号 14

通し番号 95 章内番号 1 章通し番号 14 識別番号 2_7_1
1孟子見齊宣王曰、2所謂故國者、3非謂有喬木之謂也、4有世臣之謂也、5王無親臣矣、6昔者所進、7今日不知其亡也、
孟子齊の宣王に見(まみ)えて曰く、謂う所の故国は、喬(きょう)木有るの謂(いい)を謂うに非ざるなり、世臣有るの謂なり、王親臣無し、昔者(きのう)進める所、今日は其亡(に)ぐるを知らざるなり、

通し番号 96 章内番号 2 章通し番号 14 識別番号 2_7_2
1王曰、2吾何以識其不才而舍之、
王曰く、吾何を以て其不才を識りて之を舍(す)つ、

通し番号 97 章内番号 3 章通し番号 14 識別番号 2_7_3
1曰、2國君進賢、3如不得已、4將使卑踰尊、5疏踰戚、6可不愼與、
曰く、国君賢を進む、已むを得ざるが如くす、将に卑(いや)しきをして尊(とうと)きを踰(こ)え、疏(とお)きをして戚(ちか)きを踰えしめんとす、慎まざるべきか、

通し番号 98 章内番号 4 章通し番号 14 識別番号 2_7_4
1左右皆曰賢、2未可也、3諸大夫皆曰賢、4未可也、5國人皆曰賢、6然後察之、7見賢焉、8然後用之、9左右皆曰不可、10勿聽、11諸大夫皆曰不可、12勿聽、13國人皆曰不可、14然後察之、15見不可焉、16然後去之、
左右皆賢と曰う、未だ可ならざるなり、諸大夫皆賢と曰う、未だ可ならざるなり、国人(こくじん)皆賢と曰う、然る後之を察す、賢を見て、然る後之を用いる、左右皆不可と曰う、聴くこと勿れ、諸大夫皆不可と曰う、聴くこと勿れ、国人皆不可と曰う、然る後之を察す、不可を見て、然る後之を去る、

通し番号 99 章内番号 5 章通し番号 14 識別番号 2_7_5
1左右皆曰可殺、2勿聽、3諸大夫皆曰可殺、4勿聽、5國人皆曰可殺、6然後察之、7見可殺焉、8然後殺之、9故曰、10國人殺之也、
左右皆殺すべしと曰う、聴くこと勿れ、諸大夫皆殺すべしと曰う、聴くこと勿れ、国人皆殺すべしと曰う、然る後之を察す、殺すべきを見て、然る後之を殺す、故に曰く、国人之を殺すなり、

通し番号 100 章内番号 6 章通し番号 14 識別番号 2_7_6
1如此、2然後可以爲民父母、
此(かく)の如くして、然る後以て民の父母と爲るべし、


章番号 8 章通し番号 15

通し番号 101 章内番号 1 章通し番号 15 識別番号 2_8_1
1齊宣王問曰、2湯放桀、3武王伐紂、4有諸、5孟子對曰、6於傳有之、
斉の宣王問いて曰く、湯は桀を放ち、武王は紂を伐(う)つ、諸(これ)有りや、孟子対えて曰く、伝に之有り、

通し番号 102 章内番号 2 章通し番号 15 識別番号 2_8_2
1曰、2臣弑其君可乎、
曰く、臣が其君を弑(しい)す、可か、

通し番号 103 章内番号 3 章通し番号 15 識別番号 2_8_3
1曰、2賊仁者謂之賊、3賊義者謂之殘、4殘賊之人謂之一夫、5聞誅一夫紂矣、6未聞弑君也、
曰く、仁を賊(そこな)う者之を賊と謂う、義を賊う者之を残と謂う、残賊の人之を一夫と謂う、一夫紂を誅するを聞く、未だ君を弑するを聞かざるなり、


章番号 9 章通し番号 16

通し番号 104 章内番号 1 章通し番号 16 識別番号 2_9_1
1孟子見齊宣王曰、2爲巨室、3則必使工師求大木、4工師得大木、5則王喜、6以爲能勝其任也、7匠人斲而小之、8則王怒、9以爲不勝其任矣、10夫人幼而學之、11壯而欲行之、12王曰姑舍女所學而從我、13則何如、
孟子斉の宣王に見(まみ)えて曰く、巨室を爲(つく)る、則ち必ず工師をして大木を求めしむ、工師大木を得れば、則ち王喜び、以て能く其任に勝(た)えると爲すなり、匠人斲(けず)りて之を小さくすれば、則ち王怒り、以て其任に勝(た)えずと爲す、夫(それ)人幼にして之を学び、壮にして之を行なわんと欲す、王姑(しばら)く女(なんじ)の学ぶ所を舍(お)きて我に従えと曰わば、則ち何如(いかん)、

通し番号 105 章内番号 2 章通し番号 16 識別番号 2_9_2
1今有璞玉於此、2雖萬鎰、3必使玉人彫琢之、4至於治國家、5則曰姑舍女所學而從我、6則何以異於敎玉人彫琢玉哉、
今此に璞(はく)玉有り、万鎰(いつ)と雖も、必ず玉人をして之を彫琢(ちょうたく)せしむ、国家を治めるに至り、則ち姑(しばら)く女(なんじ)の学ぶ所を舍(お)きて我に従えと曰わば、則ち何ぞ以て玉人に玉を彫琢するを教えるに異ならんや、


章番号 10 章通し番号 17

通し番号 106 章内番号 1 章通し番号 17 識別番号 2_10_1
1齊人伐燕、2勝之、
齊人燕を伐(う)ち、之に勝つ、

通し番号 107 章内番号 2 章通し番号 17 識別番号 2_10_2
1宣王問曰、2或謂寡人勿取、3或謂寡人取之、4以萬乘之國伐萬乘之國、5五旬而舉之、6人力不至於此、7不取必有天殃、8取之何如、
宣王問いて曰く、或いは寡人に取る勿れと謂い、或いは寡人に之を取れと謂う、万乗の国以て万乗の国を伐つ、五旬(じゅん)にして之を挙(あ)ぐ、人力此に至らず、取らざれば必ず天殃(おう)有り、之を取ること何如(いかん)、

通し番号 108 章内番号 3 章通し番号 17 識別番号 2_10_3
1孟子對曰、2取之而燕民悅、3則取之、4古之人有行之者、5武王是也、6取之而燕民不悅、7則勿取、8古之人有行之者、9文王是也、
孟子対えて曰く、之を取りて燕の民悦(よろこ)べば、則ち之を取れ、古の人之を行なう者有り、武王是れなり、之を取りて燕の民悦ばざれば、則ち取ること勿れ、古の人之を行う者有り、文王是れなり、

通し番号 109 章内番号 4 章通し番号 17 識別番号 2_10_4
1以萬乘之國伐萬乘之國、2簞食壺漿、3以迎王師、4豈有他哉、5避水火也、6如水益深、7如火益熱、8亦運而已矣、
万乗の国を以て万乗の国を伐つ、食(し)を簞(たん)し漿(こしょう)を壺(こ)し、以て王の師を迎う、豈(あ)に他有らんや、水火を避くるなり、如(も)し水益(ますます)深く、如(も)し火益(ますます)熱(あつ)ければ、亦運(めぐ)るのみ、


章番号 11 章通し番号 18

通し番号 110 章内番号 1 章通し番号 18 識別番号 2_11_1
1齊人伐燕取之、2諸侯將謀救燕、3宣王曰、4諸侯多謀伐寡人者、5何以待之、6孟子對曰、7臣聞七十里爲政於天下者、8湯是也、9未聞以千里畏人者也、
斉人燕を伐ち之を取る、諸侯将(まさ)に燕を救うことを謀らんとす、宣王曰く、諸侯寡人を伐つを謀る者多し、何を以て之を待たん、孟子対えて曰く、臣聞く七十里にして政を天下に爲す者、湯是れなり、未だ千里以て人を畏れる者を聞かざるなり、

通し番号 111 章内番号 2 章通し番号 18 識別番号 2_11_2
1書曰、2湯一征自葛始、3天下信之、4東面而征西夷怨、5南面而征北狄怨、6曰、7奚爲後我、8民望之、9若大旱之望雲霓也、10歸市者不止、11耕者不變、12誅其君而弔其民、13若時雨降、14民大悅、15書曰、16徯我后、17后來其蘇、
書に曰く、湯一(はじ)めて征す、葛自(よ)り始む、天下之を信ず、東面して征すれば西夷怨む、南面して征すれば北狄怨む、曰く、奚爲(なんす)れぞ我を後(のち)にする、民が之を望むこと、大旱(たいかん)の雲霓(げい)を望むが若(ごと)きなり、市に帰(ゆ)く者止(と)まらず、耕す者変(うご)かず、其君を誅して其民を弔(あわ)れむ、時雨の降(ふ)るが若(ごと)し、民大いに悦ぶ、書に曰く、我后(きみ)を徯(ま)つ、后(きみ)来たらば其蘇(よみがえ)らん、

通し番号 112 章内番号 3 章通し番号 18 識別番号 2_11_3
1今燕虐其民、2王往而征之、3民以爲、4將拯己於水火之中也、5簞食壺漿、6以迎王師、7若殺其父兄、8係累其子弟、9毀其宗廟、10遷其重器、11如之何其可也、12天下固畏齊之彊也、13今又倍地而不行仁政、14是動天下之兵也、
今燕其民を虐(しいた)げる、王往きて之を征せば、民以爲(おも)えらく、将に己を水火の中に拯(すく)わんとするなり、食(し)を簞(たん)し漿(しょう)を壺(こ)し、以て王の師を迎う、若し其父兄を殺し、其子弟を係累し、其宗廟(びょう)を毀(こぼ)ち、其重器を遷(うつ)せば、之を如何(いかん)ぞ其可ならん、天下固より斉の彊(つよ)きを畏(おそ)るなり、今又(さら)に地を倍にして仁政を行なわざれば、是れ天下の兵を動かすなり、

通し番号 113 章内番号 4 章通し番号 18 識別番号 2_11_4
1王速出令、2反其旄倪、3止其重器、4謀於燕衆、5置君而後去之、6則猶可及止也、
王速(すみやか)に令を出し、其旄倪(ぼうげい)を反し、其重器を止(とど)め、燕の衆に謀り、君を置きて後之を去れば、則ち猶(なお)止(と)めるに及ぶべきなり、


章番号 12 章通し番号 19

通し番号 114 章内番号 1 章通し番号 19 識別番号 2_12_1
1鄒與魯鬨、2穆公問曰、3吾有司死者三十三人、4而民莫之死也、5誅之、6則不可勝誅、7不誅、8則疾視其長上之死而不救、9如之何則可也、
鄒、魯と鬨(たたか)う、穆(ぼく)公問いて曰く、吾有司死す者三十三人、而して民之に死すこと莫きなり、之を誅すれば、則ち勝(あ)げて誅すべからず、誅さざれば、則ち其長上の死を疾視して救わず、之を如何(いかん)せば則ち可ならん、

通し番号 115 章内番号 2 章通し番号 19 識別番号 2_12_2
1孟子對曰、2凶年饑歳、3君之民老弱轉乎溝壑、4壯者散而之四方者、5幾千人矣、6而君之倉廩實、7府庫充、8有司莫以告、9是上慢而殘下也、10曾子曰、11戒之戒之、12出乎爾者、13反乎爾者也、14夫民今而後得反之也、15君無尤焉、
孟子対えて曰く、凶年饑歳に、君の民は、老弱は溝壑(がく)に転ず、壮者は散じて四方に之(ゆ)く者、幾千人、而(しか)るに君の倉廩(りん)実(み)ち、府庫充(み)つ、有司以て告ぐること莫し、是れ上慢(おこた)りて下を残(そこな)うなり、曽子曰く、之を戒(いまし)めよ之を戒めよ、爾(なんじ)に出るものは、爾に反(かえ)るものなり、夫(それ)民今にして後之に反(かえ)すを得るなり、君尤(とが)むること無かれ、

通し番号 116 章内番号 3 章通し番号 19 識別番号 2_12_3
1君行仁政、2斯民親其上、3死其長矣、
君が仁政を行えば、斯(すなわ)ち民は其上に親しみ、其長に死せん、


章番号 13 章通し番号 20

通し番号 117 章内番号 1 章通し番号 20 識別番号 2_13_1
1滕文公問曰、2滕、3小國也、4閒於齊、5楚、6事齊乎、7事楚乎、
滕の文公問いて曰く、滕、小国なり、齊、楚を間(へだ)てるなり、斉に事(つか)えんか、楚に事えんか、

通し番号 118 章内番号 2 章通し番号 20 識別番号 2_13_2
1孟子對曰、2是謀非吾所能及也、3無已、4則有一焉、5鑿斯池也、6築斯城也、7與民守之、8效死而民弗去、9則是可爲也、
孟子対えて曰く、是(この)謀吾能く及ぶ所に非ざるなり、已(や)むこと無ければ、則ち一有り、斯(この)池を鑿(うが)ち、斯城を築(きず)き、民と之を守る、死を效(いた)して民去らざれば、則ち是れ爲すべきなり、


章番号 14 章通し番号 21

通し番号 119 章内番号 1 章通し番号 21 識別番号 2_14_1
1滕文公問曰、2齊人將築薛、3吾甚恐、4如之何則可、
滕の文公問いて曰く、斉人將に薛(せつ)に築(きず)かんとす、吾甚だ恐る、之を如何(いかん)せば則ち可ならん、

通し番号 120 章内番号 2 章通し番号 21 識別番号 2_14_2
1孟子對曰、2昔者大王居邠、3狄人侵之、4去之岐山之下居焉、5非擇而取之、6不得已也、
孟子対えて曰く、昔者(むかし)大王邠(ひん)に居る、狄人(てきじん)之を侵す、去りて岐(き)山の下(もと)に之(ゆ)きて居る、択びて之を取るに非ず、已(や)むを得ざるなり、

通し番号 121 章内番号 3 章通し番号 21 識別番号 2_14_3
1苟爲善、2後世子孫必有王者矣、3君子創業垂統、4爲可繼也、5若夫成功、6則天也、7君如彼何哉、8彊爲善而已矣、
苟(もし)善を爲せば、後世子孫必ず王者有らん、君子業を創(はじ)め統を垂(た)れ、継ぐべきを爲すなり、夫(かの)成功の若(ごと)きは、則ち天なり、君は彼を如何(いかん)せんや、善を爲すを彊(つと)めるのみ、


章番号 15 章通し番号 22

通し番号 122 章内番号 1 章通し番号 22 識別番号 2_15_1
1滕文公問曰、2滕、3小國也、4竭力以事大國、5則不得免焉、6如之何則可、7孟子對曰、8昔者大王居邠、9狄人侵之、10事之以皮幣、11不得免焉、12事之以犬馬、13不得免焉、14事之以珠玉、15不得免焉、16乃屬其耆老而告之曰、17狄人之所欲者、18吾土地也、19吾聞之也、20君子不以其所以養人者害人、21二三子何患乎無君、22我將去之、23去邠、24踰梁山、25邑于岐山之下居焉、26邠人曰、27仁人也、28不可失也、29從之者如歸市、
滕(とう)の文公問いて曰く、滕は、小国なり、力を竭して以て大国に事う、則(しかる)に免るを得ず、之を如何(いかん)すれば則ち可ならん、孟子対えて曰く、昔者(むかし)大王邠(ひん)に居る、狄人之を侵す、之に事(つか)えるに皮幣を以てし、免るるを得ず、之に事えるに犬馬を以てし、免るるを得ず、之に事えるに珠玉を以てし、免るるを得ず、乃ち其耆(き)老を属(あつ)めて之に告げて曰く、狄人の欲する所は、吾が土地なり、吾之を聞くなり、君子は其の以て人を養う所のものを以て人を害さず、二三子(し)何ぞ君無きを患(うれ)えん、我将に之を去らんとす、邠(ひん)を去り、梁山を踰(こ)え、岐山の下(もと)に邑(ゆう)して居る、邠人曰く、仁人なり、失うべからざるなり、之に従う者市に帰(ゆ)くが如し、

通し番号 123 章内番号 2 章通し番号 22 識別番号 2_15_2
1或曰、2世守也、3非身之所能爲也、4效死勿去、
或(あるひと)曰く、世守(せいしゅ)なり、身の能く爲す所に非ざるなり、死を效(いた)して去ること勿れ、

通し番号 124 章内番号 3 章通し番号 22 識別番号 2_15_3
1君請擇於斯二者、
君に請う斯(この)二のもので択べ、


章番号 16 章通し番号 23

通し番号 125 章内番号 1 章通し番号 23 識別番号 2_16_1
1魯平公將出、2嬖人臧倉者請曰、3他日君出、4則必命有司所之、5今乘輿已駕矣、6有司未知所之、7敢請、8公曰、9將見孟子、10曰、11何哉、12君所爲輕身以先於匹夫者、13以爲賢乎、14禮義由賢者出、15而孟子之後喪、16踰前喪、17君無見焉、18公曰、19諾、
魯の平公将に出んとす、嬖人(へいじん)臧倉(ぞうそう)なる者請いて曰く、他日君出ず、則ち必ず有司に之(ゆ)く所を命ず、今乗輿已(すで)に駕(が)す、有司未だ之(ゆ)く所を知らず、敢えて請う、公曰く、将に孟子に見(あ)わんとす、曰く、何ぞや、君が身を軽んじて以て匹夫(ひっぷ)に先だつを爲す所は、賢と以爲(おも)うか、礼義は賢者由(よ)り出ず、而(しか)るに孟子の後の喪(も)、前(さき)の喪を踰(こ)ゆ、君見(あ)うこと無かれ、公曰く、諾(だく)、

通し番号 126 章内番号 2 章通し番号 23 識別番号 2_16_2
1樂正子入見曰、2君奚爲不見孟軻也、3曰、4或告寡人曰、5孟子之後喪、6踰前喪、7是以不往見也、8曰、9何哉、10君所謂踰者、11前以士、12後以大夫、13前以三鼎、14而後以五鼎與、15曰、16否、17謂棺槨衣衾之美也、18曰、19非所謂踰也、20貧富不同也、
楽正子入りて見(まみ)えて曰く、君奚爲(なんす)れぞ孟軻に見(あわ)ざる、曰く、或(あるひと)寡人に告げて曰く、孟子の後の喪、前(さき)の喪に踰(こ)ゆ、是を以て往(ゆ)きて見(あ)わざるなり、曰く、何ぞや、君の謂う所の踰うは、前に士を以てし、後に大夫を以てするか、前に三鼎(てい)を以てし、後に五鼎を以てするか、曰く、否、棺槨(かんかく)衣衾(きん)の美を謂うなり、曰く、謂う所の踰ゆに非ざるなり、貧富同じからざるなり、

通し番号 127 章内番号 3 章通し番号 23 識別番号 2_16_3
1樂正子見孟子曰、2克告於君、3君爲來見也、4嬖人有臧倉者、5沮君、6君是以不果來也、7曰、8行或使之、9止或尼之、10行止非人所能也、11吾之不遇魯侯、12天也、13臧氏之子、14焉能使予不遇哉、
楽正子孟子に見えて曰く、克が君に告ぐ、君爲に来たり見(あ)わんとするなり、嬖人(へいじん)に臧倉(ぞうそう)なる者有り、君を沮(と)める、君は是を以て来るを果たさざるなり、曰く、行くは之を使(せし)めること或(あ)り、止まるは之を尼(と)めること或(あ)り、行止人の能くする所に非ざるなり、吾の魯侯に遇(あ)わざるは、天なり、臧氏の子、焉(いずくん)ぞ能く予(われ)をして遇(あ)わざらしめんや、


3 公孫丑章句上 gōng sūn choǔ zhāng jù shàng

章番号 1 章通し番号 24

通し番号 128 章内番号 1 章通し番号 24 識別番号 3_1_1
1公孫丑問曰、2夫子當路於齊、3管仲晏子之功、4可復許乎、
公孫丑問いて曰く、夫子(ふうし)斉で当路なれば、管仲晏子の功を、復(また)許(き)すべきか、

通し番号 129 章内番号 2 章通し番号 24 識別番号 3_1_2
1孟子曰、2子誠齊人也、3知管仲晏子而已矣、
孟子曰く、子は誠に斉人なり、管仲晏子を知るのみ、

通し番号 130 章内番号 3 章通し番号 24 識別番号 3_1_3
1或問乎曾西曰、2吾子與子路孰賢、3曾西蹵然曰、4吾先子之所畏也、5曰、6然則吾子與管仲孰賢、7曾西艴然不悅曰、8爾何曾比予於管仲、9管仲得君、10如彼其專也、11行乎國政、12如彼其久也、13功烈、14如彼其卑也、15爾何曾比予於是、
或(あるひと)曽西に問いて曰く、吾子(ごし)は子路と孰(いずれ)か賢(まさ)る、曽西は蹵然(しゅくぜん)として曰く、吾先子の畏る所なり、曰く、然れば則ち吾子管仲と孰か賢る、曽西は艴然(ふつぜん)として悦(よろこ)ばずして曰く、爾(なんじ)何ぞ曽(すなわ)ち予(われ)を管仲に比する、管仲は君を得る、彼(か)の如く其れ専らなり、国政を行う、彼(か)の如く其れ久しきなり、功烈、彼如く其れ卑(ひく)きなり、爾何ぞ曽(すなわ)ち予を是に比する、

通し番号 131 章内番号 4 章通し番号 24 識別番号 3_1_4
1曰、2管仲、3曾西之所不爲也、4而子爲我願之乎、
曰く、管仲、曽西の爲さざる所なり、而るに子は我が爲に之を願うか、

通し番号 132 章内番号 5 章通し番号 24 識別番号 3_1_5
1曰、2管仲以其君霸、3晏子以其君顯、4管仲、5晏子猶不足爲與、
曰く、管仲其君を以て霸とし、晏子其君を以て顕(あらわ)す、管仲、晏子猶爲(な)すに足らざる与(か)、

通し番号 133 章内番号 6 章通し番号 24 識別番号 3_1_6
1曰、2以齊王、3由反手也、
曰く、斉以て王たること、由(なお)手を反(かえ)すがごときなり、

通し番号 134 章内番号 7 章通し番号 24 識別番号 3_1_7
1曰、2若是、3則弟子之惑滋甚、4且以文王之德、5百年而後崩、6猶未洽於天下、7武王、8周公繼之、9然後大行、10今言王若易然、11則文王不足法與、
曰く、是の若ければ、則ち弟子の惑い滋(ますます)甚し、且(それ)文王の徳を以てして、百年にして後崩ず、猶未だ天下に洽(あまね)からず、武王、周公之を継ぐ、然る後大いに行わる、今王を言うこと易(やす)きが若き然(なり)、則ち文王は法とするに足らざるか、

通し番号 135 章内番号 8 章通し番号 24 識別番号 3_1_8
1曰、2文王何可當也、3由湯至於武丁、4賢聖之君六七作、5天下歸殷久矣、6久則難變也、7武丁朝諸侯有天下、8猶運之掌也、9紂之去武丁未久也、10其故家遺俗、11流風善政、12猶有存者、13又有微子、14微仲、15王子比干、16箕子、17膠鬲、18皆賢人也、19相與輔相之、20故久而後失之也、21尺地莫非其有也、22一民莫非其臣也、23然而文王猶方百里起、24是以難也、
曰く、文王何ぞ可当(あた)るべけんや、湯由(よ)り武丁に至る、賢聖の君六七作(おこ)る、天下殷に帰すこと久し、久しければ則ち変じ難きなり、武丁諸侯を朝し天下を有(たも)つは、猶之を掌(たなごころ)に運(めぐ)らすがごときなり、紂の武丁を去ること未だ久しからざるなり、其の故家(こか)遺俗(いぞく)、流風善政、猶存するもの有り、又微子、微仲、王子比干、箕子(きし)、膠鬲(こうかく)有り、皆賢人なり、相(あい)与(とも)に之を輔相す、故に久しくして後之を失なうなり、尺地も其有に非ざる莫きなり、一民も其臣に非ざる莫きなり、然り而して文王猶(なお)方百里で起る、是を以て難きなり、

通し番号 136 章内番号 9 章通し番号 24 識別番号 3_1_9
1齊人有言曰、2雖有智慧、3不如乘勢、4雖有鎡基、5不如待時、6今時則易然也、
斉人言えること有りて曰く、智慧有りと雖も、勢に乗るに如(し)かず、鎡基(じき)有りと雖も、時を待つに如かず、今の時則ち易(やす)きこと然るなり、

通し番号 137 章内番号 10 章通し番号 24 識別番号 3_1_10
1夏后、2殷、3周之盛、4地未有過千里者也、5而齊有其地矣、6雞鳴狗吠相聞、7而達乎四境、8而齊有其民矣、9地不改辟矣、10民不改聚矣、11行仁政而王、12莫之能禦也、
夏后、殷、周の盛、地未だ千里を過(すぐ)るもの有らざるなり、而して斉は其地を有(たも)つ、雞鳴狗吠(ばい)相(あい)聞え、四境に達す、而して斉は其民を有つ、地改め辟(ひら)かず、民改め聚(あつ)めず、仁政を行いて王、之を能く禦(とど)めること莫きなり、

通し番号 138 章内番号 11 章通し番号 24 識別番号 3_1_11
1且王者之不作、2未有疏於此時者也、3民之憔悴於虐政、4未有甚於此時者也、5飢者易爲食、6渴者易爲飮、
且(また)王者の作(おこ)らざる、未だ此時より疏(なが)きもの有らざるなり、民の虐政に憔悴(しょうすい)すること、未だ此時より甚しきもの有らざるなり、飢なる者食を爲し易く、渴者飮を爲し易し、

通し番号 139 章内番号 12 章通し番号 24 識別番号 3_1_12
1孔子曰、2德之流行、3速於置郵而傳命、
孔子曰く、徳の流行、置郵して命を伝えるより速(すみや)かなり、

通し番号 140 章内番号 13 章通し番号 24 識別番号 3_1_13
1當今之時、2萬乘之國行仁政、3民之悅之、4猶解倒懸也、5故事半古之人、6功必倍之、7惟此時爲然、
今の時に当(あた)り、万乗の国仁政を行えば、民の之を悦(よろこ)ぶこと、猶倒懸を解くがごときなり、故に事は古の人に半(なかば)して、功は必ず之に倍す、惟(ただ)此時然りと爲す、


章番号 2 章通し番号 25

通し番号 141 章内番号 1 章通し番号 25 識別番号 3_2_1
1公孫丑問曰、2夫子加齊之卿相、3得行道焉、4雖由此霸王不異矣、5如此、6則動心否乎、7孟子曰、8否、9我四十不動心、
公孫丑問いて曰く、夫子に斉の卿相を加え、道を行うを得れば、此に由りて霸王と雖も異(あやし)まず、此如ければ、則ち心を動かすや否や、孟子曰く、否(いな)、我四十にして心を動かさず、

通し番号 142 章内番号 2 章通し番号 25 識別番号 3_2_2
1曰、2若是、3則夫子過孟賁遠矣、4曰、5是不難、6告子先我不動心、
曰、是(かく)の若ければ、則ち夫子孟賁(ほん)に過ぎること遠し、曰く、是れ難からず、告子は我に先だちて心を動かさず、

通し番号 143 章内番号 3 章通し番号 25 識別番号 3_2_3
1曰、2不動心有道乎、3曰、4有、
曰く、心を動かさざるは道有るか、曰く、有り、

通し番号 144 章内番号 4 章通し番号 25 識別番号 3_2_4
1北宮黝之養勇也、2不膚撓、3不目逃、4思以一豪挫於人、5若撻之於市朝、6不受於褐寬博、7亦不受於萬乘之君、8視刺萬乘之君、9若刺褐夫、10無嚴諸侯、11惡聲至必反之、
北宮黝(ゆう)の勇を養(おさ)めるや、膚撓(たわ)まず、目逃(さ)けず、一豪以て人に挫(はず)かしめらるを思うこと、之を市朝に撻(むちう)つが若し、褐寬博(かつかんぱく)に受けず、亦万乗の君に受けず、万乗の君を刺すを視(み)ること、褐夫を刺すが若し、厳(おそ)れる諸侯無し、悪声至れば必ず之を反(かえ)す、

通し番号 145 章内番号 5 章通し番号 25 識別番号 3_2_5
1孟施舍之所養勇也、2曰、3視不勝猶勝也、4量敵而後進、5慮勝而後會、6是畏三軍者也、7舍豈能爲必勝哉、8能無懼而已矣、
孟施舍の勇を養(おさ)める所や、曰く、勝たざるを視(み)ること猶勝つがごときなり、敵を量(はか)りて後進む、勝を慮(おもんばか)りて後会す、是れ三軍を畏れる者なり、舍豈能く必ず勝つことを爲さんや、能く懼ること無きのみ、

通し番号 146 章内番号 6 章通し番号 25 識別番号 3_2_6
1孟施舍似曾子、2北宮黝似子夏、3夫二子之勇、4未知其孰賢、5然而孟施舍守約也、
孟施舍は曾子に似る、北宮黝(ゆう)は子夏に似る、夫(かの)二子の勇、未だ其(その)孰か賢(まさ)るを知らず、然り而して孟施舍、守るは約なり、

通し番号 147 章内番号 7 章通し番号 25 識別番号 3_2_7
1昔者曾子謂子襄曰、2子好勇乎、3吾嘗聞大勇於夫子矣、4自反而不縮、5雖褐寬博、6吾不惴焉、7自反而縮、8雖千萬人、9吾往矣、
昔者(むかし)曾子子襄(じょう)に謂いて曰く、子勇を好むか、吾嘗(かつ)て大勇を夫子(ふうし)に聞く、自(みずから)反(かえり)みて縮(なお)からざれば、褐寬博と雖も、吾惴(おそ)れざらん焉(や)、自反(かえり)みて縮ければ、千万人と雖も、吾往(ゆ)く、

通し番号 148 章内番号 8 章通し番号 25 識別番号 3_2_8
1孟施舍之守氣、2又不如曾子之守約也、
孟施舍の気を守るは、又曽子の約を守るに如かざるなり、

通し番号 149 章内番号 9 章通し番号 25 識別番号 3_2_9
1曰、2敢問夫子之不動心、3與告子之不動心、4可得聞與、5告子曰、6不得於言、7勿求於心、8不得於心、9勿求於氣、10不得於心、11勿求於氣、12可、13不得於言、14勿求於心、15不可、16夫志、17氣之帥也、18氣、19體之充也、20夫志至焉、21氣次焉、22故曰、23持其志、24無暴其氣、
曰く、敢えて問う夫子の不動心と、告子の不動心、聞くことを得べきか、告子曰く、言に得ざれば、心に求めること勿れ、心に得ざれば、気に求めること勿れ、心に得ざれば、気に求めること勿れは可なり、言に得ざれば、心に求めること勿れは不可なり、夫(それ)志、気の帥(すい)なり、気、体の充なり、夫(それ)志は至れり、気次(つ)ぐ、故に曰く、其志を持(じ)して、其気を暴(みだ)すこと無かれ、

通し番号 150 章内番号 10 章通し番号 25 識別番号 3_2_10
1旣曰、2志至焉、3氣次焉、4又曰、5持其志無暴其氣者、6何也、7曰、8志壹則動氣、9氣壹則動志也、10今夫蹶者趨者、11是氣也、12而反動其心、
既に、志至れり、気次ぐと曰い、又、其志を持して其気を暴(みだ)ること無かれと曰うは、何ぞや、曰く、志壹(いつ)なれば則ち気を動かし、気壹なれば則ち志を動かすなり、今夫(そ)れ蹶(つまず)く者趨(はし)る者は、是れ気なり、而して反(かえっ)て其心を動かす、

通し番号 151 章内番号 11 章通し番号 25 識別番号 3_2_11
1敢問、2夫子惡乎長、3曰、4我知言、5我善養吾浩然之氣、
敢えて問う、夫子悪(いずく)にか長ぜる、曰く、我言を知る、我善く吾が浩然の気を養う、

通し番号 152 章内番号 12 章通し番号 25 識別番号 3_2_12
1敢問、2何謂浩然之氣、3曰、4難言也、
敢えて問う、何をか浩然の気と謂う、曰く、言い難きなり、

通し番号 153 章内番号 13 章通し番号 25 識別番号 3_2_13
1其爲氣也、2至大至剛以直、3養而無害、4則塞于天地之閒、
其気爲(た)るや、至大至剛以て直、養いて害すること無ければ、則ち天地の間に塞(ふさ)がる、

通し番号 154 章内番号 14 章通し番号 25 識別番号 3_2_14
1其爲氣也、2配義與道、3無是餒也、
其気と爲(た)るや、義と道に配す、是れ無ければ餒(うえ)るなり、

通し番号 155 章内番号 15 章通し番号 25 識別番号 3_2_15
1是集義所生者、2非義襲而取之也、3行有不慊於心、4則餒矣、5我故曰、6告子未嘗知義、7以其外之也、
是れ義を集めて生ずる所のものなり、義は襲(おそ)いて之を取るに非ざるなり、行が心に慊(こころよ)からざること有れば、則ち餒(うえ)る、我故に曰く、告子未だ嘗て義を知らず、其(その)之を外にするを以てなり、

通し番号 156 章内番号 16 章通し番号 25 識別番号 3_2_16
1必有事焉而勿正、2心勿忘、3勿助長也、4無若宋人然、5宋人有閔其苗之不長、6而揠之者、7芒芒然歸、8謂其人曰、9今日病矣、10予助苗長矣、11其子趨而往視之、12苗則槁矣、13天下之不助苗長者寡矣、14以爲無益而舍之者、15不耘苗者也、16助之長者、17揠苗者也、18非徒無益、19而又害之、
必ず事とすること有りて正(き)すること勿れ、心に忘るること勿れ、助長すること勿れ、宋人の若くすること無かれ(然)、宋人其苗の長(そだ)たざるを閔(うれ)いて、之を揠(ぬ)く者有り、芒芒(ぼうぼう)然として帰り、其人に謂いて曰く、今日病(つか)る、予苗の長(そだ)つを助く、其子趨(はし)りて往きて之を視る、苗則ち槁(かれ)る、天下の苗が長(そだ)つを助けざる者は寡(すくな)し、以て益無しと爲して之を舍(す)てる者は、苗を耘(くさぎ)らざる者なり、之が長(そだ)つを助ける者は、苗を揠(ぬ)く者なり、徒(ただ)益無きに非ずして、又之を害す、

通し番号 157 章内番号 17 章通し番号 25 識別番号 3_2_17
1何謂知言、2曰、3詖辭知其所蔽、4淫辭知其所陷、5邪辭知其所離、6遁辭知其所窮、7生於其心、8害於其政、9發於其政、10害於其事、11聖人復起、12必從吾言矣、
何をか言を知ると謂う、曰く、詖(ひ)辞は其蔽(おお)う所を知る、淫辞は其陥る所を知る、邪辞は其離れる所を知る、遁辞は其窮まる所を知る、其心に生じて、其政に害あり、其政に発して、其事に害あり、聖人復起これば、必ず吾が言に従わん、

通し番号 158 章内番号 18 章通し番号 25 識別番号 3_2_18
1宰我、2子貢善爲說辭、3冉牛、4閔子、5顏淵善言德行、6孔子兼之、7曰、8我於辭命則不能也、9然則夫子旣聖矣乎、
宰我、子貢は善(よ)く説辞を爲す、冉牛(ぜんぎゅう)、閔子(びんし)、顏淵は善(よ)く徳行を言う、孔子は之を兼ぬ、曰く、我辞命に於て則ち能わざるなり、然らば則ち夫子既に聖か、

通し番号 159 章内番号 19 章通し番号 25 識別番号 3_2_19
1曰、2惡是何言也、3昔者子貢問於孔子曰、4夫子聖矣乎、5孔子曰、6聖則吾不能、7我學不厭、8而敎不倦也、9子貢曰、10學不厭、11智也、12敎不倦、13仁也、14仁且智、15夫子旣聖矣、16夫聖、17孔子不居、18是何言也、
曰く、悪(ああ)是れ何の言ぞや、昔者(むかし)子貢孔子に問いて曰く、夫子聖か、孔子曰く、聖は則ち吾能わず、我は学びて厭(いと)わず、教えて倦(う)まざるなり、子貢曰く、学びて厭(いと)わざるは、智なり、教えて倦(う)まざるは、仁なり、仁且(かつ)智、夫子既に聖たり、夫(それ)聖は、孔子居らず、是れ何の言ぞや、

通し番号 160 章内番号 20 章通し番号 25 識別番号 3_2_20
1昔者竊聞之、2子夏、3子游、4子張皆有聖人之一體、5冉牛、6閔子、7顏淵則具體而微、8敢問所安、
昔者(むかし)竊(ひそか)に之を聞く、子夏、子游、子張は皆聖人の一体有り、冉牛、閔子、顏淵は則ち体を具(そな)えて微なり、敢えて安(お)る所を問う、

通し番号 161 章内番号 21 章通し番号 25 識別番号 3_2_21
1曰、2姑舍是、
曰く、姑(しばら)く是を舍(お)け、

通し番号 162 章内番号 22 章通し番号 25 識別番号 3_2_22
1曰、2伯夷、3伊尹何如、4曰、5不同道、6非其君不事、7非其民不使、8治則進、9亂則退、10伯夷也、11何事非君、12何使非民、13治亦進、14亂亦進、15伊尹也、16可以仕則仕、17可以止則止、18可以久則久、19可以速則速、20孔子也、21皆古聖人也、22吾未能有行焉、23乃所願則學孔子也、
曰く、伯夷、伊尹何如(いかん)、曰く、道を同じくせず、其君に非ざれば事えず、其民に非ざれば使わず、治まれば則ち進み、乱れば則ち退くは、伯夷なり、何(いず)れに事えるとして君に非ざらん、何(いず)れを使うとして民に非ざらん、治まる亦進み、乱れる亦進むは、伊尹なり、以て仕えるべければ則ち仕え、以て止(や)むべければ則ち止(や)む、以て久しくすべければ則ち久しく、以て速かるべければ則ち速しは、孔子なり、皆古の聖人なり、吾未だ行うこと有る能わず、乃ち願う所は則ち孔子を学ぶなり、

通し番号 163 章内番号 23 章通し番号 25 識別番号 3_2_23
1伯夷、2伊尹於孔子、3若是班乎、4曰、5否、6自有生民以來、7未有孔子也、
伯夷、伊尹の孔子に於る、是の若く班(ひと)しきか、曰く、否、生民有る自(よ)り以来、未だ孔子有らざるなり、

通し番号 164 章内番号 24 章通し番号 25 識別番号 3_2_24
1曰、2然則有同與、3曰、4有、5得百里之地而君之、6皆能以朝諸侯有天下、7行一不義、8殺一不辜、9而得天下、10皆不爲也、11是則同、
曰く、然れば則ち同じきこと有るか、曰く、有り、百里の地を得て之に君たらば、皆能く以て諸侯を朝し天下を有(たも)たん、一の不義を行い、一の不辜(こ)を殺して、天下を得るは、皆爲さざるなり、是れ則ち同じ、

通し番号 165 章内番号 25 章通し番号 25 識別番号 3_2_25
1曰、2敢問其所以異、3曰、4宰我、5子貢、6有若、7智足以知聖人、8汙不至阿其所好、
曰く、敢えて其の以て異なる所を問う、曰く、宰我、子貢、有若、智は以て聖人を知るに足る、汙にして其好む所に阿(おもね)るに至らず、

通し番号 166 章内番号 26 章通し番号 25 識別番号 3_2_26
1宰我曰、2以予觀於夫子、3賢於堯舜遠矣、
宰我曰く、予を以て夫子を観るに、堯舜に賢(まさ)ること遠し、

通し番号 167 章内番号 27 章通し番号 25 識別番号 3_2_27
1子貢曰、2見其禮而知其政、3聞其樂而知其德、4由百世之後、5等百世之王、6莫之能違也、7自生民以來、8未有夫子也、
子貢曰く、其礼を見て其政を知る、其楽を聞きて其徳を知る、百世の後由(よ)り、百世の王を等(くら)ぶるに、之に能く違うこと莫(な)きなり、生民自(よ)り以来、未だ夫子有らざるなり、

通し番号 168 章内番号 28 章通し番号 25 識別番号 3_2_28
1有若曰、2豈惟民哉、3麒麟之於走獸、4鳳凰之於飛鳥、5太山之於丘垤、6河海之於行潦、7類也、8聖人之於民、9亦類也、10出於其類、11拔乎其萃、12自生民以來、13未有盛於孔子也、
有若曰く、豈惟(ただ)民のみならんや、麒麟(きりん)の走獣に於る、鳳凰(ほうおう)の飛鳥に於る、太山の丘垤(てつ)に於る、河海の行潦(りょう)に於る、類なり、聖人の民に於る、亦類なり、其類を出て、其萃(すい)を拔く、生民自(よ)り以来、未だ孔子より盛んなるは有らざるなり、


章番号 3 章通し番号 26

通し番号 169 章内番号 1 章通し番号 26 識別番号 3_3_1
1孟子曰、2以力假仁者霸、3霸必有大國、4以德行仁者王、5王不待大、6湯以七十里、7文王以百里、
孟子曰く、力を以て仁を仮(か)る者は霸なり、霸は必ず大国を有(たも)つ、徳以て仁を行う者は王なり、王は大を待たず、湯は七十里を以てし、文王は百里を以てす、

通し番号 170 章内番号 2 章通し番号 26 識別番号 3_3_2
1以力服人者、2非心服也、3力不贍也、4以德服人者、5中心悅而誠服也、6如七十子之服孔子也、7詩云、8自西自東、9自南自北、10無思不服、11此之謂也、
力以て人を服する者は、心服に非ざるなり、力贍(た)らざるなり、徳以て人を服する者は、中心悦(よろこ)びて誠に服するなり、七十子の孔子に服するが如きなり、詩に云う、西自(よ)り東自(よ)り、南自(よ)り北自(よ)り、思いて服さざる無し、此の謂(いい)なり、


章番号 4 章通し番号 27

通し番号 171 章内番号 1 章通し番号 27 識別番号 3_4_1
1孟子曰、2仁則榮、3不仁則辱、4今惡辱而居不仁、5是猶惡濕而居下也、
孟子曰く、仁ならば則ち栄なり、不仁ならば則ち辱なり、今辱を悪(にく)んで不仁に居る、是れ猶(なお)湿を悪(にく)んで下に居るがごときなり、

通し番号 172 章内番号 2 章通し番号 27 識別番号 3_4_2
1如惡之、2莫如貴德而尊士、3賢者在位、4能者在職、5國家閒暇、6及是時明其政刑、7雖大國必畏之矣、
如(も)し之を悪まば、徳を貴(とうと)び士を尊(たっと)び、賢者位に在り、能者職に在るに如くは莫し、国家間暇なり、是時に及び其政刑を明らかにすれば、大国と雖も必ず之を畏る、

通し番号 173 章内番号 3 章通し番号 27 識別番号 3_4_3
1詩云、2迨天之未陰雨、3徹彼桑土、4綢繆牖戶、5今此下民、6或敢侮予、7孔子曰、8爲此詩者、9其知道乎、10能治其國家、11誰敢侮之、
詩に云う、天の未だ陰雨せざるに迨(およ)び、彼桑土を徹(と)り、牖戸(ゆうこ)を綢繆(ちゅうびゅう)す、今此下の民、敢えて予を侮ること或(あ)らんや、孔子曰く、此詩を爲(つく)る者、其(そ)れ道を知る(乎)、能く其国家を治めれば、誰か敢えて之を侮どらん、

通し番号 174 章内番号 4 章通し番号 27 識別番号 3_4_4
1今國家閒暇、2及是時般樂怠敖、3是自求禍也、
今国家間暇たり、是時に及び般楽(はんらく)怠敖(たいごう)すれば、是れ自ら禍を求めるなり、

通し番号 175 章内番号 5 章通し番号 27 識別番号 3_4_5
1禍福無不自己求之者、
禍福、己自(よ)り之を求めざるもの無し、

通し番号 176 章内番号 6 章通し番号 27 識別番号 3_4_6
1詩云、2永言配命、3自求多福、4太甲曰、5天作孼猶可違、6自作孼不可活、7此之謂也、
詩に云う、永(なが)く言(おも)い命に配(あ)う、自ら多福を求む、太甲に曰く、天の作(な)せる孼(わざわい)は猶(なお)違(さ)くべし、自ら作(な)せる孼(わざわい)は活(い)きるべからず、此の謂(いい)なり、


章番号 5 章通し番号 28

通し番号 177 章内番号 1 章通し番号 28 識別番号 3_5_1
1孟子曰、2尊賢使能、3俊傑在位、4則天下之士皆悅、5而願立於其朝矣、
孟子曰く、賢を尊(たっと)び能を使い、俊傑位に在れば、則ち天下の士皆悦(よろこ)び、其朝に立つこを願う、

通し番号 178 章内番号 2 章通し番号 28 識別番号 3_5_2
1市廛而不征、2法而不廛、3則天下之商皆悅而願藏於其市矣、
市は廛(てん)して征(せい)せず、法して廛せざれば、則ち天下の商皆悦(よろこ)びて其市に蔵(たくわ)えんことを願う、

通し番号 179 章内番号 3 章通し番号 28 識別番号 3_5_3
1關譏而不征、2則天下之旅皆悅、3而願出於其路矣、
関は譏(しら)べて征せさざれば、則ち天下の旅皆悦(よろこ)び、其路に出でんことを願う、

通し番号 180 章内番号 4 章通し番号 28 識別番号 3_5_4
1耕者助而不稅、2則天下之農皆悅、3而願耕於其野矣、
耕やす者助して税せざれば、則ち天下の農皆悦びて、其野に耕やすことを願う、

通し番号 181 章内番号 5 章通し番号 28 識別番号 3_5_5
1廛無夫里之布、2則天下之民皆悅、3而願爲之氓矣、
廛(てん)夫里の布無ければ、則ち天下の民皆悦(よろこ)び、之が氓(たみ)と爲るこをを願う、

通し番号 182 章内番号 6 章通し番号 28 識別番号 3_5_6
1信能行此五者、2則鄰國之民、3仰之若父母矣、4率其子弟、5攻其父母、6自生民以來、7未有能濟者也、8如此、9則無敵於天下、10無敵於天下者、11天吏也、12然而不王者、13未之有也、
信(まこと)に能く此五なるものを行なえば、則ち鄰国の民、之を仰(あお)ぐこと父母の若し、其子弟を率い、其父母を攻めるは、生民ある自(よ)り以来、未だ能く済(な)す者有らざるなり、此の如ければ、則ち天下に敵無し、天下に敵無き者は、天吏なり、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、


章番号 6 章通し番号 29

通し番号 183 章内番号 1 章通し番号 29 識別番号 3_6_1
1孟子曰、2人皆有不忍人之心、
孟子曰く、人皆人に忍びざるの心有り、

通し番号 184 章内番号 2 章通し番号 29 識別番号 3_6_2
1先王有不忍人之心、2斯有不忍人之政矣、3以不忍人之心、4行不忍人之政、5治天下可運之掌上、
先王人に忍びざるの心有り、斯(すなわ)ち人に忍びざるの政有り、人に忍びざるの心を以て、人に忍びざるの政を行えば、天下を治むること之を掌(たなごころ)の上に運(めぐ)らすべし、

通し番号 185 章内番号 3 章通し番号 29 識別番号 3_6_3
1所以謂人皆有不忍人之心者、2今人乍見孺子將入於井、3皆有怵惕惻隱之心、4非所以内交於孺子之父母也、5非所以要譽於郷黨朋友也、6非惡其聲而然也、
人皆人に忍びざるの心有りと謂う所以は、今人乍(たちま)ち孺子(じゅし)の将に井に入らんとするを見れば、皆怵惕(じゅつてき)惻(そく)隠(いん)の心有り、交(まじ)わりを孺子の父母に内(むす)ぶ所以に非ざるなり、誉を郷党、朋友に要(もと)める所以に非ざるなり、其声を悪(にく)んで然るに非ざるなり、

通し番号 186 章内番号 4 章通し番号 29 識別番号 3_6_4
1由是觀之、2無惻隱之心、3非人也、4無羞惡之心、5非人也、6無辭讓之心、7非人也、8無是非之心、9非人也、
是に由りて之を観れば、惻隠の心無きは、人に非ざるなり、羞(しゅう)悪(お)の心無きは、人に非ざるなり、辞讓の心無きは、人に非ざるなり、是非の心無きは、人に非ざるなり、

通し番号 187 章内番号 5 章通し番号 29 識別番号 3_6_5
1惻隱之心、2仁之端也、3羞惡之心、4義之端也、5辭讓之心、6禮之端也、7是非之心、8智之端也、
惻隠の心は、仁の端なり、羞悪の心は、義の端なり、辞譲の心は、礼の端なり、是非の心は、智の端なり、

通し番号 188 章内番号 6 章通し番号 29 識別番号 3_6_6
1人之有是四端也、2猶其有四體也、3有是四端而自謂不能者、4自賊者也、5謂其君不能者、6賊其君者也、
人の是の四端有るや、猶其の四体有るがごときなり、是四端有りて自ら能わずと謂う者は、自ら賊(そこな)う者なり、其君能わずと謂う者は、其君を賊(そこな)う者なり、

通し番号 189 章内番号 7 章通し番号 29 識別番号 3_6_7
1凡有四端於我者、2知皆擴而充之矣、3若火之始然、4泉之始達、5苟能充之、6足以保四海、7苟不充之、8不足以事父母、
凡そ我に四端有る者、皆拡めて之を充(み)たすことを知れば、火の始めて然(も)え、泉(せん)の始めて達するが若し、苟(もし)能く之を充(み)たせば、以て四海を保つに足る、苟(もし)之を充(み)たさざれば、以て父母に事えるに足らず、


章番号 7 章通し番号 30

通し番号 190 章内番号 1 章通し番号 30 識別番号 3_7_1
1孟子曰、2矢人豈不仁於函人哉、3矢人唯恐不傷人、4函人唯恐傷人、5巫匠亦然、6故術不可不愼也、
孟子曰く、矢人(しじん)は豈函人(かんじん)より不仁ならんや、矢人唯(ただ)人を傷つけざることを恐る、函人唯(ただ)人を傷つけることを恐る、巫(ふ)匠(しょう)亦然り、故に術慎まざるべからず、

通し番号 191 章内番号 2 章通し番号 30 識別番号 3_7_2
1孔子曰、2里仁爲美、3擇不處仁、4焉得智、5夫仁、6天之尊爵也、7人之安宅也、8莫之禦而不仁、9是不智也、
孔子曰く、里は仁を美と爲す、択んで仁に処(お)らざれば、焉(いずくん)ぞ智を得ん、夫(それ)仁は、天の尊爵なり、人の安宅なり、之を禦(とど)めること莫くて不仁は、是れ不智なり、

通し番号 192 章内番号 3 章通し番号 30 識別番号 3_7_3
1不仁不智、2無禮無義、3人役也、4人役而恥爲役、5由弓人而恥爲弓、6矢人而恥爲矢也、
不仁不智、無礼無義は、人の役なり、人役にして役と爲るを恥ず、由(なお)弓人にして弓を爲(つく)るを恥じ、矢人にして矢を爲(つく)るを恥じるがごときなり、

通し番号 193 章内番号 4 章通し番号 30 識別番号 3_7_4
1如恥之、2莫如爲仁、
如(も)し之を恥ずれば、仁を爲すに如(し)くは莫し、

通し番号 194 章内番号 5 章通し番号 30 識別番号 3_7_5
1仁者如射、2射者正己而後發、3發而不中、4不怨勝己者、5反求諸己而已矣、
仁者は射の如し、射(い)る者は己を正して後に発す、発して中(あた)らず、己に勝つ者を怨(とが)めず、諸(これ)を己に反(かえ)り求めるのみ、


章番号 8 章通し番号 31

通し番号 195 章内番号 1 章通し番号 31 識別番号 3_8_1
1孟子曰、2子路、3人告之以有過則喜、
孟子曰く、子路、人之に告ぐるに過(あやまち)有るを以てすれば則ち喜ぶ、

通し番号 196 章内番号 2 章通し番号 31 識別番号 3_8_2
1禹聞善言則拜、
禹は善言を聞けば則ち拝す、

通し番号 197 章内番号 3 章通し番号 31 識別番号 3_8_3
1大舜有大焉、2善與人同、3舍己從人、4樂取於人以爲善、
大舜焉(これ)より大なるもの有り、善は人と同じくす、己を舍(す)て人に従う、人に取り以て善を爲すを楽しむ、

通し番号 198 章内番号 4 章通し番号 31 識別番号 3_8_4
1自耕稼陶漁以至爲帝、2無非取於人者、
耕稼(か)陶漁自(よ)り以て帝と爲るに至る、人に取るに非ざるもの無し、

通し番号 199 章内番号 5 章通し番号 31 識別番号 3_8_5
1取諸人以爲善、2是與人爲善者也、3故君子莫大乎與人爲善、
諸(これ)を人に取り以て善を爲すは、是れ人与(と)善を爲す者なり、故に君子は人と善を爲すより大なるものは莫し、


章番号 9 章通し番号 32

通し番号 200 章内番号 1 章通し番号 32 識別番号 3_9_1
1孟子曰、2伯夷非其君不事、3非其友不友、4不立於惡人之朝、5不與惡人言、6立於惡人之朝、7與惡人言、8如以朝衣朝冠坐於塗炭、9推惡惡之心思、10與郷人立、11其冠不正、12望望然去之、13若將浼焉、14是故諸侯雖有善其辭命而至者、15不受也、16不受也者、17是亦不屑就已、
孟子曰く、伯夷は其君に非ざれば事えず、其友に非ざれば友とせず、悪人の朝に立たず、悪人と言わず、悪人の朝に立ち、悪人と言えば、朝衣朝冠以て塗炭(とたん)に坐すが如し、悪を悪(にく)むの心思を推せば、郷人と立ち、其冠正しからざれば、望望然と之を去る、将に浼(けが)れんとするが若し、是故に諸侯其辞命を善(よ)くして至る者有りと雖も、受けざるなり、受けざるものは、是れ亦就(つ)くを屑(いさぎよ)しとせず(已)、

通し番号 201 章内番号 2 章通し番号 32 識別番号 3_9_2
1柳下惠不羞汙君、2不卑小官、3進不隱賢、4必以其道、5遺佚而不怨、6阨窮而不憫、7故曰、8爾爲爾、9我爲我、10雖袒裼裸裎於我側、11爾焉能浼我哉、12故由由然與之偕而不自失焉、13援而止之而止、14援而止之而止者、15是亦不屑去已、
柳下恵は汙君を羞(は)じず、小官を卑(いや)しとせず、進んで賢を隠さず、必ず其道を以てす、遺佚(いいつ)されて怨みず、阨(やく)窮して憫(うれ)えず、故に曰く、爾(なんじ)は爾爲(た)り、我は我爲(た)り、我が側(かたわら)で袒裼(たんてき)裸裎(らてい)すると雖も、爾焉ぞ能く我を浼(けが)さんや、故に由由然として之と偕(とも)にして自ら失わず、援(ひ)きて之を止(とど)めて止まる、援(ひ)きて之を止(とど)めて止まるは、是れ亦去るを屑(いさぎよ)しとせず(已)、

通し番号 202 章内番号 3 章通し番号 32 識別番号 3_9_3
1孟子曰、2伯夷隘、3柳下惠不恭、4隘與不恭、5君子不由也、
孟子曰く、伯夷は隘(あい)なり、柳下恵は不恭なり、隘と不恭は、君子は由らざるなり、


4 公孫丑章句下 gōng sūn choǔ zhāng jù xià

章番号 1 章通し番号 33

通し番号 203 章内番号 1 章通し番号 33 識別番号 4_1_1
1孟子曰、2天時不如地利、3地利不如人和、
孟子曰く、天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず、

通し番号 204 章内番号 2 章通し番号 33 識別番号 4_1_2
1三里之城、2七里之郭、3環而攻之而不勝、4夫環而攻之、5必有得天時者矣、6然而不勝者、7是天時不如地利也、
三里の城、七里の郭(かく)、環(かこ)みて之を攻めて勝たず、夫(それ)環(かこ)みて之を攻めれば、必ず天の時を得ること有り、然り而して勝たざるのは、是れ天の時は地の利に如かざるなり、

通し番号 205 章内番号 3 章通し番号 33 識別番号 4_1_3
1城非不高也、2池非不深也、3兵革非不堅利也、4米粟非不多也、5委而去之、6是地利不如人和也、
城は高からざるに非ざるなり、池は深からざるに非ざるなり、兵革は堅利ならざるに非ざるなり、米粟(ぞく)は多からざるに非ざるなり、委(す)てて之を去る、是れ地の利は人の和に如かざるなり、

通し番号 206 章内番号 4 章通し番号 33 識別番号 4_1_4
1故曰、2域民不以封疆之界、3固國不以山谿之險、4威天下不以兵革之利、5得道者多助、6失道者寡助、7寡助之至、8親戚畔之、9多助之至、10天下順之、
故に曰く、民を域(かぎ)るに封疆(ほうきょう)の界を以てせず、国を固めるに山谿(けい)の険を以てせず、天下を威(い)すに兵革の利を以てせず、道を得る者は助け多し、道を失なう者は助け寡(すくな)し、助け寡(すく)なきの至(いたり)は、親戚之に畔(そむ)く、助け多きの至(いたり)は、天下之に順(したが)う、

通し番号 207 章内番号 5 章通し番号 33 識別番号 4_1_5
1以天下之所順、2攻親戚之所畔、3故君子有不戰、4戰必勝矣、
天下の順(したが)う所を以て、親戚の畔(そむ)く所を攻む、故に君子戦わざること有り、戦えば必ず勝つ、


章番号 2 章通し番号 34

通し番号 208 章内番号 1 章通し番号 34 識別番号 4_2_1
1孟子將朝王、2王使人來曰、3寡人如就見者也、4有寒疾、5不可以風、6朝將視朝、7不識可使寡人得見乎、8對曰、9不幸而有疾、10不能造朝、
孟子将に王に朝せんとす、王が人をして来たらしめて曰く、寡人就(おもむ)きて見(あ)うが如きものなり、寒疾有り、以て風すべからず、朝に将に朝を視(み)んとす、識らず、寡人をして見(あ)うことを得せしむべきか、対えて曰く、不幸にして疾有り、朝(あした)に造(ゆ)くこと能わず、

通し番号 209 章内番号 2 章通し番号 34 識別番号 4_2_2
1明日出弔於東郭氏、2公孫丑曰、3昔者辭以病、4今日弔、5或者不可乎、6曰、7昔者疾、8今日愈、9如之何不弔、
明日(みょうにち)出て東郭氏に弔す、公孫丑曰く、昔者(きのう)辞するに病を以てし、今日弔す、或者(あるいは)可ならざるか、曰く、昔者(きのう)は疾(や)む、今日愈(い)ゆ、之を如何(いかん)ぞ弔せざらんや、

通し番号 210 章内番号 3 章通し番号 34 識別番号 4_2_3
1王使人問疾、2醫來、3孟仲子對曰、4昔者有王命、5有采薪之憂、6不能造朝、7今病小愈、8趨造於朝、9我不識能至否乎、10使數人要於路曰、11請必無歸、12而造於朝、
王人をして疾を問い、医を来たらしむ、孟仲子対えて曰く、昔者(きのう)王命有り、采薪(さいしん)の憂(うれ)い有り、朝に造(ゆ)くこと能わず、今病小し愈(い)ゆ、趨(はし)り朝に造(ゆ)く、我能く至るや否やを識らず、数人をして路に要(ま)たしめて曰く、請う必ず帰ること無くて、朝に造(ゆ)け、

通し番号 211 章内番号 4 章通し番号 34 識別番号 4_2_4
1不得已而之景丑氏宿焉、2景子曰、3内則父子、4外則君臣、5人之大倫也、6父子主恩、7君臣主敬、8丑見王之敬子也、9未見所以敬王也、10曰、11惡、12是何言也、13齊人無以仁義與王言者、14豈以仁義爲不美也、15其心曰、16是何足與言仁義也云爾、17則不敬莫大乎是、18我非堯舜之道、19不敢以陳於王前、20故齊人莫如我敬王也、
已(や)むを得ずして景丑氏に之(ゆ)き宿す、景子曰く、内は則ち父子、外は則ち君臣、人の大倫なり、父子は恩を主とす、君臣は敬を主とす、丑は王の子を敬するを見るなり、未だ以て王を敬する所を見ざるなり、曰く、悪(ああ)、是れ何の言ぞや、斉人は仁義以て王と言う者無し、豈仁義以て美(よ)からずと爲さんや、其心に曰く、是何ぞ与(とも)に仁義を言うに足らんや(云爾)、則ち不敬是より大なること莫し、我堯舜の道に非ざれば、敢えて以て王の前に陳(の)べず、故に斉人は我が王を敬するに如(し)くは莫きなり、

通し番号 212 章内番号 5 章通し番号 34 識別番号 4_2_5
1景子曰、2否、3非此之謂也、4禮曰、5父召無諾、6君命召不俟駕、7固將朝也、8聞王命而遂不果、9宜與夫禮若不相似然、
景子曰く、否、此の謂(いい)に非ざるなり、礼に曰く、父が召(め)せば諾(だく)すること無し、君が命じ召せば駕(が)するを俟(ま)たず、固より将に朝せんとするなり、王命を聞きて遂に果たさず、宜(ほとんど)夫(そ)の礼と相(あい)似ざるが若し(然)、

通し番号 213 章内番号 6 章通し番号 34 識別番号 4_2_6
1曰、2豈謂是與、3曾子曰、4晉楚之富、5不可及也、6彼以其富、7我以吾仁、8彼以其爵、9我以吾義、10吾何慊乎哉、11夫豈不義而曾子言之、12是或一道也、13天下有達尊三、14爵一、15齒一、16德一、17朝廷莫如爵、18郷黨莫如齒、19輔世長民莫如德、20惡得有其一、21以慢其二哉、
曰、豈是を謂わんや、曽子曰く、晋楚の富、及ぶべからざるなり、彼は其富を以てす、我は吾が仁を以てす、彼は其爵を以てす、我は吾が義を以てす、吾何ぞ慊(すく)ないかな、夫(それ)豈義ならずして曽子之を言わんや、是れ一道或(あ)るなり、天下は達尊三有り、爵は一なり、歯は一なり、徳は一なり、朝廷は爵に如くは莫し、郷党は歯に如くは莫し、世を輔(たす)け民に長たるは徳に如くは莫し、悪んぞ其一を有して、以て其二を慢(あなど)るを得んや、

通し番号 214 章内番号 7 章通し番号 34 識別番号 4_2_7
1故將大有爲之君、2必有所不召之臣、3欲有謀焉、4則就之、5其尊德樂道、6不如是不足與有爲也、
故に将に大いに爲す有るの君は、必ず召さざる所の臣有り、謀有らんと欲せば、則ち之に就(おもむ)く、其(そ)の徳を尊び道を楽しむ、是(この)如からざれば与(とも)に爲す有るに足らざるなり、

通し番号 215 章内番号 8 章通し番号 34 識別番号 4_2_8
1故湯之於伊尹、2學焉而後臣之、3故不勞而王、4桓公之於管仲、5學焉而後臣之、6故不勞而霸、
故に湯の伊尹(いいん)に於る、学び而して後之を臣とす、故に労せずして王たり、桓公の管仲に於る、学び而して後之を臣とす、故に労せずして霸たり、

通し番号 216 章内番号 9 章通し番号 34 識別番号 4_2_9
1今天下地醜德齊、2莫能相尙、3無他、4好臣其所敎、5而不好臣其所受敎、
今、天下、地は醜(たぐい)し徳は斉(ひと)し、能く相(あい)尚(すぎ)ること莫し、他無し、其教える所を臣とするを好む、而るに其教えを受くる所を臣とするを好まず、

通し番号 217 章内番号 10 章通し番号 34 識別番号 4_2_10
1湯之於伊尹、2桓公之於管仲、3則不敢召、4管仲且猶不可召、5而況不爲管仲者乎、
湯の伊尹に於る、桓公の管仲に於るは、則ち敢えて召さず、管仲且(すら)猶(なお)召すべからず、而るに況んや管仲爲(た)らざる者をや、


章番号 3 章通し番号 35

通し番号 218 章内番号 1 章通し番号 35 識別番号 4_3_1
1陳臻問曰、2前日於齊、3王餽兼金一百、4而不受、5於宋餽七十鎰、6而受、7於薛餽五十鎰、8而受、9前日之不受是、10則今日之受非也、11今日之受是、12則前日之不受非也、13夫子必居一於此矣、
陳臻(しん)問いて曰く前日斉に於て、王兼金一百を餽(おく)る、而るに受けず、宋に於て七十鎰(いつ)を餽(おく)る、而して受く、薛(せつ)に於て五十鎰を餽(おく)る、而して受く、前日の受けざる是ならば、則ち今日の受くるは非なり、今日の受くる是ならば、則ち前日の受けざるは非なり、夫子(ふうし)必ず一に此に居らん、

通し番号 219 章内番号 2 章通し番号 35 識別番号 4_3_2
1孟子曰、2皆是也、
孟子曰く、皆是なり、

通し番号 220 章内番号 3 章通し番号 35 識別番号 4_3_3
1當在宋也、2予將有遠行、3行者必以贐、4辭曰、5餽贐、6予何爲不受、
宋に在るに当たりては、予将に遠く行くこと有らんとす、行く者必ず贐(じん)以てす、辞に曰く、贐を餽(おく)る、予何爲(なんすれ)ぞ受けざらん、

通し番号 221 章内番号 4 章通し番号 35 識別番号 4_3_4
1當在薛也、2予有戒心、3辭曰、4聞戒、5故爲兵餽之、6予何爲不受、
薛(せつ)に在るに当りては、予戒心有り、辞に曰く、戒を聞く、故に兵の爲に之を餽(おく)る、予何爲(なんすれ)ぞ受けざる、

通し番号 222 章内番号 5 章通し番号 35 識別番号 4_3_5
1若於齊、2則未有處也、3無處、4而餽之、5是貨之也、6焉有君子而可以貨取乎、
斉に於るが若きは、則ち未だ処すること有らざるなり、処すること無くて之に餽る、是れ之を貨するなり、焉ぞ君子にして貨以て取るべきこと有らんや、


章番号 4 章通し番号 36

通し番号 223 章内番号 1 章通し番号 36 識別番号 4_4_1
1孟子之平陸謂其大夫曰、2子之持戟之士、3一日而三失伍、4則去之否乎、5曰、6不待三、
孟子は平陸に之(ゆ)き其大夫に謂いて曰く、子の戟(ほこ)を持つの士、一日にして三たび伍を失なえば、則ち之を去るや否や、曰く、三を待たず、

通し番号 224 章内番号 2 章通し番号 36 識別番号 4_4_2
1然則子之失伍也亦多矣、2凶年饑歳、3子之民老羸轉於溝壑、4壯者散而之四方者幾千人矣、5曰、6此非距心之所得爲也、
然らば則ち子(し)の伍を失なうこと亦多し、凶年饑歳に、子の民は、老羸(るい)は溝壑(がく)に転ず、壮者は散じて四方に之(ゆ)く者幾千人なり、曰く、此は距心の爲すを得る所に非ざるなり、

通し番号 225 章内番号 3 章通し番号 36 識別番号 4_4_3
1曰、2今有受人之牛羊而爲之牧之者、3則必爲之求牧與芻矣、4求牧與芻而不得、5則反諸其人乎、6抑亦立而視其死與、7曰、8此則距心之罪也、
曰く、今人の牛羊を受けて之が爲に之を牧する者有り、則ち必ず之が爲に牧と芻(すう)を求む、牧と芻を求めて得ざれば、則ち諸(これ)を其人に反(かえ)すか、抑(ある)いは亦立ちて其死を視るか、曰く、此則ち距心の罪なり、

通し番号 226 章内番号 4 章通し番号 36 識別番号 4_4_4
1他日見於王曰、2王之爲都者、3臣知五人焉、4知其罪者、5惟孔距心、6爲王誦之、7王曰、8此則寡人之罪也、
他日王に見(まみ)えて曰く、王の都を爲(おさ)める者、臣五人を知る、其罪を知る者、惟(ただ)孔距心なり、王の爲に之を誦(い)う、王曰く、此則ち寡人の罪なり、


章番号 5 章通し番号 37

通し番号 227 章内番号 1 章通し番号 37 識別番号 4_5_1
1孟子謂蚔鼃曰、2子之辭靈丘而請士師似也、3爲其可以言也、4今旣數月矣、5未可以言與、
孟子蚔鼃(ちあ)に謂いて曰く、子の霊丘を辞して士師を請うは似るなり、其以て言うべき爲なり、今既に数月、未だ以て言うべからざるか、

通し番号 228 章内番号 2 章通し番号 37 識別番号 4_5_2
1蚔鼃諫於王而不用、2致爲臣而去、
蚔は鼃王を諫めて用いられず、臣爲(た)るを致して去る、

通し番号 229 章内番号 3 章通し番号 37 識別番号 4_5_3
1齊人曰、2所以爲蚔鼃則善矣、3所以自爲、4則吾不知也、
斉人曰く、以て蚔鼃の爲にする所は則ち善し、以て自らの爲にする所は、則ち吾知らざるなり、

通し番号 230 章内番号 4 章通し番号 37 識別番号 4_5_4
1公都子以告、
公都子以て告ぐ、

通し番号 231 章内番号 5 章通し番号 37 識別番号 4_5_5
1曰、2吾聞之也、3有官守者、4不得其職則去、5有言責者、6不得其言則去、7我無官守、8我無言責也、9則吾進退、10豈不綽綽然有餘裕哉、
曰く、吾之を聞くなり、官守有る者は、其職を得ざれば則ち去る、言責有る者は、其言を得ざれば則去る、我官守無く、我言責無きなり、則ち吾が進退、豈綽綽然(しゃくしゃくぜん)として余裕有らざらんや、


章番号 6 章通し番号 38

通し番号 232 章内番号 1 章通し番号 38 識別番号 4_6_1
1孟子爲卿於齊、2出弔於滕、3王使蓋大夫王驩爲輔行、4王驩朝暮見、5反齊滕之路、6未嘗與之言行事也、
孟子斉で卿(けい)と爲り、出でて滕に弔す、王は蓋(こう)の大夫王驩(かん)をして輔行爲(た)らしむ、王驩朝暮に見(まみ)ゆ、斉滕の路を反(かえ)り、未だ嘗(かつ)て之と行事を言わざるなり、

通し番号 233 章内番号 2 章通し番号 38 識別番号 4_6_2
1公孫丑曰、2齊卿之位、3不爲小矣、4齊滕之路、5不爲近矣、6反之而未嘗與言行事何也、7曰、8夫旣或治之、9予何言哉、
公孫丑曰く、斉卿の位、小と爲さず、斉滕の路、近しと爲さず、之を反して未だ嘗て与(とも)に行事を言わざるは何ぞや、曰く、夫(それ)既に之を治めること或(あ)り、予(われ)何をか言わんや、


章番号 7 章通し番号 39

通し番号 234 章内番号 1 章通し番号 39 識別番号 4_7_1
1孟子自齊葬於魯、2反於齊、3止於嬴、4充虞請曰、5前日不知虞之不肖、6使虞敦匠事、7嚴、8虞不敢請、9今願竊有請也、10木若以美然、
孟子斉自(よ)り魯に葬(ほうむ)る、斉に反(かえ)る、嬴(えい)に止(とど)まる、充虞(じゅうぐ)請いて曰く、前日虞の不肖を知らず、虞をして匠の事を敦(おさ)めしむ、厳なり、虞敢えて請わず、今願わくば竊(ひそ)かに請うこと有るなり、木以(はなは)だ美なるが若き然(なり)、

通し番号 235 章内番号 2 章通し番号 39 識別番号 4_7_2
1曰、2古者棺槨無度、3中古棺七寸、4槨稱之、5自天子達於庶人、6非直爲觀美也、7然後盡於人心、
曰く、古は棺槨に度無し、中古は棺七寸、槨(かく)之に称(かな)う、天子自(よ)り庶人に達す、直(ただ)に観美を爲すに非ざるなり、然る後人の心を尽す、

通し番号 236 章内番号 3 章通し番号 39 識別番号 4_7_3
1不得、2不可以爲悅、3無財、4不可以爲悅、5得之爲有財、6古之人皆用之、7吾何爲獨不然、
得ざれば、以て悦(よろこび)を爲すべからず、財無ければ、以て悦(よろこび)を爲すべからず、之を得て財有ると爲せば、古の人皆之を用う、吾何爲(なんすれ)ぞ独り然らざらん、

通し番号 237 章内番号 4 章通し番号 39 識別番号 4_7_4
1且比化者、2無使土親膚、3於人心獨無恔乎、
且(また)化者の比(ため)、土をして膚に親(ちかづ)かしめること無し、人の心に於て独り恔(こころよ)きこと無からんや、

通し番号 238 章内番号 5 章通し番号 39 識別番号 4_7_5
1吾聞之、2君子不以天下儉其親、
吾之を聞く、君子は天下以て其親に倹せず、


章番号 8 章通し番号 40

通し番号 239 章内番号 1 章通し番号 40 識別番号 4_8_1
1沈同以其私問曰、2燕可伐與、3孟子曰、4可、5子噲不得與人燕、6子之不得受燕於子噲、7有仕於此、8而子悅之、9不告於王、10而私與之吾子之祿爵、11夫士也、12亦無王命而私受之於子、13則可乎、14何以異於是、
沈同(しんどう)其私以て問いて曰く、燕伐(う)つべきか、孟子曰く、可なり、子噲(かい)は人に燕を与えることを得ず、子之(しし)は燕を子噲に受けることを得ず、此に仕有りて、子が之を悦び、王に告げずして、私に之に吾子の祿爵を与う、夫(その)士、亦王命無くて私に之を子に受ければ、則ち可か、何ぞ以て是に異ならん、

通し番号 240 章内番号 2 章通し番号 40 識別番号 4_8_2
1齊人伐燕、2或問曰、3勸齊伐燕、4有諸、5曰、6未也、7沈同問、8燕可伐與、9吾應之曰、10可、11彼然而伐之也、12彼如曰孰可以伐之、13則將應之曰、14爲天吏則可以伐之、15今有殺人者、16或問之曰、17人可殺與、18則將應之曰、19可、20彼如曰孰可以殺之、21則將應之曰、22爲士師則可以殺之、23今以燕伐燕、24何爲勸之哉、
斉人燕を伐つ、或ひと問いて曰く、斉に勧め燕を伐つ、諸有りや、曰く、未(いま)だし、沈同問う、燕伐つべきか、吾之に応じて曰く、可、彼然而(しこう)して之を伐つなり、彼如(も)し孰(たれ)か以て之を伐つべしと曰わば、則ち将に之に応じて曰わんとす、天吏爲(た)らば則ち以て之を伐つべし、今人を殺す者有り、或ひと之を問いて曰く、人は殺すべきか、則ち将に之に応じて曰わんとす、可、彼如(も)し孰か以て之を殺すべしと曰わば、則ち將に之に応じて曰わんとす、士師爲(た)らば則ち以て之を殺すべし、今燕以て燕を伐つ、何爲(なんすれ)ぞ之を勧めんや、


章番号 9 章通し番号 41

通し番号 241 章内番号 1 章通し番号 41 識別番号 4_9_1
1燕人畔、2王曰、3吾甚慙於孟子、
燕人畔(そむ)く、王曰く、吾甚だ孟子に慙(は)ず、

通し番号 242 章内番号 2 章通し番号 41 識別番号 4_9_2
1陳賈曰、2王無患焉、3王自以爲與周公孰仁且智、4王曰、5惡、6是何言也、7曰、8周公使管叔監殷、9管叔以殷畔、10知而使之、11是不仁也、12不知而使之、13是不智也、14仁智、15周公未之盡也、16而況於王乎、17賈請見而解之、
陳賈(か)曰く、王患(うれ)うること無かれ、王自ら以て周公と孰(いずれ)か仁且(か)つ智と爲す、王曰、悪(ああ)、是れ何の言ぞや、曰く、周公は管叔をして殷を監せしむ、管叔は殷以て畔(そむ)く、知りて之を使(せし)むれば、是れ不仁なり、知らずして之を使(せし)むれば、是れ不智なり、仁智、周公未だ之を尽さざるなり、而るに況んや王に於てをや、賈請う、見(まみ)えて之を解かん、

通し番号 243 章内番号 3 章通し番号 41 識別番号 4_9_3
1見孟子問曰、2周公何人也、3曰、4古聖人也、5曰、6使管叔監殷、7管叔以殷畔也、8有諸、9曰、10然、11曰、12周公知其將畔而使之與、13曰、14不知也、15然則聖人且有過與、16曰、17周公、18弟也、19管叔、20兄也、21周公之過、22不亦宜乎、
孟子に見(まみ)えて問いて曰く、周公何人ぞや、曰く、古の聖人なり、曰く、管叔をして殷を監さしむ、管叔殷以て畔(そむ)くなり、諸(これ)有りや、曰く、然り、曰く、周公其将に畔(そむ)かんするを知りて之を使(せ)しむるか、曰く、知らざるなり、然らば則ち聖人且(なお)過(あやまち)有るか、曰く、周公、弟なり、管叔、兄なり、周公の過、亦宜(むべ)ならず乎(や)、

通し番号 244 章内番号 4 章通し番号 41 識別番号 4_9_4
1且古之君子、2過則改之、3今之君子、4過則順之、5古之君子、6其過也、7如日月之食、8民皆見之、9及其更也、10民皆仰之、11今之君子、12豈徒順之、13又從爲之辭、
且(また)古の君子、過つ、則ち之を改む、今の君子、過つ、則ち之に順(したが)う、古の君子、其の過(あやま)つや、日月の食するが如し、民皆之を見る、其の更(あらた)めるに及ぶや、民皆之を仰ぐ、今の君子、豈徒(ただ)之に順わんや、又従(よ)りて之が辞を爲す、


章番号 10 章通し番号 42

通し番号 245 章内番号 1 章通し番号 42 識別番号 4_10_1
1孟子致爲臣而歸、
孟子臣爲(た)るを致して帰る、

通し番号 246 章内番号 2 章通し番号 42 識別番号 4_10_2
1王就見孟子曰、2前日願見而不可得、3得侍同朝甚喜、4今又棄寡人而歸、5不識、6可以繼此而得見乎、7對曰、8不敢請耳、9固所願也、
王就(おもむ)きて孟子に見(あ)いて曰く、前日見(あ)うを願いて得(う)べからず、侍するを得て同朝(ちょう)甚だ喜ぶ、今又寡人を棄てて帰る、識(し)らず、以て此に継(つ)ぎて見(あ)うを得べきか、対えて曰く、敢えて請わざるのみ、固より願う所なり、

通し番号 247 章内番号 3 章通し番号 42 識別番号 4_10_3
1他日王謂時子曰、2我欲中國而授孟子室、3養弟子以萬鍾、4使諸大夫國人皆有所矜式、5子盍爲我言之、
他日王時子に謂いて曰く、我中国に孟子に室を授け、弟子を養うに万鍾を以てし、諸大夫国人(こくじん)をして皆矜式(きょうしき)する所有らしめんと欲す、子盍(なん)ぞ我が爲に之を言わざる、

通し番号 248 章内番号 4 章通し番号 42 識別番号 4_10_4
1時子因陳子而以告孟子、2陳子以時子之言告孟子、
時子は陳子に因りて以て孟子に告ぐ、陳子は時子の言以て孟子に告ぐ、

通し番号 249 章内番号 5 章通し番号 42 識別番号 4_10_5
1孟子曰、2然、3夫時子惡知其不可也、4如使予欲富、5辭十萬而受萬、6是爲欲富乎、
孟子曰く、然(さ)ようか、夫(かの)時子悪ぞ其の不可を知らん、如(も)し予をして富を欲せしめば、十万を辞して万を受く、是れ富を欲すと爲すか、

通し番号 250 章内番号 6 章通し番号 42 識別番号 4_10_6
1季孫曰、2異哉子叔疑、3使己爲政、4不用則亦已矣、5又使其子弟爲卿、6人亦孰不欲富貴、7而獨於富貴之中、8有私龍斷焉、
季孫曰く、異(あや)しい哉(かな)子叔疑(ししゅくぎ)、己をして政を爲さしむ、用いざれば則ち亦(ただ)已(や)む、又其子弟をして卿爲らしむ、人亦孰(たれ)か富貴を欲せざらん、而して独り富貴の中に於て、龍断(ろうだん)を私(わたくし)すること有り、

通し番号 251 章内番号 7 章通し番号 42 識別番号 4_10_7
1古之爲市也、2以其所有易其所無者、3有司者治之耳、4有賤丈夫焉、5必求龍斷而登之、6以左右望而罔市利、7人皆以爲賤、8故從而征之、9征商、10自此賤丈夫始矣、
古の市を爲すや、其有る所を以て其無き所に易えるものなり、有司は之を治めるのみ、賎丈夫有り、必ず龍断を求めて之に登る、以て左右を望みて市利を罔(あみ)す、人皆以て賎と爲す、故に従(よ)りて之に征す、商に征すは、此賎丈夫自(よ)り始まる、


章番号 11 章通し番号 43

通し番号 252 章内番号 1 章通し番号 43 識別番号 4_11_1
1孟子去齊、2宿於晝、
孟子斉を去り、昼に宿す、

通し番号 253 章内番号 2 章通し番号 43 識別番号 4_11_2
1有欲爲王留行者、2坐而言、3不應、4隱几而臥、
王の爲に行(さ)るを留めんと欲する者有り、坐して言う、応ぜず、几(き)に隠(よ)りて臥す、

通し番号 254 章内番号 3 章通し番号 43 識別番号 4_11_3
1客不悅曰、2弟子齊宿而後敢言、3夫子臥而不聽、4請勿復敢見矣、5曰、6坐、7我明語子、8昔者魯繆公無人乎子思之側、9則不能安子思、10泄柳、11申詳、12無人乎繆公之側、13則不能安其身、
客悦(よろこば)ずして曰く、弟子(ていし)斉宿して後敢えて言う、夫子臥して聴かず、請う復(また)敢て見(まみ)ゆること勿(な)し、曰く、坐せよ、我明らかに子(し)に語らん、昔者(むかし)魯の繆公(ぼくこう)子思の側(かたわら)に人無ければ、則ち子思を安ずること能わず、泄柳(せつりゅう)、申詳(しんしょう)は、繆公の側に人無ければ、則ち其身を安ずること能わず、

通し番号 255 章内番号 4 章通し番号 43 識別番号 4_11_4
1子爲長者慮、2而不及子思、3子絶長者乎、4長者絶子乎、
子長者(ちょうじゃ)の爲に慮(おもんばか)りて、子思に及ばず、子長者を絶つか、長者子を絶つか、


章番号 12 章通し番号 44

通し番号 256 章内番号 1 章通し番号 44 識別番号 4_12_1
1孟子去齊、2尹士語人曰、3不識王之不可以爲湯武、4則是不明也、5識其不可、6然且至、7則是干澤也、8千里而見王、9不遇故去、10三宿而後出晝、11是何濡滯也、12士則茲不悅、
孟子斉を去る、尹士(いんし)人に語りて曰く、王の以て湯武と爲るべからざるを識らざれば、則ち是れ不明なり、其不可を識り、然(しこう)して且(なお)至れば、則ち是れ沢を干(もと)めるなり、千里にして王に見(まみ)え、遇(あ)わず、故に去る、三宿して後に昼を出ず、是何ぞ濡滞(じゅたい)なるや、士則ち茲(ここ)に悦(よろこ)ばず、

通し番号 257 章内番号 2 章通し番号 44 識別番号 4_12_2
1高子以告、
高子以て告ぐ、

通し番号 258 章内番号 3 章通し番号 44 識別番号 4_12_3
1曰、2夫尹士惡知予哉、3千里而見王、4是予所欲也、5不遇故去、6豈予所欲哉、7予不得已也、
曰く、夫(かの)尹士悪ぞ予を知らんや、千里にして王に見(まみ)ゆ、是れ予欲する所なり、遇(あ)わず、故に去る、豈予欲する所ならんや、予已(や)むを得ざるなり、

通し番号 259 章内番号 4 章通し番号 44 識別番号 4_12_4
1予三宿而出晝、2於予心猶以爲速、3王庶幾改之、4王如改諸、5則必反予、
予三宿して昼を出ず、予が心に於て猶以て速しと爲す、王庶幾(こいねがわ)くは之を改めよ、王如(も)し諸を改めば、則ち必ず予(われ)を反(かえ)さん、

通し番号 260 章内番号 5 章通し番号 44 識別番号 4_12_5
1夫出晝而王不予追也、2予然後浩然有歸志、3予雖然、4豈舍王哉、5王由足用爲善、6王如用予、7則豈徒齊民安、8天下之民舉安、9王庶幾改之、10予日望之、
夫(それ)昼を出でて王予を追わざるなり、予然る後に浩然として帰る志(し)有り、予然りと雖も、豈王を舍(す)てんや、王由(なお)用(もっ)て善を爲すに足る、王如(も)し予を用いれば、則ち豈徒(ただ)斉の民安きのみならんや、天下の民挙(みな)安し、王庶幾(ねがわ)くは之を改めよ、予日に之を望む、

通し番号 261 章内番号 6 章通し番号 44 識別番号 4_12_6
1予豈若是小丈夫然哉、2諫於其君而不受、3則怒悻悻然、4見於其面、5去則窮日之力、6而後宿哉、
予豈是の小丈夫(じょうふ)の若く然(なら)んや、其君を諫(いさ)めて受けざれば、則ち怒り悻悻(こうこう)然として、其面に見(あら)われ、去れば則ち日の力を窮(つく)して後に宿さんや、

通し番号 262 章内番号 7 章通し番号 44 識別番号 4_12_7
1尹士聞之曰、2士誠小人也、
尹士之を聞きて曰く、士誠に小人なり、


章番号 13 章通し番号 45

通し番号 263 章内番号 1 章通し番号 45 識別番号 4_13_1
1孟子去齊、2充虞路問曰、3夫子若有不豫色然、4前日虞聞諸夫子、5曰、6君子不怨天、7不尤人、
孟子斉を去る、充虞(じゅうぐ)、路に問いて曰く、夫子(ふうし)不予の色有るが若し(然)、前日虞諸を夫子に聞く、曰く、君子天を怨(うら)まず、人を尤(とが)めず、

通し番号 264 章内番号 2 章通し番号 45 識別番号 4_13_2
1曰、2彼一時、3此一時也、
曰く、彼一時(じ)、此一時(じ)なり、

通し番号 265 章内番号 3 章通し番号 45 識別番号 4_13_3
1五百年必有王者興、2其閒必有名世者、
五百年必ず王者興(おこ)ること有り、其間必ず世に名ある者有り、

通し番号 266 章内番号 4 章通し番号 45 識別番号 4_13_4
1由周而來、2七百有餘歳矣、3以其數則過矣、4以其時考之則可矣、
周由(よ)り而來(じらい)、七百有余歳なり、其数以てすれば則ち過ぐ、其時以て之を考えれば則ち可なり、

通し番号 267 章内番号 5 章通し番号 45 識別番号 4_13_5
1夫天未欲平治天下也、2如欲平治天下、3當今之世、4舍我其誰也、5吾何爲不豫哉、
夫(それ)天未だ天下を平治するを欲せざるなり、如(も)し天下を平治するを欲せば、今の世に当り、我を舍(す)て其誰ぞや、吾何爲(なんすれ)ぞ不予せんや、


章番号 14 章通し番号 46

通し番号 268 章内番号 1 章通し番号 46 識別番号 4_14_1
1孟子去齊居休、2公孫丑問曰、3仕而不受祿、4古之道乎、
孟子は斉を去り休に居る、公孫丑問いて曰く、仕えて禄を受けざるは、古の道か、

通し番号 269 章内番号 2 章通し番号 46 識別番号 4_14_2
1曰、2非也、3於崇吾得見王、4退而有去志、5不欲變、6故不受也、
曰く、非なり、崇に於て吾王に見(まみ)えることを得る、退いて去る志(し)有り、変えることを欲せず、故に受けざるなり、

通し番号 270 章内番号 3 章通し番号 46 識別番号 4_14_3
1繼而有師命、2不可以請、3久於齊、4非我志也、
継(つ)いで師の命有り、以て請うべからず、斉に久しきは、我が志に非ざるなり、


5 滕文公章句上 téng wén gōng zhāng jù shàng

章番号 1 章通し番号 47

通し番号 271 章内番号 1 章通し番号 47 識別番号 5_1_1
1滕文公爲世子、2將之楚、3過宋而見孟子、
滕の文公世子爲(た)り、将に楚に之(ゆ)かんとす、宋を過ぎて孟子に見(あ)う、

通し番号 272 章内番号 2 章通し番号 47 識別番号 5_1_2
1孟子道性善、2言必稱堯舜、
孟子性善を道(い)う、言えば必ず堯舜を称す、

通し番号 273 章内番号 3 章通し番号 47 識別番号 5_1_3
1世子自楚反、2復見孟子、3孟子曰、4世子疑吾言乎、5夫道一而已矣、
世子楚自(よ)り反る、復(また)孟子に見(あ)う、孟子曰く、世子吾が言を疑うか、夫(それ)道は一而已(のみ)、

通し番号 274 章内番号 4 章通し番号 47 識別番号 5_1_4
1成覵謂齊景公曰、2彼丈夫也、3我丈夫也、4吾何畏彼哉、5顏淵曰、6舜何人也、7予何人也、8有爲者亦若是、9公明儀曰、10文王我師也、11周公豈欺我哉、
成覵(けん)斉の景公に謂いて曰く、彼丈夫なり、我丈夫なり、吾何ぞ彼を畏れんや、顔淵曰く、舜何人ぞや、予何人ぞや、爲すこと有る者亦是若し、公明儀曰く、文王我が師なり、周公豈我を欺かんや、

通し番号 275 章内番号 5 章通し番号 47 識別番号 5_1_5
1今滕絶長補短、2將五十里也、3猶可以爲善國、4書曰、5若藥不瞑眩、6厥疾不瘳、
今滕長きを絶(た)ち短きを補わば、将に五十里にならんとするなり、猶以て善(よ)い国と爲すべし、書に曰く、若(もし)薬瞑眩(めんげん)せざれば、厥(その)疾瘳(い)えず、


章番号 2 章通し番号 48

通し番号 276 章内番号 1 章通し番号 48 識別番号 5_2_1
1滕定公薨、2世子謂然友曰、3昔者孟子嘗與我言於宋、4於心終不忘、5今也不幸至於大故、6吾欲使子問於孟子、7然後行事、
滕の定公薨(こう)ず、世子然友に謂いて曰く、昔者(むかし)孟子嘗て我と宋に於て言う、心に於て終(つい)に忘れず、今や不幸にして大故(たいこ)に至る、吾は子をして孟子に問わしめ、然る後に事を行わんと欲す、

通し番号 277 章内番号 2 章通し番号 48 識別番号 5_2_2
1然友之鄒問於孟子、2孟子曰、3不亦善乎、4親喪固所自盡也、5曾子曰、6生事之以禮、7死葬之以禮、8祭之以禮、9可謂孝矣、10諸侯之禮、11吾未之學也、12雖然、13吾嘗聞之矣、14三年之喪、15齊疏之服、16飦粥之食、17自天子達於庶人、18三代共之、
然友鄒に之(ゆ)き孟子に問う、孟子曰く、亦善(よ)からずや、親の喪は固より自(おの)ずから尽す所なり、曽子曰く、生くるに之に事(つか)えるに礼を以てし、死するに之を葬(ほう)むるに礼を以てし、之を祭るに礼を以てすれば、孝と謂うべし、諸侯の礼、吾未だ之を学ばざるなり、然りと雖も、吾嘗て之を聞く、三年の喪(も)、斉疏(しそ)の服、飦粥(せんじゅく)の食、天子自(よ)り庶人に達す、三代之を共(とも)にす、

通し番号 278 章内番号 3 章通し番号 48 識別番号 5_2_3
1然友反命、2定爲三年之喪、3父兄百官皆不欲、4曰、5吾宗國魯先君莫之行、6吾先君亦莫之行也、7至於子之身而反之、8不可、9且志曰、10喪祭從先祖、11曰、12吾有所受之也、
然友反命する、定むらく、三年の喪を爲さんと、父兄百官皆欲さずして、曰く、吾が宗国魯の先君は之を行うこと莫し、吾が先君亦之を行うこと莫きなり、子(し)の身に至りて之に反するは、不可なり、且(また)志に曰く、喪祭は先祖に従う、曰く、吾之を受くる所有るなり、

通し番号 279 章内番号 4 章通し番号 48 識別番号 5_2_4
1謂然友曰、2吾他日未嘗學問、3好馳馬試劍、4今也父兄百官、5不我足也、6恐其不能盡於大事、7子爲我問孟子、8然友復之鄒問孟子、9孟子曰、10然、11不可以他求者也、12孔子曰、13君薨、14聽於冢宰、15歠粥、16面深墨、17卽位而哭、18百官有司、19莫敢不哀、20先之也、21上有好者、22下必有甚焉者矣、23君子之德風也、24小人之德草也、25草尙之風必偃、26是在世子、
然友に謂いて曰く、吾他日(たじつ)未だ嘗て学問せず、好んで馬を馳(は)せ剣を試(もち)う、今や父兄百官、我を足れりとせざるなり、其れ大事を尽すこと能わざるを恐る、子我の爲に孟子に問え、然友復(また)鄒に之(ゆ)き孟子に問う、孟子曰く、然(さ)ようか、以て他に求むべからざるものなり、孔子曰く、君薨(こう)ずれば、冢宰(ちょうさい)に聴(したがわ)しむ、粥を歠(すす)り、面(おもて)は深墨(しんぼく)、位に即(つ)きて哭す、百官有司、敢(あえ)て哀(かな)しまざること莫し、之に先んずるなり、上好む者有れば、下必ず焉(これ)より甚だしき者有り、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり、草は之に風を尚(くわ)えれば必ず偃(ふ)す、是れ世子に在り、

通し番号 280 章内番号 5 章通し番号 48 識別番号 5_2_5
1然友反命、2世子曰、3然、4是誠在我、5五月居廬、6未有命戒、7百官族人可謂曰知、8及至葬、9四方來觀之、10顏色之戚、11哭泣之哀、12弔者大悅、
然友反命す、世子曰く、然り、是れ誠に我に在り、五月廬(ろ)に居る、未だ命戒有らず、百官族人可として、謂いて知ると曰う、葬(ほうむ)るに至るに及び、四方より来り之を観る、顔色の戚、哭泣(こくきゅう)の哀、弔する者大いに悦(よろこ)ぶ、


章番号 3 章通し番号 49

通し番号 281 章内番号 1 章通し番号 49 識別番号 5_3_1
1滕文公問爲國、
滕の文公が国を爲(おさ)めるを問う、

通し番号 282 章内番号 2 章通し番号 49 識別番号 5_3_2
1孟子曰、2民事不可緩也、3詩云、4晝爾于茅、5宵爾索綯、6亟其乘屋、7其始播百穀、
孟子曰、民の事は緩(ゆる)くすべからざるなり、詩に云う、昼は爾(なんじ)于(ゆ)きて茅(かやをか)る、宵(よる)は爾(なんじ)索(なわ)を綯(な)い、亟(すみや)かに其(そ)れ屋に乗れ、其(それ)始めて百穀を播(ま)け、

通し番号 283 章内番号 3 章通し番号 49 識別番号 5_3_3
1民之爲道也、2有恆產者有恆心、3無恆產者無恆心、4苟無恆心、5放辟邪侈、6無不爲已、7及陷乎罪、8然後從而刑之、9是罔民也、10焉有仁人在位、11罔民而可爲也、
民の道爲(た)るや、恒(つね)の産有る者は恒(つね)の心有り、恒(つね)の産無き者は恒(つね)の心無し、苟(もし)恒(つね)の心無ければ、放辟邪侈、爲さざる無きのみ、罪に陥いるに及び、然る後従(よ)りて之を刑す、是れ民を罔(あみ)するなり、、焉ぞ仁人位に在る有りて、民を罔すること爲すべけんや、

通し番号 284 章内番号 4 章通し番号 49 識別番号 5_3_4
1是故賢君必恭儉禮下、2取於民有制、
是故に賢君必ず恭倹にして下に礼し、民に取るに制有り、

通し番号 285 章内番号 5 章通し番号 49 識別番号 5_3_5
1陽虎曰、2爲富不仁矣、3爲仁不富矣、
陽虎曰く、富を爲せば仁ならず、仁を爲せば富ならず、

通し番号 286 章内番号 6 章通し番号 49 識別番号 5_3_6
1夏后氏五十而貢、2殷人七十而助、3周人百畝而徹、4其實皆什一也、5徹者、6徹也、7助者、8藉也、
夏后氏五十にして貢す、殷人(いんひと)七十にして助す、周人(しゅうひと)百畝にして徹す、其実皆什一なり、徹なるものは、徹なり、助なるものは、藉なり、

通し番号 287 章内番号 7 章通し番号 49 識別番号 5_3_7
1龍子曰、2治地莫善於助、3莫不善於貢、4貢者校數歳之中以爲常、5樂歳粒米狼戾、6多取之而不爲虐、7則寡取之、8凶年糞其田而不足、9則必取盈焉、10爲民父母、11使民盻盻然、12將終歳勤動、13不得以養其父母、14又稱貸而益之、15使老稚轉乎溝壑、16惡在其爲民父母也、
龍子曰く、地を治めるは助より善きは莫し、貢より善からざるは莫し、貢は数歳の中を校(はか)り以て常と爲す、楽歳粒米狼戾(ろうれい)、多く之を取りて虐と爲さず、則(しかる)に寡(すくな)く之を取る、凶年其田を糞(つちか)うも足らず、則(しかる)に必ず盈(えい)を取る、民の父母と爲り、民をして盻盻然(けいけいぜん)として、將に終歳勤動し、以て其父母を養うことを得ざらしめんとす、又称貸して之を益(ま)す、老稚(ち)をして溝(こう)壑(がく)に転ぜしむ、悪(いずく)にか在る、其民の父母爲(た)ること、

通し番号 288 章内番号 8 章通し番号 49 識別番号 5_3_8
1夫世祿、2滕固行之矣、
夫世禄は、滕固より之を行う、

通し番号 289 章内番号 9 章通し番号 49 識別番号 5_3_9
1詩云、2雨我公田、3遂及我私、4惟助爲有公田、5由此觀之、6雖周亦助也、
詩に云う、我(わが)公田に雨(あめふ)り、遂(つい)に我(わが)私(わたくし)に及べ、惟(ただ)助のみ公田有りと爲す、此に由り之を観れば、周と雖も亦助なり、

通し番号 290 章内番号 10 章通し番号 49 識別番号 5_3_10
1設爲庠序學校以敎之、2庠者、3養也、4校者、5敎也、6序者、7射也、8夏曰校、9殷曰序、10周曰庠、11學則三代共之、12皆所以明人倫也、13人倫明於上、14小民親於下、
庠(しょう)序学校を設(もう)け爲(つく)り以て之を教う、庠は、養なり、校は、教なり、序は、射なり、夏は校と曰い、殷は序と曰い、周は庠と曰う、学は則ち三代之を共(とも)にす、皆以て人倫を明かにする所なり、人倫上に明かにして、小民下に親む、

通し番号 291 章内番号 11 章通し番号 49 識別番号 5_3_11
1有王者起、2必來取法、3是爲王者師也、
王者起こること有れば、必ず来りて法を取る、是れ王者の師と爲るなり、

通し番号 292 章内番号 12 章通し番号 49 識別番号 5_3_12
1詩云、2周雖舊邦、3其命惟新、4文王之謂也、5子力行之、6亦以新子之國、
詩に云う、周旧邦と雖も、其命惟(これ)新し、文王の謂(いい)なり、子力(つと)めて之を行えば、亦以て子の国を新しくす、

通し番号 293 章内番号 13 章通し番号 49 識別番号 5_3_13
1使畢戰問井地、2孟子曰、3子之君將行仁政、4選擇而使子、5子必勉之、6夫仁政、7必自經界始、8經界不正、9井地不均、10穀祿不平、11是故暴君汙吏必慢其經界、12經界旣正、13分田制祿可坐而定也、
畢戦(ひつせん)をして井地を問わしむ、孟子曰く、子の君将に仁政を行わんとす、選択して子を使(せし)む、子必ず之を勉めよ、夫(それ)仁政は、必ず経界自(よ)り始まる、経界正しからざれば、井地均(ひと)しからず、穀禄平(たいら)かならず、是故に暴君汙吏必ず其経界を慢(おこた)る、経界既に正しければ、田を分ち禄を制すること坐して定むべきなり、

通し番号 294 章内番号 14 章通し番号 49 識別番号 5_3_14
1夫滕壤地褊小、2將爲君子焉、3將爲野人焉、4無君子莫治野人、5無野人莫養君子、
夫(それ)滕は壤(じょう)地褊小なり、将(ある)いは君子爲(た)り、将(ある)いは野人爲(た)り、君子無ければ野人を治めること莫し、野人無ければ君子を養うこと莫し、

通し番号 295 章内番号 15 章通し番号 49 識別番号 5_3_15
1請野九一而助、2國中什一使自賦、
請う野は九一にして助す、国中(こくちゅう)什一にして自ら賦せしむ、

通し番号 296 章内番号 16 章通し番号 49 識別番号 5_3_16
1卿以下必有圭田、2圭田五十畝、
卿(けい)以下必ず圭田(けいでん)有り、圭田は五十畝(ぽ)なり、

通し番号 297 章内番号 17 章通し番号 49 識別番号 5_3_17
1餘夫二十五畝、
余夫は二十五畝、

通し番号 298 章内番号 18 章通し番号 49 識別番号 5_3_18
1死徙無出郷、2郷田同井、3出入相友、4守望相助、5疾病相扶持、6則百姓親睦、
死して徙(うつ)り郷を出ずること無し、郷の田は井を同じくすれば、出入相友(したが)い、守望相助け、疾病相扶持(ふじ)す、則ち百姓親睦す、

通し番号 299 章内番号 19 章通し番号 49 識別番号 5_3_19
1方里而井、2井九百畝、3其中爲公田、4八家皆私百畝、5同養公田、6公事畢、7然後敢治私事、8所以別野人也、
方里にして井、井は九百畝、其中公田と爲す、八家皆百畝を私す、同じく公田を養う、公事畢(おわ)る、然る後敢て私事を治む、以て野人を別(わか)つ所なり、

通し番号 300 章内番号 20 章通し番号 49 識別番号 5_3_20
1此其大略也、2若夫潤澤之、3則在君與子矣、
此は其大略なり、夫(かの)之を潤沢するが若きは、則ち君と子にあり、


章番号 4 章通し番号 50

通し番号 301 章内番号 1 章通し番号 50 識別番号 5_4_1
1有爲神農之言者許行、2自楚之滕、3踵門而告文公曰、4遠方之人、5聞君行仁政、6願受一廛而爲氓、7文公與之處、8其徒數十人、9皆衣褐、10捆屨織席以爲食、
神農の言を爲す者許行有り、楚自(よ)り滕に之(ゆ)く、門に踵(いた)りて文公に告げて曰く、遠方の人、君仁政を行うを聞く、願わくば一廛(てん)を受けて氓(たみ)と爲らん、文公之に處(ところ)を与う、其徒数十人、皆褐(かつ)を衣(き)、屨(くつ)を捆(う)ち席を織(お)り以て食と爲す、

通し番号 302 章内番号 2 章通し番号 50 識別番号 5_4_2
1陳良之徒陳相、2與其弟辛、3負耒耜而自宋之滕曰、4聞君行聖人之政、5是亦聖人也、6願爲聖人氓、
陳良の徒陳相(ちんしょう)、其弟辛と、耒耜(らいし)を負いて宋自(よ)り滕に之きて曰く、君聖人の政を行うと聞く、是れ亦聖人なり、願わくば聖人の氓(たみ)と爲らん、

通し番号 303 章内番号 3 章通し番号 50 識別番号 5_4_3
1陳相見許行而大悅、2盡棄其學而學焉、3陳相見孟子、4道許行之言曰、5滕君則誠賢君也、6雖然未聞道也、7賢者與民並耕而食、8饔飧而治、9今也滕有倉廩府庫、10則是厲民而以自養也、11惡得賢、
陳相許行に見(あ)い大いに悦(よろこ)ぶ、尽(ことごと)く其学を棄てて学ぶ、陳相孟子に見(あ)い、許行の言を道(い)いて曰く、滕君則ち誠に賢君なり、然りと雖も未だ道を聞かざるなり、賢者民と並(なら)び耕やして食す、饔飧(ようそん)して治む、今也(や)滕倉廩(りん)府庫有り、則ち是民を厲(やま)しめて以て自ら養うなり、悪ぞ賢を得ん、

通し番号 304 章内番号 4 章通し番号 50 識別番号 5_4_4
1孟子曰、2許子必種粟而後食乎、3曰、4然、5許子必織布而後衣乎、6曰、7否、8許子衣褐、9許子冠乎、10曰、11冠、12曰、13奚冠、14曰、15冠素、16曰、17自織之與、18曰、19否、20以粟易之、21曰、22許子奚爲不自織、23曰、24害於耕、25曰、26許子以釜甑爨、27以鐵耕乎、28曰、29然、30自爲之與、31曰、32否、33以粟易之、
孟子曰く、許子必ず粟(ぞく)を種(う)えて後食するか、曰く、然り、許子必ず布を織(お)りて後衣(き)るか、曰く、否、許子褐(かつ)を衣る、許子冠するか、曰く、冠す、曰く、奚(なに)を冠す、曰く、素を冠す、曰く、自ら之を織(お)るか、曰く、否、粟以て之に易う、曰く、許子奚爲(なんすれ)ぞ自ら織(お)らざる、曰く、耕に害あり、曰く、許子釜甑(ふしょう)以て爨(もや)し、鉄以て耕すか、曰く、然り、自ら之を爲(つく)るか、曰く、否、粟以て之に易う、

通し番号 305 章内番号 5 章通し番号 50 識別番号 5_4_5
1以粟易械器者、2不爲厲陶冶、3陶冶亦以其械器易粟者、4豈爲厲農夫哉、5且許子何不爲陶冶、6舍皆取諸其宮中而用之、7何爲紛紛然與百工交易、8何許子之不憚煩、9曰、10百工之事、11固不可耕且爲也、
粟以て械器に易えるは、陶冶(や)を厲(や)ましめると爲さず、陶冶亦其械器を以て粟に易えるは、豈農夫を厲(やま)しめると爲さんや、且(また)許子何ぞ陶冶を爲さざる、皆諸(これ)を其宮中に取りて之を用いることを舍(や)めて、何爲(なんすれ)ぞ紛紛然として百工と交易する、何ぞ許子は煩を憚(はばか)らざる、曰く、百工の事、固より耕し且(か)つ爲すべからざるなり、

通し番号 306 章内番号 6 章通し番号 50 識別番号 5_4_6
1然則治天下獨可耕且爲與、2有大人之事、3有小人之事、4且一人之身、5而百工之所爲備、6如必自爲而後用之、7是率天下而路也、8故曰、9或勞心、10或勞力、11勞心者治人、12勞力者治於人、13治於人者食人、14治人者食於人、15天下之通義也、
然らば則ち天下を治めること独(ひと)り耕し且(か)つ爲すべきか、大人の事有り、小人(しょうじん)の事有り、且(ま)た一人の身にして、百工の爲す所備わる、如(も)し必ず自ら爲して後之を用うれば、是れ天下を率(ひき)いて路するなり、故に曰く、或いは心を労し、或いは力を労す、心を労する者は人を治む、力を労する者は人に治めらる、人に治めらる者は人を食(やしな)う、人を治める者は人に食(やしなわ)れる、天下の通義なり、

通し番号 307 章内番号 7 章通し番号 50 識別番号 5_4_7
1當堯之時、2天下猶未平、3洪水橫流、4氾濫於天下、5草木暢茂、6禽獸繁殖、7五穀不登、8禽獸偪人、9獸蹄鳥跡之道、10交於中國、11堯獨憂之、12舉舜而敷治焉、13舜使益掌火、14益烈山澤而焚之、15禽獸逃匿、16禹疏九河、17瀹濟漯、18而注諸海、19決汝漢、20排淮泗、21而注之江、22然後中國可得而食也、23當是時也、24禹八年於外、25三過其門而不入、26雖欲耕得乎、
堯の時に当り、天下猶(なお)未だ平かならず、洪水横流し、天下に氾濫す、草木暢茂(ちょうも)し、禽獣繁殖し、五穀登(みの)らず、禽獣人に偪(せま)る、獣蹄(てい)鳥跡(せき)の道、中国に交わる、堯独り之を憂う、舜を挙げて敷(ほどこ)し治めしむ、舜は益をして火を掌(つかさど)らしむ、益は山沢を烈(もや)し之を焚(や)く、禽獣逃れ匿(かく)る、禹九河(か)を疏(とお)す、済(せい)漯(とう)を瀹(とお)して、諸(これ)を海に注ぐ、汝(じょ)漢を決し、淮泗(わいし)を排して、之を江に注ぐ、然る後中国得て食すべきなり、是時に当るや、禹外に於て八年、三たび其門を過ぎて入らず、耕すことを欲すと雖も得るか、

通し番号 308 章内番号 8 章通し番号 50 識別番号 5_4_8
1后稷敎民稼穡、2樹藝五穀、3五穀熟而民人育、4人之有道也、5飽食、6煖衣、7逸居而無敎、8則近於禽獸、9聖人有憂之、10使契爲司徒、11敎以人倫、12父子有親、13君臣有義、14夫婦有別、15長幼有序、16朋友有信、17放勳曰、18勞之來之、19匡之直之、20輔之翼之、21使自得之、22又從而振德之、23聖人之憂民如此、24而暇耕乎、
后稷(こうしょく)民に稼穡(かしょく)を教え、五穀を樹芸す、五穀熟して民人育す、人は道有るなり、飽食、煖衣(だんい)、逸居(いっきょ)して教えること無ければ、則ち禽獣に近し、聖人之を憂うこと有り、契(せつ)をして司徒と爲らしめ、教えるに人倫を以てす、父子親有り、君臣義有り、夫婦別有り、長幼序有り、朋友信有り、放勳(ほうくん)曰く、之を労(ねぎら)う、之を来たす、之を匡(ただ)す、之を直(なお)くす、之を輔(たす)く、之を翼(たす)く、自ずから之を得せしむ、又従(よ)りて之を振徳す、聖人の民を憂うこと此如し、而して耕に暇(いとま)あるか、

通し番号 309 章内番号 9 章通し番号 50 識別番号 5_4_9
1堯以不得舜爲己憂、2舜以不得禹皐陶爲己憂、3夫以百畝之不易爲己憂者、4農夫也、
堯は舜を得ざるを以て己の憂いと爲す、舜は禹、皐陶(こうよう)を得ざるを以て己の憂いと爲す、夫(それ)百畝の易(おさま)らざるを以て己の憂いと爲す者は、農夫なり、

通し番号 310 章内番号 10 章通し番号 50 識別番号 5_4_10
1分人以財、2謂之惠、3敎人以善、4謂之忠、5爲天下得人者、6謂之仁、7是故以天下與人易、8爲天下得人難、
人に分つに財を以てす、之を恵と謂う、人に教えるに善を以てす、之を忠と謂う、天下の爲に人を得るは、之を仁と謂う、是故に天下以て人に与えるは易く、天下の爲に人を得るは難し、

通し番号 311 章内番号 11 章通し番号 50 識別番号 5_4_11
1孔子曰、2大哉堯之爲君、3惟天爲大、4惟堯則之、5蕩蕩乎民無能名焉、6君哉舜也、7巍巍乎有天下而不與焉、8堯舜之治天下、9豈無所用其心哉、10亦不用於耕耳、
孔子曰く、大なるかな堯の君爲(た)る、惟(ただ)天大と爲す、惟(ただ)堯之に則(のっと)る、蕩蕩乎(とうとうこ)として民能く名づくること無し、君なるかな舜や、巍巍乎(ぎぎこ)として天下を有(たも)ちて与(あずか)らず、堯舜の天下を治める、豈其心を用いる所無からんや、亦(ただ)耕に用いざるのみ、

通し番号 312 章内番号 12 章通し番号 50 識別番号 5_4_12
1吾聞用夏變夷者、2未聞變於夷者也、3陳良、4楚產也、5悅周公、6仲尼之道、7北學於中國、8北方之學者、9未能或之先也、10彼所謂豪傑之士也、11子之兄弟事之數十年、12師死而遂倍之、
吾、夏用(もっ)て夷を変ずるものを聞く、未だ夷に変ぜられるものを聞かざるなり、陳良、楚の産なり、周公、仲尼の道を悦ぶ、北中国に学ぶ、北方の学者、未だ能く之に先んずること或(あ)らざるなり、彼謂う所の豪傑の士なり、子の兄弟之に事えること数十年、師死して遂に之に倍(そむ)く、

通し番号 313 章内番号 13 章通し番号 50 識別番号 5_4_13
1昔者孔子沒、2三年之外、3門人治任將歸、4入揖於子貢、5相嚮而哭、6皆失聲、7然後歸、8子貢反、9築室於場、10獨居三年、11然後歸、12他日子夏、13子張、14子游、15以有若似聖人、16欲以所事孔子事之、17彊曾子、18曾子曰、19不可、20江漢以濯之、21秋陽以暴之、22皜皜乎不可尙已、
昔者(むかし)孔子没す、三年の外(そと)、門人任(じん)を治め将に帰らんとす、入りて子貢に揖(ゆう)し、相嚮(むか)いて哭す、皆声を失ない、然る後帰る、子貢反る、室を場に築き、独り居ること三年、然る後帰る、他日子夏、子張、子游は、有若が聖人に似るを以て、孔子に事(つか)える所を以て之に事(つか)えんと欲す、曽子に彊(し)う、曽子曰く、不可、江漢以て之を濯(あら)い、秋陽以て之を暴(さら)す、皜皜乎(こうこうこ)として尚(くわ)うべからざるのみ、

通し番号 314 章内番号 14 章通し番号 50 識別番号 5_4_14
1今也南蠻鴃舌之人、2非先王之道、3子倍子之師而學之、4亦異於曾子矣、
今や南蛮鴃(げき)舌の人、先王の道に非ず、子子の師に倍(そむ)きて之に学ぶ、亦曽子に異なる、

通し番号 315 章内番号 15 章通し番号 50 識別番号 5_4_15
1吾聞出於幽谷遷于喬木者、2未聞下喬木而入於幽谷者、
吾幽谷を出で喬木に遷(うつ)るものを聞く、未だ喬木を下りて幽谷に入るものを聞かざるなり、

通し番号 316 章内番号 16 章通し番号 50 識別番号 5_4_16
1魯頌曰、2戎狄是膺、3荊舒是懲、4周公方且膺之、5子是之學、6亦爲不善變矣、
魯頌に曰く、戎狄(じゅうてき)是れ膺(う)ち、荊(けい)舒(じょ)是れ懲(こら)しめる、周公方且(まさ)に之を膺(う)たんとす、子是を之学ぶ、(亦)善く変ぜずと爲す、

通し番号 317 章内番号 17 章通し番号 50 識別番号 5_4_17
1從許子之道、2則市賈不貳、3國中無僞、4雖使五尺之童適市、5莫之或欺、6布帛長短同、7則賈相若、8麻縷絲絮輕重同、9則賈相若、10五穀多寡同、11則賈相若、12屨大小同、13則賈相若、
許子の道に従えば、則ち市賈(か)貳(じ)ならず、国中僞無し、五尺の童をして市に適(ゆ)かしむと雖も、之を欺くこと或(あ)る莫し、布(ふ)帛(はく)長短同じならば、則ち賈相(あい)若(し)く、麻縷(まる)絲(し)絮(じょ)軽重同じならば、則ち賈(か)相(あい)若(し)く、五穀多寡同じならば、則ち賈相若く、屨(くつ)大小同じならば、則ち賈相若く、

通し番号 318 章内番号 18 章通し番号 50 識別番号 5_4_18
1曰、2夫物之不齊、3物之情也、4或相倍蓰、5或相什伯、6或相千萬、7子比而同之、8是亂天下也、9巨屨小屨同賈、10人豈爲之哉、11從許子之道、12相率而爲僞者也、13惡能治國家、
曰く、夫(それ)物の斉(ひとし)からざるは、物の情なり、或いは相(あい)倍蓰(し)し、或いは相什伯(はく)し、或いは相千万す、子比して之を同じくす、是れ天下を乱るなり、巨屨(く)小屨賈を同じくすれば、人豈之を爲(つく)らんや、許子の道に従えば、相(あい)率(もち)いて僞を爲すものなり、悪ぞ能く国家を治めん、


章番号 5 章通し番号 51

通し番号 319 章内番号 1 章通し番号 51 識別番号 5_5_1
1墨者夷之、2因徐辟而求見孟子、3孟子曰、4吾固願見、5今吾尙病、6病愈、7我且往見、8夷子不來、
墨者夷之(いし)、徐辟(じょへき)に因りて孟子に見(あ)うことを求む、孟子曰く、吾固(もと)より見(あ)うことを願う、今吾尙(なお)病む、病愈(い)ゆれば、我且(まさ)に往きて見(あ)わんとす、夷子来らざれ、

通し番号 320 章内番号 2 章通し番号 51 識別番号 5_5_2
1他日又求見孟子、2孟子曰、3吾今則可以見矣、4不直則道不見、5我且直之、6吾聞、7夷子墨者、8墨之治喪也、9以薄爲其道也、10夷子思以易天下、11豈以爲非是而不貴也、12然而夷子葬其親厚、13則是以所賤事親也、
他日又孟子に見(あ)うことを求む、孟子曰く、吾今則ち以て見(あ)うべし、直(ただ)さざれば則ち道見(あらわ)れず、我且(まさ)に之を直(ただ)さんとす、吾聞く、夷子墨者、墨の喪を治めるや、薄以て其道と爲すなり、夷子以て天下を易えんと思う、豈以て是(ぜ)に非ずと爲して貴ばざらんや、然り而して夷子其親を葬(ほうむ)ること厚し、則ち是れ賎しむ所を以て親に事えるなり、

通し番号 321 章内番号 3 章通し番号 51 識別番号 5_5_3
1徐子以告夷子、2夷子曰、3儒者之道、4古之人若保赤子、5此言何謂也、6之則以爲愛無差等、7施由親始、8徐子以告孟子、9孟子曰、10夫夷子信以爲人之親其兄之子、11爲若親其鄰之赤子乎、12彼有取爾也、13赤子匍匐將入井、14非赤子之罪也、15且天之生物也、16使之一本、17而夷子二本故也、
徐子以て夷子に告ぐ、夷子曰く、儒者の道は、古の人は赤子を保(やす)んずるが若し、此言何の謂(いい)ぞ、之(し)則ち以て愛は差等無しと爲す、施すこと親由(よ)り始まる、徐子以て孟子に告ぐ、孟子曰く、夫(かの)夷子信に人の其兄の子を親(あい)すること、其鄰(となり)の赤子を親(あい)する若く爲すと以爲(おも)うか、彼取ること有りて爾(しか)るなり、赤子匍匐(ほふく)し将に井に入らんとす、赤子の罪に非ざるなり、且(また)天の物を生ずるや、之をして本を一にせしむ、而るに夷子本を二にする故なり、

通し番号 322 章内番号 4 章通し番号 51 識別番号 5_5_4
1蓋上世嘗有不葬其親者、2其親死、3則舉而委之於壑、4他日過之、5狐狸食之、6蠅蚋姑嘬之、7其顙有泚、8睨而不視、9夫泚也、10非爲人泚、11中心達於面目、12蓋歸反虆梩而掩之、13掩之誠是也、14則孝子仁人之掩其親、15亦必有道矣、
(蓋)上世嘗て其親葬(ほうむ)らざる者有り、其の親死すれば、則ち挙げて之を壑(みぞ)に委(す)つ、他日之を過ぐ、狐狸(こり)之を食(くら)い、蠅(よう)蚋(ぜい)姑(こ)之を嘬(くら)う、其の顙(ひたい)泚(せい)すること有り、睨(げい)して視ず、夫泚や、人の爲に泚(せい)するに非ず、中心より面目に達す、(蓋)帰り虆梩(らり)を反(くつがえ)して之を掩(おお)う、之を掩(おお)うこと誠に是なら、則ち孝子仁人の其親を掩うこと、亦必ず道有り、

通し番号 323 章内番号 5 章通し番号 51 識別番号 5_5_5
1徐子以告夷子、2夷子憮然爲閒曰、3命之矣、
徐子以て夷子に告ぐ、夷子憮然(ぶぜん)として間を爲して曰く、之(し)に命(おし)えり、


6 滕文公章句下 téng wén gōng zhāng jù xià

章番号 1 章通し番号 52

通し番号 324 章内番号 1 章通し番号 52 識別番号 6_1_1
1陳代曰、2不見諸侯、3宜若小然、4今一見之、5大則以王、6小則以霸、7且志曰、8枉尺而直尋、9宜若可爲也、
陳代(ちんだい)曰く、諸侯に見(まみ)えざるは、宜(ほとんど)小なるが若き然(なり)、今一たび之に見(まみ)えれば、大は則ち以て王たり、小は則ち以て霸たり、且(また)志に曰く、尺を枉(ま)げて尋(じん)を直(なお)くす、宜しく爲すべきが若きなり、

通し番号 325 章内番号 2 章通し番号 52 識別番号 6_1_2
1孟子曰、2昔齊景公田、3招虞人以旌、4不至、5將殺之、6志士不忘在溝壑、7勇士不忘喪其元、8孔子奚取焉、9取非其招不往也、10如不待其招而往、11何哉、
孟子曰く、昔齊の景公田(かり)す、虞人(ぐじん)を招(まね)くに旌(せい)を以てす、至らず、將に之を殺さんとす、志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず、勇士は其元を喪(うしな)うを忘れず、孔子奚(なに)をか取る、其招に非ずして往かざるを取るなり、如(も)し其招を待たずして往けば、何ぞや、

通し番号 326 章内番号 3 章通し番号 52 識別番号 6_1_3
1且夫枉尺而直尋者、2以利言也、3如以利、4則枉尋直尺而利、5亦可爲與、
且(また)夫(それ)尺を枉(ま)げて尋を直(なお)くするは、利以て言うなり、如(も)し利以てすれば、則ち尋を枉(ま)げ尺を直(なお)くして利あらば、亦爲すべきか、

通し番号 327 章内番号 4 章通し番号 52 識別番号 6_1_4
1昔者趙簡子使王良與嬖奚乘、2終日而不獲一禽、3嬖奚反命曰、4天下之賤工也、5或以告王良、6良曰、7請復之、8彊而後可、9一朝而獲十禽、10嬖奚反命曰、11天下之良工也、12簡子曰、13我使掌與女乘、14謂王良、15良不可、16曰、17吾爲之範我馳驅、18終日不獲一、19爲之詭遇、20一朝而獲十、21詩云、22不失其馳、23舍矢如破、24我不貫與小人乘、25請辭、
昔者(むかし)趙簡子は王良をして嬖奚(へいけい)と乗らしむ、終日にして一禽を獲(え)ず、嬖奚反命して曰く、天下の賎工なり、或ひと以て王良に告ぐ、良曰く、請う之を復(また)せん、彊(し)いて後可(き)く、一朝にして十禽を獲る、嬖奚(へいけい)反命して曰く、天下の良工なり、簡子曰く、我女(なんじ)と乗ることを掌(つかさ)どらしむ、王良に謂う、良可(き)かず、曰く、吾之が爲に範して我馳駆(ちく)すれば、終日にして一を獲ず、之が爲に詭遇(きぐう)すれば、一朝にして十を獲る、詩に云う、其馳を失わず、矢を舍(はな)ち破るが如し、我小人と乗ることに貫(な)れず、請う辞せん、

通し番号 328 章内番号 5 章通し番号 52 識別番号 6_1_5
1御者且羞與射者比、2比而得禽獸、3雖若丘陵弗爲也、4如枉道而從彼、5何也、6且子過矣、7枉己者未有能直人者也、
御者且(すら)射る者と比するを羞(は)ず、比(おもね)て禽獣を得ること、丘陵の若きと雖も爲さざるなり、道を枉げて彼に従うが如きは、何ぞや、且(また)子過(あやま)てり、己を枉げる者は未だ能く人を直くすること有らざるなり、


章番号 2 章通し番号 53

通し番号 329 章内番号 1 章通し番号 53 識別番号 6_2_1
1景春曰、2公孫衍、3張儀豈不誠大丈夫哉、4一怒而諸侯懼、5安居而天下熄、
景春曰く、公孫衍(えん)、張儀豈誠の大丈夫ならずや、一たび怒りて諸侯懼(おそ)る、安居して天下熄(や)む、

通し番号 330 章内番号 2 章通し番号 53 識別番号 6_2_2
1孟子曰、2是焉得爲大丈夫乎、3子未學禮乎、4丈夫之冠也、5父命之、6女子之嫁也、7母命之、8往送之門、9戒之曰、10往之女家、11必敬必戒、12無違夫子、13以順爲正者、14妾婦之道也、
孟子曰く、是焉ぞ大丈夫と爲(た)るを得んや、子未だ礼を学ばざるか、丈夫の冠するや、父之を命ず、女子の嫁するや、母之に命ず、往きて之を門に送る、之を戒(いまし)めて曰く、往きて女(なんじ)の家に之(ゆ)き、必ず敬(うやま)い必ず戒(つつし)み、夫子に違うこと無かれ、順以て正と爲すものは、妾婦の道なり、

通し番号 331 章内番号 3 章通し番号 53 識別番号 6_2_3
1居天下之廣居、2立天下之正位、3行天下之大道、4得志與民由之、5不得志獨行其道、6富貴不能淫、7貧賤不能移、8威武不能屈、9此之謂大丈夫、
天下の広居に居り、天下の正位に立ち、天下の大道を行う、志を得れば民と之に由る、志を得ざれば独り其道を行う、富貴淫(うご)かすこと能わず、貧賤移すこと能わず、威武屈すること能わず、此を之大丈夫と謂う、


章番号 3 章通し番号 54

通し番号 332 章内番号 1 章通し番号 54 識別番号 6_3_1
1周霄問曰、2古之君子仕乎、3孟子曰、4仕、5傳曰、6孔子三月無君、7則皇皇如也、8出疆必載質、9公明儀曰、10古之人三月無君則弔、
周霄(しょう)問いて曰く、古の君子仕えるか、孟子曰く、仕える、伝に曰く、孔子三月君無ければ、則ち皇皇如たり、疆(きょう)を出ずれば必ず質(し)を載(の)す、公明儀曰く、古の人三月君無ければ則ち弔す、

通し番号 333 章内番号 2 章通し番号 54 識別番号 6_3_2
1三月無君則弔、2不以急乎、
三月君無ければ則ち弔す、以(はなは)だ急ならざるか、

通し番号 334 章内番号 3 章通し番号 54 識別番号 6_3_3
1曰、2士之失位也、3猶諸侯之失國家也、4禮曰、5諸侯耕助、6以供粢盛、7夫人蠶繅、8以爲衣服、9犧牲不成、10粢盛不潔、11衣服不備、12不敢以祭、13惟士無田、14則亦不祭、15牲殺器皿衣服不備、16不敢以祭、17則不敢以宴、18亦不足弔乎、
曰く、士の位を失うや、猶諸侯の国家を失うがごときなり、礼に曰く、諸侯耕助(こうじょ)し、以て粢盛(しせい)に供す、夫人蚕繅(さんそう)し、以て衣服を爲(つく)る、犧牲成らず、粢盛潔(きよ)からず、衣服備わざれば、敢て以て祭らず、惟(これ)士田無ければ、則ち亦祭らず、牲殺器皿(べい)衣服備らざれば、敢て以て祭らず、則ち敢て以て宴せず、亦弔するに足らざるか、

通し番号 335 章内番号 4 章通し番号 54 識別番号 6_3_4
1出疆必載質、2何也、
疆(きょう)を出ずれば必ず質(し)を載(の)すは、何ぞや、

通し番号 336 章内番号 5 章通し番号 54 識別番号 6_3_5
1曰、2士之仕也、3猶農夫之耕也、4農夫豈爲出疆舍其耒耜哉、
曰く、士の仕えるや、猶農夫の耕すがごときなり、農夫豈疆を出る爲に其耒耜(らいし)を舍(す)てんや、

通し番号 337 章内番号 6 章通し番号 54 識別番号 6_3_6
1曰、2晉國亦仕國也、3未嘗聞仕如此其急、4仕如此其急也、5君子之難仕、6何也、7曰、8丈夫生而願爲之有室、9女子生而願爲之有家、10父母之心、11人皆有之、12不待父母之命、13媒妁之言、14鑽穴隙相窺、15踰牆相從、16則父母國人皆賤之、17古之人未嘗不欲仕也、18又惡不由其道、19不由其道而往者、20與鑽穴隙之類也、
曰く、晋国亦仕国なり、未だ嘗て仕えるこ此の如く其急なるを聞かず、仕えること此の如く其急なり、君子の仕え難きは、何ぞや、曰く、丈夫生まれて之が爲に室有るを願う、女子生まれて之が爲に家有るを願う、父母の心、人皆之有り、父母の命、媒妁の言を待たずして、穴隙(けつげき)を鑽(き)り相窺(うかが)う、牆(かき)を踰(こ)え相従う、則ち父母国人皆之を賎(いやし)む、古の人未だ嘗て仕えることを欲せずんばあらざるなり、又其道に由らざるを悪(にく)む、其道に由らずして往く者は、穴隙を鑽(き)ると之類なり、


章番号 4 章通し番号 55

通し番号 338 章内番号 1 章通し番号 55 識別番号 6_4_1
1彭更問曰、2後車數十乘、3從者數百人、4以傳食於諸侯、5不以泰乎、6孟子曰、7非其道、8則一簞食不可受於人、9如其道、10則舜受堯之天下、11不以爲泰、12子以爲泰乎、
彭更(ほうこう)問いて曰く、後車数十乗、従者数百人、以て伝(うつ)りて諸侯に食す、以(はなは)だ泰(おご)らずや、孟子曰く、其道に非ざれば、則ち一簞(たん)の食(し)人に受くべからず、如(も)し其道ならば、則ち舜が堯の天下を受くるは、以て泰(おご)ると爲さず、子以て泰ると爲すか、

通し番号 339 章内番号 2 章通し番号 55 識別番号 6_4_2
1曰、2否、3士無事而食、4不可也、
曰く、否、士事えること無くて食するは、不可なり、

通し番号 340 章内番号 3 章通し番号 55 識別番号 6_4_3
1曰、2子不通功易事、3以羡補不足、4則農有餘粟、5女有餘布、6子如通之、7則梓匠輪輿皆得食於子、8於此有人焉、9入則孝、10出則悌、11守先王之道、12以待後之學者、13而不得食於子、14子何尊梓匠輪輿、15而輕爲仁義者哉、
曰、子が功を通じ事を易え、羡(あま)りを以て不足を補わざれば、則ち農余粟(ぞく)有り、女余布有り、子が如(も)し之を通ずれば、則ち梓匠(ししょう)輪輿(りんよ)皆食を子に得る、此に人有り、入れば則ち孝、出ずれば則ち悌(てい)、先王の道を守り、以て後の学ぶ者を待つ、而るに食を子に得ざれば、子何ぞ梓匠輪輿を尊(たっと)びて、仁義を爲す者を軽んずるや、

通し番号 341 章内番号 4 章通し番号 55 識別番号 6_4_4
1曰、2梓匠輪輿、3其志將以求食也、4君子之爲道也、5其志亦將以求食與、6曰、7子何以其志爲哉、8其有功於子、9可食而食之矣、10且子食志乎、11食功乎、12曰、13食志、
曰く、梓匠輪輿は、其志将に以て食を求めんとするなり、君子の道を爲すや、其志は亦将に以て食を求めんとするか、曰く、子何ぞ其志を以て爲すや、其(そ)の子(し)に功有れば、食(やしな)うべくして之を食(やしな)う、且(また)子志を食(やしな)うか、功を食(やしな)うか、曰く、志を食(やしな)う、

通し番号 342 章内番号 5 章通し番号 55 識別番号 6_4_5
1曰、2有人於此、3毀瓦畫墁、4其志將以求食也、5則子食之乎、6曰、7否、8曰、9然則子非食志也、10食功也、
曰く、人此に有り、瓦するに毀(やぶ)り墁(まん)するに画す、其志将に以て食を求めんとするなり、則ち子之を食(やしな)うか、曰く、否、曰く、然らば則ち子は志を食(やしな)うに非ざるなり、功を食(やしな)うなり、


章番号 5 章通し番号 56

通し番号 343 章内番号 1 章通し番号 56 識別番号 6_5_1
1萬章問曰、2宋小國也、3今將行王政、4齊楚惡而伐之、5則如之何、
万章問いて曰く、宋は小国なり、今将に王政を行わんとす、斉楚悪みて之を伐てば、則ち之を如何(いかん)、

通し番号 344 章内番号 2 章通し番号 56 識別番号 6_5_2
1孟子曰、2湯居亳、3與葛爲鄰、4葛伯放而不祀、5湯使人問之曰、6何爲不祀、7曰、8無以供犧牲也、9湯使遺之牛羊、10葛伯食之、11又不以祀、12湯又使人問之曰、13何爲不祀、14曰、15無以供粢盛也、16湯使亳衆往爲之耕、17老弱饋食、18葛伯率其民、19要其有酒食黍稻者奪之、20不授者殺之、21有童子、22以黍肉餉、23殺而奪之、24書曰、25葛伯仇餉、26此之謂也、
孟子曰く、湯は亳(はく)に居り、葛(かつ)と鄰爲(た)り、葛伯は放(ほしいまま)にして祀(まつ)らず、湯は人をして之に問わしめて曰く、何爲(なんす)れぞ祀らざる、曰く、以て犧牲に供する無きなり、湯之に牛羊を遺(おく)らしむ、葛伯之を食べる、又以て祀(まつ)らず、湯又人をして之に問わしめて曰く、何爲(なんす)れぞ祀らざる、曰く、以て粢盛(しせい)に供する無きなり、湯亳の衆をして往きて之が爲に耕やしめ、老弱をして食を饋(おく)らしむ、葛伯其民を率い、其酒食黍稲(しょとう)有る者を要(おびやか)し之を奪う、授(あた)えざる者は之を殺す、童子(どうし)有り、黍(しょ)肉以て餉(おく)る、殺して之を奪う、書に曰く、葛伯は餉(しょう)を仇(かたき)とする、此を之謂うなり、

通し番号 345 章内番号 3 章通し番号 56 識別番号 6_5_3
1爲其殺是童子而征之、2四海之内皆曰、3非富天下也、4爲匹夫匹婦復讎也、
其(その)是(この)童子を殺す爲にして之を征す、四海の内皆曰く、天下を富とするに非ざるなり、匹夫匹婦の爲に讎(あだ)に復(むく)いるなり、

通し番号 346 章内番号 4 章通し番号 56 識別番号 6_5_4
1湯始征、2自葛載、3十一征而無敵於天下、4東面而征、5西夷怨、6南面而征、7北狄怨、8曰、9奚爲後我、10民之望之、11若大旱之望雨也、12歸市者弗止、13芸者不變、14誅其君、15弔其民、16如時雨降、17民大悅、18書曰、19徯我后、20后來其無罰、
湯始めて征すること、葛自(よ)り載(はじ)む、十一征して天下に敵無し、東面して征すれば、西夷怨む、南面して征すれば、北狄(てき)怨む、曰く、奚爲(なんす)れぞ我を後にする、民の之を望むこと、大旱(たいかん)の雨を望むが若きなり、市に帰(ゆ)く者止(と)まらず、芸(くさぎ)る者変(うご)かず、其君を誅して其民を弔(あわ)れむ、時雨の降るが如し、民大いに悦ぶ、書に曰く、我が后(きみ)を徯(ま)つ、后(きみ)来たらば其罰無からん、

通し番号 347 章内番号 5 章通し番号 56 識別番号 6_5_5
1有攸不爲臣、2東征綏厥士女、3匪厥玄黄、4紹我周王見休、5惟臣附于大邑周、6其君子實玄黄于匪、7以迎其君子、8其小人簞食壺漿、9以迎其小人、10救民於水火之中、11取其殘而已矣、
臣と爲らざる攸(ところ)有り、東征し厥(その)士女を綏(やす)んず、厥(その)玄黄(げんこう)を匪(はこ)にし、我が周王に紹(つか)え休(よ)きを見る、惟(これ)大邑周に臣附す、其君子玄黄を匪(はこ)に実(み)たし、以て其君子を迎う、其小人食(し)を簞(たん)し漿(しょう)を壺(こ)して、以て其小人を迎う、民を水火の中に救い、其残(そこな)うものを取るのみ、

通し番号 348 章内番号 6 章通し番号 56 識別番号 6_5_6
1太誓曰、2我武惟揚、3侵于之疆、4則取于殘、5殺伐用張、6于湯有光、
太誓(たいせい)に曰く、我(わが)武惟(これ)揚(あが)り、之が疆(さかい)を侵す、則ち残を取り、殺伐し用(もっ)て張る、湯于(より)光有り、

通し番号 349 章内番号 7 章通し番号 56 識別番号 6_5_7
1不行王政云爾、2苟行王政、3四海之内皆舉首而望之、4欲以爲君、5齊、6楚雖大、7何畏焉、
王政を行わず(云爾)、苟(もし)王政を行わば、四海の内皆首(あたま)を挙げて之を望み、以て君と爲さんと欲す、斉、楚大と雖も、何ぞ畏れん、


章番号 6 章通し番号 57

通し番号 350 章内番号 1 章通し番号 57 識別番号 6_6_1
1孟子謂戴不勝曰、2子欲子之王之善與、3我明告子、4有楚大夫於此、5欲其子之齊語也、6則使齊人傅諸、7使楚人傅諸、8曰、9使齊人傅之、10曰、11一齊人傅之、12衆楚人咻之、13雖日撻而求其齊也、14不可得矣、15引而置之莊嶽之閒數年、16雖日撻而求其楚、17亦不可得矣、
孟子は戴不勝(たいふしょう)に謂いて曰く、子は子の王の善を欲するか、我明かに子に告げん、此に楚の大夫有り、其子の斉語を欲するや、則ち斉人をして諸に傅(おし)えしむか、楚人をして諸に傅(おし)えしむか、曰く、斉人をして之に傅(おし)えしむ、曰く、一斉人之に傅(おし)う、衆(おお)くの楚人之に咻(かまび)すし、日に撻(むちう)ちて其斉を求めると雖も、得べからず、引きて之を荘嶽(がく)の間(あいだ)に置くこと数年、日に撻(むちう)ちて其楚を求めると雖も、亦得べからず、

通し番号 351 章内番号 2 章通し番号 57 識別番号 6_6_2
1子謂薛居州善士也、2使之居於王所、3在於王所者、4長幼卑尊、5皆薛居州也、6王誰與爲不善、7在王所者、8長幼卑尊、9皆非薛居州也、10王誰與爲善、11一薛居州、12獨如宋王何、
子は薛居州(せつきょしゅう)を善士と謂うなり、之をして王の所に居らしむ、王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州なるや、王誰と与(とも)に不善を爲さん、王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州に非ざるや、王誰と与(とも)に善を爲さん、一の薛居州、独り宋王を如何(いかん)せん、


章番号 7 章通し番号 58

通し番号 352 章内番号 1 章通し番号 58 識別番号 6_7_1
1公孫丑問曰、2不見諸侯何義、3孟子曰、4古者不爲臣不見、
公孫丑問いて曰く、諸侯に見(まみ)えざるは何の義ぞ、孟子曰く、古は臣爲(た)らざれば見(まみ)えず、

通し番号 353 章内番号 2 章通し番号 58 識別番号 6_7_2
1段干木踰垣而辟之、2泄柳閉門而不内、3是皆已甚、4迫斯可以見矣、
段干木は垣を踰えて之を辟(さ)く、泄柳(せつりゅう)は門を閉じて内(い)れず、是れ皆已甚(はなは)だし、迫らば斯(すなわ)ち以て見(まみ)えるべし、

通し番号 354 章内番号 3 章通し番号 58 識別番号 6_7_3
1陽貨欲見孔子、2而惡無禮、3大夫有賜於士、4不得受於其家、5則往拜其門、6陽貨矙孔子之亡也、7而饋孔子蒸豚、8孔子亦矙其亡也、9而往拜之、10當是時、11陽貨先、12豈得不見、
陽貨孔子に見(あ)わんと欲して、礼無きことを悪(にく)む、大夫士に賜(たま)うこと有り、其家に受くることを得ざれば、則ち往きて其門に拝す、陽貨孔子の亡(な)きを矙(うかが)いて孔子に蒸豚(むしぶた)を饋(おく)る、孔子亦其亡(な)きを矙(うかが)いて、往きて之を拝す、是時に当り、陽貨先なり、豈見(あ)わざるを得んや、

通し番号 355 章内番号 4 章通し番号 58 識別番号 6_7_4
1曾子曰、2脅肩諂笑、3病于夏畦、4子路曰、5未同而言、6觀其色赧赧然、7非由之所知也、8由是觀之、9則君子之所養、10可知已矣、
曽子曰く、肩を脅(すぼ)め諂(へつら)い笑うは、夏畦(けい)于(より)病(つか)れる、子路曰く、未だ同じからずして言う、其色を観るに赧赧然(たんたんぜん)たり、由(ゆう)の知る所に非ざるなり、是に由りて之を観れば、則ち君子の養う所、知るべきのみ


章番号 8 章通し番号 59

通し番号 356 章内番号 1 章通し番号 59 識別番号 6_8_1
1戴盈之曰、2什一、3去關市之征、4今茲未能、5請輕之、6以待來年、7然後已、8何如、
戴盈之(たいえいし)曰く、什一にして、関市の征を去るは、今茲(きんじ)未だ能わず、請う、之を軽くし、以て来年を待ち、然る後已(や)む、何如(いかん)、

通し番号 357 章内番号 2 章通し番号 59 識別番号 6_8_2
1孟子曰、2今有人日攘其鄰之雞者、3或告之曰、4是非君子之道、5曰、6請損之、7月攘一雞、8以待來年、9然後已、
孟子曰く、今、人日に其鄰の雞(けい)を攘(ぬす)む者有り、或ひと之に告げて曰く、是れ君子の道に非ず、曰く、請う、之を損し、月に一雞を攘み、以て来年を待ち、然る後已(や)めん、

通し番号 358 章内番号 3 章通し番号 59 識別番号 6_8_3
1如知其非義、2斯速已矣、3何待來年、
如(も)し其義に非ざるを知れば、斯(すなわ)ち速(すみやか)に已(や)む、何ぞ来年を待たん、


章番号 9 章通し番号 60

通し番号 359 章内番号 1 章通し番号 60 識別番号 6_9_1
1公都子曰、2外人皆稱夫子好辯、3敢問何也、4孟子曰、5予豈好辯哉、6予不得已也、7天下之生久矣、8一治一亂、
公都子曰く、外人皆夫子(ふうし)弁(べん)を好むと称(い)う、敢えて問う何ぞや、孟子曰く、予(われ)豈弁を好まんや、予已(や)むを得ざるなり、天下の生久し、一たびは治まり一たびは乱る、

通し番号 360 章内番号 2 章通し番号 60 識別番号 6_9_2
1當堯之時、2水逆行、3氾濫於中國、4蛇龍居之、5民無所定、6下者爲巣、7上者爲營窟、8書曰、9洚水警余、10洚水者、11洪水也、
堯の時に当り、水逆行し、中国に氾濫す、蛇(だ)龍之に居る、民定まる所無し、下は巣を爲(つく)り、上は営窟(えいくつ)を爲(つく)る、書に曰く、洚水(こうすい)余(われ)を警(いまし)む、洚水は、洪水なり、

通し番号 361 章内番号 3 章通し番号 60 識別番号 6_9_3
1使禹治之、2禹掘地而注之海、3驅蛇龍而放之菹、4水由地中行、5江、6淮、7河、8漢是也、9險阻旣遠、10鳥獸之害人者消、11然後人得平土而居之、
禹をして之を治めしむ、禹は地を掘りて之を海に注ぐ、蛇龍を駆りて之を菹(そ)に放つ、水地中に由(よ)り行く、江、淮(わい)、河(か)、漢是れなり、険阻既に遠ざかる、鳥獣の人を害するもの消える、然る後人平土を得て之に居る、

通し番号 362 章内番号 4 章通し番号 60 識別番号 6_9_4
1堯舜旣沒、2聖人之道衰、3暴君代作、4壞宮室以爲汙池、5民無所安息、6棄田以爲園囿、7使民不得衣食、8邪說暴行又作、9園囿汙池沛澤多、10而禽獸至、11及紂之身、12天下又大亂、
堯舜既に没す、聖人の道衰える、暴君代(かわるがわる)作(おこ)る、宮室を壊し以て汙池(おち)と爲す、民安息する所無し、田を棄て以て園囿(えんゆう)と爲す、民をして衣食を得ざらしむ、邪説暴行又作(おこ)る、園囿汙池沛沢多し、而して禽獸至る、紂の身に及び、天下又大いに乱る、

通し番号 363 章内番号 5 章通し番号 60 識別番号 6_9_5
1周公相武王誅紂、2伐奄、3三年討其君、4驅飛廉於海隅而戮之、5滅國者五十、6驅虎豹犀象而遠之、7天下大悅、8書曰、9丕顯哉文王謨、10丕承哉武王烈、11佑啓我後人、12咸以正無缺、
周公武王を相(たす)け紂を誅(ちゅう)す、奄(えん)を伐つ、三年にして其君を討つ、飛廉(ひれん)を海隅に駆りて之を戮(りく)す、国を滅すもの五十、虎豹犀象を駆りて之を遠ざく、天下大いに悦ぶ、書に曰く、丕(おお)いに顯(あきら)かなるかな文王の謨(はかりごと)、丕(おお)いに承(う)くるかな武王の烈、我が後人を佑(たす)け啓(ひら)き、咸(みな)正を以てし欠くること無し、

通し番号 364 章内番号 6 章通し番号 60 識別番号 6_9_6
1世衰道微、2邪說暴行有作、3臣弑其君者有之、4子弑其父者有之、
世衰え道微にして、邪說暴行有(また)作(おこ)る、臣其君を弑(しい)する者之有り、子其父を弑する者之有り、

通し番号 365 章内番号 7 章通し番号 60 識別番号 6_9_7
1孔子懼作春秋、2春秋天子之事也、3是故孔子曰、4知我者其惟春秋乎、5罪我者其惟春秋乎、
孔子懼れて春秋を作る、春秋は天子の事なり、是故に孔子曰く、我を知る者は其れ惟(ただ)春秋か、我を罪(つみ)する者は其れ惟春秋か、

通し番号 366 章内番号 8 章通し番号 60 識別番号 6_9_8
1聖王不作、2諸侯放恣、3處士橫議、4楊朱、5墨翟之言盈天下、6天下之言、7不歸楊則歸墨、8楊氏爲我、9是無君也、10墨氏兼愛、11是無父也、12無父無君、13是禽獸也、14公明儀曰、15庖有肥肉、16廏有肥馬、17民有飢色、18野有餓莩、19此率獸而食人也、20楊墨之道不息、21孔子之道不著、22是邪說誣民、23充塞仁義也、24仁義充塞、25則率獸食人、26人將相食、
聖王作(おこ)らず、諸侯放恣(ほうし)、処士(しょし)横議す、楊朱、墨翟(ぼくてき)の言天下に盈(み)つ、天下の言、楊に帰せざれば則ち墨に帰す、楊氏は我が爲にす、是れ君無きなり、墨氏は兼愛す、是れ父無きなり、父無く君無し、是れ禽獣なり、公明儀曰く、庖に肥肉有り、廏(きゅう)に肥馬有り、民に飢色有り、野に餓莩(がひょう)有り、此は獣を率いて人を食べるなり、楊墨の道息(や)まず、孔子の道著(あきら)かならず、是れ邪説民を誣(あざむ)き、仁義を充塞するなり、仁義充塞すれば、則ち獣を率い人を食べる、人将に相食べんとす、

通し番号 367 章内番号 9 章通し番号 60 識別番号 6_9_9
1吾爲此懼、2閑先聖之道、3距楊墨、4放淫辭、5邪說者不得作、6作於其心、7害於其事、8作於其事、9害於其政、10聖人復起、11不易吾言矣、
吾此が爲に懼れ、先聖の道を閑(まも)り、楊墨を距(ふせ)ぎ、淫辞を放つ、邪説は作(おこ)ることを得ず、其心に作(お)これば、其事に害あり、其事に作(おこ)れば、其政に害あり、聖人復(また)起これば、吾言を易(か)えず、

通し番号 368 章内番号 10 章通し番号 60 識別番号 6_9_10
1昔者禹抑洪水、2而天下平、3周公兼夷狄、4驅猛獸、5而百姓寧、6孔子成春秋、7而亂臣賊子懼、
昔者(むかし)禹洪水を抑(おさ)えて、天下平かなり、周公夷狄を兼(あわ)せ、猛獣を駆りて、百姓寧(やすら)かなり、孔子春秋を成(な)して、乱臣賊子懼る、

通し番号 369 章内番号 11 章通し番号 60 識別番号 6_9_11
1詩云、2戎狄是膺、3荊舒是懲、4則莫我敢承、5無父無君、6是周公所膺也、
詩に云う、戎狄(じゅうてき)是れ膺(う)ち、荊(けい)舒(じょ)是れ懲(こら)す、則ち我に敢て承(あた)ること莫し、父無し、君無しは、是れ周公膺(う)つ所なり、

通し番号 370 章内番号 12 章通し番号 60 識別番号 6_9_12
1我亦欲正人心、2息邪說、3距詖行、4放淫辭、5以承三聖者、6豈好辯哉、7予不得已也、
我亦人の心を正し、邪説を息(や)め、詖行(ひこう)を距(ふせ)ぎ、淫辞を放(はな)ち、以て三聖者を承(つ)がんと欲す、豈弁を好まんや、予已(や)むを得ざるなり、

通し番号 371 章内番号 13 章通し番号 60 識別番号 6_9_13
1能言距楊墨者、2聖人之徒也、
能く言いて楊墨を距(ふせ)ぐ者は、聖人の徒なり、


章番号 10 章通し番号 61

通し番号 372 章内番号 1 章通し番号 61 識別番号 6_10_1
1匡章曰、2陳仲子豈不誠廉士哉、3居於陵、4三日不食、5耳無聞、6目無見也、7井上有李、8螬食實者過半矣、9匍匐往將食之、10三咽、11然後耳有聞、12目有見、
匡章(きょうしょう)曰く、陳仲子は豈誠の廉士ならずや、於陵(おりょう)に居り、三日食せず、耳聞くこと無く、目見ること無きなり、井上に李(り)有り、螬(そう)実を食うもの半(なかば)に過ぐ、匍匐(ほふく)して往き将(と)りて之を食べる、三たび咽(の)みて、然る後耳聞くこと有り、目見ること有り、

通し番号 373 章内番号 2 章通し番号 61 識別番号 6_10_2
1孟子曰、2於齊國之士、3吾必以仲子爲巨擘焉、4雖然、5仲子惡能廉、6充仲子之操、7則蚓而後可者也、
孟子曰く、斉国の士に於て、吾必ず仲子以て巨擘(きょはく)と爲す、然りと雖も、仲子悪(いずく)んぞ能く廉ならん、仲子の操を充(み)たせば、則ち蚓(いん)にして後可なるものなり、

通し番号 374 章内番号 3 章通し番号 61 識別番号 6_10_3
1夫蚓、2上食槁壤、3下飮黄泉、4仲子所居之室、5伯夷之所築與、6抑亦盜跖之所築與、7所食之粟、8伯夷之所樹與、9抑亦盜跖之所樹與、10是未可知也、
夫(それ)蚓は、上は槁壤(こうじょう)を食べ、下は黄泉(こうせん)を飮む、仲子居る所の室、伯夷の築(きず)く所か、抑(ある)いは亦盜跖(とうせき)の築く所か、食べる所の粟、伯夷の樹(う)える所か、抑(あるい)は亦盜跖の樹える所か、是れ未だ知るべからざるなり、

通し番号 375 章内番号 4 章通し番号 61 識別番号 6_10_4
1曰、2是何傷哉、3彼身織屨、4妻辟纑、5以易之也、
曰、是れ何ぞ傷(そこな)わんや、彼は身(みずか)ら屨(くつ)を織(お)り、妻は纑(ろ)を辟(へき)して、以て之に易(か)えるなり、

通し番号 376 章内番号 5 章通し番号 61 識別番号 6_10_5
1曰、2仲子齊之世家也、3兄戴、4蓋祿萬鍾、5以兄之祿爲不義之祿而不食也、6以兄之室爲不義之室而不居也、7辟兄離母、8處於於陵、9他日歸、10則有饋其兄生鵝者、11己頻顣曰、12惡用是鶃鶃者爲哉、13他日其母殺是鵝也、14與之食之、15其兄自外至曰、16是鶃鶃之肉也、17出而哇之、
曰く、仲子斉の世家なり、兄戴(たい)、蓋(こう)の禄万鍾なり、兄の禄以て不義の禄と爲して食さざるなり、兄の室以て不義の室と爲して居らざるなり、兄を辟(さ)け母を離れ、於陵に処(お)る、他日帰れば、則ち其兄に生鵝(が)を饋(おく)る者有り、己(おのれ)頻顣(ひんしゅく)して曰く、悪ぞ是(この)鶃鶃(ぎつぎつ)なるものを用いることを爲さんや、他日其母是鵝を殺すなり、之に与えれば之を食す、其兄外自(よ)り至りて曰く、是れ鶃鶃(ぎつぎつ)の肉なり、出でて之を哇(は)く、

通し番号 377 章内番号 6 章通し番号 61 識別番号 6_10_6
1以母則不食、2以妻則食之、3以兄之室則弗居、4以於陵則居之、5是尙爲能充其類也乎、6若仲子者、7蚓而後充其操者也、
母以てすれば則ち食せず、妻以てすれば則ち之を食す、兄の室以てすれば則ち居らず、於陵以てすれば則ち之に居る、是れ尚(なお)能く其類を充(み)たすと爲すか、仲子の若き者は、蚓にして後其操を充(み)たす者なり、


7 離婁章句上 lí lóu zhāng jù shàng

章番号 1 章通し番号 62

通し番号 378 章内番号 1 章通し番号 62 識別番号 7_1_1
1孟子曰、2離婁之明、3公輸子之巧、4不以規矩、5不能成方員、6師曠之聰、7不以六律、8不能正五音、9堯舜之道、10不以仁政、11不能平治天下、
孟子曰く、離婁(りろう)の明、公輸子の巧、規矩(きく)以てせざれば、方員(えん)を成すこと能わず、師曠(しこう)の聡(そう)、六律以てせざれば、五音(ごいん)を正すこと能わず、堯舜の道は、仁政以てせざれば、天下を平治すること能わず

通し番号 379 章内番号 2 章通し番号 62 識別番号 7_1_2
1今有仁心仁聞、2而民不被其澤、3不可法於後世者、4不行先王之道也、
今仁心仁聞有り、而るに民其沢を被(こうむ)らず、後世に於て法とすべからざるは、先王の道を行わざるなり、

通し番号 380 章内番号 3 章通し番号 62 識別番号 7_1_3
1故曰、2徒善不足以爲政、3徒法不能以自行、
故に曰く、徒善(とぜん)は以て政を爲すに足らず、徒法は以て自ずから行うこと能わず、

通し番号 381 章内番号 4 章通し番号 62 識別番号 7_1_4
1詩云、2不愆不忘、3率由舊章、4遵先王之法而過者、5未之有也、
詩に云う、愆(あやま)らず忘れず、旧章に率(したが)い由(よ)る、先王の法に遵(したが)いて過(あやま)つ者は、未だ之有らざるなり、

通し番号 382 章内番号 5 章通し番号 62 識別番号 7_1_5
1聖人旣竭目力焉、2繼之以規矩準繩、3以爲方員平直、4不可勝用也、5旣竭耳力焉、6繼之以六律、7正五音、8不可勝用也、9旣竭心思焉、10繼之以不忍人之政、11而仁覆天下矣、
聖人既に目力を竭(つく)し、之に継(つ)ぐに規矩準縄(じょう)を以て、以て方員(えん)平直を爲(つく)れば、勝(あ)げて用うべからざるなり、既に耳力を竭(つく)し、之に継(つ)ぐに六律を以て、五音を正せば、勝(あ)げて用うべからざるなり、既に心思を竭(つく)し、之に継(つ)ぐに人に忍(しの)びざるの政を以てす、而して仁天下を覆(おお)う、

通し番号 383 章内番号 6 章通し番号 62 識別番号 7_1_6
1故曰、2爲高必因丘陵、3爲下必因川澤、4爲政不因先王之道、5可謂智乎、
故に曰く、高きを爲(つく)るは必ず丘陵に因る、下(ひく)きを爲(つく)るは必ず川沢に因る、政を爲すに先王の道に因らざれば、智と謂うべけんや(乎)、

通し番号 384 章内番号 7 章通し番号 62 識別番号 7_1_7
1是以惟仁者宜在高位、2不仁而在高位、3是播其惡於衆也、
是を以て惟(ただ)仁者宜(よろ)しく高位に在るべし、不仁にして高位に在るは、是れ其悪を衆に播(ま)くなり、

通し番号 385 章内番号 8 章通し番号 62 識別番号 7_1_8
1上無道揆也、2下無法守也、3朝不信道、4工不信度、5君子犯義、6小人犯刑、7國之所存者幸也、
上は道揆(き)無きなり、下は法守無きなり、朝は道を信ぜず、工は度を信ぜず、君子は義を犯し、小人は刑を犯して、国の存する所は幸いなり、

通し番号 386 章内番号 9 章通し番号 62 識別番号 7_1_9
1故曰、2城郭不完、3兵甲不多、4非國之災也、5田野不辟、6貨財不聚、7非國之害也、8上無禮、9下無學、10賊民興、11喪無日矣、
故に曰く、城郭(じょうかく)完(まった)からず、兵甲多からざるは、国の災(わざわい)に非ざるなり、田野辟(ひら)けず、貨財聚(あつ)まらざるは、国の害に非ざるなり、上は礼が無く、下は学ぶことが無ければ、賊民興り、喪(ほろ)ぶこと日無し、

通し番号 387 章内番号 10 章通し番号 62 識別番号 7_1_10
1詩曰、2天之方蹶、3無然泄泄、
詩に曰う、天の方(まさ)に蹶(くつがえ)らんとす、然(しか)く泄泄(えいえい)とすること無かれ、

通し番号 388 章内番号 11 章通し番号 62 識別番号 7_1_11
1泄泄、2猶沓沓也、
泄泄(えいえい)、猶沓沓(とうとう)のごときなり、

通し番号 389 章内番号 12 章通し番号 62 識別番号 7_1_12
1事君無義、2進退無禮、3言則非先王之道者、4猶沓沓也、
君に事(つか)え義無し、進退礼無し、言えば則ち先王の道を非(そし)る者は、猶沓沓(とうとう)のごときなり、

通し番号 390 章内番号 13 章通し番号 62 識別番号 7_1_13
1故曰、2責難於君、3謂之恭、4陳善閉邪、5謂之敬、6吾君不能、7謂之賊、
故に曰く、難を君に責めるは、之を恭と謂う、善を陳(の)べ邪を閉ずるは、之を敬と謂う、吾君能わずというは、之を賊と謂う、


章番号 2 章通し番号 63

通し番号 391 章内番号 1 章通し番号 63 識別番号 7_2_1
1孟子曰、2規矩、3方員之至也、4聖人、5人倫之至也、
孟子曰く、規矩は、方員(えん)の至りなり、聖人は、人倫の至りなり、

通し番号 392 章内番号 2 章通し番号 63 識別番号 7_2_2
1欲爲君盡君道、2欲爲臣盡臣道、3二者皆法堯舜而已矣、4不以舜之所以事堯事君、5不敬其君者也、6不以堯之所以治民治民、7賊其民者也、
君爲(た)るを欲せば君の道を尽す、臣爲(た)るを欲せば臣の道を尽す、二なるものは皆堯舜に法(のっと)るのみ、舜の以て堯に事(つか)える所を以て君に事(つか)えざるは、其君を敬せざる者なり、堯の以て民を治める所を以て民を治めざるは、其民を賊(そこな)う者なり、

通し番号 393 章内番号 3 章通し番号 63 識別番号 7_2_3
1孔子曰、2道二、3仁與不仁而已矣、
孔子曰く、道は二、仁と不仁のみ、

通し番号 394 章内番号 4 章通し番号 63 識別番号 7_2_4
1暴其民甚、2則身弑國亡、3不甚、4則身危國削、5名之曰幽厲、6雖孝子慈孫、7百世不能改也、
其民を暴(そこな)うこと甚しければ、則ち身弑(しい)せられ国亡ぶ、甚しからざれば、則ち身危うく国削(けず)らる、之を名づけて幽(ゆう)厲(れい)と曰う、孝子慈孫と雖も、百世改めること能わざるなり、

通し番号 395 章内番号 5 章通し番号 63 識別番号 7_2_5
1詩云、2殷鑒不遠、3在夏后之世、4此之謂也、
詩に云う、殷鑒(かん)遠からず、夏后の世に在り、此を之謂うなり、


章番号 3 章通し番号 64

通し番号 396 章内番号 1 章通し番号 64 識別番号 7_3_1
1孟子曰、2三代之得天下也、3以仁、4其失天下也、5以不仁、
孟子曰く、三代の天下を得るや、仁を以てす、其天下を失うや、不仁を以てす、

通し番号 397 章内番号 2 章通し番号 64 識別番号 7_3_2
1國之所以廢興存亡者亦然、
国の廃興存亡する所以のもの亦然り、

通し番号 398 章内番号 3 章通し番号 64 識別番号 7_3_3
1天子不仁、2不保四海、3諸侯不仁、4不保社稷、5卿大夫不仁、6不保宗廟、7士庶人不仁、8不保四體、
天子不仁なれば、四海を保たず、諸侯不仁なれば、社稷を保たず、卿大夫不仁なれば、宗廟を保たず、士庶人不仁なれば、四体を保たず、

通し番号 399 章内番号 4 章通し番号 64 識別番号 7_3_4
1今惡死亡而樂不仁、2是猶惡醉而強酒、
今死亡を悪(にく)みて不仁を楽しむ、是れ猶醉を悪(にく)みて酒を強いるがごとし、


章番号 4 章通し番号 65

通し番号 400 章内番号 1 章通し番号 65 識別番号 7_4_1
1孟子曰、2愛人不親、3反其仁、4治人不治、5反其智、6禮人不答、7反其敬、
孟子曰く、人を愛して親(あい)さざれば、其仁に反(かえ)る、人を治めて治まらざれば、其智に反る、人を礼して答えざれば、其敬に反る、

通し番号 401 章内番号 2 章通し番号 65 識別番号 7_4_2
1行有不得者、2皆反求諸己、3其身正而天下歸之、
行いて得ざるもの有れば、皆諸(これ)を己に反り求む、其身正しくして天下之に帰す、

通し番号 402 章内番号 3 章通し番号 65 識別番号 7_4_3
1詩云、2永言配命、3自求多福、
詩に云う、永(なが)く言(おも)い命に配(あ)う、自ら多福を求む、


章番号 5 章通し番号 66

通し番号 403 章内番号 1 章通し番号 66 識別番号 7_5_1
1孟子曰、2人有恆言、3皆曰、4天下國家、5天下之本在國、6國之本在家、7家之本在身、
孟子曰く、人恆(つね)の言有り、皆曰う、天下国家、天下の本は国に在り、国の本は家に在り、家の本は身に在り、


章番号 6 章通し番号 67

通し番号 404 章内番号 1 章通し番号 67 識別番号 7_6_1
1孟子曰、2爲政不難、3不得罪於巨室、4巨室之所慕、5一國慕之、6一國之所慕、7天下慕之、8故沛然德敎溢乎四海、
孟子曰く、政を爲すは難からず、罪を巨室に得ず、巨室の慕(むか)う所、一国之に慕(むか)う、一国の慕(むか)う所、天下之に慕(むか)う、故に沛然(はいぜん)として徳教四海に溢(あふ)る、


章番号 7 章通し番号 68

通し番号 405 章内番号 1 章通し番号 68 識別番号 7_7_1
1孟子曰、2天下有道、3小德役大德、4小賢役大賢、5天下無道、6小役大、7弱役強、8斯二者天也、9順天者存、10逆天者亡、
孟子曰く、天下道れば、小徳は大徳に役(えき)し、小賢は大賢に役する、天下道無ければ、小は大に役し、弱は強に役す、斯二なるものは天なり、天に順う者は存し、天に逆らう者は亡ぶ、

通し番号 406 章内番号 2 章通し番号 68 識別番号 7_7_2
1齊景公曰、2旣不能令、3又不受命、4是絶物也、5涕出而女於吳、
斉景公曰く、既に令すること能わず、又命を受けざるは、是れ物を絶つなり、涕(なみだ)出て呉に女(めあわ)す、

通し番号 407 章内番号 3 章通し番号 68 識別番号 7_7_3
1今也小國師大國、2而恥受命焉、3是猶弟子而恥受命於先師也、
今や小国は大国を師とす、而して命を受くるを恥ず、是れ猶弟子にして先師に命を受くるを恥ずるがごときなり、

通し番号 408 章内番号 4 章通し番号 68 識別番号 7_7_4
1如恥之、2莫若師文王、3師文王、4大國五年、5小國七年、6必爲政於天下矣、
如し之を恥じれば、文王を師とするに若(し)くは莫し、文王を師とすれば、大国は五年、小国は七年にして、必ず政を天下に爲す、

通し番号 409 章内番号 5 章通し番号 68 識別番号 7_7_5
1詩云、2商之孫子、3其麗不億、4上帝旣命、5侯于周服、6侯服于周、7天命靡常、8殷士膚敏、9祼將于京、10孔子曰、11仁不可爲衆也、12夫國君好仁、13天下無敵、
詩に云う、商の孫子、其麗(かず)億のみならず、上帝既に命ず、侯(これ)周に服す、侯(これ)周に服すは、天命常靡(な)し、殷士膚(ふ)で敏なるは、京に祼(かん)して将(たす)く、孔子曰く、仁には衆を爲すべからざるなり、夫(それ)国君仁を好めば、天下敵無し、

通し番号 410 章内番号 6 章通し番号 68 識別番号 7_7_6
1今也欲無敵於天下、2而不以仁、3是猶執熱而不以濯也、4詩云、5誰能執熱、6逝不以濯、
今や天下に敵無きを欲して、仁以てせず、是れ猶熱きを執(と)る、而るに以て濯(あら)わざるがごときなり、詩に云う、誰か能く熱きを執るに、逝(ここ)に以て濯(あら)わざる、


章番号 8 章通し番号 69

通し番号 411 章内番号 1 章通し番号 69 識別番号 7_8_1
1孟子曰、2不仁者、3可與言哉、4安其危而利其菑、5樂其所以亡者、6不仁而可與言、7則何亡國敗家之有、
孟子曰く、不仁者、与(とも)に言うべきや、其危(あや)うきに安んじて其菑(わざわ)いを利とす、其の以て亡ぶ所のものを楽しむ、不仁にして与(とも)言うべければ、則ち何ぞ国を亡ぼし家を敗ること之有らん、

通し番号 412 章内番号 2 章通し番号 69 識別番号 7_8_2
1有孺子、2歌曰、3滄浪之水淸兮、4可以濯我纓、5滄浪之水濁兮、6可以濯我足、
孺子(じゅし)有り、歌いて曰く、滄浪(そうろう)の水清(す)めば(兮)、以て我纓(えい)を濯(あら)うべし、滄浪の水濁(にご)らば、以て我足を濯(あら)うべし、

通し番号 413 章内番号 3 章通し番号 69 識別番号 7_8_3
1孔子曰、2小子聽之、3淸斯濯纓、4濁斯濯足矣、5自取之也、
孔子曰く、小子之を聴け、清(す)めば斯(すなわ)ち纓(えい)を濯(あら)う、濁れば斯(すなわ)ち足を濯う、自ら之を取るなり、

通し番号 414 章内番号 4 章通し番号 69 識別番号 7_8_4
1夫人必自侮、2然後人侮之、3家必自毀、4而後人毀之、5國必自伐、6而後人伐之、
夫(それ)人必ず自ら侮る、然る後人之を侮る、家必ず自ら毀(やぶ)る、而して後人之を毀(やぶ)る、国必ず自ら伐(う)つ、而して後人之を伐(う)つ、

通し番号 415 章内番号 5 章通し番号 69 識別番号 7_8_5
1太甲曰、2天作孼、3猶可違、4自作孼、5不可活、6此之謂也、
太甲に曰く、天の作(な)せる孼(わざわい)は猶(なお)違(さ)くべし、自ら作(な)せる孼(わざわい)は活(い)くべからず、此を之謂(い)うなり、


章番号 9 章通し番号 70

通し番号 416 章内番号 1 章通し番号 70 識別番号 7_9_1
1孟子曰、2桀紂之失天下也、3失其民也、4失其民者、5失其心也、6得天下有道、7得其民、8斯得天下矣、9得其民有道、10得其心、11斯得民矣、12得其心有道、13所欲與之聚之、14所惡勿施爾也、
孟子曰く、桀紂の天下を失なうや、其民を失なうなり、其民を失うは、其心を失なうなり、天下を得るに道有り、其民を得れば、斯(すなわ)ち天下を得る、其民を得るに道有り、其心を得れば、斯ち民を得る、其心を得るに道有り、欲する所は之を与え之を聚(あつ)む、悪(にく)む所は施すこと勿(な)き爾(のみ)なり、

通し番号 417 章内番号 2 章通し番号 70 識別番号 7_9_2
1民之歸仁也、2猶水之就下、3獸之走壙也、
民の仁に帰するや、猶水の下に就(つ)き、獣の壙(こう)を走るがごときなり、

通し番号 418 章内番号 3 章通し番号 70 識別番号 7_9_3
1故爲淵敺魚者、2獺也、3爲叢敺爵者、4鸇也、5爲湯武敺民者、6桀與紂也、
故に淵の爲に魚を敺(か)るものは、獺(かわうそ)なり、叢の爲に爵(すずめ)を敺るものは、鸇(はやぶさ)なり、湯武の爲に民を敺(か)るものは、桀と紂なり、

通し番号 419 章内番号 4 章通し番号 70 識別番号 7_9_4
1今天下之君、2有好仁者、3則諸侯皆爲之敺矣、4雖欲無王、5不可得已、
今天下の君、仁を好む者有れば、則ち諸侯皆之が爲に敺(か)る、王たること無からんと欲すと雖も、得べからざるのみ、

通し番号 420 章内番号 5 章通し番号 70 識別番号 7_9_5
1今之欲王者、2猶七年之病求三年之艾也、3苟爲不畜、4終身不得、5苟不志於仁、6終身憂辱、7以陷於死亡、
今の王たるを欲する者は、猶七年の病に三年の艾(もぐさ)を求めるがごときなり、苟(もし)畜えざるを爲せば、終身得ず、苟(も)し仁に志さざれば、終身憂辱し、以て死亡に陥る、

通し番号 421 章内番号 6 章通し番号 70 識別番号 7_9_6
1詩云、2其何能淑、3載胥及溺、4此之謂也、
詩に云う、其何ぞ能く淑(よ)からん、載(すなわ)ち胥(あい)及(とも)に溺る、此を之謂うなり、


章番号 10 章通し番号 71

通し番号 422 章内番号 1 章通し番号 71 識別番号 7_10_1
1孟子曰、2自暴者、3不可與有言也、4自棄者、5不可與有爲也、6言非禮義、7謂之自暴也、8吾身不能居仁由義、9謂之自棄也、
孟子曰く、自ら暴(そこな)う者、与(とも)に言うこと有るべからざるなり、自ら棄てる者、与(とも)に爲すこと有るべからざるなり、言は礼義を非(そし)る、之を自ら暴(そこな)うと謂うなり、吾が身は仁に居り義に由ること能わず、之を自ら棄てると謂うなり、

通し番号 423 章内番号 2 章通し番号 71 識別番号 7_10_2
1仁、2人之安宅也、3義、4人之正路也、
仁は、人の安宅なり、義は、人の正路なり、

通し番号 424 章内番号 3 章通し番号 71 識別番号 7_10_3
1曠安宅而弗居、2舍正路而不由、3哀哉、
安宅を曠(むな)しくして居らず、正路を舍(す)てて由らず、哀(かな)しいかな、


章番号 11 章通し番号 72

通し番号 425 章内番号 1 章通し番号 72 識別番号 7_11_1
1孟子曰、2道在爾、3而求諸遠、4事在易、5而求諸難、6人人親其親、7長其長、8而天下平、
孟子曰く、道は爾(ちか)きに在り、而るに諸を遠きに求む、事は易(やす)きに在り、而るに諸を難きに求む、人人其親を親(あい)し、其長を長(すす)む、而して天下平かなり、


章番号 12 章通し番号 73

通し番号 426 章内番号 1 章通し番号 73 識別番号 7_12_1
1孟子曰、2居下位而不獲於上、3民不可得而治也、4獲於上有道、5不信於友、6弗獲於上矣、7信於友有道、8事親弗悅、9弗信於友矣、10悅親有道、11反身不誠、12不悅於親矣、13誠身有道、14不明乎善、15不誠其身矣、
孟子曰く、下位に居りて上に獲(え)られざれば、民得て治むべからざるなり、上に獲(え)られるに道有り、友に信ぜられざれば、上に獲られず、友に信ぜられるに道有り、親に事(つか)えて悦(よろこ)ばざれば、友に信ぜられず、親を悦(よろこ)すに道有り、身に反り誠ならざれば、親に悦(よろこ)ばれず、身に誠なるに道有り、善に明らかならざれば、其身に誠ならず、

通し番号 427 章内番号 2 章通し番号 73 識別番号 7_12_2
1是故誠者、2天之道也、3思誠者、4人之道也、
是故に誠は、天の道なり、誠を思うは、人の道なり、

通し番号 428 章内番号 3 章通し番号 73 識別番号 7_12_3
1至誠而不動者、2未之有也、3不誠、4未有能動者也、
至誠にして動かざるものは、未だ之有らざるなり、誠ならずして、未だ能く動くもの有らざるなり、


章番号 13 章通し番号 74

通し番号 429 章内番号 1 章通し番号 74 識別番号 7_13_1
1孟子曰、2伯夷辟紂、3居北海之濱、4聞文王作興、5曰盍歸乎來、6吾聞西伯善養老者、7太公辟紂、8居東海之濱、9聞文王作興、10曰盍歸乎來、11吾聞西伯善養老者、
孟子曰く、伯夷は紂を辟(さ)け、北海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞き、曰く盍(なん)ぞ帰らざる(来)、吾聞く、西伯善く老を養う者と、太公紂を辟(さ)け、東海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞き、曰く盍(なん)ぞ帰らざる、吾聞く、西伯善く老を養(おさ)める者と、

通し番号 430 章内番号 2 章通し番号 74 識別番号 7_13_2
1二老者、2天下之大老也、3而歸之、4是天下之父歸之也、5天下之父歸之、6其子焉往、
二老は、天下の大老なり、而して之に帰す、是れ天下の父之に帰するなり、天下の父之に帰す、其子焉(いず)くに往かん、

通し番号 431 章内番号 3 章通し番号 74 識別番号 7_13_3
1諸侯有行文王之政者、2七年之内、3必爲政於天下矣、
諸侯文王の政を行うもの有れば、七年の内、必ず政を天下に爲す、


章番号 14 章通し番号 75

通し番号 432 章内番号 1 章通し番号 75 識別番号 7_14_1
1孟子曰、2求也爲季氏宰、3無能改於其德、4而賦粟倍他日、5孔子曰、6求非我徒也、7小子鳴鼓而攻之可也、
孟子曰く、求や季氏の宰(さい)と爲る、能く其徳を改めること無し、而して粟(ぞく)を賦(ふ)すること他日に倍す、孔子曰く、求は我徒に非ざるなり、小子鼓を鳴らして之を攻めて可なり、

通し番号 433 章内番号 2 章通し番号 75 識別番号 7_14_2
1由此觀之、2君不行仁政、3而富之、4皆棄於孔子者也、5況於爲之強戰、6爭地以戰、7殺人盈野、8爭城以戰、9殺人盈城、10此所謂率土地而食人肉、11罪不容於死、
此に由り之を観れば、君仁政を行わずして、之を富ますは、皆孔子に棄てられる者なり、況んや之が爲に戦を強(し)い、地を争い以て戦い、人を殺し野に盈(み)ち、城を争い以て戦い、人を殺し城に盈(み)つるに於てをや、此は謂う所の土地を率いて人肉を食べる、罪は死に容(い)らず、

通し番号 434 章内番号 3 章通し番号 75 識別番号 7_14_3
1故善戰者服上刑、2連諸侯者次之、3辟草萊、4任土地者次之、
故に善く戦う者は上刑に服す、諸侯を連(つら)ねる者之に次ぐ、草萊(そうらい)を辟(ひら)き、土地を任ずる者は之に次ぐ、


章番号 15 章通し番号 76

通し番号 435 章内番号 1 章通し番号 76 識別番号 7_15_1
1孟子曰、2存乎人者、3莫良於眸子、4眸子不能掩其惡、5胸中正、6則眸子瞭焉、7胸中不正、8則眸子眊焉、
孟子曰く、人に存するものは、眸子(ぼうし)於(より)良きは莫し、眸子其悪を掩(おお)うこと能わず、胸中正しければ、則ち眸子瞭(あきら)かなり、胸中正しからざれば、則ち眸子眊(くら)し、

通し番号 436 章内番号 2 章通し番号 76 識別番号 7_15_2
1聽其言也、2觀其眸子、3人焉廋哉、
其言を聴くや、其眸子(ぼうし)を観る、人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや、


章番号 16 章通し番号 77

通し番号 437 章内番号 1 章通し番号 77 識別番号 7_16_1
1孟子曰、2恭者不侮人、3儉者不奪人、4侮奪人之君、5惟恐不順焉、6惡得爲恭儉、7恭儉豈可以聲音笑貌爲哉、
孟子曰く、恭なる者人を侮らず、倹なる者人から奪わず、人を侮奪するの君、惟順(したが)わざるを恐る、悪(いずくん)ぞ恭倹を爲すを得ん、恭倹は豈(あに)声音笑貌以て爲すべけんや、


章番号 17 章通し番号 78

通し番号 438 章内番号 1 章通し番号 78 識別番号 7_17_1
1淳于髠曰、2男女授受不親、3禮與、4孟子曰、5禮也、6曰、7嫂溺則援之以手乎、8曰、9嫂溺不援、10是豺狼也、11男女授受不親、12禮也、13嫂溺援之以手者、14權也、
淳于髠(じゅんうこん)曰く、男女授受親(みずか)らせず、礼か、孟子曰く、礼なり、曰く、嫂(そう)溺れば則ち之を援(すく)うに手を以てするか、曰く、嫂(そう)溺れて援(すく)わざるは、是れ豺狼(さいろう)なり、男女授受親(みずか)らせずは、礼なり、嫂溺れ之を援(すく)うに手を以てするは、権なり、

通し番号 439 章内番号 2 章通し番号 78 識別番号 7_17_2
1曰、2今天下溺矣、3夫子之不援、4何也、
曰く、今天下溺る、夫子(ふうし)の援(すく)わざる、何ぞや、

通し番号 440 章内番号 3 章通し番号 78 識別番号 7_17_3
1曰、2天下溺、3援之以道、4嫂溺、5援之以手、6子欲手援天下乎、
曰く、天下溺るれば、之を援(すく)うに道を以てす、嫂溺るれば、之を援うに手を以てす、子は手にて天下を援(すく)わんと欲するか、


章番号 18 章通し番号 79

通し番号 441 章内番号 1 章通し番号 79 識別番号 7_18_1
1公孫丑曰、2君子之不敎子、3何也、
公孫丑曰く、君子の子を教えざるは、何ぞや、

通し番号 442 章内番号 2 章通し番号 79 識別番号 7_18_2
1孟子曰、2勢不行也、3敎者必以正、4以正不行、5繼之以怒、6繼之以怒、7則反夷矣、8夫子敎我以正、9夫子未出於正也、10則是父子相夷也、11父子相夷、12則惡矣、
孟子曰く、勢(いきおい)行われざるなり、教えは必ず正以てす、正以て行われず、之に継ぐに怒以てす、之に継ぐに怒以てすれば、則ち反(かえっ)て夷(そこな)う、夫子我に教えるに正以てす、夫子未だ正に出でざるなり、則ち是れ父子相夷(そこな)うなり、父子相(あい)夷えば、則ち悪(あ)し、

通し番号 443 章内番号 3 章通し番号 79 識別番号 7_18_3
1古者易子而敎之、
古は子を易(か)えて之を教える、

通し番号 444 章内番号 4 章通し番号 79 識別番号 7_18_4
1父子之閒不責善、2責善則離、3離則不祥莫大焉、
父子の間は善を責めず、善を責めれば則ち離る、離るれば則ち祥(よ)からざるは焉(これ)より大なるは莫(な)し、


章番号 19 章通し番号 80

通し番号 445 章内番号 1 章通し番号 80 識別番号 7_19_1
1孟子曰、2事孰爲大、3事親爲大、4守孰爲大、5守身爲大、6不失其身、7而能事其親者、8吾聞之矣、9失其身、10而能事其親者、11吾未之聞也、
孟子曰く、事える孰(いず)れか大と爲す、親に事える大と爲す、守る孰れか大と爲す、身を守る大と爲す、其身を失わずして、能く其親に事える者は、吾之を聞く、其身を失ないて、能く其親に事える者は、吾未だ之を聞かざるなり、

通し番号 446 章内番号 2 章通し番号 80 識別番号 7_19_2
1孰不爲事、2事親、3事之本也、4孰不爲守、5守身、6守之本也、
孰れか事えると爲さざらん、親に事えるは、事えるの本なり、孰れか守ると爲さざらん、身を守るは、守るの本なり、

通し番号 447 章内番号 3 章通し番号 80 識別番号 7_19_3
1曾子養曾皙、2必有酒肉、3將徹、4必請所與、5問有餘、6必曰有、7曾皙死、8曾元養曾子、9必有酒肉、10將徹、11不請所與、12問有餘、13曰亡矣、14將以復進也、15此所謂養口體者也、16若曾子、17則可謂養志也、
曽子が曽皙(せき)を養う、必ず酒肉有り、将に徹せんとし、必ず与える所を請う、余有るやを問えば、必ず有りと曰う、曽皙死す、曽元が曽子を養う、必ず酒肉有り、将に徹せんとし、与える所を請わず、余有るやを問えば、亡(な)しと曰う、将に以て復(また)進めんとするなり、此謂う所の口体を養う者なり、曽子の若きは、則ち志を養うと謂うべきなり、

通し番号 448 章内番号 4 章通し番号 80 識別番号 7_19_4
1事親若曾子者、2可也、
親に事えること曽子の若き者は、可なり、


章番号 20 章通し番号 81

通し番号 449 章内番号 1 章通し番号 81 識別番号 7_20_1
1孟子曰、2人不足與適也、3政不足閒也、4惟大人爲能格君心之非、5君仁莫不仁、6君義莫不義、7君正莫不正、8一正君而國定矣、
孟子曰く、人は与(もっ)て適(せ)むるに足らざるなり、政は間(そし)るに足らざるなり、惟(ただ)大人能く君心の非を格(ただ)すことを爲す、君仁なれば仁ならざる莫し、君義なれば義ならざる莫し、君正なれば正ならざる莫(な)し、一たび君を正して国定まる、


章番号 21 章通し番号 82

通し番号 450 章内番号 1 章通し番号 82 識別番号 7_21_1
1孟子曰、2有不虞之譽、3有求全之毀、
孟子曰く、虞(はか)らざるの誉(ほまれ)有り、全(まった)きを求めるの毀(そし)り有り、


章番号 22 章通し番号 83

通し番号 451 章内番号 1 章通し番号 83 識別番号 7_22_1
1孟子曰、2人之易其言也、3無責耳矣、
孟子曰く、人の其言に易(おろそ)かなるは、責無きのみ、


章番号 23 章通し番号 84

通し番号 452 章内番号 1 章通し番号 84 識別番号 7_23_1
1孟子曰、2人之患、3在好爲人師、
孟子曰く、人の患、好んで人の師と爲ることに在り、


章番号 24 章通し番号 85

通し番号 453 章内番号 1 章通し番号 85 識別番号 7_24_1
1樂正子從於子敖之齊、
楽正子(がくせいし)子敖(しごう)に従い斉に之(ゆ)く、

通し番号 454 章内番号 2 章通し番号 85 識別番号 7_24_2
1樂正子見孟子、2孟子曰、3子亦來見我乎、4曰、5先生何爲出此言也、6曰、7子來幾日矣、8曰、9昔者、10曰、11昔者、12則我出此言也、13不亦宜乎、14曰、15舍館未定、16曰、17子聞之也、18舍館定、19然後求見長者乎、
楽正子孟子に見(まみ)ゆ、孟子曰く、子亦来り我に見(あ)うか、曰く、先生何爲(なんすれ)ぞ此言を出すや、曰く、子来る幾(いく)日ぞ、曰く、昔者(きのう)なり、曰く、昔者(きのう)ならば、則ち我此言を出すや、亦宜(うべ)ならざるか、曰く、舍館未だ定まらず、曰く、子之を聞くや、舍館定まり、然る後長者に見(まみ)ゆるを求めるか、

通し番号 455 章内番号 3 章通し番号 85 識別番号 7_24_3
1曰、2克有罪、
曰く、克(こく)罪有り、


章番号 25 章通し番号 86

通し番号 456 章内番号 1 章通し番号 86 識別番号 7_25_1
1孟子謂樂正子曰、2子之從於子敖來、3徒餔啜也、4我不意子學古之道、5而以餔啜也、
孟子楽正子に謂いて曰く、子の子敖(しごう)に従い来るは、徒(ただ)餔啜(ほせつ)するなり、我は、子が古の道を学びて、以て餔啜すると意(おも)わざるなり、


章番号 26 章通し番号 87

通し番号 457 章内番号 1 章通し番号 87 識別番号 7_26_1
1孟子曰、2不孝有三、3無後爲大、
孟子曰く、不孝に三有り、後無き大と爲す、

通し番号 458 章内番号 2 章通し番号 87 識別番号 7_26_2
1舜不告而娶、2爲無後也、3君子以爲猶告也、
舜告げずして娶(めと)るは、後無き爲なり、君子以て猶告ぐるがごときと爲すなり、


章番号 27 章通し番号 88

通し番号 459 章内番号 1 章通し番号 88 識別番号 7_27_1
1孟子曰、2仁之實、3事親是也、4義之實、5從兄是也、
孟子曰く、仁の実、親に事える是れなり、義の実、兄に従う是れなり、

通し番号 460 章内番号 2 章通し番号 88 識別番号 7_27_2
1智之實、2知斯二者弗去是也、3禮之實、4節文斯二者是也、5樂之實、6樂斯二者、7樂則生矣、8生則惡可已也、9惡可已、10則不知足之蹈之、11手之舞之、
智の実、斯(この)二なるものを知り、去らざる是れなり、礼の実、斯二なるものを節文する是れなり、楽(がく)の実、斯二なるものを楽しむ、楽しめば則ち生ず、生ずれば則ち悪ぞ已むべけんや、悪ぞ已むべくんば、則ち足の之を踏み、手の之に舞うを知らず、


章番号 28 章通し番号 89

通し番号 461 章内番号 1 章通し番号 89 識別番号 7_28_1
1孟子曰、2天下大悅而將歸己、3視天下悅而歸己、4猶草芥也、5惟舜爲然、6不得乎親、7不可以爲人、8不順乎親、9不可以爲子、
孟子曰く、天下大いに悦びて将に己に帰さんとす、天下悦びて己に帰するを視ること、猶草芥のごときなり、惟(ただ)舜然りと爲す、親に得られざれば、以て人と爲るべからず、親に順ならざれば、以て子と爲るべからず、

通し番号 462 章内番号 2 章通し番号 89 識別番号 7_28_2
1舜盡事親之道、2而瞽瞍厎豫、3瞽瞍厎豫、4而天下化、5瞽瞍厎豫、6而天下之爲父子者定、7此之謂大孝、
舜親に事えるの道を尽して、瞽瞍(こそう)予(よろこ)びを厎(いた)す、瞽瞍予(よろこび)を厎(いた)して、天下化す、瞽瞍予(よろこ)びを厎(いた)して、天下の父子爲(た)る者定まる、此を之大孝と謂う、


8 離婁章句下 lí lóu zhāng jù xià

章番号 1 章通し番号 90

通し番号 463 章内番号 1 章通し番号 90 識別番号 8_1_1
1孟子曰、2舜生於諸馮、3遷於負夏、4卒於鳴條、5東夷之人也、
孟子曰く、舜は諸馮(しょひょう)に生まれ、負夏に遷(うつ)り、鳴條に卒(おわ)る、東夷の人なり、

通し番号 464 章内番号 2 章通し番号 90 識別番号 8_1_2
1文王生於岐周、2卒於畢郢、3西夷之人也、
文王は岐周(きしゅう)に生まれ、畢郢(ひつえい)に卒(おわ)る、西夷の人なり、

通し番号 465 章内番号 3 章通し番号 90 識別番号 8_1_3
1地之相去也、2千有餘里、3世之相後也、4千有餘歳、5得志行乎中國、6若合符節、
地の相去るや、千有余里、世の相後(おく)るや、千有余歳、志を得て中国に行う、符節を合わせるが若し、

通し番号 466 章内番号 4 章通し番号 90 識別番号 8_1_4
1先聖後聖、2其揆一也、
先聖後聖、其揆(き)一なり、


章番号 2 章通し番号 91

通し番号 467 章内番号 1 章通し番号 91 識別番号 8_2_1
1子產聽鄭國之政、2以其乘輿濟人於溱洧、
子産は鄭国の政を聴く、其乗輿(じょうよ)を以て人を溱(しん)洧(い)に済(わた)す、

通し番号 468 章内番号 2 章通し番号 91 識別番号 8_2_2
1孟子曰、2惠而不知爲政、
孟子曰く、恵にして政を爲すを知らず、

通し番号 469 章内番号 3 章通し番号 91 識別番号 8_2_3
1歳十一月徒杠成、2十二月輿梁成、3民未病渉也、
歳(とし)の十一月徒杠成る、十二月輿梁(よりょう)成る、民未だ渉(わた)るを病まざるなり、

通し番号 470 章内番号 4 章通し番号 91 識別番号 8_2_4
1君子平其政、2行辟人可也、3焉得人人而濟之、
君子其政を平(おさ)む、行くに人を辟(ひら)くも可なり、焉ぞ人人にして之を済(わた)すことを得ん、

通し番号 471 章内番号 5 章通し番号 91 識別番号 8_2_5
1故爲政者、2每人而悅之、3日亦不足矣、
故に政を爲す者、人每(ごと)にして之を悦ばせば、日も亦足らず、


章番号 3 章通し番号 92

通し番号 472 章内番号 1 章通し番号 92 識別番号 8_3_1
1孟子告齊宣王曰、2君之視臣如手足、3則臣視君如腹心、4君之視臣如犬馬、5則臣視君如國人、6君之視臣如土芥、7則臣視君如寇讎、
孟子斉の宣王に告げて曰く、君の臣を視ること手足の如ければ、則ち臣が君を視ること腹心の如し、君の臣を視ること犬馬の如ければ、則ち臣が君を視ること国人の如し、君の臣を視ること土芥(かい)の如ければ、則ち臣が君を視ること寇讎(こうしゅう)の如し、

通し番号 473 章内番号 2 章通し番号 92 識別番号 8_3_2
1王曰、2禮爲舊君有服、3何如斯可爲服矣、
王曰く、礼には旧君の爲に服有り、何如(いか)なれば斯(すなわ)ち爲に服すべし、

通し番号 474 章内番号 3 章通し番号 92 識別番号 8_3_3
1曰、2諫行言聽、3膏澤下於民、4有故而去、5則君使人導之出疆、6又先於其所往、7去三年不反、8然後收其田里、9此之謂三有禮焉、10如此、11則爲之服矣、
曰く、諫行われ言聴かれ、膏沢(こうたく)民に下る、故(ゆえ)有りて去る、則ち君は人をして之を導き疆(さかい)を出だしむ、又其往く所に先んず、去りて三年反らず、然る後其田里を收む、此を之三有礼と謂う、此如ければ、則ち之が爲に服す、

通し番号 475 章内番号 4 章通し番号 92 識別番号 8_3_4
1今也爲臣、2諫則不行、3言則不聽、4膏澤不下於民、5有故而去、6則君搏執之、7又極之於其所往、8去之日、9遂收其田里、10此之謂寇讎、11寇讎何服之有、
今や臣と爲り、諫(いさ)めれば則ち行われず、言えば則ち聴かれず、膏沢民に下らず、故有りて去れば則ち君之を搏執(はくしつ)す、又之を其往く所に於て極む、之を去るの日、遂に其田里を收む、此を之寇讎(こうしゅう)と謂う、寇讎何ぞ服すること之有らん、


章番号 4 章通し番号 93

通し番号 476 章内番号 1 章通し番号 93 識別番号 8_4_1
1孟子曰、2無罪而殺士、3則大夫可以去、4無罪而戮民、5則士可以徙、
孟子曰く、罪無くして士を殺さば、則ち大夫以て去ることは可なり、罪無くして民を戮(ころ)さば、則ち士以て徙(うつ)ることは可なり、


章番号 5 章通し番号 94

通し番号 477 章内番号 1 章通し番号 94 識別番号 8_5_1
1孟子曰、2君仁莫不仁、3君義莫不義、
孟子曰く、君が仁なれば仁ならざること莫し、君が義ならば義ならざること莫し、


章番号 6 章通し番号 95

通し番号 478 章内番号 1 章通し番号 95 識別番号 8_6_1
1孟子曰、2非禮之禮、3非義之義、4大人弗爲、
孟子曰く、礼に非ざるの礼、義に非ざるの義、大人爲さず、


章番号 7 章通し番号 96

通し番号 479 章内番号 1 章通し番号 96 識別番号 8_7_1
1孟子曰、2中也養不中、3才也養不才、4故人樂有賢父兄也、5如中也棄不中、6才也棄不才、7則賢不肖之相去、8其閒不能以寸、
孟子曰く、中は不中を養う、才は不才を養う、故に人は賢父兄有るを楽しむなり、如し中は不中を棄て、才は不才を棄てれば、則ち賢不肖の相去ること、其間寸以てすること能わず、


章番号 8 章通し番号 97

通し番号 480 章内番号 1 章通し番号 97 識別番号 8_8_1
1孟子曰、2人有不爲也、3而後可以有爲、
孟子曰く、人爲さざること有るなり、而して後以て爲すこと有るべし、


章番号 9 章通し番号 98

通し番号 481 章内番号 1 章通し番号 98 識別番号 8_9_1
1孟子曰、2言人之不善、3當如後患何、
孟子曰く、人の不善を言えば、当に後の患えを如何(いかん)すべき、


章番号 10 章通し番号 99

通し番号 482 章内番号 1 章通し番号 99 識別番号 8_10_1
1孟子曰、2仲尼不爲已甚者、
孟子曰く、仲尼(ちゅうじ)は已甚(はなは)だしきを爲さず、


章番号 11 章通し番号 100

通し番号 483 章内番号 1 章通し番号 100 識別番号 8_11_1
1孟子曰、2大人者、3言不必信、4行不必果、5惟義所在、
孟子曰く、大人なる者は、言は信を必(ひつ)とせず、行は果を必とせず、惟(ただ)義在る所のままにす、


章番号 12 章通し番号 101

通し番号 484 章内番号 1 章通し番号 101 識別番号 8_12_1
1孟子曰、2大人者、3不失其赤子之心者也、
孟子曰く、大人は、其赤子の心を失わざる者なり、


章番号 13 章通し番号 102

通し番号 485 章内番号 1 章通し番号 102 識別番号 8_13_1
1孟子曰、2養生者不足以當大事、3惟送死可以當大事、
孟子曰く、生を養うは以て大事に当たるに足らず、惟(ただ)死を送るは以て大事に当たるべし 、


章番号 14 章通し番号 103

通し番号 486 章内番号 1 章通し番号 103 識別番号 8_14_1
1孟子曰、2君子深造之以道、3欲其自得之也、4自得之、5則居之安、6居之安、7則資之深、8資之深、9則取之左右逢其原、10故君子欲其自得之也、
孟子曰く、君子深く之に造(いた)るに道を以てす、其自ずから之を得るを欲するなり、自ずから之を得れば、則ち之に居ること安し、之に居ること安ければ、則ち之に資(よ)ること深し、之に資(よ)ること深ければ、則ち之を左右に取り其原(みなもと)に逢(あ)う、故に君子其自(おのずか)ら之を得ることを欲するなり、


章番号 15 章通し番号 104

通し番号 487 章内番号 1 章通し番号 104 識別番号 8_15_1
1孟子曰、2博學而詳說之、3將以反說約也、
孟子曰く、博く学びて詳しく之を説く、将に以て反り約を説かんとするなり、


章番号 16 章通し番号 105

通し番号 488 章内番号 1 章通し番号 105 識別番号 8_16_1
1孟子曰、2以善服人者、3未有能服人者也、4以善養人、5然後能服天下、6天下不心服而王者、7未之有也、
孟子曰く、善以て人を服する者は、未だ能く人を服する者有らざるなり、善以て人を養う、然る後能く天下を服す、天下心服せずして王たる者、未だ之有らざるなり、


章番号 17 章通し番号 106

通し番号 489 章内番号 1 章通し番号 106 識別番号 8_17_1
1孟子曰、2言無實不祥、3不祥之實、4蔽賢者當之、
孟子曰く、言が実無きは不祥なり、不祥の実は、賢を蔽うもの之に当たる、


章番号 18 章通し番号 107

通し番号 490 章内番号 1 章通し番号 107 識別番号 8_18_1
1徐子曰、2仲尼亟稱於水曰、3水哉、4水哉、5何取於水也、
徐子曰く、仲尼亟(しばしば)水を称して曰く、水なるかな、水なるかな、何ぞ水に取るや、

通し番号 491 章内番号 2 章通し番号 107 識別番号 8_18_2
1孟子曰、2原泉混混、3不舍晝夜、4盈科而後進、5放乎四海、6有本者如是、7是之取爾、
孟子曰く、原泉混混として、昼夜舍(いこ)わず、科(あな)を盈(みた)して後進み、四海に放(いた)る、本有る者是如し、是を之取るのみ、

通し番号 492 章内番号 3 章通し番号 107 識別番号 8_18_3
1苟爲無本、2七八月之閒雨集、3溝澮皆盈、4其涸也、5可立而待也、6故聲聞過情、7君子恥之、
苟(もし)本無しと爲せば、七八月の間雨集まり、溝澮(こうかい)皆盈(み)つ、其涸(か)るるや、立ちて待つべきなり、故に声聞情に過ぐは、君子之を恥ず、


章番号 19 章通し番号 108

通し番号 493 章内番号 1 章通し番号 108 識別番号 8_19_1
1孟子曰、2人之所以異於禽獸者幾希、3庶民去之、4君子存之、
孟子曰く、人の禽獣に異なる所以のものは幾希(すくな)し、庶民之を去る、君子之を存す、

通し番号 494 章内番号 2 章通し番号 108 識別番号 8_19_2
1舜明於庶物、2察於人倫、3由仁義行、4非行仁義也、
舜は庶物に明らかなり、人倫に察(つまびら)かなり、仁と義に由り行う、仁と義を行うに非ざるなり、


章番号 20 章通し番号 109

通し番号 495 章内番号 1 章通し番号 109 識別番号 8_20_1
1孟子曰、2禹惡旨酒、3而好善言、
孟子曰く、禹は旨(し)酒を悪(にく)みて、善言を好む、

通し番号 496 章内番号 2 章通し番号 109 識別番号 8_20_2
1湯執中、2立賢無方、
湯は中を執(と)り、賢を立てるに方無し、

通し番号 497 章内番号 3 章通し番号 109 識別番号 8_20_3
1文王視民如傷、2望道而未之見、
文王民を視ること傷(いた)めるが如し、道を望み未だ之を見ざるが而(ごと)し、

通し番号 498 章内番号 4 章通し番号 109 識別番号 8_20_4
1武王不泄邇、2不忘遠、
武王邇(ちか)きに泄(な)れず、遠きを忘れず、

通し番号 499 章内番号 5 章通し番号 109 識別番号 8_20_5
1周公思兼三王、2以施四事、3其有不合者、4仰而思之、5夜以繼日、6幸而得之、7坐以待旦、
周公三王を兼ね、以て四事を施さんことを思う、其合わざるもの有れば、仰ぎて之を思う、夜以て日に継ぐ、幸いにして之を得れば、坐し以て旦(たん)を待つ、


章番号 21 章通し番号 110

通し番号 500 章内番号 1 章通し番号 110 識別番号 8_21_1
1孟子曰、2王者之跡熄而詩亡、3詩亡然後春秋作、
孟子曰く、王者の跡熄(や)みて詩亡ぶ、詩亡(ほろ)び然る後春秋作(おこ)る、

通し番号 501 章内番号 2 章通し番号 110 識別番号 8_21_2
1晉之乘、2楚之檮杌、3魯之春秋、4一也、
晉の乗、楚の檮杌(とうこつ)、魯の春秋、一なり、

通し番号 502 章内番号 3 章通し番号 110 識別番号 8_21_3
1其事則齊桓、2晉文、3其文則史、4孔子曰、5其義則丘竊取之矣、
其事則ち斉桓、晋文なり、其文則ち史なり、孔子曰く、其義則ち丘竊(ひそか)に之を取る、


章番号 22 章通し番号 111

通し番号 503 章内番号 1 章通し番号 111 識別番号 8_22_1
1孟子曰、2君子之澤五世而斬、3小人之澤五世而斬、
孟子曰く、君子の沢五世にして斬(た)つ、小人の沢五世にして斬(た)つ、

通し番号 504 章内番号 2 章通し番号 111 識別番号 8_22_2
1予未得爲孔子徒也、2予私淑諸人也、
予未だ孔子の徒と爲ることを得ざるなり、予私(ひそか)に諸を人に淑(よ)くするなり、


章番号 23 章通し番号 112

通し番号 505 章内番号 1 章通し番号 112 識別番号 8_23_1
1孟子曰、2可以取、3可以無取、4取傷廉、5可以與、6可以無與、7與傷惠、8可以死、9可以無死、10死傷勇、
孟子曰く、以て取ること可、以て取ること無しも可、取れば廉を傷(そこな)う、以て与えること可、以て与えること無しも可、与えれば恵を傷(そこな)う、以て死ぬこと可、以て死ぬこと無しも可、死ねば勇を傷(そこな)う、


章番号 24 章通し番号 113

通し番号 506 章内番号 1 章通し番号 113 識別番号 8_24_1
1逢蒙學射於羿、2盡羿之道、3思天下惟羿爲愈己、4於是殺羿、5孟子曰、6是亦羿有罪焉、7公明儀曰、8宜若無罪焉、9曰、10薄乎云爾、11惡得無罪、
逢蒙(ほうもう)射を羿(げい)に学ぶ、羿の道を尽す、思えらく、天下惟(ただ)羿己に愈(まさ)ると爲す、是に於て羿を殺す、孟子曰く、是れ亦羿罪有り、公明儀曰く、宜(よろ)しく罪無きが若し、曰く、薄きかと云うのみ、悪ぞ罪無きを得ん、

通し番号 507 章内番号 2 章通し番号 113 識別番号 8_24_2
1鄭人使子濯孺子侵衛、2衛使庾公之斯追之、3子濯孺子曰、4今日我疾作、5不可以執弓、6吾死矣夫、7問其僕曰、8追我者誰也、9其僕曰、10庾公之斯也、11曰、12吾生矣、13其僕曰、14庾公之斯衛之善射者也、15夫子曰、16吾生、17何謂也、18曰、19庾公之斯學射於尹公之他、20尹公之他學射於我、21夫尹公之他端人也、22其取友必端矣、23庾公之斯至、24曰、25夫子何爲不執弓、26曰、27今日我疾作、28不可以執弓、29曰、30小人學射於尹公之他、31尹公之他學射於夫子、32我不忍以夫子之道反害夫子、33雖然、34今日之事君事也、35我不敢廢、36抽矢扣輪、37去其金、38發乘矢而後反、
鄭人は子濯孺子(したくじゅし)をして衛を侵さしむ、衛は庾公之斯(ゆこうしし)をして之を追わしむ、子濯孺子曰く、今日我疾作(おこ)る、以て弓を執(と)るべからず、吾死せん夫(かな)、其僕に問いて曰く、我を追う者誰ぞや、其僕曰く、庾公之斯なり、曰く、吾生きん、其僕曰く、庾公之斯は衛の善く射る者なり、夫子曰く、吾生く、何の謂(いい)ぞや、曰く、庾公之斯は射を尹公之他(いんこうした)に学ぶ、尹公之他射を我に学ぶ、夫(その)尹公之他は端人なり、其友を取る必ず端なり、庾公之斯至る、曰、夫子何爲(なんすれ)ぞ弓を執らざる、曰、今日我疾作(おこ)る、以て弓を執るべからず、曰く、小人射を尹公之他に学ぶ、尹公之他射を夫子に学ぶ、我は夫子の道を以て反て夫子を害することを忍びず、然りと雖も、今日の事君の事なり、我敢て廃せず、矢を抽(ぬ)き輪(わ)に扣(たた)き、其金を去り、乗矢を発して後反る、


章番号 25 章通し番号 114

通し番号 508 章内番号 1 章通し番号 114 識別番号 8_25_1
1孟子曰、2西子蒙不潔、3則人皆掩鼻而過之、
孟子曰く、西子不潔を蒙(こうむ)れば、則ち人皆鼻を掩(おお)いて之を過ぐ、

通し番号 509 章内番号 2 章通し番号 114 識別番号 8_25_2
1雖有惡人、2齊戒沐浴、3則可以祀上帝、
悪人有りと雖も、斉戒(さいかい)沐(もく)浴すれば、則ち以て上帝を祀(まつ)るべし、


章番号 26 章通し番号 115

通し番号 510 章内番号 1 章通し番号 115 識別番号 8_26_1
1孟子曰、2天下之言性也、3則故而已矣、4故者以利爲本、
孟子曰く、天下の性を言うや、則ち故のみ、故は利以て本と爲す、

通し番号 511 章内番号 2 章通し番号 115 識別番号 8_26_2
1所惡於智者、2爲其鑿也、3如智者若禹之行水也、4則無惡於智矣、5禹之行水也、6行其所無事也、7如智者亦行其所無事、8則智亦大矣、
智に於て悪(にく)む所のものは、其鑿(うが)つの爲なり、如し智が禹の水を行(や)るが若くなれば、則ち智に於て悪(にく)むこと無し、禹の水を行(や)るや、其事無き所に行(や)るなり、如し智亦其事無き所に行(や)れば、則ち智亦大なり、

通し番号 512 章内番号 3 章通し番号 115 識別番号 8_26_3
1天之高也、2星辰之遠也、3苟求其故、4千歳之日至、5可坐而致也、
天は高きなり、星辰は遠きなり、苟(まこと)に其故を求めれば、千歳の日至、坐して致すべきなり、


章番号 27 章通し番号 116

通し番号 513 章内番号 1 章通し番号 116 識別番号 8_27_1
1公行子有子之喪、2右師往弔、3入門、4有進而與右師言者、5有就右師之位而與右師言者、
公行子、子の喪(も)有り、右師(ゆうし)往きて弔す、門に入る、進みて右師と言う者有り、右師の位に就きて右師と言う者有り、

通し番号 514 章内番号 2 章通し番号 116 識別番号 8_27_2
1孟子不與右師言、2右師不悅曰、3諸君子皆與驩言、4孟子獨不與驩言、5是簡驩也、
孟子右師と言わず、右師悦ばずして曰く、諸君子皆驩と言う、孟子独り驩と言わず、是驩に簡なり、

通し番号 515 章内番号 3 章通し番号 116 識別番号 8_27_3
1孟子聞之曰、2禮、3朝廷不歴位而相與言、4不踰階而相揖也、5我欲行禮、6子敖以我爲簡、7不亦異乎、
孟子之を聞きて曰く、礼は、朝廷位を歴(こ)えて相与(とも)に言わず、階を踰(こ)えて相揖(ゆう)せざるなり、我は礼を行わんと欲す、子敖(しごう)は我を以て簡と爲す、亦異ならずや、


章番号 28 章通し番号 117

通し番号 516 章内番号 1 章通し番号 117 識別番号 8_28_1
1孟子曰、2君子所以異於人者、3以其存心也、4君子以仁存心、5以禮存心、
孟子曰く、君子が人に異なる所以のものは、其心に存するを以てなり、君子は仁以て心に存し、礼以て心に存す、

通し番号 517 章内番号 2 章通し番号 117 識別番号 8_28_2
1仁者愛人、2有禮者敬人、
仁者は人を愛す、礼有る者は人を敬う、

通し番号 518 章内番号 3 章通し番号 117 識別番号 8_28_3
1愛人者人恆愛之、2敬人者人恆敬之、
人を愛する者は人恒(つね)に之を愛す、人を敬う者は人恒(つね)に之を敬う、

通し番号 519 章内番号 4 章通し番号 117 識別番号 8_28_4
1有人於此、2其待我以橫逆、3則君子必自反也、4我必不仁也、5必無禮也、6此物奚宜至哉、
此に人有り、其我を待つに横逆以てすれば、則ち君子必ず自ら反(かえり)みるなり、我必ず不仁なり、必ず無礼なり、此物奚(なん)ぞ宜(よろし)く至るべけんや、

通し番号 520 章内番号 5 章通し番号 117 識別番号 8_28_5
1其自反而仁矣、2自反而有禮矣、3其橫逆由是也、4君子必自反也、5我必不忠、
其自ら反(かえり)みて仁なり、自ら反て礼有り、其横逆由(なお)是のごときなり、君子必ず自ら反るなり、我必ず不忠なり、

通し番号 521 章内番号 6 章通し番号 117 識別番号 8_28_6
1自反而忠矣、2其橫逆由是也、3君子曰、4此亦妄人也已矣、5如此則與禽獸奚擇哉、6於禽獸又何難焉、
自ら反みて忠なり、其横逆由(なお)是ごときなり、君子曰く、此亦(ただ)妄人なるのみ、此如ければ則ち禽獣と奚(なん)ぞ択ばん、禽獣に於て又何ぞ難ぜん、

通し番号 522 章内番号 7 章通し番号 117 識別番号 8_28_7
1是故君子有終身之憂、2無一朝之患也、3乃若所憂則有之、4舜人也、5我亦人也、6舜爲法於天下、7可傳於後世、8我由未免爲郷人也、9是則可憂也、10憂之如何、11如舜而已矣、12若夫君子所患則亡矣、13非仁無爲也、14非禮無行也、15如有一朝之患、16則君子不患矣、
是故に君子は終身の憂い有り、一朝の患(うれ)い無きなり、(乃若)憂う所は則ち之有り、舜は人なり、我も亦人なり、舜は法を天下に爲し、後世に伝えるべし、我由(なお)未だ郷人爲(た)るを免れざるなり、是れ則ち憂うべきなり、之を憂えば如何(いかん)、舜の如くなるのみ、夫(かの)君子の若きは患う所は則ち亡(な)し、仁に非ざれば爲すこと無きなり、礼に非ざれば行うこと無きなり、如(も)し一朝の患い有れば、則ち君子患えず、


章番号 29 章通し番号 118

通し番号 523 章内番号 1 章通し番号 118 識別番号 8_29_1
1禹稷當平世、2三過其門而不入、3孔子賢之、
禹稷平世に当り、三たび其門を過ぎて入らず、孔子之を賢とす、

通し番号 524 章内番号 2 章通し番号 118 識別番号 8_29_2
1顏子當亂世、2居於陋巷、3一簞食、4一瓢飮、5人不堪其憂、6顏子不改其樂、7孔子賢之、
顔子乱世に当り、陋巷(ろうこう)に居り、一簞(たん)の食(し)、一瓢(ひょう)の飮、人其憂いに堪えず、顔子其楽しみを改めず、孔子之を賢とす、

通し番号 525 章内番号 3 章通し番号 118 識別番号 8_29_3
1孟子曰、2禹稷、3顏囘同道、
孟子曰く、禹稷、顔回道を同じくす、

通し番号 526 章内番号 4 章通し番号 118 識別番号 8_29_4
1禹思天下有溺者、2由己溺之也、3稷思天下有飢者、4由己飢之也、5是以如是其急也、
禹は天下溺れる者有れば、由(なお)己之を溺らすがごとく思うなり、稷は天下飢える者有れば、由(なお)己之を飢やすがごとく思うなり、是を以て是(かく)の如く其急なり、

通し番号 527 章内番号 5 章通し番号 118 識別番号 8_29_5
1禹稷、2顏子易地則皆然、
禹稷、顔子地を易えれば則ち皆然り、

通し番号 528 章内番号 6 章通し番号 118 識別番号 8_29_6
1今有同室之人鬭者、2救之、3雖被髮纓冠而救之、4可也、
今同室の人鬭(たたか)う者有り、之を救(とめ)るに、被髮に冠を纓(えい)して之を救(とめ)ると雖も、可なり、

通し番号 529 章内番号 7 章通し番号 118 識別番号 8_29_7
1郷鄰有鬭者、2被髮纓冠而往救之、3則惑也、4雖閉戶可也、
郷鄰に鬭(たたか)う者有り、被髮に冠を纓(えい)して往きて之を救(とめ)れば、則ち惑(まど)いなり、戸を閉ずと雖も可なり、


章番号 30 章通し番号 119

通し番号 530 章内番号 1 章通し番号 119 識別番号 8_30_1
1公都子曰、2匡章、3通國皆稱不孝焉、4夫子與之遊、5又從而禮貌之、6敢問何也、
公都子曰く、匡章、国を通じて皆不孝と称(い)う、夫子(ふうし)之と遊ぶ、又従いて之を礼貌す、敢えて問う何ぞや、

通し番号 531 章内番号 2 章通し番号 119 識別番号 8_30_2
1孟子曰、2世俗所謂不孝者五、3惰其四支、4不顧父母之養、5一不孝也、6博弈好飮酒、7不顧父母之養、8二不孝也、9好貨財、10私妻子、11不顧父母之養、12三不孝也、13從耳目之欲、14以爲父母戮、15四不孝也、16好勇鬭很、17以危父母、18五不孝也、19章子有一於是乎、
孟子曰く、世俗謂う所の不孝なるもの五あり、其四支を惰(おこた)り、父母の養を顧ず、一の不孝なり、博弈(ばくえき)し飮酒を好み、父母の養を顧ず、二の不孝なり、貨財を好み、妻子を私(あい)し、父母の養を顧ず、三の不孝なり、耳目の欲に従(ほしいまま)にして、以て父母の戮(りく)を爲す、四の不孝なり、勇を好み鬭(とう)很(こん)し、以って父母を危うくす、五の不孝なり、章子是に於て一有るか、

通し番号 532 章内番号 3 章通し番号 119 識別番号 8_30_3
1夫章子、2子父責善、3而不相遇也、
夫(かの)章子は、子父が善を責めて、相遇(あ)わざるなり、

通し番号 533 章内番号 4 章通し番号 119 識別番号 8_30_4
1責善、2朋友之道也、3父子責善、4賊恩之大者、
善を責むるは、朋友の道なり、父子が善を責むは、恩を賊(そこな)うの大なるものなり、

通し番号 534 章内番号 5 章通し番号 119 識別番号 8_30_5
1夫章子、2豈不欲有夫妻子母之屬哉、3爲得罪於父、4不得近、5出妻屛子、6終身不養焉、7其設心以爲不若是、8是則罪之大者、9是則章子已矣、
夫(かの)章子、豈夫妻子母の属有ることを欲せざらんや、罪を父に得て、近づくを得ざるが爲なり、妻を出し子を屛(しりぞ)け、終身養われず、其心を設(もう)くるに、以て是(かく)の若からざるを爲せば、是れ則ち罪の大なるものなり、是れ則ち章子のみ、


章番号 31 章通し番号 120

通し番号 535 章内番号 1 章通し番号 120 識別番号 8_31_1
1曾子居武城、2有越寇、3或曰、4寇至、5盍去諸、6曰、7無寓人於我室、8毀傷其薪木、9寇退則曰、10脩我牆屋、11我將反、12寇退、13曾子反、14左右曰、15待先生、16如此其忠且敬也、17寇至則先去、18以爲民望、19寇退則反、20殆於不可、21沈猶行曰、22是非汝所知也、23昔沈猶有負芻之禍、24從先生者七十人、25未有與焉、
曽子は武城に居る、越の寇(こう)有り、或るひと曰く、寇(こう)至る、盍(なん)ぞ諸(これ)を去らざる、曰く、人を我が室に寓(やど)し、其薪木を毀傷すること無かれ、寇退けば則ち曰く、我が牆屋(しょうおく)を脩めよ、我に将に反らんとす、寇退き、曽子反る、左右曰く、先生を待つこと、此如く其忠且(か)つ敬なり、寇至れば則ち先に去る、以て民の望を爲す、寇退けば則ち反る、不可に殆(ちか)し、沈猶行(しんゆうこう)曰く、是れ汝の知る所に非ざるなり、昔沈猶に負芻の禍有り、先生に従う者七十人、未だ与(あずか)ること有らず、

通し番号 536 章内番号 2 章通し番号 120 識別番号 8_31_2
1子思居於衛、2有齊寇、3或曰、4寇至、5盍去諸、6子思曰、7如伋去、8君誰與守、
子思は衛に居る、斉の寇有り、或るひと曰く、寇至る、盍(なん)ぞ諸(これ)を去らざる、子思曰く、如し伋(きゅう)去らば、君誰と与(とも)に守る、

通し番号 537 章内番号 3 章通し番号 120 識別番号 8_31_3
1孟子曰、2曾子、3子思同道、4曾子、5師也、6父兄也、7子思、8臣也、9微也、10曾子、11子思易地則皆然、
孟子曰く、曽子、子思道を同じくす、曽子、師なり、父兄なり、子思、臣なり、微なり、曽子、子思地を易えれば則ち皆然り、


章番号 32 章通し番号 121

通し番号 538 章内番号 1 章通し番号 121 識別番号 8_32_1
1儲子曰、2王使人瞯夫子、3果有以異於人乎、4孟子曰、5何以異於人哉、6堯舜與人同耳、
儲子(ちょし)曰く、王は人をして夫子(ふうし)を瞯(うかが)わしむ、果たして以て人に異なること有るか、孟子曰く、何を以てか人に異ならんや、堯舜人と同じきのみ、


章番号 33 章通し番号 122

通し番号 539 章内番号 1 章通し番号 122 識別番号 8_33_1
1齊人有一妻一妾而處室者、2其良人出、3則必饜酒肉而後反、4其妻問所與飮食者、5則盡富貴也、6其妻告其妾曰、7良人出、8則必饜酒肉而後反、9問其與飮食者、10盡富貴也、11而未嘗有顯者來、12吾將瞯良人之所之也、13蚤起、14施從良人之所之、15徧國中無與立談者、16卒之東郭墦閒之祭者、17乞其餘、18不足、19又顧而之他、20此其爲饜足之道也、21其妻歸、22告其妾曰、23良人者、24所仰望而終身也、25今若此、26與其妾訕其良人、27而相泣於中庭、28而良人未之知也、29施施從外來、30驕其妻妾、
斉人一妻一妾にて室に処(お)る者有り、其良人(おっと)出ずれば、則ち必ず酒肉に饜(あ)きて後反る、其妻与(とも)に飮食する所の者を問えば、則ち尽く富貴なり、其妻其妾に告げて曰く、良人出ずれば、則ち必ず酒肉に饜(あ)きて後反る、其与(とも)に飮食する者を問えば、尽く富貴なり、而るに未だ嘗て顕者来ること有らず、吾将に良人の之く所を瞯(うかが)わんとするなり、蚤(つと)に起き、施(ななめ)に良人の之く所に従う、国中に徧(あまね)くして与(ともに)立談する者無し、卒(つい)に東郭(かく)の墦(はん)間に之き祭る者に之く、其余を乞う、足らざれば、又顧みて他に之く、此其饜(えん)足を爲すの道なり、其妻帰り、其妾に告げて曰く、良人は、仰ぎ望みて身を終える所なり、今此若し、其妾と其良人を訕(そし)りて、中庭に於て相泣く、而るに良人未だ之を知らざるなり、施施として外従(よ)り来り、其妻妾に驕る、

通し番号 540 章内番号 2 章通し番号 122 識別番号 8_33_2
1由君子觀之、2則人之所以求富貴利達者、3其妻妾不羞也、4而不相泣者、5幾希矣、
君子由り之を観れば、則ち人の以て富貴利達を求める所のものは、其妻妾羞(は)じずして相泣かざるものは、幾希(すくな)し、


9 萬章章句上 wàn zhāng zhāng jù shàng

章番号 1 章通し番号 123

通し番号 541 章内番号 1 章通し番号 123 識別番号 9_1_1
1萬章問曰、2舜往于田、3號泣于旻天、4何爲其號泣也、5孟子曰、6怨慕也、
万章(ばんしょう)問いて曰く、舜が田に往き、旻天(びんてん)に号泣す、何爲(なんすれ)ぞ其号泣するや、孟子曰く、怨慕なり、

通し番号 542 章内番号 2 章通し番号 123 識別番号 9_1_2
1萬章曰、2父母愛之、3喜而不忘、4父母惡之、5勞而不怨、6然則舜怨乎、7曰、8長息問於公明高曰、9舜往于田、10則吾旣得聞命矣、11號泣于旻天于父母、12則吾不知也、13公明高曰、14是非爾所知也、15夫公明高以孝子之心、16爲不若是恝、17我竭力耕田、18共爲子職而已矣、19父母之不我愛、20於我何哉、
万章曰く、父母之を愛すれば、喜びて忘れず、父母之を悪(にく)めば、労(うれ)えて怨みず、然らば則ち舜怨みたるか、曰く、長息は公明高に問いて曰く、舜田に往く、則ち吾既に命を聞くことを得る、旻天に父母に号泣するは、則ち吾知らざるなり、公明高曰く、是れ爾(なんじ)の知る所に非ざるなり、夫(それ)公明高は孝子の心以て、是(かく)の若く恝(かつ)ならずと爲す、我力を竭し田を耕す、子爲(た)るの職を共(つつし)む、父母の我を愛さざる、我に於て何ぞや、

通し番号 543 章内番号 3 章通し番号 123 識別番号 9_1_3
1帝使其子九男二女、2百官牛羊倉廩備、3以事舜於畎畝之中、4天下之士、5多就之者、6帝將胥天下而遷之焉、7爲不順於父母、8如窮人無所歸、
帝其子九男二女をして、百官牛羊倉廩(そうりん)を備え、以て舜に畎畝(けんぽ)の中に於て事(つか)えしむ、天下の士、之に就く者多し、帝将に天下を胥(み)て之に遷(うつ)さんとす、父母に順ならざる爲に、窮人の帰する所無きが如し、

通し番号 544 章内番号 4 章通し番号 123 識別番号 9_1_4
1天下之士悅之、2人之所欲也、3而不足以解憂、4好色、5人之所欲、6妻帝之二女、7而不足以解憂、8富、9人之所欲、10富有天下、11而不足以解憂、12貴、13人之所欲、14貴爲天子、15而不足以解憂、16人悅之、17好色富貴、18無足以解憂者、19惟順於父母、20可以解憂、
天下の士之に悦(したが)うは、人の欲する所なり、而るに以て憂いを解くに足らず、好色は、人の欲する所なり、帝の二女を妻として、以て憂いを解くに足らず、富は、人の欲する所なり、富は天下を有つ、而るに以て憂いを解くに足らず、貴は、人の欲する所なり、貴は天子と爲る、而るに以て憂いを解くに足らず、人之に悦(したがう)、好色富貴、以て憂いを解くに足るもの無し、惟(ただ)父母に順なれば、以て憂いを解くべし、

通し番号 545 章内番号 5 章通し番号 123 識別番号 9_1_5
1人少、2則慕父母、3知好色、4則慕少艾、5有妻子、6則慕妻子、7仕則慕君、8不得於君則熱中、9大孝終身慕父母、10五十而慕者、11予於大舜見之矣、
人少(おさな)ければ、則ち父母を慕(おも)う、色を好むを知れば、則ち少艾(しょうがい)を慕(おも)う、妻子有れば、則ち妻子を慕(おも)う、仕えれば則ち君を慕(おも)う、君に得られざれば則ち熱中す、大孝は終身父母を慕(おも)う、五十にして慕(おも)う者、予は大舜に於て之を見る、


章番号 2 章通し番号 124

通し番号 546 章内番号 1 章通し番号 124 識別番号 9_2_1
1萬章問曰、2詩云、3娶妻如之何、4必告父母、5信斯言也、6宜莫如舜、7舜之不告而娶、8何也、9孟子曰、10告則不得娶、11男女居室、12人之大倫也、13如告、14則廢人之大倫、15以懟父母、16是以不告也、
万章問いて曰く、詩云う、妻を娶(めと)るは之を如何(いかん)、必ず父母に告ぐ、信(まこと)に斯言ならば、宜しく舜の如く莫かるべし、舜の告げずして娶るは、何ぞや、孟子曰く、告げれば則ち娶ることを得ず、男女室に居る、人の大倫なり、如し告げれば、則ち人の大倫を廃し、以て父母を懟(うら)む、是を以て告げざるなり、

通し番号 547 章内番号 2 章通し番号 124 識別番号 9_2_2
1萬章曰、2舜之不告而娶、3則吾旣得聞命矣、4帝之妻舜而不告、5何也、6曰、7帝亦知告焉則不得妻也、
万章曰く、舜の告げずして娶るは、則ち吾既に命を聞くことを得る、帝の舜に妻(めあわ)せて告げざるは、何ぞや、曰く、帝亦告ぐれば則ち妻(めあわ)すことを得ざるを知るなり、

通し番号 548 章内番号 3 章通し番号 124 識別番号 9_2_3
1萬章曰、2父母使舜完廩、3捐階、4瞽瞍焚廩、5使浚井、6出、7從而揜之、8象曰、9謨蓋都君咸我績、10牛羊父母、11倉廩父母、12干戈朕、13琴朕、14弤朕、15二嫂使治朕棲、16象往入舜宮、17舜在牀琴、18象曰、19鬱陶思君爾、20忸怩、21舜曰、22惟茲臣庶、23汝其于予治、24不識舜不知象之將殺己與、25曰、26奚而不知也、27象憂亦憂、28象喜亦喜、
万章曰く、父母舜をして廩(くら)を完(おさ)めしむ、階(はしご)を捐(さ)り、瞽瞍(こそう)廩を焚(や)く、井を浚(さら)えしむ、出ず、従いて之を揜(おお)う、象(しょう)曰く、都君を蓋(おお)うことを謨(はか)るは咸(みな)我が績(いさお)なり、牛羊は父母、倉廩は父母、干戈(かんか)は朕(われ)、琴は朕、弤(てい)は朕、二嫂(そう)朕が棲(せい)を治めしむ、象は往きて舜の宮に入る、舜牀(ゆか)に在りて琴ひく、象曰く、鬱陶(うっとう)として君を思うのみ、忸怩(じくじ)たり、舜曰く、惟(これ)茲(この)臣庶(しんしょ)、汝其れ予(われ)が于(ため)に治めよ、識らず、舜は象の将に己を殺さんとするを知らざるか、曰く、奚(なん)ぞ知らざらん、象憂えば亦憂う、象喜べば亦喜ぶ、

通し番号 549 章内番号 4 章通し番号 124 識別番号 9_2_4
1曰、2然則舜僞喜者與、3曰、4否、5昔者有饋生魚於鄭子產、6子產使校人畜之池、7校人烹之、8反命曰、9始舍之圉圉焉、10少則洋洋焉、11攸然而逝、12子產曰、13得其所哉、14得其所哉、15校人出曰、16孰謂子產智、17予旣烹而食之、18曰、19得其所哉、20得其所哉、21故君子可欺以其方、22難罔以非其道、23彼以愛兄之道來、24故誠信而喜之、25奚僞焉、
曰く、然らば則ち舜僞(いつわ)りて喜ぶ者か、曰く、否、昔者(むかし)生魚を鄭の子産に饋(おく)ること有り、子産校人をして之を池に畜(やしな)わしむ、校人之を烹る、反命して曰く、始め之を舍(はな)てば圉圉焉(ぎょぎょえん)たり、少(しばらく)すれば則ち洋洋焉(ようようえん)たり、攸然(ゆうぜん)として逝(ゆ)く、子産曰く、其所を得たるかな、其所を得たるかな、校人出でて曰く、孰(たれ)か子産を智と謂う、予既に烹て之を食べる、曰く、其所を得たるかな、其所を得たるかな、故に君子は欺むくに其方を以てするは可なり、罔(くら)ますに其道に非ざるを以てし難し、彼は兄を愛するの道以て来る、故に誠に信じて之を喜ぶ、奚ぞ僞(いつわ)らん、


章番号 3 章通し番号 125

通し番号 550 章内番号 1 章通し番号 125 識別番号 9_3_1
1萬章問曰、2象日以殺舜爲事、3立爲天子、4則放之、5何也、6孟子曰、7封之也、8或曰放焉、
万章問いて曰く、象は日に舜を殺すを以て事と爲す、立ちて天子と爲れば、則ち之を放つ、何ぞや、孟子曰く、之を封(ほう)ずるなり、或るひと放つと曰う、

通し番号 551 章内番号 2 章通し番号 125 識別番号 9_3_2
1萬章曰、2舜流共工于幽州、3放驩兜于崇山、4殺三苗于三危、5殛鯀于羽山、6四罪而天下咸服、7誅不仁也、8象至不仁、9封之有庳、10有庳之人奚罪焉、11仁人固如是乎、12在他人則誅之、13在弟則封之、14曰、15仁人之於弟也、16不藏怒焉、17不宿怨焉、18親愛之而已矣、19親之欲其貴也、20愛之欲其富也、21封之有庳、22富貴之也、23身爲天子、24弟爲匹夫、25可謂親愛之乎、
万章曰く、舜共工を幽州に流し、驩兜(かんとう)を崇山(すうざん)に放ち、三苗を三危に殺し、鯀(こん)を羽山に殛(きょく)す、四罪(しざい)して天下咸(みな)服す、不仁を誅(ばっ)するなり、象至りて不仁なり、之を有庳に封ず、有庳の人奚(なん)の罪かある、仁人固より是の如きか、他人に在れば則ち之を誅(ばっ)す、弟に在れば則ち之を封ず、曰く、仁人の弟に於るや、怒りを蔵(たくわ)えず、怨みを宿さず、之を親愛するのみ、之に親しめば其貴を欲するなり、之を愛せば其富を欲するなり、之を有庳に封ずるは、之を富貴にするなり、身天子と爲り、弟匹夫(ひっぷ)爲(た)れば、之を親愛すると謂うべきか、

通し番号 552 章内番号 3 章通し番号 125 識別番号 9_3_3
1敢問、2或曰放者、3何謂也、4曰、5象不得有爲於其國、6天子使吏治其國、7而納其貢稅焉、8故謂之放、9豈得暴彼民哉、10雖然、11欲常常而見之、12故源源而來、13不及貢、14以政接于有庳、15此之謂也、
敢えて問う、或るひと放つと曰うは、何の謂(いい)ぞや、曰く、象其国に於て爲すこと有るを得ず、天子吏をして其国を治め、其貢税を納(い)れしむ、故に之を放つと謂う、豈彼(かの)民を暴(そこな)うことを得んや、然りと雖も、常常にして之に見(あ)わんと欲す、故に源源として来り、貢に及ばず、政を以て有庳に接す、此を之謂うなり、


章番号 4 章通し番号 126

通し番号 553 章内番号 1 章通し番号 126 識別番号 9_4_1
1咸丘蒙問曰、2語云、3盛德之士、4君不得而臣、5父不得而子、6舜南面而立、7堯帥諸侯、8北面而朝之、9瞽瞍亦北面而朝之、10舜見瞽瞍、11其容有蹙、12孔子曰、13於斯時也、14天下殆哉、15岌岌乎、16不識此語誠然乎哉、17孟子曰、18否、19此非君子之言、20齊東野人之語也、21堯老而舜攝也、22堯典曰、23二十有八載、24放勳乃徂落、25百姓如喪考妣、26三年四海遏密八音、27孔子曰、28天無二日、29民無二王、30舜旣爲天子矣、31又帥天下諸侯、32以爲堯三年喪、33是二天子矣、
咸丘蒙(かんきゅうもう)問いて曰く、語に云う、盛徳の士、君得て臣とせず、父得て子とせず、舜南面して立つ、堯諸侯を帥(ひき)い、北面して之に朝す、瞽瞍(こそう)亦北面して之に朝す、舜瞽瞍を見る、其容蹙(しゅく)有り、孔子曰く、斯時に於てや、天下殆(あやう)いかな、岌岌乎(きゅうきゅうこ)たり、識(し)らず、此語誠に然るか、孟子曰く、否、此は君子の言に非ず、斉の東の野人の語なり、堯老いて舜摂するなり、堯典に曰く、二十有八載、放勲(ほうくん)乃ち徂落(そらく)す、百姓は考妣(こうひ)を喪するが如し、三年四海は八音を遏密(あつみつ)す、孔子曰く、天に二日(じつ)無く、民に二王無し、舜既に天子と爲り、又天下の諸侯を帥い、以て堯の三年の喪を爲せば、是れ二天子なり、

通し番号 554 章内番号 2 章通し番号 126 識別番号 9_4_2
1咸丘蒙曰、2舜之不臣堯、3則吾旣得聞命矣、4詩云、5普天之下、6莫非王土、7率土之濱、8莫非王臣、9而舜旣爲天子矣、10敢問瞽瞍之非臣、11如何、12曰、13是詩也、14非是之謂也、15勞於王事、16而不得養父母也、17曰、18此莫非王事、19我獨賢勞也、20故說詩者、21不以文害辭、22不以辭害志、23以意逆志、24是爲得之、25如以辭而已矣、26雲漢之詩曰、27周餘黎民、28靡有孑遺、29信斯言也、30是周無遺民也、
咸丘蒙曰く、舜の堯を臣とせずは、則ち吾既に命を聞くことを得る、詩に云う、普天の下、王土に非ざる莫し、率土の浜、王の臣に非ざる莫し、而して舜既に天子と爲る、敢えて問う、瞽瞍の臣に非ざるは、如何(いかん)、曰く、是詩や、是の謂(いい)に非ざるなり、王の事に労して、父母を養うことを得ざるなり、曰く、此(これ)王の事に非ざるは莫し、我独り賢として労するなり、故に詩を説くは、文以て辞を害さず、辞以て志を害さず、意以て志を逆(むか)う、是れ之を得ると爲す、如(も)し辞のみを以てすれば、雲漢の詩に曰く、周の余(のち)の黎民(れいみん)、孑(けつ)遺(い)有ること靡(な)し、斯言を信ずれば、是れ周に遺民無きなり、

通し番号 555 章内番号 3 章通し番号 126 識別番号 9_4_3
1孝子之至、2莫大乎尊親、3尊親之至、4莫大乎以天下養、5爲天子父、6尊之至也、7以天下養、8養之至也、9詩曰、10永言孝思、11孝思維則、12此之謂也、
孝子の至りは、親を尊(たっと)ぶより大なるは莫し、親を尊ぶの至りは、天下以て養うより大なるは莫し、天子の父と爲るは、尊ぶの至りなり、天下以て養うは、養うの至りなり、詩に曰く、永く言(ここ)に孝を思う、孝を思えば維(これ)則とす、此を之謂うなり、

通し番号 556 章内番号 4 章通し番号 126 識別番号 9_4_4
1書曰、2祗載見瞽瞍、3夔夔齊栗、4瞽瞍亦允若、5是爲父不得而子也、
書に曰く、載(こと)を祗(つつし)み瞽瞍(こそう)を見る、夔夔(きき)斉栗(せいりつ)、瞽瞍亦允(しん)じ若(したが)う、是れ父得て子とせずと爲すなり、


章番号 5 章通し番号 127

通し番号 557 章内番号 1 章通し番号 127 識別番号 9_5_1
1萬章曰、2堯以天下與舜、3有諸、4孟子曰、5否、6天子不能以天下與人、
万章曰く、堯は天下以て舜に与う、諸有りや、孟子曰く、否、天子は天下以て人に与えること能わず、

通し番号 558 章内番号 2 章通し番号 127 識別番号 9_5_2
1然則舜有天下也、2孰與之、3曰、4天與之、
然らば則ち舜天下を有つや、孰か之を与う、曰く、天之を与う、

通し番号 559 章内番号 3 章通し番号 127 識別番号 9_5_3
1天與之者、2諄諄然命之乎、
天之を与えるは、諄諄然(じゅんじゅんぜん)として之を命(つ)げるか、

通し番号 560 章内番号 4 章通し番号 127 識別番号 9_5_4
1曰、2否、3天不言、4以行與事示之而已矣、
曰く、否、天言わず、行と事を以て之に示すのみ、

通し番号 561 章内番号 5 章通し番号 127 識別番号 9_5_5
1曰、2以行與事示之者如之何、3曰、4天子能薦人於天、5不能使天與之天下、6諸侯能薦人於天子、7不能使天子與之諸侯、8大夫能薦人於諸侯、9不能使諸侯與之大夫、10昔者堯薦舜於天、11而天受之、12暴之於民、13而民受之、14故曰、15天不言、16以行與事示之而已矣、
曰く、行と事を以て之を示すは之を如何(いかん)、曰く、天子能く人を天に薦(すす)む、天をして之に天下を与えしむること能わず、諸侯能く人を天子に薦(すす)む、天子をして之に諸侯を与えしむること能わず、大夫能く人を諸侯に薦(すす)む、諸侯をして之に大夫を与えしむること能わず、昔者(むかし)堯舜を天に薦む、而して天之を受く、之を民に暴(あらわ)して、民之を受く、故に曰く、天言わず、行と事を以て之に示すのみ、

通し番号 562 章内番号 6 章通し番号 127 識別番号 9_5_6
1曰、2敢問薦之於天而天受之、3暴之於民而民受之、4如何、5曰、6使之主祭而百神享之、7是天受之、8使之主事而事治、9百姓安之、10是民受之也、11天與之、12人與之、13故曰、14天子不能以天下與人、
曰く、敢えて問う、之を天に薦めて天之を受く、之を民に暴(あら)わして民之を受くは、如何、曰く、之をして祭を主(つかさど)らしめて百神之を享(う)く、是れ天之を受く、之をして事を主(つかさど)らしめて事治まり、百姓之に安んず、是れ民之を受くるなり、天之に与え、人之に与う、故に曰く、天子は天下以て人に与えること能わず、

通し番号 563 章内番号 7 章通し番号 127 識別番号 9_5_7
1舜相堯二十有八載、2非人之所能爲也、3天也、4堯崩、5三年之喪畢、6舜避堯之子於南河之南、7天下諸侯朝覲者、8不之堯之子而之舜、9訟獄者、10不之堯之子而之舜、11謳歌者、12不謳歌堯之子而謳歌舜、13故曰、14天也、15夫然後之中國、16踐天子位焉、17而居堯之宮、18逼堯之子、19是簒也、20非天與也、
舜堯に相たること二十有八載、人の能く爲す所に非ざるなり、天なり、堯崩ず、三年の喪畢(おわ)る、舜は堯の子を南河の南に避く、天下の諸侯朝覲(きん)する者、堯の子に之かずして舜に之く、訟獄(しょうごく)する者、堯の子に之かずして舜に之く、謳歌(おうか)する者、堯の子を謳歌せずして舜を謳歌す、故に曰く、天なり、夫(それ)然る後に中国に之き、天子の位を践(ふ)む、而(しか)るに堯の宮に居り、堯の子に逼(せま)らば、是れ簒(うば)うなり、天が与えるに非ざるなり、

通し番号 564 章内番号 8 章通し番号 127 識別番号 9_5_8
1太誓曰、2天視自我民視、3天聽自我民聽、4此之謂也、
太誓(たいせい)に曰く、天の視は我が民の視に自(したが)う、天の聴は我が民の聴に自(したが)う、此の謂(いい)なり、


章番号 6 章通し番号 128

通し番号 565 章内番号 1 章通し番号 128 識別番号 9_6_1
1萬章問曰、2人有言、3至於禹而德衰、4不傳於賢而傳於子、5有諸、6孟子曰、7否、8不然也、9天與賢、10則與賢、11天與子、12則與子、13昔者舜薦禹於天、14十有七年、15舜崩、16三年之喪畢、17禹避舜之子於陽城、18天下之民從之、19若堯崩之後、20不從堯之子而從舜也、21禹薦益於天、22七年、23禹崩、24三年之喪畢、25益避禹之子於箕山之陰、26朝覲訟獄者、27不之益而之啓、28曰、29吾君之子也、30謳歌者、31不謳歌益而謳歌啓、32曰、33吾君之子也、
万章問いて曰く、人言有り、禹に至りて徳衰う、賢に伝えずして子に伝う、諸有りや、孟子曰く、否、然らざるなり、天、賢に与えれば、則ち賢に与う、天、子に与えれば、則ち子に与う、昔者(むかし)舜が禹を天に薦むること、十有七年、舜崩ず、三年の喪畢(おわ)る、禹は舜の子を陽城に避く、天下の民之に従う、堯崩ずるの後、堯の子に従わずして舜に従うが若きなり、禹が益を天に薦(すす)むこと、七年、禹崩ず、三年の喪畢(おわ)る、益、禹の子を箕山(きざん)の陰に避く、朝覲(ちょうきん)訟獄(しょうごく)する者、益に之かずして啓に之く、曰く、吾君の子なり、謳歌する者、益を謳歌せずして啓を謳歌す、曰く、吾君の子なり、

通し番号 566 章内番号 2 章通し番号 128 識別番号 9_6_2
1丹朱之不肖、2舜之子亦不肖、3舜之相堯、4禹之相舜也、5歴年多、6施澤於民久、7啓賢能敬、8承繼禹之道、9益之相禹也、10歴年少、11施澤於民未久、12舜、13禹、14益相去久遠、15其子之賢不肖、16皆天也、17非人之所能爲也、18莫之爲而爲者、19天也、20莫之致而至者、21命也、
丹朱之(は)不肖なり、舜の子亦不肖なり、舜の堯に相たる、禹の舜に相たるや、年を歴(へ)ること多し、沢を民に施すこと久し、啓は賢にして能く敬(つつし)み、禹の道を承継す、益の禹に相たるや、年を歴ること少し、沢を民に施すこと未だ久しからず、舜、禹、益、相去ること久遠なり、其子の賢不肖、皆天なり、人の能く爲す所に非ざるなり、之を爲すこと莫くして爲るものは、天なり、之を致すこと莫くして至るものは、命なり、

通し番号 567 章内番号 3 章通し番号 128 識別番号 9_6_3
1匹夫而有天下者、2德必若舜禹、3而又有天子薦之者、4故仲尼不有天下、
匹夫にして天下を有(たも)つ者は、徳必ず舜禹の若くして、又天子之を薦(すす)めること有り、故に仲尼天下を有(たも)たず、

通し番号 568 章内番号 4 章通し番号 128 識別番号 9_6_4
1繼世而有天下、2天之所廢、3必若桀紂者也、4故益、5伊尹、6周公不有天下、
世を継(つ)ぎて天下を有つ、天の廃する所は、必ず桀紂の若き者なり、故に益、伊尹、周公天下を有たず、

通し番号 569 章内番号 5 章通し番号 128 識別番号 9_6_5
1伊尹相湯、2以王於天下、3湯崩、4太丁未立、5外丙二年、6仲壬四年、7太甲顚覆湯之典刑、8伊尹放之於桐、9三年、10太甲悔過、11自怨自艾、12於桐處仁遷義、13三年、14以聽伊尹之訓己也、15復歸于亳、
伊尹は湯に相(しょう)として、以て天下に王とす、湯崩ず、太丁(たいてい)未だ立たず、外丙(がいへい)二年、仲壬(ちゅうじん)四年、太甲は湯の典刑を顚覆(てんぷく)す、伊尹之を桐に放つこと三年なり、太甲過を悔い、自ら怨み自ら艾(おさ)め、桐に於て仁に処(お)り義に遷(うつ)ること、三年、以て伊尹の己に訓(おし)えるを聴くなり、亳(はく)に復帰す、

通し番号 570 章内番号 6 章通し番号 128 識別番号 9_6_6
1周公之不有天下、2猶益之於夏、3伊尹之於殷也、
周公の天下を有さざるは、猶益の夏に於る、伊尹の殷に於るがごときなり、

通し番号 571 章内番号 7 章通し番号 128 識別番号 9_6_7
1孔子曰、2唐虞禪、3夏后殷周繼、4其義一也、
孔子曰く、唐虞(ぐ)禅(ゆず)り、夏后(かこう)殷周継ぐ、其義一なり、


章番号 7 章通し番号 129

通し番号 572 章内番号 1 章通し番号 129 識別番号 9_7_1
1萬章問曰、2人有言、3伊尹以割烹要湯、4有諸、
万章問いて曰く、人、言有り、伊尹は割烹(かっぽう)以て湯に要(もと)む、諸(これ)有りや、

通し番号 573 章内番号 2 章通し番号 129 識別番号 9_7_2
1孟子曰、2否、3不然、4伊尹耕於有莘之野、5而樂堯舜之道焉、6非其義也、7非其道也、8祿之以天下、9弗顧也、10繫馬千駟、11弗視也、12非其義也、13非其道也、14一介不以與人、15一介不以取諸人、
孟子曰く、否、然らず、伊尹、有莘(しん)の野に耕やして、堯舜の道を楽しむ、其義に非ず、其道に非ざれば、之を禄するに天下以てすれども、顧みざるなり、繫馬(けいば)千駟(し)、視ざるなり、其義に非ず、其道に非ざれば、一介以て人に与えず、一介以て諸を人に取らず、

通し番号 574 章内番号 3 章通し番号 129 識別番号 9_7_3
1湯使人以幣聘之、2囂囂然曰、3我何以湯之聘幣爲哉、4我豈若處畎畝之中、5由是以樂堯舜之道哉、
湯人をして幣(へい)以て之を聘(へい)せしむ、囂囂然(ごうごうぜん)として曰く、我何ぞ湯の聘幣以て爲さんや、我豈畎畝(けんぽ)の中に処(お)り、是に由り以て堯舜の道を楽しむことに若(し)かんや、

通し番号 575 章内番号 4 章通し番号 129 識別番号 9_7_4
1湯三使往聘之、2旣而幡然改曰、3與我處畎畝之中、4由是以樂堯舜之道、5吾豈若使是君爲堯舜之君哉、6吾豈若使是民爲堯舜之民哉、7吾豈若於吾身親見之哉、
湯三たび往(ゆ)きて之を聘(へい)せしむ、既にして幡然(はんぜん)として改めて曰く、我畎畝の中に処(お)り、是に由りて以て堯舜の道を楽しむ与(より)、吾豈是君をして堯舜の君爲(た)らしめるに若かんや、吾豈是民をして堯舜の民爲らしめるに若かんや、吾豈吾身に於て親(みずか)ら之を見るに若かんや、

通し番号 576 章内番号 5 章通し番号 129 識別番号 9_7_5
1天之生此民也、2使先知覺後知、3使先覺覺後覺也、4予天民之先覺者也、5予將以斯道覺斯民也、6非予覺之而誰也、
天の此民を生ずるや、先知をして後知を覚(さと)らしめ、先覚をして後覚を覚(さと)らしめるなり、予は天の民の先覚なる者なり、予は将に斯道を以て斯民を覚(さと)さんとするなり、予之を覚すに非ずして誰ぞや、

通し番号 577 章内番号 6 章通し番号 129 識別番号 9_7_6
1思天下之民、2匹夫匹婦有不被堯舜之澤者、3若己推而内之溝中、4其自任以天下之重如此、5故就湯而說之、6以伐夏救民、
思うに、天下の民、匹夫匹婦堯舜の沢を被(こうむ)らざる者有れば、己推して之を溝中に内(い)るるが若し、其自ら任ずるに天下の重きを以てすること此如し、故に湯に就きて之に説き、以て夏を伐ち民を救う、

通し番号 578 章内番号 7 章通し番号 129 識別番号 9_7_7
1吾未聞枉己而正人者也、2況辱己以正天下者乎、3聖人之行不同也、4或遠或近、5或去或不去、6歸潔其身而已矣、
吾未だ己を枉(ま)げて人を正す者を聞かざるなり、況んや己を辱(はずか)しめて以て天下を正す者をや、聖人の行同じからざるなり、或いは遠ざかり或いは近づく、或いは去り或いは去らず、其身を潔(きよ)くするに帰するのみ、

通し番号 579 章内番号 8 章通し番号 129 識別番号 9_7_8
1吾聞其以堯舜之道要湯、2未聞以割烹也、
吾其堯舜の道以て湯に要(もと)めるを聞く、未だ割烹以てするを聞かざるなり、

通し番号 580 章内番号 9 章通し番号 129 識別番号 9_7_9
1伊訓曰、2天誅造攻自牧宮、3朕載自亳、
伊訓に曰く、天誅造(はじ)めて攻めるは牧宮自(よ)りす、朕は亳(はく)自(よ)り載(はじ)む


章番号 8 章通し番号 130

通し番号 581 章内番号 1 章通し番号 130 識別番号 9_8_1
1萬章問曰、2或謂孔子於衛主癰疽、3於齊主侍人瘠環、4有諸乎、5孟子曰、6否、7不然也、8好事者爲之也、
万章問いて曰く、或るひと謂う、孔子衛に於て癰疽(ようそ)を主とし、齊に於ては侍人(じじん)瘠環(せきかん)を主とす、諸(これ)有るか、孟子曰く、否、然らざるなり、事を好む者之を爲すなり、

通し番号 582 章内番号 2 章通し番号 130 識別番号 9_8_2
1於衛主顏讎由、2彌子之妻、3與子路之妻、4兄弟也、5彌子謂子路曰、6孔子主我、7衛卿可得也、8子路以告、9孔子曰、10有命、11孔子進以禮、12退以義、13得之不得、14曰有命、15而主癰疽與侍人瘠環、16是無義無命也、
衛に於て顔讎由(がんしゅうゆう)を主とす、彌子(びし)の妻は、子路の妻と、兄弟なり、彌子子路に謂いて曰く、孔子我を主とすれば、衛の卿得べきなり、子路以て告ぐ、孔子曰く、命有り、孔子進むに礼を以てす、退くに義を以てす、之を得る得ざるは、命有りと曰う、而るに癰疽(ようそ)と侍人瘠環(せきかん)を主とせば、是れ義無く命無きなり、

通し番号 583 章内番号 3 章通し番号 130 識別番号 9_8_3
1孔子不悅於魯衛、2遭宋桓司馬將要而殺之、3微服而過宋、4是時孔子當阨、5主司城貞子、6爲陳侯周臣、
孔子魯衛に於て悦(よろこ)ばれず、宋の桓司馬将に要(ま)ちて之を殺さんとするに遭う、微服して宋を過ぐ、是時孔子阨(やく)に当る、司城貞子、陳侯周の臣爲(た)るを主とす、

通し番号 584 章内番号 4 章通し番号 130 識別番号 9_8_4
1吾聞觀近臣、2以其所爲主、3觀遠臣、4以其所主、5若孔子主癰疽與侍人瘠環、6何以爲孔子、
吾聞く、近臣を観るは、其主と爲る所を以てし、遠臣を観るは、其主とする所を以てす、若(もし)孔子癰疽(ようそ)と侍人(じじん)瘠環(せきかん)を主とせば、何を以て孔子と爲さん、


章番号 9 章通し番号 131

通し番号 585 章内番号 1 章通し番号 131 識別番号 9_9_1
1萬章問曰、2或曰、3百里奚自鬻於秦養牲者、4五羊之皮、5食牛、6以要秦穆公、7信乎、8孟子曰、9否、10不然、11好事者爲之也、
万章問いて曰く、或るひと曰く、百里奚(ひゃくりけい)自ら秦の牲を養う者に於て、五羊の皮に鬻(ひさ)ぎ、牛を食(やしな)い、以て秦の穆公に要(もと)む、信か、孟子曰く、否、然らず、事を好む者之を爲すなり、

通し番号 586 章内番号 2 章通し番号 131 識別番号 9_9_2
1百里奚、2虞人也、3晉人以垂棘之璧、4與屈產之乘、5假道於虞以伐虢、6宮之奇諫、7百里奚不諫、
百里奚は、虞の人なり、晉人垂棘(すいきょく)の璧(へき)、屈産の乗を以て、道を虞(ぐ)に仮(か)り以て虢(はく)を伐つ、宮之奇(きゅうしき)は諫(いさ)め、百里奚は諫めず、

通し番号 587 章内番号 3 章通し番号 131 識別番号 9_9_3
1知虞公之不可諫、2而去之秦、3年已七十矣、4曾不知以食牛干秦穆公之爲汙也、5可謂智乎、6不可諫而不諫、7可謂不智乎、8知虞公之將亡、9而先去之、10不可謂不智也、11時舉於秦、12知穆公之可與有行也而相之、13可謂不智乎、14相秦而顯其君於天下、15可傳於後世、16不賢而能之乎、17自鬻以成其君、18郷黨自好者不爲、19而謂賢者爲之乎、
虞公の諫むべからざるを知りて、去りて秦に之く、年已に七十なり、曽(かつ)て以て牛を食(やしな)い秦の穆公に干(もと)めるの汙と爲すを知らざれば、智と謂うべきか、諫むべからずして諫めず、不智と謂うべきか、虞公の将に亡びんとするを知りて、先に之を去る、不智と謂うべからざるなり、時に秦に挙げられ、穆公(ぼくこう)の与(とも)に行うこと有るべきを知りて之に相(しょう)たり、不智と謂うべきか、秦に相(しょう)として其君を天下に顕(あらわ)し、後世に伝うべし、不賢にして之を能くするか、自ら鬻(う)り以て其君を成すは、郷党の自ら好くする者爲さず、而るに賢者之を爲すと謂うか、


10 萬章章句下 wàn zhāng zhāng jù xià

章番号 1 章通し番号 132

通し番号 588 章内番号 1 章通し番号 132 識別番号 10_1_1
1孟子曰、2伯夷目不視惡色、3耳不聽惡聲、4非其君不事、5非其民不使、6治則進、7亂則退、8橫政之所出、9橫民之所止、10不忍居也、11思與郷人處、12如以朝衣朝冠坐於塗炭也、13當紂之時、14居北海之濱、15以待天下之淸也、16故聞伯夷之風者、17頑夫廉、18懦夫有立志、
孟子曰く、伯夷は目悪色を視ず、耳悪声を聴かず、其君に非ざれば事(つか)えず、其民に非ざれば使わず、治まれば則ち進み、乱れば則ち退く、横政の出ずる所、横民の止(とど)まる所、居るに忍びざるなり、思うに、郷人と処(お)ること、朝衣朝冠以て塗炭に坐するが如きなり、紂の時に当り、北海の浜に居り、以て天下の清(おさ)まるを待つなり、故に伯夷の風を聞く者は、頑夫(がんぷ)は廉(れん)、懦夫(だふ)は志を立てること有り、

通し番号 589 章内番号 2 章通し番号 132 識別番号 10_1_2
1伊尹曰、2何事非君、3何使非民、4治亦進、5亂亦進、6曰、7天之生斯民也、8使先知覺後知、9使先覺覺後覺、10予天民之先覺者也、11予將以此道覺此民也、12思天下之民、13匹夫匹婦、14有不與被堯舜之澤者、15若己推而内之溝中、16其自任以天下之重也、
伊尹曰く、何(いず)れに事えるとして君に非ざる、何(いず)れを使うとして民に非ざる、治まる亦進み、乱る亦進む、曰く、天の斯民を生ずるや、先知をして後知を覚(さと)らしめ、先覚をして後覚を覚(さと)らしむ、予(われ)は天民の先覚なる者なり、予将に此道以て此民を覚さんとするなり、思うに天下の民、匹夫匹婦、堯舜の沢を被(こうむ)るに与(あずか)らざる者有れば、己推して之を溝中に内(い)るるが若し、其自ら任ずるに天下の重きを以てするなり、

通し番号 590 章内番号 3 章通し番号 132 識別番号 10_1_3
1柳下惠不羞汙君、2不辭小官、3進不隱賢、4必以其道、5遺佚而不怨、6阨窮而不憫、7與郷人處、8由由然不忍去也、9爾爲爾、10我爲我、11雖袒裼裸裎於我側、12爾焉能浼我哉、13故聞柳下惠之風者、14鄙夫寬、15薄夫敦、
柳下恵は汙君を羞(は)じず、小官を辞せず、進んで賢を隠さず、必ず其道を以てす、遺佚(いいつ)されて怨みず、阨(やく)窮して憫(うれ)えず、郷人と処(お)るに、由由然として去ることを忍びざるなり、爾(なんじ)は爾(なんじ)爲(た)り、我は我爲(た)り、我側(かたわら)で袒裼(たんてき)裸裎(らてい)すると雖も、爾焉ぞ能く我を浼(けが)さんや、故に柳下恵の風を聞く者は、鄙夫(ひふ)は寬(ひろ)く、薄夫は敦(あつ)し、

通し番号 591 章内番号 4 章通し番号 132 識別番号 10_1_4
1孔子之去齊、2接淅而行、3去魯曰、4遲遲吾行也、5去父母國之道也、6可以速而速、7可以久而久、8可以處而處、9可以仕而仕、10孔子也、
孔子の斉を去るは、淅を接(う)けて行(さ)る、魯を去るに曰く、遅遅として吾行(さ)るなり、父母の国を去るの道なり、以て速(すみや)かなるべくして速(すみや)か、以て久しかるべくして久し、以て処(お)るべくして処り、以て仕えるべくして仕えるは、孔子なり、

通し番号 592 章内番号 5 章通し番号 132 識別番号 10_1_5
1孟子曰、2伯夷、3聖之淸者也、4伊尹、5聖之任者也、6柳下惠、7聖之和者也、8孔子、9聖之時者也、
孟子曰く、伯夷は、聖の清なる者なり、伊尹は、聖の任なる者なり、柳下恵は、聖の和なる者なり、孔子は、聖の時なる者なり、

通し番号 593 章内番号 6 章通し番号 132 識別番号 10_1_6
1孔子之謂集大成、2集大成也者、3金聲而玉振之也、4金聲也者、5始條理也、6玉振之也者、7終條理也、8始條理者、9智之事也、10終條理者、11聖之事也、
孔子之集めて大成すと謂う、集めて大成するは、金が声(の)べて玉が之を振(おさ)むなり、金が声(の)ぶは、条理を始めるなり、玉が之を振(おさ)めるは、条理を終えるなり、条理を始めるは、智の事なり、条理を終えるは、聖の事なり、

通し番号 594 章内番号 7 章通し番号 132 識別番号 10_1_7
1智譬則巧也、2聖譬則力也、3由射於百歩之外也、4其至爾力也、5其中非爾力也、
智は譬(たとえ)ば則ち巧なり、聖は譬えば則ち力なり、由(なお)百歩の外に於て射(い)るがごときなり、其(その)至るは爾(なんじ)の力なり、其中(あた)るは爾の力に非ざるなり、


章番号 2 章通し番号 133

通し番号 595 章内番号 1 章通し番号 133 識別番号 10_2_1
1北宮錡問曰、2周室班爵祿也、3如之何、
北宮錡(ほくきゅうき)問いて曰く、周室爵禄を班(つら)ねるや、之を如何、

通し番号 596 章内番号 2 章通し番号 133 識別番号 10_2_2
1孟子曰、2其詳不可得聞也、3諸侯惡其害己也、4而皆去其籍、5然而軻也、6嘗聞其略也、
孟子曰く、其詳は聞くことを得べからざるなり、諸侯其(その)己を害するを悪(にく)みて、皆其籍を去る、然り而して軻(か)は、嘗て其略を聞くなり、

通し番号 597 章内番号 3 章通し番号 133 識別番号 10_2_3
1天子一位、2公一位、3侯一位、4伯一位、5子男同一位、6凡五等也、7君一位、8卿一位、9大夫一位、10上士一位、11中士一位、12下士一位、13凡六等、
天子一位、公一位、侯一位、伯一位、子男(しだん)同じく一位、凡(みな)で五等なり、君一位、卿(けい)一位、大夫(たいふ)一位、上士一位、中士一位、下士一位、凡(みな)で六等なり、

通し番号 598 章内番号 4 章通し番号 133 識別番号 10_2_4
1天子之制、2地方千里、3公侯皆方百里、4伯七十里、5子男五十里、6凡四等、7不能五十里、8不達於天子、9附於諸侯、10曰附庸、
天子の制は、地方千里、公侯は皆方百里、伯は七十里、子男(しだん)は五十里、凡(みな)で四等なり、五十里なること能わずは、天子に達せず、諸侯に附し、附庸(ふよう)と曰う、

通し番号 599 章内番号 5 章通し番号 133 識別番号 10_2_5
1天子之卿、2受地視侯、3大夫受地視伯、4元士受地視子男、
天子の卿(けい)、地を受くること侯に視(なぞら)う、大夫地を受くること伯に視(なぞら)う、元士(げんし)地を受くること子男に視(なぞら)う、

通し番号 600 章内番号 6 章通し番号 133 識別番号 10_2_6
1大國地方百里、2君十卿祿、3卿祿四大夫、4大夫倍上士、5上士倍中士、6中士倍下士、7下士與庶人在官者同祿、8祿足以代其耕也、
大国は地方百里、君は卿の禄を十にし、卿の禄は大夫を四にし、大夫は上士に倍し、上士は中士に倍し、中士は下士に倍し、下士は庶人の官に在る者と禄を同じくす、禄は以て其耕に代(か)うるに足るなり、

通し番号 601 章内番号 7 章通し番号 133 識別番号 10_2_7
1次國地方七十里、2君十卿祿、3卿祿三大夫、4大夫倍上士、5上士倍中士、6中士倍下士、7下士與庶人在官者同祿、8祿足以代其耕也、
次国は地方七十里、君は卿の禄を十にし、卿の禄は大夫を三にし、大夫は上士に倍し、上士は中士に倍し、中士は下士に倍し、下士は庶人の官に在る者と禄を同じくす、禄は以て其耕に代(か)うるに足るなり、

通し番号 602 章内番号 8 章通し番号 133 識別番号 10_2_8
1小國地方五十里、2君十卿祿、3卿祿二大夫、4大夫倍上士、5上士倍中士、6中士倍下士、7下士與庶人在官者同祿、8祿足以代其耕也、
小国は地方五十里、君は卿の禄を十にし、卿の禄は大夫を二にし、大夫は上士に倍し、上士は中士に倍し、中士は下士に倍し、下士は庶人の官に在る者と禄を同じくす、禄以て其耕に代(か)うるに足るなり、

通し番号 603 章内番号 9 章通し番号 133 識別番号 10_2_9
1耕者之所獲、2一夫百畝、3百畝之糞、4上農夫食九人、5上次食八人、6中食七人、7中次食六人、8下食五人、9庶人在官者、10其祿以是爲差、
耕やす者の獲(え)る所は、一夫百畝なり、百畝之糞(つちか)えば、上農夫は九人を食(やしな)う、上の次は八人を食(やしな)う、中は七人を食(やしな)う、中の次は六人を食(やしな)う、下は五人を食(やしな)う、庶人官に在る者、其禄是を以て差と爲す、


章番号 3 章通し番号 134

通し番号 604 章内番号 1 章通し番号 134 識別番号 10_3_1
1萬章問曰、2敢問友、3孟子曰、4不挾長、5不挾貴、6不挾兄弟而友、7友也者、8友其德也、9不可以有挾也、
万章問いて曰く、敢えて友を問う、孟子曰く、長を挾(さしはさ)まず、貴を挾(さしはさ)まず、兄弟を挾(さしはさ)まずして友とす、友なるは、其徳を友とするなり、以て挾(さしはさ)むこと有るべからざるなり、

通し番号 605 章内番号 2 章通し番号 134 識別番号 10_3_2
1孟獻子、2百乘之家也、3有友五人焉、4樂正裘、5牧仲、6其三人、7則予忘之矣、8獻子之與此五人者友也、9無獻子之家者也、10此五人者、11亦有獻子之家、12則不與之友矣、
孟献子(もうけんし)は、百乗の家なり、友五人有り、楽正裘(がくせいきゅう)、牧仲、其三人、則ち予之を忘る、献子の此五人者と友なるや、献子の家なるもの無きなり、此五人の者、亦献子の家有れば、則ち之と友ならず、

通し番号 606 章内番号 3 章通し番号 134 識別番号 10_3_3
1非惟百乘之家爲然也、2雖小國之君亦有之、3費惠公曰、4吾於子思則師之矣、5吾於顏般則友之矣、6王順、7長息、8則事我者也、
惟(ただ)百乗の家のみ然りと爲すに非ざるなり、小国の君と雖も亦之有り、費恵公曰く、吾は子思に於て則ち之を師とす、吾は顔般(がんはん)に於ては則ち之を友とす、王順、長息は、則ち我に事(つか)える者なり、

通し番号 607 章内番号 4 章通し番号 134 識別番号 10_3_4
1非惟小國之君爲然也、2雖大國之君亦有之、3晉平公之於亥唐也、4入云則入、5坐云則坐、6食云則食、7雖疏食菜羹、8未嘗不飽、9蓋不敢不飽也、10然終於此而已矣、11弗與共天位也、12弗與治天職也、13弗與食天祿也、14士之尊賢者也、15非王公之尊賢也、
惟小国の君のみ然りと爲すに非ざるなり、大国の君と雖も亦之有り、晋の平公の亥唐(がいとう)に於るや、入れと云えば則ち入り、坐れと云えば則ち坐り、食べろと云えば則ち食べる、疏食(そし)菜羹(さいこう)と雖も、未だ嘗て飽かずんばあらず、蓋し敢えて飽かずんばあらざるなり、然れども此に終わるのみ、与(とも)に天位を共(とも)にせざるなり、与(とも)に天職を治めざるなり、与(とも)に天禄を食さざるなり、士の賢を尊ぶものなり、王公の賢を尊ぶに非ざるなり、

通し番号 608 章内番号 5 章通し番号 134 識別番号 10_3_5
1舜尙見帝、2帝館甥于貳室、3亦饗舜、4迭爲賓主、5是天子而友匹夫也、
舜尚(のぼ)り帝に見(まみ)ゆ、帝は甥(せい)を貳室(じしつ)に館す、亦舜を饗(きょう)す、迭(かわるがわる)賓主と爲る、是れ天子にして匹夫を友とするなり、

通し番号 609 章内番号 6 章通し番号 134 識別番号 10_3_6
1用下敬上、2謂之貴貴、3用上敬下、4謂之尊賢、5貴貴尊賢、6其義一也、
下を用(もっ)て上を敬す、之を貴を貴(とうと)ぶと謂う、上用(もっ)て下を敬す、之を賢を尊(たっと)ぶと謂う、貴を貴(とうと)び、賢を尊(たっと)ぶは、其義一なり、


章番号 4 章通し番号 135

通し番号 610 章内番号 1 章通し番号 135 識別番号 10_4_1
1萬章問曰、2敢問交際何心也、3孟子曰、4恭也、
万章問いて曰く、敢えて問う、交際は何をか心とする、孟子曰く、恭なり、

通し番号 611 章内番号 2 章通し番号 135 識別番号 10_4_2
1曰、2卻之卻之爲不恭、3何哉、4曰、5尊者賜之、6曰其所取之者義乎不義乎、7而後受之、8以是爲不恭、9故弗卻也、
曰く、之を卻(しりぞ)く、之を卻(しりぞ)くは、恭ならずと爲す、何ぞや、尊者之に賜う、其取る所のもの義か、不義かを曰い、而る後之を受く、是を以て恭ならずと爲す、故に卻(しりぞ)けざるなり、

通し番号 612 章内番号 3 章通し番号 135 識別番号 10_4_3
1曰、2請無以辭卻之、3以心卻之、4曰其取諸民之不義也、5而以他辭無受、6不可乎、7曰、8其交也以道、9其接也以禮、10斯孔子受之矣、
曰く、請う、辞以て之を卻(しりぞ)くこと無く、心以て之を卻け、其諸(これ)を民に取るの不義を曰うなり、而るに他辞以て受けること無し、不可か、曰く、其交わるに道以てし、其接するに礼以てすれば、斯(すなわ)ち孔子之を受く、

通し番号 613 章内番号 4 章通し番号 135 識別番号 10_4_4
1萬章曰、2今有禦人於國門之外者、3其交也以道、4其餽也以禮、5斯可受禦與、6曰、7不可、8康誥曰、9殺越人于貨、10閔不畏死、11凡民罔不譈、12是不待敎而誅者也、13殷受夏、14周受殷、15所不辭也、16於今爲烈、17如之何其受之、
万章曰く、今人を国門の外に禦(とど)める者有り、其交わるに道以てし、其餽(おく)るに礼以てすれば、斯(すなわ)ち禦(とど)めるを受くべきか、曰く、不可、康誥(こうこう)に曰く、人を貨に殺し越(おと)し、閔(びん)として死を畏れず、凡そ民譈(うら)みざる罔(な)し、是れ教を待たずして誅する者なり、殷は夏に受け、周は殷に受く、辞さざる所なり、今に於て烈と爲す、之を如何ぞ其之を受けん、

通し番号 614 章内番号 5 章通し番号 135 識別番号 10_4_5
1曰、2今之諸侯、3取之於民也、4猶禦也、5苟善其禮際矣、6斯君子受之、7敢問何說也、8曰、9子以爲、10有王者作、11將比今之諸侯而誅之乎、12其敎之不改、13而後誅之乎、14夫謂非其有而取之者盜也、15充類至義之盡也、16孔子之仕於魯也、17魯人獵較、18孔子亦獵較、19獵較猶可、20而況受其賜乎、
曰く、今の諸侯は、之を民に取るや、猶禦(とど)めるがごときなり、苟(もし)其礼際を善くすれば、斯(すなわ)ち君子之を受く、敢えて問う、何の説ぞや、曰く、子以爲(おも)えらく、王なる者作(おこ)ること有れば、将に今の諸侯を比(つら)ねて之を誅せんとするか、其之に教(めい)じて改めず、而る後之を誅するか、夫(それ)其有にあらずして之を取る者は盗なりと謂うは、類を充(み)たし義の尽るに至るなり、孔子の魯に仕えるや、魯人猟較すれば、孔子亦猟較す、猟較猶可なり、況んや其賜を受くることをや、

通し番号 615 章内番号 6 章通し番号 135 識別番号 10_4_6
1曰、2然則孔子之仕也、3非事道與、4曰、5事道也、6事道奚獵較也、7曰、8孔子先簿正祭器、9不以四方之食供簿正、10曰、11奚不去也、12曰、13爲之兆也、14兆足以行矣、15而不行、16而後去、17是以未嘗有所終三年淹也、
曰く、然らば則ち孔子の仕えるや、道を事とするに非ざるか、曰く、道を事とするなり、道を事として奚(なん)ぞ猟較するや、曰く、孔子先(ま)ず祭器を簿正し、四方の食以て簿正に供さず、曰く、奚ぞ去らざるや、曰く、之が兆(きざし)を爲すなり、兆以て行うに足る、而るに行われず、而して後去る、是を以て未だ嘗て三年を終わるまで淹(とど)まる所有らざるなり、

通し番号 616 章内番号 7 章通し番号 135 識別番号 10_4_7
1孔子有見行可之仕、2有際可之仕、3有公養之仕也、4於季桓子、5見行可之仕也、6於衛靈公、7際可之仕也、8於衛孝公、9公養之仕也、
孔子は見行可の仕有り、際可の仕有り、公養の仕有るなり、季桓子(きかんし)に於ては、見行可の仕なり、衛の霊公に於ては、際可の仕なり、衛の孝公に於ては、公養の仕なり、


章番号 5 章通し番号 136

通し番号 617 章内番号 1 章通し番号 136 識別番号 10_5_1
1孟子曰、2仕非爲貧也、3而有時乎爲貧、4娶妻非爲養也、5而有時乎爲養、
孟子曰く、仕えるは貧の爲に非ざるなり、而るに時有りて貧の爲乎(に)する、妻を娶(めと)るは養の爲にするに非ざるなり、而るに時有りて養の爲にする、

通し番号 618 章内番号 2 章通し番号 136 識別番号 10_5_2
1爲貧者、2辭尊居卑、3辭富居貧、
貧の爲なる者は、尊を辞し卑に居る、富を辞し貧に居る、

通し番号 619 章内番号 3 章通し番号 136 識別番号 10_5_3
1辭尊居卑、2辭富居貧、3惡乎宜乎、4抱關擊柝、
尊を辞し卑に居り、富を辞し貧に居るは、悪(いずく)にか宜(よろ)しき、抱関(ほうかん)撃柝(げきたく)なり、

通し番号 620 章内番号 4 章通し番号 136 識別番号 10_5_4
1孔子嘗爲委吏矣、2曰、3會計當而已矣、4嘗爲乘田矣、5曰、6牛羊茁壯長而已矣、
孔子嘗て委吏(いり)と爲る、曰く、会計当たるのみ、嘗て乗田と爲る、曰く、牛羊茁(さつ)として壮長するのみ、

通し番号 621 章内番号 5 章通し番号 136 識別番号 10_5_5
1位卑而言高、2罪也、3立乎人之本朝、4而道不行、5恥也、
位卑(ひく)くして言高きは、罪なり、人の本朝に立ちて、道行われざるは、恥なり、


章番号 6 章通し番号 137

通し番号 622 章内番号 1 章通し番号 137 識別番号 10_6_1
1萬章曰、2士之不託諸侯、3何也、4孟子曰、5不敢也、6諸侯失國、7而後託於諸侯、8禮也、9士之託於諸侯、10非禮也、
万章曰く、士の諸侯に託せざるは、何ぞや、孟子曰く、敢えてせざるなり、諸侯が国を失い、而して後諸侯に託するは、礼なり、士の諸侯に託すは、礼にあらざるなり、

通し番号 623 章内番号 2 章通し番号 137 識別番号 10_6_2
1萬章曰、2君餽之粟、3則受之乎、4曰、5受之、6受之何義也、7曰、8君之於氓也、9固周之、
万章曰く、君が之に粟を餽(おく)れば、則ち之を受けるか、曰く、之を受ける、之を受けるは何の義なるか、曰く、君の氓(たみ)に於るや、固(もと)より之を周(すく)う、

通し番号 624 章内番号 3 章通し番号 137 識別番号 10_6_3
1曰、2周之則受、3賜之則不受、4何也、5曰、6不敢也、7曰、8敢問其不敢何也、9曰、10抱關擊柝者、11皆有常職以食於上、12無常職而賜於上者、13以爲不恭也、
曰く、之を周(すく)えば則ち受け、之に賜(たま)えば則ち受けず、何ぞや、曰く、敢えてせざるなり、曰く、敢えて問う、其敢えてせざるは何ぞや、曰く、抱関(ほうかん)撃柝(げきたく)の者、皆常職有りて以て上に食す、常職無くて上於(より)賜(たま)わる者は、以て不恭と爲すなり、

通し番号 625 章内番号 4 章通し番号 137 識別番号 10_6_4
1曰、2君餽之、3則受之、4不識可常繼乎、5曰、6繆公之於子思也、7亟問、8亟餽鼎肉、9子思不悦、10於卒也、11摽使者出諸大門之外、12北面稽首再拜而不受、13曰、14今而後知君之犬馬畜伋、15蓋自是臺無餽也、16悦賢不能舉、17又不能養也、18可謂悅賢乎、
曰く、君之を餽(おく)れば、則ち之を受けるのは、識らず、常に継(つづ)けるべきか、曰く、繆(ぼく)公の子思に於るや、亟(しばしば)問い、亟(しばしば)鼎肉(ていにく)を餽(おく)る、子思は悦(よろこ)ばず、卒(おわり)に於て、使者を摽(さしまね)き諸(これ)を大門の外に出し、北面、稽首(けいしゅ)、再拝して受けず、曰く、今にして後、君が犬馬にて伋(きゅう)を畜(やしな)うを知る、蓋し是自(よ)り台餽(おく)ること無きなり、賢を悦び挙げること能わず、亦養うこと能わざるなり、賢を悦ぶと謂うべきか、

通し番号 626 章内番号 5 章通し番号 137 識別番号 10_6_5
1曰、2敢問國君欲養君子、3如何斯可謂養矣、4曰、5以君命將之、6再拜稽首而受、7其後廩人繼粟、8庖人繼肉、9不以君命將之、10子思以爲、11鼎肉使己僕僕爾亟拜也、12非養君子之道也、
曰く、敢えて問う、国君が君子を養わんと欲すれば、如何(いか)なれば斯(すなわ)ち養うと謂うべし、曰く、君命以て之を将(おく)る、再拝、稽首して受ける、其後廩人(りんじん)粟を継(つづ)け、庖人(ほうじん)肉を継(つづ)け、君命以て之を将(おく)らず、子思以爲(おも)えらく、鼎肉は己をして僕僕爾(ぼくぼくじ)として亟(しばしば)拝せしめるなり、君子を養うの道に非ざるなり、

通し番号 627 章内番号 6 章通し番号 137 識別番号 10_6_6
1堯之於舜也、2使其子九男事之、3二女女焉、4百官牛羊倉廩備、5以養舜於畎畝之中、6後舉而加諸上位、7故曰、8王公之尊賢者也、
堯の舜に於るや、其子九男は之に事(つか)えしめ、二女は焉(これ)に女(めあわ)せ、百官牛羊倉廩(りん)を備え、以て舜を畎畝(けんぽ)の中に養う、後に挙げて諸(これ)に上位を加う、故に曰く、王公が賢を尊ぶ者なり、


章番号 7 章通し番号 138

通し番号 628 章内番号 1 章通し番号 138 識別番号 10_7_1
1萬章曰、2敢問不見諸侯、3何義也、4孟子曰、5在國曰市井之臣、6在野曰草莽之臣、7皆謂庶人、8庶人不傳質爲臣、9不敢見於諸侯、10禮也、
万章曰く、敢えて問う、諸侯に見(まみ)えざるは、何の義ぞや、孟子曰く、国に在るを市井の臣と曰う、野に在るを草莽(そうもう)の臣と曰う、皆庶人を謂う、庶人は質(し)を伝(つた)え臣と爲らざれば、敢えて諸侯に見(まみ)えず、礼なり、

通し番号 629 章内番号 2 章通し番号 138 識別番号 10_7_2
1萬章曰、2庶人召之役、3則往役、4君欲見之召之、5則不往見之、6何也、7曰、8往役、9義也、10往見、11不義也、
万章曰く、庶人は之を召し役すれば、則ち往きて役す、君之に見(あ)うことを欲して之を召せば、則ち往きて之に見(まみ)えざるは、何ぞや、曰く、往きて役すは、義なり、往きて見(まみ)えるは、義ならざるなり、

通し番号 630 章内番号 3 章通し番号 138 識別番号 10_7_3
1且君之欲見之也、2何爲也哉、3曰、4爲其多聞也、5爲其賢也、6曰、7爲其多聞也、8則天子不召師、9而況諸侯乎、10爲其賢也、11則吾未聞欲見賢而召之也、
且(また)君の之に見(あ)わんと欲するや、何の爲ぞや、曰く、其多聞の爲なり、其賢の爲なり、曰く、其多聞の爲なるや、則ち天子師を召さず、而るに況んや諸侯をや、其賢の爲なるや、則ち吾未だ賢に見(あ)うことを欲して之を召すを聞かざるなり、

通し番号 631 章内番号 4 章通し番号 138 識別番号 10_7_4
1繆公亟見於子思曰、2古千乘之國以友士、3何如、4子思不悅曰、5古之人有言、6曰事之云乎、7豈曰友之云乎、8子思之不悅也、9豈不曰、10以位則子君也我臣也、11何敢與君友也、12以德則子事我者也、13奚可以與我友、14千乘之君求與之友、15而不可得也、16而況可召與、
繆公(ぼくこう)は亟(しばしば)子思に見(あ)いて曰く、古は千乗の国以て士を友とす、何如(いかん)、子思悦ばずして曰く、古の人言有り、曰く之に事(つか)えると云うか、豈(あに)之を友とすると云うことを曰わんや、子思の悦びざるや、豈曰わざらんや、位以てすれば則ち子は君なり我は臣なり、何ぞ敢えて君と友たるや、徳以てすれば則ち子は我に事える者なり、奚(なん)ぞ以て我と友たるべし、千乗の君之と友たるを求めて、得るべからざるなり、而るに況んや召すべきか、

通し番号 632 章内番号 5 章通し番号 138 識別番号 10_7_5
1齊景公田、2招虞人以旌、3不至、4將殺之、5志士不忘在溝壑、6勇士不忘喪其元、7孔子奚取焉、8取非其招不往也、
齊の景公田(かり)す、虞人(ぐじん)を招(まね)くに旌(せい)を以てし、至らず、将に之を殺さんとす、志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず、勇士は其元を喪(うしな)うを忘れず、孔子奚(なに)をか取る、其招に非ずして往かざるを取るなり、

通し番号 633 章内番号 6 章通し番号 138 識別番号 10_7_6
1曰、2敢問招虞人何以、3曰、4以皮冠、5庶人以旃、6士以旂、7大夫以旌、
曰く、敢えて問う、虞人を招すは何を以てする、曰く、皮冠を以てす、庶人(しょじん)は旃(せん)を以てす、士は旂(き)を以てす、大夫は旌(せい)を以てす、

通し番号 634 章内番号 7 章通し番号 138 識別番号 10_7_7
1以大夫之招招虞人、2虞人死不敢往、3以士之招招庶人、4庶人豈敢往哉、5況乎以不賢人之招招賢人乎、
大夫の招以て虞人(ぐじん)を招(まね)けば、虞人は死すとも敢えて往(ゆ)かず、士の招以て庶人を招けば、庶人豈敢えて往かんや、況んや不賢人の招以て賢人を招くに乎(おいて)をや、

通し番号 635 章内番号 8 章通し番号 138 識別番号 10_7_8
1欲見賢人而不以其道、2猶欲其入而閉之門也、3夫義路也、4禮門也、5惟君子能由是路、6出入是門也、7詩云、8周道如厎、9其直如矢、10君子所履、11小人所視、
賢人に見(あ)わんと欲して其道以てせざるは、猶其入るを欲して之が門を閉じるがごときなり、夫(それ)義は路なり、礼は門なり、惟君子能く是(この)路に由り、是(この)門を出入するなり、詩に云う、周道は厎(し)の如し、其直は矢の如し、君子が履(ふ)む所なり、小人が視る所なり、

通し番号 636 章内番号 9 章通し番号 138 識別番号 10_7_9
1萬章曰、2孔子、3君命召、4不俟駕而行、5然則孔子非與、6曰、7孔子當仕有官職、8而以其官召之也、
万章曰く、孔子は、君が命じ召せば、駕(が)を俟(ま)たずして行く、然れば則ち孔子は非か、曰く、孔子は仕えるに当たり官職有りて、其官以て之を召すなり、


章番号 8 章通し番号 139

通し番号 637 章内番号 1 章通し番号 139 識別番号 10_8_1
1孟子謂萬章曰、2一郷之善士、3斯友一郷之善士、4一國之善士、5斯友一國之善士、6天下之善士、7斯友天下之善士、
孟子万章に謂いて曰く、一郷の善士は、斯(すなわ)ち一郷の善士を友とす、一国の善士は、斯(すなわ)ち一国の善士を友とす、天下の善士は、斯(すなわ)ち天下の善士を友とす、

通し番号 638 章内番号 2 章通し番号 139 識別番号 10_8_2
1以友天下之善士爲未足、2又尙論古之人、3頌其詩、4讀其書、5不知其人可乎、6是以論其世也、7是尙友也、
天下の善士を友とするを以て未だ足らずと爲す、又尚(のぼ)りて古の人を論じ、其詩を頌(しょう)し、其書を読む、其人を知らずして可か、是を以て其世を論ずるなり、是れ尚友なり、


章番号 9 章通し番号 140

通し番号 639 章内番号 1 章通し番号 140 識別番号 10_9_1
1齊宣王問卿、2孟子曰、3王何卿之問也、4王曰、5卿不同乎、6曰、7不同、8有貴戚之卿、9有異姓之卿、10王曰、11請問貴戚之卿、12曰、13君有大過則諫、14反覆之而不聽、15則易位、
斉の宣王卿を問う、孟子曰く、王何の卿を之問うや、王曰く、卿同じからざるか、曰く、同じからず、貴戚(きせき)の卿有り、異姓の卿有り、王曰く、貴戚の卿を請い問う、曰く、君大過有れば則ち諫む、之を反覆して聴かざれば、則ち位を易(か)える、

通し番号 640 章内番号 2 章通し番号 140 識別番号 10_9_2
1王勃然變乎色、
王勃然(ぼつぜん)として色を変ず、

通し番号 641 章内番号 3 章通し番号 140 識別番号 10_9_3
1曰、2王勿異也、3王問臣、4臣不敢不以正對、
曰く、王、異(あや)しむこと勿れ、王が臣に問う、臣は敢えて正以て対(こた)えずんばあらず、

通し番号 642 章内番号 4 章通し番号 140 識別番号 10_9_4
1王色定、2然後請問異姓之卿、3曰、4君有過則諫、5反覆之而不聽、6則去、
王、色定まる、然る後異姓の卿を請い問う、曰く、君が過ち有れば則ち諫(いさ)む、之を反覆して聴かざれば、則ち去る、


11 告子章句上 gaò zǐ zhāng jù shàng

章番号 1 章通し番号 141

通し番号 643 章内番号 1 章通し番号 141 識別番号 11_1_1
1告子曰、2性、3猶杞柳也、4義、5猶桮棬也、6以人性爲仁義、7猶以杞柳爲桮棬、
告子曰く、性は、猶杞柳(きりゅう)のごときなり、義は、猶桮棬(はいけん)のごときなり、人の性以て仁義と爲すは、猶杞柳以て桮棬と爲すがごとし、

通し番号 644 章内番号 2 章通し番号 141 識別番号 11_1_2
1孟子曰、2子能順杞柳之性、3而以爲桮棬乎、4將戕賊杞柳、5而後以爲桮棬也、6如將戕賊杞柳、7而以爲桮棬、8則亦將戕賊人、9以爲仁義與、10率天下之人、11而禍仁義者、12必子之言夫、
孟子曰く、子能く杞柳の性に順(したが)いて、以て桮棬(はいけん)を爲(つく)るか、将(ある)いは杞柳(きりゅう)を戕賊(しょうぞく)して、後に以て桮棬(はいけん)を爲(つく)るか、如(も)し将(まさ)に杞柳を戕賊して、以て桮棬を爲らんとすれば、則ち亦将に人を戕賊して、以て仁義を爲さんとするか、天下の人を率(ひき)いて、仁義に禍(わざわい)するものは、必ず子の言なるかな、


章番号 2 章通し番号 142

通し番号 645 章内番号 1 章通し番号 142 識別番号 11_2_1
1告子曰、2性猶湍水也、3決諸東方則東流、4決諸西方則西流、5人性之無分於善不善也、6猶水之無分於東西也、
告子曰く、性は猶湍水(たんすい)のごときなり、諸を東方に決すれば則ち東に流れ、諸を西方に決すれば則ち西に流る、人の性の善、不善に於て分かれること無きや、猶水の東西に於て分かれること無きがごときなり、

通し番号 646 章内番号 2 章通し番号 142 識別番号 11_2_2
1孟子曰、2水信無分於東西、3無分於上下乎、4人性之善也、5猶水之就下也、6人無有不善、7水無有不下、
孟子曰く、水は信(まこと)に東西に於て分かれること無し、上下に於て分かれること無きか、人の性の善なるや、猶水の下に就(つ)くがごときなり、人は善ならざること有ること無し、水は下らざること有ること無し、

通し番号 647 章内番号 3 章通し番号 142 識別番号 11_2_3
1今夫水、2搏而躍之、3可使過顙、4激而行之、5可使在山、6是豈水之性哉、7其勢則然也、8人之可使爲不善、9其性亦猶是也、
今夫(それ)水は、搏(う)ちて之を躍(おど)らせば、顙(ひたい)を過ぎせしむべし、激して之を行(や)らば、山に在らしむべし、是れ豈水の性なるや、其勢則ち然るなり、人は不善を爲さしむべし、其性は亦猶是のごときなり、


章番号 3 章通し番号 143

通し番号 648 章内番号 1 章通し番号 143 識別番号 11_3_1
1告子曰、2生之謂性、
告子曰く、生を之性と謂う、

通し番号 649 章内番号 2 章通し番号 143 識別番号 11_3_2
1孟子曰、2生之謂性也、3猶白之謂白與、4曰、5然、6白羽之白也、7猶白雪之白、8白雪之白、9猶白玉之白與、10曰、11然、
孟子曰く、生を之性と謂うや、猶白を之白と謂うがごときか、曰く、然り、白羽の白や、猶白雪の白のごとし、白雪の白は、猶白玉の白のごときか、曰く、然り、

通し番号 650 章内番号 3 章通し番号 143 識別番号 11_3_3
1然則犬之性、2猶牛之性、3牛之性、4猶人之性與、
然らば則ち犬の性は、猶牛の性のごとく、牛の性は、猶人の性のごときか、


章番号 4 章通し番号 144

通し番号 651 章内番号 1 章通し番号 144 識別番号 11_4_1
1告子曰、2食色、3性也、4仁、5内也、6非外也、7義、8外也、9非内也、
告子曰く、食色、性なり、仁は、内なり、外に非ざるなり、義は、外なり、内に非ざるなり、

通し番号 652 章内番号 2 章通し番号 144 識別番号 11_4_2
1孟子曰、2何以謂仁内義外也、3曰、4彼長而我長之、5非有長於我也、6猶彼白而我白之、7從其白於外也、8故謂之外也、
孟子曰く、何を以て仁は内、義は外と謂うや、曰く、彼は長(としうえ)にて我は之を長(としうえ)とす、長(としうえ)は我に有るに非ざるなり、猶彼は白くして我は之を白しとするがごとし、其白は外に従(よ)るなり、故に之を外と謂うなり、

通し番号 653 章内番号 3 章通し番号 144 識別番号 11_4_3
1曰、2異於白馬之白也、3無以異於白人之白也、4不識長馬之長也、5無以異於長人之長與、6且謂長者義乎、7長之者義乎、
曰く、(異於)馬の白を白しとするや、以て人の白を白しとするに異なること無きなり、識らず、馬の長(としうえ)を長(としうえ)とするや、以て人の長(としうえ)を長(としうえ)とするに異なること無きか、且(また)謂(おも)え、長(としうえ)の者が義か、之を長(としうえ)とするものが義か、

通し番号 654 章内番号 4 章通し番号 144 識別番号 11_4_4
1曰、2吾弟則愛之、3秦人之弟則不愛也、4是以我爲悅者也、5故謂之内、6長楚人之長、7亦長吾之長、8是以長爲悅者也、9故謂之外也、
曰く、吾弟は則ち之を愛す、秦人の弟は則ち愛さざるなり、是れ我以て悦を爲すものなり、故に之を内と謂う、楚人の長(としうえ)を長(としうえ)とし、亦吾の長(としうえ)を長(としうえ)とする、是れ長(としうえ)以て悦を爲すものなり、故に之を外と謂うなり、

通し番号 655 章内番号 5 章通し番号 144 識別番号 11_4_5
1曰、2耆秦人之炙、3無以異於耆吾炙、4夫物則亦有然者也、5然則耆炙亦有外與、
曰く、秦人の炙(しゃ)を耆(たしな)むは、以て吾が炙を耆むに異なること無し、夫(それ)物も則ち亦然るもの有るなり、然らば則ち炙を耆(たしな)むは亦外に有るか、


章番号 5 章通し番号 145

通し番号 656 章内番号 1 章通し番号 145 識別番号 11_5_1
1孟季子問公都子曰、2何以謂義内也、
孟季子(もうきし)は公都子に問いて曰く、何を以て義は内と謂う、

通し番号 657 章内番号 2 章通し番号 145 識別番号 11_5_2
1曰、2行吾敬、3故謂之内也、
曰く、吾が敬を行う、故に之を内と謂うなり、

通し番号 658 章内番号 3 章通し番号 145 識別番号 11_5_3
1郷人長於伯兄一歳、2則誰敬、3曰、4敬兄、5酌則誰先、6曰、7先酌郷人、8所敬在此、9所長在彼、10果在外、11非由内也、
郷人が伯兄(はくけい)於(より)一歳長ずれば、則ち誰をか敬す、曰く、兄を敬す、酌めば則ち誰をか先にす、曰く、先に郷人に酌む、敬する所は此に在り、長ずる所は彼に在り、果たして外に在り、内に由るに非ざるなり、

通し番号 659 章内番号 4 章通し番号 145 識別番号 11_5_4
1公都子不能答、2以告孟子、3孟子曰、4敬叔父乎、5敬弟乎、6彼將曰敬叔父、7曰、8弟爲尸、9則誰敬、10彼將曰敬弟、11子曰、12惡在其敬叔父也、13彼將曰在位故也、14子亦曰、15在位故也、16庸敬在兄、17斯須之敬在郷人、
公都子答えること能わず、以て孟子に告ぐ、孟子曰く、叔父(しゅくふ)を敬するか、弟を敬するか、彼将に曰わんとす、叔父を敬す、曰く、弟が尸(し)爲(た)らば、則ち誰をか敬す、彼将に曰わん弟を敬すと、子曰へ、悪くにか在る其叔父を敬すること、彼将に曰わん、位に在る故なり、子亦曰え、位に在る故なり、庸(つね)の敬は兄に在り、斯須(ししゅ)の敬は郷人に在り、

通し番号 660 章内番号 5 章通し番号 145 識別番号 11_5_5
1季子聞之曰、2敬叔父則敬、3敬弟則敬、4果在外、5非由内也、6公都子曰、7冬日則飮湯、8夏日則飮水、9然則飮食亦在外也、
季子は之を聞きて曰く、叔父を敬すときは則ち敬し、弟を敬するときは則ち敬す、果たして外に在り、内に由るに非ざるなり、公都子曰く、冬日は則ち湯を飮み、夏日は則ち水を飮む、然らば則ち飮食亦外に在るなり、


章番号 6 章通し番号 146

通し番号 661 章内番号 1 章通し番号 146 識別番号 11_6_1
1公都子曰、2告子曰、3性無善無不善也、
公都子曰く、告子曰く、性は善無く不善無きなり、

通し番号 662 章内番号 2 章通し番号 146 識別番号 11_6_2
1或曰、2性可以爲善、3可以爲不善、4是故文武興、5則民好善、6幽厲興、7則民好暴、
或るひと曰く、性は以て善と爲るべし、以て不善と爲るべし、是故に文武興れば、則ち民善を好む、幽厲(ゆうれい)興れば、則ち民暴を好む、

通し番号 663 章内番号 3 章通し番号 146 識別番号 11_6_3
1或曰、2有性善、3有性不善、4是故以堯爲君而有象、5以瞽瞍爲父而有舜、6以紂爲兄之子、7且以爲君、8而有微子啓、9王子比干、
或るひと曰く、性善なること有り、性不善なること有り、是の故に堯を以て君と爲して象(しょう)有り、瞽瞍(こそう)以て父と爲して舜有り、紂以て兄の子と爲し、且(かつ)以て君と爲して、微子啓、王子比干有り、

通し番号 664 章内番号 4 章通し番号 146 識別番号 11_6_4
1今曰性善、2然則彼皆非與、
今、性善を曰う、然らば則ち彼皆非か、

通し番号 665 章内番号 5 章通し番号 146 識別番号 11_6_5
1孟子曰、2乃若其情、3則可以爲善矣、4乃所謂善也、
孟子曰く、(乃若)其情は、則ち以て善を爲すべし、乃ち謂う所の善なり、

通し番号 666 章内番号 6 章通し番号 146 識別番号 11_6_6
1若夫爲不善、2非才之罪也、
夫(かの)不善を爲すが若きは、才の罪に非ざるなり、

通し番号 667 章内番号 7 章通し番号 146 識別番号 11_6_7
1惻隱之心、2人皆有之、3羞惡之心、4人皆有之、5恭敬之心、6人皆有之、7是非之心、8人皆有之、9惻隱之心、10仁也、11羞惡之心、12義也、13恭敬之心、14禮也、15是非之心、16智也、17仁義禮智、18非由外鑠我也、19我固有之也、20弗思耳矣、21故曰、22求則得之、23舍則失之、24或相倍蓰而無算者、25不能盡其才者也、
惻隠の心は、人皆之有り、羞悪(しゅうお)の心は、人皆之有り、恭敬の心は、人皆之有り、是非の心は、人皆之有り、惻隠の心は、仁なり、羞悪の心は、義なり、恭敬の心は、礼なり、是非の心は、智なり、仁義礼智は、外由(よ)り我を鑠(と)かすに非ざるなり、我固より之を有するなり、思わざるのみ、故に曰く、求めれば則ち之を得て、舍(す)てれば則ち之を失う、或いは相倍蓰(し)して算無きは、其才を尽すこと能わざるものなり、

通し番号 668 章内番号 8 章通し番号 146 識別番号 11_6_8
1詩曰、2天生蒸民、3有物有則、4民之秉夷、5好是懿德、6孔子曰、7爲此詩者、8其知道乎、9故有物必有則、10民之秉夷也、11故好是懿德、
詩に曰く、天は蒸民を生ず、物有れば則(のり)有り、民は夷(い)を秉(と)り、是(この)懿(い)徳を好む、孔子曰く、此詩を爲(つく)る者、其(それ)道を知る乎(かな)、故に物有れば必ず則有り、民は夷(い)を秉(と)るなり、故に是(この)懿德を好む、


章番号 7 章通し番号 147

通し番号 669 章内番号 1 章通し番号 147 識別番号 11_7_1
1孟子曰、2富歳、3子弟多賴、4凶歳、5子弟多暴、6非天之降才爾殊也、7其所以陷溺其心者然也、
孟子曰く、富歳は、子弟頼ること多く、凶歳は、子弟暴(そこな)うこと多し、天の才を降すは爾(かくのごと)く殊(こと)なるに非ざるなり、其以て其心を陥溺する所のもの然るなり、

通し番号 670 章内番号 2 章通し番号 147 識別番号 11_7_2
1今夫麰麥、2播種而耰之、3其地同、4樹之時又同、5浡然而生、6至於日至之時、7皆熟矣、8雖有不同、9則地有肥磽、10雨露之養、11人事之不齊也、
今夫(それ)麰麦(ぼうばく)、種を播(ま)きて之を耰(おお)う、其地同じく、之を樹えるの時も又同じければ、浡然(ぼつぜん)として生じ、日至の時に至り、皆熟す、同じからざる有りと雖も、則ち地に肥磽(こう)有りて、雨露の養、人事が斉(ひとし)からざるなり、

通し番号 671 章内番号 3 章通し番号 147 識別番号 11_7_3
1故凡同類者、2舉相似也、3何獨至於人而疑之、4聖人與我同類者、
故に凡そ類を同じくするものは、挙(みな)相い似るなり、何ぞ独り人に至りて之を疑わん、聖人は我と類を同じくするものなり、

通し番号 672 章内番号 4 章通し番号 147 識別番号 11_7_4
1故龍子曰、2不知足而爲屨、3我知其不爲蕢也、4屨之相似、5天下之足同也、
故に龍子曰く、足を知らずして屨(くつ)を爲(つく)り、我其蕢(あじか)を爲(つく)らざるを知るなり、屨の相似るは、天下の足同じければなり、

通し番号 673 章内番号 5 章通し番号 147 識別番号 11_7_5
1口之於味、2有同耆也、3易牙先得我口之所耆者也、4如使口之於味也、5其性與人殊、6若犬馬之與我不同類也、7則天下何耆皆從易牙之於味也、8至於味、9天下期於易牙、10是天下之口相似也、
口の味に於る、同じく耆(たしな)むもの有るなり、易牙は先に我が口の耆(たしな)む所を得る者なり、如(も)し口の味に於けるや、其性人と殊(こと)なること、犬馬の我と類を同じくせざる若からしめば、則ち天下何ぞ耆(たしな)むこと皆易牙の味に従わんや、味に至りては、天下易牙に期す、是れ天下の口相(あい)似たるなり、

通し番号 674 章内番号 6 章通し番号 147 識別番号 11_7_6
1惟耳亦然、2至於聲、3天下期於師曠、4是天下之耳相似也、
惟(これ)耳亦然り、声に至りては、天下師曠(こう)に期す、是れ天下の耳相似たるなり、

通し番号 675 章内番号 7 章通し番号 147 識別番号 11_7_7
1惟目亦然、2至於子都、3天下莫不知其姣也、4不知子都之姣者、5無目者也、
惟(これ)目亦然り、子都に至りて、天下其姣(こう)を知らざる莫きなり、子都の姣を知らざる者は、目無き者なり、

通し番号 676 章内番号 8 章通し番号 147 識別番号 11_7_8
1故曰、2口之於味也、3有同耆焉、4耳之於聲也、5有同聽焉、6目之於色也、7有同美焉、8至於心、9獨無所同然乎、10心之所同然者何也、11謂理也、12義也、13聖人先得我心之所同然耳、14故理義之悅我心、15猶芻豢之悅我口、
故に曰く、口の味に於るや、同じく耆(たしな)むこと有り、耳の声に於るや、同じく聴くこと有り、目の色に於るや、同じく美とすること有り、心に至りては、独り同じく然りとする所無きか、心の同じく然りとする所のものは何ぞや、謂う、理なり、義なり、聖人先ず我心の同じく然りとする所を得るのみ、故に理義の我が心を悦ばすことは、猶芻豢(すうかん)の我が口を悦ばすがごとし、


章番号 8 章通し番号 148

通し番号 677 章内番号 1 章通し番号 148 識別番号 11_8_1
1孟子曰、2牛山之木嘗美矣、3以其郊於大國也、4斧斤伐之、5可以爲美乎、6是其日夜之所息、7雨露之所潤、8非無萌蘖之生焉、9牛羊又從而牧之、10是以若彼濯濯也、11人見其濯濯也、12以爲未嘗有材焉、13此豈山之性也哉、
孟子曰く、牛山の木嘗て美(うつく)しきなり、其大国に郊たることを以て、斧斤(ふきん)之を伐(き)る、以て美(うつく)しと爲すべけんや、是れ其日夜の息する所、雨露の潤(うるお)す所、萌蘖(ほうげつ)の生じること無きに非ず、牛羊又従(よ)りて之に牧す、是を以て彼(かの)若く濯濯(たくたく)なり、人其濯濯を見るや、以て未だ嘗て材有らずと爲す、此豈山の性ならんや、

通し番号 678 章内番号 2 章通し番号 148 識別番号 11_8_2
1雖存乎人者、2豈無仁義之心哉、3其所以放其良心者、4亦猶斧斤之於木也、5旦旦而伐之、6可以爲美乎、7其日夜之所息、8平旦之氣、9其好惡與人相近也者幾希、10則其旦晝之所爲、11有梏亡之矣、12梏之反覆、13則其夜氣不足以存、14夜氣不足以存、15則其違禽獸不遠矣、16人見其禽獸也、17而以爲未嘗有才焉者、18是豈人之情也哉、
人に存するものと雖も、豈仁義の心無からんや、其良心を放つ所以のものは、亦猶斧斤の木に於るがごときなり、旦旦(たんたん)にして之を伐(き)る、以て美しと爲すべきか、其日夜の息する所、平旦の気、其好悪人と相近きもの幾希(すくな)きは、則ち其旦昼の爲す所、之を梏(こく)し亡くすること有り、之を梏すること反覆すれば、則ち其夜気以て存するに足らず、夜気以て存するに足らざれば、則ち其禽獣と違うこと遠からず、人其禽獣を見るや、以て未だ嘗て才有らずと爲すは、是れ豈人の情ならんや、

通し番号 679 章内番号 3 章通し番号 148 識別番号 11_8_3
1故苟得其養、2無物不長、3苟失其養、4無物不消、
故に苟(もし)其養を得れば、物、長(そだ)たざること無し、苟(もし)其養を失えば、物消えざること無し、

通し番号 680 章内番号 4 章通し番号 148 識別番号 11_8_4
1孔子曰、2操則存、3舍則亡、4出入無時、5莫知其郷、6惟心之謂與、
孔子曰く、操(と)れば則ち存し、舍(す)てれば則ち亡(うしな)う、出入に時無し、其郷を知ること莫し、惟(これ)心の謂(いい)か、


章番号 9 章通し番号 149

通し番号 681 章内番号 1 章通し番号 149 識別番号 11_9_1
1孟子曰、2無或乎王之不智也、
孟子曰く、王の不智或(あや)しむこと無かれ、

通し番号 682 章内番号 2 章通し番号 149 識別番号 11_9_2
1雖有天下易生之物也、2一日暴之、3十日寒之、4未有能生者也、5吾見亦罕矣、6吾退而寒之者至矣、7吾如有萌焉何哉、
天下生じ易き物有りと雖も、一日之を暴(あたた)め、十日之を寒(ひや)せば、未だ能く生ずるもの有らざるなり、吾見(まみ)えること亦(ただ)罕(まれ)なり、吾退きて之を寒(ひや)す者至る、吾萌(きざ)すこと有るを如何(いかん)せんや、

通し番号 683 章内番号 3 章通し番号 149 識別番号 11_9_3
1今夫弈之爲數、2小數也、3不專心致志、4則不得也、5弈秋、6通國之善弈者也、7使弈秋誨二人弈、8其一人專心致志、9惟弈秋之爲聽、10一人雖聽之、11一心以爲有鴻鵠將至、12思援弓繳而射之、13雖與之倶學、14弗若之矣、15爲是其智弗若與、16曰、17非然也、
今夫(それ)弈(えき)の数(わざ)爲るや、小さき数(わざ)なり、心を専らにし志(し)を致さざれば、則ち得ざるなり、弈秋は、国を通じての弈を善くする者なり、弈秋をして二人に弈を誨(おし)えしむ、其一人心を専らにして志を致す、惟弈秋之聴くことを爲す、一人之を聴くと雖も、一心に以爲(おも)えらく鴻鵠(こうこく)有りて将に至らんとす、弓繳(きゅうしゃく)を援(ひ)きて之を射んことを思わば、之と倶(とも)に学ぶと雖も、之に若かず、是れ其智若かざる爲か、曰く、然るに非ざるなり、


章番号 10 章通し番号 150

通し番号 684 章内番号 1 章通し番号 150 識別番号 11_10_1
1孟子曰、2魚、3我所欲也、4熊掌、5亦我所欲也、6二者不可得兼、7舍魚而取熊掌者也、8生、9亦我所欲也、10義、11亦我所欲也、12二者不可得兼、13舍生而取義者也、
孟子曰く、魚、我欲する所なり、熊掌(ゆうしょう)、亦我欲する所なり、二なるもの兼ねるを得べからざれば、魚を舍(す)てて熊掌を取るものなり、生、亦我欲する所なり、義、亦我欲する所なり、二なるもの兼ねるを得べからざれば、生を舍(す)てて義を取るものなり、

通し番号 685 章内番号 2 章通し番号 150 識別番号 11_10_2
1生亦我所欲、2所欲有甚於生者、3故不爲苟得也、4死亦我所惡、5所惡有甚於死者、6故患有所不辟也、
生亦我欲する所、欲する所、生於(より)甚だしきもの有り、故に苟(いやしく)も得るを爲さざるなり、死亦我悪(にく)む所、悪む所死於(より)甚だしきもの有り、故に患(うれ)い辟(さ)けざる所有るなり、

通し番号 686 章内番号 3 章通し番号 150 識別番号 11_10_3
1如使人之所欲莫甚於生、2則凡可以得生者、3何不用也、4使人之所惡莫甚於死者、5則凡可以辟患者、6何不爲也、
如(も)し人の欲する所、生より甚だしきもの莫からしめば、則ち凡そ以て生を得べきもの、何ぞ用いざらんや、人の悪む所、死より甚だしきもの莫からしめば、則ち凡そ以て患いを辟(さ)くべきもの、何ぞ爲さざらんや、

通し番号 687 章内番号 4 章通し番号 150 識別番号 11_10_4
1由是則生、2而有不用也、3由是則可以辟患、4而有不爲也、
是に由れば則ち生く、而るに用いざること有るなり、是に由れば則ち以て患いを辟(さ)くべし、而るに爲さざること有るなり、

通し番号 688 章内番号 5 章通し番号 150 識別番号 11_10_5
1是故所欲有甚於生者、2所惡有甚於死者、3非獨賢者有是心也、4人皆有之、5賢者能勿喪耳、
是故に欲する所、生より甚だしきもの有り、悪む所、死より甚だしきもの有り、独り賢者是心有るに非ざるなり、人皆之有り、賢者能く喪(うしな)うことなきのみ、

通し番号 689 章内番号 6 章通し番号 150 識別番号 11_10_6
1一簞食、2一豆羹、3得之則生、4弗得則死、5嘑爾而與之、6行道之人弗受、7蹴爾而與之、8乞人不屑也、
一簞(たん)の食、一豆の羹(こう)、之を得れば則ち生く、得ざれば則ち死す、嘑爾(こじ)として之を与えれば、道を行く人受けず、蹴爾(しゅくじ)として之を与えれば、乞人(きつじん)屑(いさぎよ)しとせざるなり、

通し番号 690 章内番号 7 章通し番号 150 識別番号 11_10_7
1萬鍾則不辨禮義而受之、2萬鍾於我何加焉、3爲宮室之美、4妻妾之奉、5所識窮乏者得我與、
万鍾は則ち礼義を弁ぜすして之を受く、万鍾我に何をか加えん、宮室の美、妻妾の奉、識る所の窮乏の者我に得る爲か、

通し番号 691 章内番号 8 章通し番号 150 識別番号 11_10_8
1郷爲身死而不受、2今爲宮室之美爲之、3郷爲身死而不受、4今爲妻妾之奉爲之、5郷爲身死而不受、6今爲所識窮乏者得我而爲之、7是亦不可以已乎、8此之謂失其本心、
郷(さき)に身死するが爲にして受けず、今宮室の美の爲に之を爲す、郷(さき)に身死するが爲にして受けず、今妻妾の奉の爲に之を爲す、郷(さき)に身死するが爲にして受けず、今識る所の窮乏の者我に得る爲に之を爲す、是れ亦以て已(や)むべからざるか、此を之其本心を失うと謂う、


章番号 11 章通し番号 151

通し番号 692 章内番号 1 章通し番号 151 識別番号 11_11_1
1孟子曰、2仁、3人心也、4義、5人路也、
孟子曰く、仁は、人の心なり、義は、人の路(みち)なり、

通し番号 693 章内番号 2 章通し番号 151 識別番号 11_11_2
1舍其路而弗由、2放其心而不知求、3哀哉、
其路を舍(す)てて由らず、其心を放ちて求めることを知らず、哀しいかな、

通し番号 694 章内番号 3 章通し番号 151 識別番号 11_11_3
1人有雞犬放、2則知求之、3有放心、4而不知求、
人は雞犬の放(はな)れること有れば、則ち之を求めることを知る、心を放つこと有りて、求めることを知らず、

通し番号 695 章内番号 4 章通し番号 151 識別番号 11_11_4
1學問之道無他、2求其放心而已矣、
学問の道他無し、其放心を求めるのみ、


章番号 12 章通し番号 152

通し番号 696 章内番号 1 章通し番号 152 識別番号 11_12_1
1孟子曰、2今有無名之指、3屈而不信、4非疾痛害事也、5如有能信之者、6則不遠秦楚之路、7爲指之不若人也、
孟子曰く、今無名の指、屈して信(の)びざる有り、疾痛し事を害するに非ざるなり、如(も)し能く之を信(の)ばす者有れば、則ち秦楚の路を遠しとせず、指の人に若かざる爲なり、

通し番号 697 章内番号 2 章通し番号 152 識別番号 11_12_2
1指不若人、2則知惡之、3心不若人、4則不知惡、5此之謂不知類也、
指人に若かざれば、則ち之を悪(にく)むを知る、心人に若かざれば、則ち悪むを知らず、此を之類を知らずと謂うなり、


章番号 13 章通し番号 153

通し番号 698 章内番号 1 章通し番号 153 識別番号 11_13_1
1孟子曰、2拱把之桐梓、3人苟欲生之、4皆知所以養之者、5至於身、6而不知所以養之者、7豈愛身不若桐梓哉、8弗思甚也、
孟子曰く、拱(きょう)把(は)の桐(どう)梓(し)、人苟(いやしく)も之を生かさんと欲すれば、皆以て之を養う所のものを知る、身に至りて、以て養う所のものを知らず、豈身を愛すること桐梓に若かざらんや、思わざること甚だしきなり、


章番号 14 章通し番号 154

通し番号 699 章内番号 1 章通し番号 154 識別番号 11_14_1
1孟子曰、2人之於身也、3兼所愛、4兼所愛、5則兼所養也、6無尺寸之膚不愛焉、7則無尺寸之膚不養也、8所以考其善不善者、9豈有他哉、10於己取之而已矣、
孟子曰く、人の身に於るや、兼(おな)じく愛する所なり、兼(おな)じく愛する所なれば、則ち兼(おな)じく養う所なり、尺寸の膚も愛さざること無ければ、則ち尺寸の膚も養わざること無きなり、以て其善不善を考える所は、豈他に有らんや、己に於て之を取るのみ、

通し番号 700 章内番号 2 章通し番号 154 識別番号 11_14_2
1體有貴賤、2有小大、3無以小害大、4無以賤害貴、5養其小者爲小人、6養其大者爲大人、
体に貴賎有り、小大有り、小以て大を害すること無かれ、賎以て貴を害すること無かれ、其小を養う者は小人と爲る、其大を養う者は大人と爲る、

通し番号 701 章内番号 3 章通し番号 154 識別番号 11_14_3
1今有場師、2舍其梧檟、3養其樲棘、4則爲賤場師焉、
今場師有り、其梧(ご)檟(か)を舍(す)て、其樲棘(じきょく)を養わば、則ち賎場師と爲す、

通し番号 702 章内番号 4 章通し番号 154 識別番号 11_14_4
1養其一指而失其肩背、2而不知也、3則爲狼疾人也、
其一指を養いて其肩背を失う、而して知らざるなり、則ち狼疾の人と爲すなり、

通し番号 703 章内番号 5 章通し番号 154 識別番号 11_14_5
1飮食之人、2則人賤之矣、3爲其養小以失大也、
飮食の人、則ち人之を賎(いや)しむ、其小を養い以て大を失う爲なり、

通し番号 704 章内番号 6 章通し番号 154 識別番号 11_14_6
1飮食之人、2無有失也、3則口腹豈適爲尺寸之膚哉、
飮食の人、失うこと有ること無ければ、則ち口腹豈適(ただ)に尺寸の膚の爲ならんや、


章番号 15 章通し番号 155

通し番号 705 章内番号 1 章通し番号 155 識別番号 11_15_1
1公都子問曰、2鈞是人也、3或爲大人、4或爲小人、5何也、6孟子曰、7從其大體爲大人、8從其小體爲小人、
公都子問いて曰く、鈞(ひと)しく是れ人なり、或いは大人と爲り、或いは小人と爲る、何ぞや、孟子曰く、其大体に従えば大人と爲る、其小体に従えば小人と爲る、

通し番号 706 章内番号 2 章通し番号 155 識別番号 11_15_2
1曰、2鈞是人也、3或從其大體、4或從其小體、5何也、6曰、7耳目之官不思、8而蔽於物、9物交物、10則引之而已矣、11心之官則思、12思則得之、13不思則不得也、14此天之所與我者、15先立乎其大者、16則其小者弗能奪也、17此爲大人而已矣、
曰く、鈞(ひと)しく是れ人なり、或いは其大体に従い、或いは其小体に従う、何ぞや、曰く、耳目の官は思わずして、物に蔽(おお)われる、物が物に交われば、則ち之を引くのみ、心の官は則ち思う、思えば則ち之を得る、思わざれば則ち得ざるなり、此は天の我に与える所のものにして、先に其大なるものに乎(おい)て立てば、則ち其小なるもの奪うこと能わざるなり、此は大人と爲るのみ、


章番号 16 章通し番号 156

通し番号 707 章内番号 1 章通し番号 156 識別番号 11_16_1
1孟子曰、2有天爵者、3有人爵者、4仁義忠信、5樂善不倦、6此天爵也、7公卿大夫、8此人爵也、
孟子曰く、天爵なるもの有り、人爵なるもの有り、仁義忠信、善を楽しみ倦(う)まざるは、此天爵なり、公卿大夫は、此人爵なり、

通し番号 708 章内番号 2 章通し番号 156 識別番号 11_16_2
1古之人、2脩其天爵、3而人爵從之、
古の人は、其天爵を脩めて、人爵之に従う、

通し番号 709 章内番号 3 章通し番号 156 識別番号 11_16_3
1今之人、2脩其天爵、3以要人爵、4旣得人爵、5而棄其天爵、6則惑之甚者也、7終亦必亡而已矣、
今の人、其天爵を脩め、以て人爵を要(もと)む、既に人爵を得て、其天爵を棄てるは、則ち惑の甚だしき者なり、終に亦必ず亡(うしな)うのみ、


章番号 17 章通し番号 157

通し番号 710 章内番号 1 章通し番号 157 識別番号 11_17_1
1孟子曰、2欲貴者、3人之同心也、4人人有貴於己者、5弗思耳、
孟子曰く、貴を欲するは、人の同じ心なり、人人己に貴(とうと)きもの有り、思わざるのみ、

通し番号 711 章内番号 2 章通し番号 157 識別番号 11_17_2
1人之所貴者、2非良貴也、3趙孟之所貴、4趙孟能賤之、
人が貴(とうと)くする所のものは、良貴に非ざるなり、趙孟の貴くする所は、趙孟能く之を賎(いや)しくす、

通し番号 712 章内番号 3 章通し番号 157 識別番号 11_17_3
1詩云、2旣醉以酒、3旣飽以德、4言飽乎仁義也、5所以不願人之膏粱之味也、6令聞廣譽施於身、7所以不願人之文繡也、
詩に云う、既に酔うに酒を以てし、既に飽(あ)くに徳を以てす、仁義に飽くを言うなり、人の膏(こう)粱(りょう)の味を願わざる所以なり、令聞広誉身に施す、人の文繡(ぶんしゅう)を願わざる所以なり、


章番号 18 章通し番号 158

通し番号 713 章内番号 1 章通し番号 158 識別番号 11_18_1
1孟子曰、2仁之勝不仁也、3猶水勝火、4今之爲仁者、5猶以一杯水、6救一車薪之火也、7不熄、8則謂之水不勝火、9此又與於不仁之甚者也、
孟子曰く、仁の不仁に勝つや、猶水が火に勝つがごとし、今の仁を爲す者は、猶一杯の水を以て、一車の薪(しん)の火を救(とめ)るがごときなり、熄(や)まざれば、則ち之を水は火に勝たずと謂う、此は又不仁に与(くみす)るの甚だしきものなり、

通し番号 714 章内番号 2 章通し番号 158 識別番号 11_18_2
1亦終必亡而已矣、
亦終(つい)に必ず亡(うしな)うのみ、


章番号 19 章通し番号 159

通し番号 715 章内番号 1 章通し番号 159 識別番号 11_19_1
1孟子曰、2五穀者、3種之美者也、4苟爲不熟、5不如荑稗、6夫仁亦在乎熟之而已矣、
孟子曰く、五穀は、種の美なるものなり、苟(もし)熟さずと爲せば、荑稗(ていはい)に如かず、夫(それ)仁亦之を熟するに在るのみ、


章番号 20 章通し番号 160

通し番号 716 章内番号 1 章通し番号 160 識別番号 11_20_1
1孟子曰、2羿之敎人射、3必志於彀、4學者亦必志於彀、
孟子曰く、羿(げい)の人に射を教えるは、必ず彀(こう)に志す、学ぶ者亦必ず彀に志す、

通し番号 717 章内番号 2 章通し番号 160 識別番号 11_20_2
1大匠誨人、2必以規矩、3學者亦必以規矩、
大匠(たいしょう)人に誨(おし)えるに、必ず規矩(きく)を以てす、学者亦必ず規矩を以てす、


12 告子章句下 gaò zǐ zhāng jù xià

章番号 1 章通し番号 161

通し番号 718 章内番号 1 章通し番号 161 識別番号 12_1_1
1任人有問屋廬子曰、2禮與食孰重、3曰、4禮重、
任(じん)人屋廬子(おくろし)に問うこと有りて曰く、礼と食孰れが重し、曰く、礼重し、

通し番号 719 章内番号 2 章通し番号 161 識別番号 12_1_2
1色與禮孰重、
色と礼と孰れが重し、

通し番号 720 章内番号 3 章通し番号 161 識別番号 12_1_3
1曰、2禮重、3曰、4以禮食、5則飢而死、6不以禮食、7則得食、8必以禮乎、9親迎、10則不得妻、11不親迎、12則得妻、13必親迎乎、
曰く、礼重し、曰く、礼以て食すれば、則ち飢えて死す、礼以て食さざれば、則ち食を得る、必ず礼以てするか、親迎(しんげい)すれば、則ち妻を得ず、親迎せざれば、則ち妻を得る、必ず親迎するか、

通し番号 721 章内番号 4 章通し番号 161 識別番号 12_1_4
1屋廬子不能對、2明日之鄒以告孟子、3孟子曰、4於答是也何有、
屋廬子対(こた)えること能わず、明日(みょうにち)鄒(すう)に之(ゆ)き以て孟子に告ぐ、孟子曰く、是に答えるに於(おい)て何か有らん、

通し番号 722 章内番号 5 章通し番号 161 識別番号 12_1_5
1不揣其本而齊其末、2方寸之木、3可使高於岑樓、
其本を揣(はか)らずして其末を斉(ひと)しくせば、方寸の木、岑樓(しんろう)より、高からしむべし

通し番号 723 章内番号 6 章通し番号 161 識別番号 12_1_6
1金重於羽者、2豈謂一鉤金與一輿羽之謂哉、
金(かね)が羽より重きは、豈一鉤(こう)の金と一輿(よ)の羽の謂(いい)を謂わんや、

通し番号 724 章内番号 7 章通し番号 161 識別番号 12_1_7
1取食之重者、2與禮之輕者而比之、3奚翅食重、4取色之重者、5與禮之輕者而比之、6奚翅色重、
食の重きものを取りて、礼の軽きものと之を比せば、奚ぞ翅(ただ)に食重きのみならんや、色の重きものを取りて、礼の軽きものと之を比せば、奚ぞ翅(ただ)に色重きのみならんや、

通し番号 725 章内番号 8 章通し番号 161 識別番号 12_1_8
1往應之曰、2紾兄之臂而奪之食、3則得食、4不紾、5則不得食、6則將紾之乎、7踰東家牆而摟其處子、8則得妻、9不摟、10則不得妻、11則將摟之乎、
往きて之に応(こた)えて曰え、兄の臂(うで)を紾(ねじ)りて之が食を奪えば、則ち食を得る、紾(ねじ)らざれば、則ち食を得ず、則ち将に之を紾(ねじ)らんとするか、東家の牆(かき)を踰(こ)えて其処子を摟(ひ)けば、則ち妻を得る、摟(ひ)かざれば、則ち妻を得ず、則ち将に之を摟(ひ)かんとするか、


章番号 2 章通し番号 162

通し番号 726 章内番号 1 章通し番号 162 識別番号 12_2_1
1曹交問曰、2人皆可以爲堯舜、3有諸、4孟子曰、5然、
曹交問いて曰く、人皆以て堯舜と爲るべし、諸有りや、孟子曰く、然り、

通し番号 727 章内番号 2 章通し番号 162 識別番号 12_2_2
1交聞、2文王十尺、3湯九尺、4今交九尺四寸以長、5食粟而已、6如何則可、
交聞く、文王十尺、湯九尺、今、交九尺四寸以て長し、粟(ぞく)を食するのみ、如何(いかん)すれば則ち可か、

通し番号 728 章内番号 3 章通し番号 162 識別番号 12_2_3
1曰、2奚有於是、3亦爲之而已矣、4有人於此、5力不能勝一匹雛、6則爲無力人矣、7今曰舉百鈞、8則爲有力人矣、9然則舉烏獲之任、10是亦爲烏獲而已矣、11夫人豈以不勝爲患哉、12弗爲耳、
曰く、奚(なん)ぞ是に有らん、亦(ただ)之を爲すのみ、人此に有り、力、一匹雛(ぼくすう)に勝(た)えること能わざれば、則ち力無き人と爲す、今、百鈞(きん)を挙げると曰わば、則ち力有る人と爲す、然らば則ち烏獲(うかく)の任を挙げれば、是亦烏獲爲(た)るのみ、夫人豈勝(た)えざる以て患いと爲さんや、爲さざるのみ、

通し番号 729 章内番号 4 章通し番号 162 識別番号 12_2_4
1徐行後長者、2謂之弟、3疾行先長者、4謂之不弟、5夫徐行者、6豈人所不能哉、7所不爲也、8堯舜之道、9孝弟而已矣、
徐行して長者に後る、之を弟と謂う、疾行して長者に先んず、之を不弟と謂う、夫(それ)徐行は、豈人の能わざる所かな、爲さざる所なり、堯舜の道は、孝弟のみ、

通し番号 730 章内番号 5 章通し番号 162 識別番号 12_2_5
1子服堯之服、2誦堯之言、3行堯之行、4是堯而已矣、5子服桀之服、6誦桀之言、7行桀之行、8是桀而已矣、
子堯の服を服し、堯の言を誦(い)い、堯の行を行えば、是れ堯のみ、子桀の服を服とし、桀の言を誦(い)い、桀の行を行えば、是れ桀のみ、

通し番号 731 章内番号 6 章通し番号 162 識別番号 12_2_6
1曰、2交得見於鄒君、3可以假館、4願留而受業於門、
曰く、交は鄒(すう)君に見(まみ)えることを得ば、以て館を仮るべし、願わくば留まりて業を門に受けん、

通し番号 732 章内番号 7 章通し番号 162 識別番号 12_2_7
1曰、2夫道、3若大路然、4豈難知哉、5人病不求耳、6子歸而求之、7有餘師、
曰く、夫(それ)道は、大路の若き然(なり)、豈知り難きかな、人、求めざるを病(や)むのみ、子帰りて之を求めれば、余師有り、


章番号 3 章通し番号 163

通し番号 733 章内番号 1 章通し番号 163 識別番号 12_3_1
1公孫丑問曰、2高子曰、3小弁、4小人之詩也、5孟子曰、6何以言之、7曰、8怨、
公孫丑問いて曰く、高子曰く、小弁は、小人の詩なり、孟子曰く、何を以て之を言う、曰く、怨む、

通し番号 734 章内番号 2 章通し番号 163 識別番号 12_3_2
1曰、2固哉、3高叟之爲詩也、4有人於此、5越人關弓而射之、6則己談笑而道之、7無他、8疏之也、9其兄關弓而射之、10則己垂涕、11泣而道之、12無他、13戚之也、14小弁之怨、15親親也、16親親、17仁也、18固矣夫、19高叟之爲詩也、
曰く、固なるかな、高叟(そう)の詩を爲(おさ)めるや、人此に有り、越人弓を関(ひ)きて之を射る、則ち己談(かた)り笑いて之を道(い)わん、他無し、之に疏(とお)きなり、其兄弓を関(ひ)きて之を射る、則己涕(なみだ)を垂(た)らし、泣いて之を道(い)わん、他無し、之と戚なり、小弁の怨は、親(おや)を親(あい)するなり、親を親(あい)すは、仁なり、固なる夫(かな)、高叟の詩を爲(おさ)めるや、

通し番号 735 章内番号 3 章通し番号 163 識別番号 12_3_3
1曰、2凱風何以不怨、
曰く、凱風(がいふう)何を以て怨みざる、

通し番号 736 章内番号 4 章通し番号 163 識別番号 12_3_4
1曰、2凱風、3親之過小者也、4小弁、5親之過大者也、6親之過大而不怨、7是愈疏也、8親之過小而怨、9是不可磯也、10愈疏、11不孝也、12不可磯、13亦不孝也、
曰く、凱風は、親(おや)の過ち小なるものなり、小弁は、親の過ち大なるものなり、親の過ち大にして怨みざるは、是れ愈(ますます)疏(うと)きなり、親の過ち小にして怨むは、是れ磯(き)すべからざるなり、愈(ますます)疏きは、不孝なり、磯すべからざるは、亦不孝なり、

通し番号 737 章内番号 5 章通し番号 163 識別番号 12_3_5
1孔子曰、2舜其至孝矣、3五十而慕、
孔子曰く、舜は其至孝なり、五十にして慕(おも)う、


章番号 4 章通し番号 164

通し番号 738 章内番号 1 章通し番号 164 識別番号 12_4_1
1宋牼將之楚、2孟子遇於石丘、
宋牼(そうこう)将に楚に之かんとす、孟子は石丘に於て遇(あ)う、

通し番号 739 章内番号 2 章通し番号 164 識別番号 12_4_2
1曰、2先生將何之、
曰く、先生将に何(いずく)に之(ゆ)かんとす、

通し番号 740 章内番号 3 章通し番号 164 識別番号 12_4_3
1曰、2吾聞秦楚構兵、3我將見楚王、4說而罷之、5楚王不悅、6我將見秦王、7說而罷之、8二王我將有所遇焉、
曰く、吾秦楚兵を構(かま)うと聞く、我将に楚王に見(まみ)え、説(と)いて之を罷(や)めんとす、楚王悦(よろこ)ばざれば、我將に秦王に見え、説きて之を罷めんとす、二王我将に遇(あ)う所有らんとす、

通し番号 741 章内番号 4 章通し番号 164 識別番号 12_4_4
1曰、2軻也請、3無問其詳、4願聞其指、5說之將何如、6曰、7我將言其不利也、8曰、9先生之志則大矣、10先生之號則不可、
曰く、軻や請う、其詳を問うこと無し、願わくば其指を聞かん、之に説くに将に何如(いかん)せんとす、曰く、我将に其利ならざるを言わんとするなり、曰く、先生の志は則ち大なり、先生の号は則ち不可なり、

通し番号 742 章内番号 5 章通し番号 164 識別番号 12_4_5
1先生以利說秦楚之王、2秦楚之王悅於利、3以罷三軍之師、4是三軍之士樂罷而悅於利也、5爲人臣者、6懷利以事其君、7爲人子者、8懷利以事其父、9爲人弟者、10懷利以事其兄、11是君臣父子兄弟、12終去仁義、13懷利以相接、14然而不亡者、15未之有也、
先生利以て秦楚の王に説けば、秦楚の王利に悦んで、以て三軍の師を罷(や)む、是れ三軍の士罷(や)めるを楽しみて利を悦ぶなり、人臣爲(た)る者、利を懐(おも)い以て其君に事える、人の子爲(た)る者、利を懐(おも)い以て其父に事える、人の弟爲(た)る者、利を懐(おも)い以て其兄に事える、是れ君臣父子兄弟、終(つい)に仁義を去り、利を懐(おも)い以て相接す、然り而して亡びざる者、未だ之有らざるなり、

通し番号 743 章内番号 6 章通し番号 164 識別番号 12_4_6
1先生以仁義說秦楚之王、2秦楚之王悅於仁義、3而罷三軍之師、4是三軍之士樂罷而悅於仁義也、5爲人臣者、6懷仁義以事其君、7爲人子者、8懷仁義以事其父、9爲人弟者、10懷仁義以事其兄、11是君臣父子兄弟、12去利懷仁義以相接也、13然而不王者、14未之有也、15何必曰利、
先生仁義以て秦楚の王に説けば、秦楚の王仁義に悦びて、三軍の師を罷める、是れ三軍の士罷めるを楽しみて仁義を悦ぶなり、人臣爲(た)る者、仁義を懐(おも)い以て其君に事える、人の子爲(た)る者、仁義を懐(おも)い以て其父に事える、人の弟爲る者、仁義を懐(おも)い以て其兄に事える、是れ君臣父子兄弟、利を去り仁義を懐(おも)い以て相接するなり、然り而して王たらざる者、未だ之有らざるなり、何ぞ必ず利を曰わん、


章番号 5 章通し番号 165

通し番号 744 章内番号 1 章通し番号 165 識別番号 12_5_1
1孟子居鄒、2季任爲任處守、3以幣交、4受之而不報、5處於平陸、6儲子爲相、7以幣交、8受之而不報、
孟子鄒に居る、季任(きじん)任の処守(しょしゅ)爲(た)り、幣以て交わる、之を受けて報ぜず、平陸に処(お)る、儲子(ちょし)相爲(た)り、幣以て交わる、之を受けて報ぜず、

通し番号 745 章内番号 2 章通し番号 165 識別番号 12_5_2
1他日由鄒之任、2見季子、3由平陸之齊、4不見儲子、5屋廬子喜曰、6連得閒矣、
他日鄒由(よ)り任に之(ゆ)く、季子に見(あ)う、平陸由(よ)り斉に之く、儲子(きし)に見(あ)わず、屋廬子(おくろし)喜んで曰く、連、間を得る、

通し番号 746 章内番号 3 章通し番号 165 識別番号 12_5_3
1問曰、2夫子之任見季子、3之齊不見儲子、4爲其爲相與、
問いて曰く、夫子(ふうし)任(じん)に之き季子に見(あ)う、斉に之き儲子(ちょし)に見(あ)わず、其相爲(た)る爲(ため)か、

通し番号 747 章内番号 4 章通し番号 165 識別番号 12_5_4
1曰、2非也、3書曰、4享多儀、5儀不及物曰不享、6惟不役志于享、
曰く、非なり、書に曰く、享(きょう)は儀(ぎ)を多くす、儀が物に及ばざるは享さずと曰う、惟(これ)志(こころ)を享に役(もち)いず、

通し番号 748 章内番号 5 章通し番号 165 識別番号 12_5_5
1爲其不成享也、
其享(きょう)を成さざる爲(ため)なり、

通し番号 749 章内番号 6 章通し番号 165 識別番号 12_5_6
1屋廬子悅、2或問之、3屋廬子曰、4季子不得之鄒、5儲子得之平陸、
屋廬子悦ぶ、或るひと之に問う、屋廬子曰く、季子は鄒に之くことを得ず、儲子は平陸に之くことを得る、


章番号 6 章通し番号 166

通し番号 750 章内番号 1 章通し番号 166 識別番号 12_6_1
1淳于髠曰、2先名實者、3爲人也、4後名實者、5自爲也、6夫子在三卿之中、7名實未加於上下而去之、8仁者固如此乎、
淳于髠(じゅんうこん)曰く、名実を先にする者は、人の爲(ため)にするなり、名実を後にする者は、自らの爲(ため)にするなり、夫子三卿の中に在り、名実未だ上下に加(くわ)わらずして之を去る、仁者固より此如きか、

通し番号 751 章内番号 2 章通し番号 166 識別番号 12_6_2
1孟子曰、2居下位、3不以賢事不肖者、4伯夷也、5五就湯、6五就桀者、7伊尹也、8不惡汙君、9不辭小官者、10柳下惠也、11三子者不同道、12其趨一也、13一者何也、14曰、15仁也、16君子亦仁而已矣、17何必同、
孟子曰く、下位に居り、賢以て不肖に事えざる者は、伯夷なり、五たび湯に就き、五たび桀に就く者は、伊尹なり、汙君を悪まず、小官を辞せざる者は、柳下恵なり、三子(し)は道を同じくせず、其趨(すう)一なり、一は何ぞや、曰く、仁なり、君子亦(ただ)仁のみ、何ぞ必ず同じからん、

通し番号 752 章内番号 3 章通し番号 166 識別番号 12_6_3
1曰、2魯繆公之時、3公儀子爲政、4子柳、5子思爲臣、6魯之削也滋甚、7若是乎、8賢者之無益於國也、
曰く、魯の繆公(ぼくこう)の時、公儀子が政を爲す、子柳、子思臣爲(た)り、魯の削らるるや滋(ますます)甚だし、是若きか、賢者の国に益無きや、

通し番号 753 章内番号 4 章通し番号 166 識別番号 12_6_4
1曰、2虞不用百里奚而亡、3秦穆公用之而霸、4不用賢則亡、5削何可得與、
曰く、虞(ぐ)は百里奚(ひゃくりけい)を用いずして亡ぶ、秦の穆公は之を用いて霸たり、賢を用いざれば則ち亡ぶ、削らるることを何ぞ得べきか、

通し番号 754 章内番号 5 章通し番号 166 識別番号 12_6_5
1曰、2昔者王豹處於淇、3而河西善謳、4綿駒處於高唐、5而齊右善歌、6華周、7杞梁之妻善哭其夫、8而變國俗、9有諸内、10必形諸外、11爲其事而無其功者、12髠未嘗睹之也、13是故無賢者也、14有則髠必識之、
曰く、昔者(むかし)王豹(おうひょう)淇(き)に処(お)る、而して河西善く謳(うた)う、綿駒(めんく)高唐に処(お)る、而して斉右善く歌う、華周、杞梁(きりょう)の妻善く其夫を哭(こく)す、而して国俗を変える、諸を内に有すれば、必ず諸を外に形(あらわ)す、其事を爲して其功無き者は、髠未だ嘗て之を睹(み)ざるなり、是(この)故に賢者無きなり、有れば則ち髠必ず之を識る、

通し番号 755 章内番号 6 章通し番号 166 識別番号 12_6_6
1曰、2孔子爲魯司寇、3不用、4從而祭、5燔肉不至、6不稅冕而行、7不知者以爲爲肉也、8其知者以爲爲無禮也、9乃孔子則欲以微罪行、10不欲爲苟去、11君子之所爲、12衆人固不識也、
曰く、孔子魯の司寇(しこう)と爲る、用いられず、従いて祭る、燔肉(はんにく)至らず、冕(べん)を税(ぬ)がずして行(さ)る、知らざる者は以て肉の爲(ため)と爲すなり、其知る者は以て礼無き爲(ため)と爲すなり、乃(そこ)で孔子は則ち微罪以て行(さ)ることを欲す、苟(いやしく)も去るを爲すを欲せず、君子の爲す所は、衆人固より識らざるなり、


章番号 7 章通し番号 167

通し番号 756 章内番号 1 章通し番号 167 識別番号 12_7_1
1孟子曰、2五霸者、3三王之罪人也、4今之諸侯、5五霸之罪人也、6今之大夫、7今之諸侯之罪人也、
孟子曰く、五霸は、三王の罪人なり、今の諸侯は、五霸の罪人なり、今の大夫は、今の諸侯の罪人なり、

通し番号 757 章内番号 2 章通し番号 167 識別番号 12_7_2
1天子適諸侯曰巡狩、2諸侯朝於天子曰述職、3春省耕而補不足、4秋省斂而助不給、5入其疆、6土地辟、7田野治、8養老尊賢、9俊傑在位、10則有慶、11慶以地、12入其疆、13土地荒蕪、14遺老失賢、15掊克在位、16則有讓、17一不朝、18則貶其爵、19再不朝、20則削其地、21三不朝、22則六師移之、23是故天子討而不伐、24諸侯伐而不討、25五霸者、26摟諸侯以伐諸侯者也、27故曰、28五霸者、29三王之罪人也、
天子が諸侯に適くを巡狩(じゅんしゅ)と曰う、諸侯が天子に朝するを述職(じゅつしょく)と曰う、春は耕を省(み)て足らざるを補う、秋は斂(れん)を省(み)て給(た)らざるを助く、其疆に入り、土地辟(ひら)け、田野治まり、老を養い賢を尊び、俊傑位に在れば、則ち慶有り、慶するに地を以てする、其疆に入り、土地荒蕪(こうぶ)、老を遺(す)て賢を失い、掊克(ほうこく)位に在れば、則ち讓(せめ)有り、一たび朝さざれば、則ち其爵を貶(おと)し、再び朝さざれば、則ち其地を削る、三たび朝さざれば、則ち六師之を移す、是故に天子は討(とう)して伐(ばつ)せず、諸侯は伐して討せず、五霸は、諸侯を摟(ひ)き以て諸侯を伐つものなり、故に曰く、五霸は、三王の罪人なり、

通し番号 758 章内番号 3 章通し番号 167 識別番号 12_7_3
1五霸、2桓公爲盛、3葵丘之會、4諸侯束牲、5載書而不歃血、6初命曰、7誅不孝、8無易樹子、9無以妾爲妻、10再命曰、11尊賢育才、12以彰有德、13三命曰、14敬老慈幼、15無忘賓旅、16四命曰、17士無世官、18官事無攝、19取士必得、20無專殺大夫、21五命曰、22無曲防、23無遏糴、24無有封而不告、25曰、26凡我同盟之人、27旣盟之後、28言歸于好、29今之諸侯、30皆犯此五禁、31故曰、32今之諸侯、33五霸之罪人也、
五霸は、桓公盛と爲す、葵丘の(ききゅう)の会、諸侯は牲を束(しば)り、書を載(の)せて血を歃(すす)らず、初命に曰く、不孝を誅(せ)めよ、樹子を易えること無かれ、妾以て妻と爲すこと無かれ、再命に曰く、賢を尊び才を育(はぐく)み、以て有徳を彰(あきら)かにせよ、三命に曰く、老を敬(うやま)い幼を慈(いつくし)め、賓旅を忘れること無かれ、四命に曰く、士は官を世(よよ)にすること無かれ、官の事摂(か)ねること無かれ、士を取るは必ず得よ、専(もっぱ)ら大夫を殺すこと無かれ、五命に曰く、防(つつみ)を曲げること無かれ、糴(てき)するを遏(と)めること無かれ、封(ほう)有りて告げざること無かれ、曰く、凡そ我同盟の人は、既に盟(ちか)うの後、言(ここ)に好(よしみ)に帰す、今の諸侯は、皆此五禁を犯す、故に曰く、今の諸侯は、五霸の罪人なり、

通し番号 759 章内番号 4 章通し番号 167 識別番号 12_7_4
1長君之惡其罪小、2逢君之惡其罪大、3今之大夫、4皆逢君之惡、5故曰、6今之大夫、7今之諸侯之罪人也、
君の悪を長(そだ)てるは其罪小なり、君の悪を逢(むか)えるは其罪大なり、今の大夫は、皆君の悪を逢(むか)える、故に曰く、今の大夫は、今の諸侯の罪人なり、


章番号 8 章通し番号 168

通し番号 760 章内番号 1 章通し番号 168 識別番号 12_8_1
1魯欲使愼子爲將軍、
魯、慎子をして將軍爲(た)らしめんと欲す、

通し番号 761 章内番号 2 章通し番号 168 識別番号 12_8_2
1孟子曰、2不敎民而用之、3謂之殃民、4殃民者、5不容於堯舜之世、
孟子曰く、民を教えずして之を用いる、之を民に殃(わざわ)いすと謂う、民に殃する者は、堯舜の世に於て容(い)れられず、

通し番号 762 章内番号 3 章通し番号 168 識別番号 12_8_3
1一戰勝齊、2遂有南陽、3然且不可、
一たび戦い斉に勝ち、遂に南陽を有(たも)つ、然れども且(なお)不可なり、

通し番号 763 章内番号 4 章通し番号 168 識別番号 12_8_4
1愼子勃然不悅曰、2此則滑釐所不識也、
慎子勃然(ぼつぜん)として悦(よろこ)ばずして曰く、此則ち滑釐(かつり)の識らざる所なり、

通し番号 764 章内番号 5 章通し番号 168 識別番号 12_8_5
1曰、2吾明告子、3天子之地方千里、4不千里、5不足以待諸侯、6諸侯之地方百里、7不百里、8不足以守宗廟之典籍、
曰く、吾明かに子に告げん、天子の地方千里なり、千里ならざれば、以て諸侯を待つに足らず、諸侯の地方百里、百里ならざれば、以て宗廟の典籍を守るに足らず、

通し番号 765 章内番号 6 章通し番号 168 識別番号 12_8_6
1周公之封於魯、2爲方百里也、3地非不足、4而儉於百里、5太公之封於齊也、6亦爲方百里也、7地非不足也、8而儉於百里、
周公の魯に封ぜられるは、方百里爲(た)るなり、地足らざるに非ず、而るに百里に倹す、太公の斉に封ぜられるや、亦方百里爲(た)るなり、地足らざるに非ざるなり、而るに百里に倹す、

通し番号 766 章内番号 7 章通し番号 168 識別番号 12_8_7
1今魯方百里者五、2子以爲有王者作、3則魯在所損乎、4在所益乎、
今魯方百里なるもの五、子以爲(おも)えらく、王者作(おこ)ること有れば、則ち魯損(へ)る所在るか、益(ま)す所在るか、

通し番号 767 章内番号 8 章通し番号 168 識別番号 12_8_8
1徒取諸彼以與此、2然且仁者不爲、3況於殺人以求之乎、
徒(ただ)諸を彼に取り以て此に与えるは、然(すなわ)ち且(なお)仁者爲さず、況んや人を殺し以て之を求めるに於てをや、

通し番号 768 章内番号 9 章通し番号 168 識別番号 12_8_9
1君子之事君也、2務引其君、3以當道、4志於仁而已、
君子の君に事えるや、務めて其君を引き、以て道に当たり、仁に志さしむのみ、


章番号 9 章通し番号 169

通し番号 769 章内番号 1 章通し番号 169 識別番号 12_9_1
1孟子曰、2今之事君者曰、3我能爲君辟土地、4充府庫、5今之所謂良臣、6古之所謂民賊也、7君不郷道、8不志於仁、9而求富之、10是富桀也、
孟子曰く、今の君に事える者曰く、我能く君の爲に土地を辟(ひら)き、府庫を充(みた)す、今の謂う所の良臣は、古の謂う所の民の賊なり、君が道に郷(むか)わず、仁に志さずして、之を富ますを求む、是れ桀を富ますなり、

通し番号 770 章内番号 2 章通し番号 169 識別番号 12_9_2
1我能爲君約與國、2戰必克、3今所謂良臣、4古所謂民賊也、5君不郷道、6不志於仁、7而求爲之強戰、8是輔桀也、
我能く君の爲に与国を約し、戦えば必ず克(か)つ、今謂う所の良臣なり、古謂う所の民の賊なり、君道に郷(むか)わず、仁に志さずして、之が爲に強いて戦うをことを求めれば、是れ桀を輔(たす)けるなり、

通し番号 771 章内番号 3 章通し番号 169 識別番号 12_9_3
1由今之道、2無變今之俗、3雖與之天下、4不能一朝居也、
今の道に由り、今の俗を変えること無ければ、之に天下を与えると雖も、一朝も居ること能わざるなり、


章番号 10 章通し番号 170

通し番号 772 章内番号 1 章通し番号 170 識別番号 12_10_1
1白圭曰、2吾欲二十而取一、3何如、
白圭曰く、吾二十にして一を取らんと欲す、何如(いかん)、

通し番号 773 章内番号 2 章通し番号 170 識別番号 12_10_2
1孟子曰、2子之道、3貉道也、
孟子曰く、子の道は、貉(はく)の道なり、

通し番号 774 章内番号 3 章通し番号 170 識別番号 12_10_3
1萬室之國、2一人陶、3則可乎、4曰、5不可、6器不足用也、
万室の国、一人陶(とう)す、則ち可か、曰く、不可、器(うつわ)用に足らざるなり、

通し番号 775 章内番号 4 章通し番号 170 識別番号 12_10_4
1曰、2夫貉、3五穀不生、4惟黍生之、5無城郭宮室、6宗廟祭祀之禮、7無諸侯幣帛饔飧、8無百官有司、9故二十取一而足也、
曰く、夫(それ)貉は、五穀生ぜず、惟黍(きび)之に生ず、城郭宮室、宗廟祭祀の礼無し、諸侯の幣帛(へいはく)饔飧(ようそん)無し、百官(6有司無し、故に二十に一を取りて足るなり、

通し番号 776 章内番号 5 章通し番号 170 識別番号 12_10_5
1今居中國、2去人倫、3無君子、4如之何其可也、
今中国に居り、人倫を去(す)て、君子無ければ、之如何(いかん)ぞ其可ならん、

通し番号 777 章内番号 6 章通し番号 170 識別番号 12_10_6
1陶以寡、2且不可以爲國、3況無君子乎、
陶以て寡なければ、且(なお)以て国を爲(おさ)むべからず、況んや君子無きをや、

通し番号 778 章内番号 7 章通し番号 170 識別番号 12_10_7
1欲輕之於堯舜之道者、2大貉、3小貉也、4欲重之於堯舜之道者、5大桀、6小桀也、
之を堯舜の道より軽くせんと欲する者は、大貉(はく)、小貉なり、之を堯舜の道より重くせんと欲する者は、大桀、小桀なり、


章番号 11 章通し番号 171

通し番号 779 章内番号 1 章通し番号 171 識別番号 12_11_1
1白圭曰、2丹之治水也愈於禹、
白圭曰く、丹の水を治めるや禹に愈(まさ)る、

通し番号 780 章内番号 2 章通し番号 171 識別番号 12_11_2
1孟子曰、2子過矣、3禹之治水、4水之道也、
孟子曰く、子過(あやま)てり、禹の水を治めるは、水の道なり、

通し番号 781 章内番号 3 章通し番号 171 識別番号 12_11_3
1是故禹以四海爲壑、2今吾子以鄰國爲壑、
是故に禹は四海以て壑(がく)と爲す、今吾子(ごし)鄰国以て壑と爲す、

通し番号 782 章内番号 4 章通し番号 171 識別番号 12_11_4
1水逆行、2謂之洚水、3洚水者、4洪水也、5仁人之所惡也、6吾子過矣、
水が逆行する、之を洚水(こうずい)と謂う、洚水は、洪水なり、仁人の悪む所なり、吾子過てり、


章番号 12 章通し番号 172

通し番号 783 章内番号 1 章通し番号 172 識別番号 12_12_1
1孟子曰、2君子不亮、3惡乎執、
孟子曰く、君子は亮(りょう)ならず、執を悪(にく)む、


章番号 13 章通し番号 173

通し番号 784 章内番号 1 章通し番号 173 識別番号 12_13_1
1魯欲使樂正子爲政、2孟子曰、3吾聞之、4喜而不寐、
魯は楽正子(がくせいし)をして政を爲さしめんと欲す、孟子曰く、吾之を聞き、喜びて寐(ねむ)らず、

通し番号 785 章内番号 2 章通し番号 173 識別番号 12_13_2
1公孫丑曰、2樂正子強乎、3曰、4否、5有知慮乎、6曰、7否、8多聞識乎、9曰、10否、
公孫丑曰く、楽正子強か、曰く、否、知慮有るか、曰く、否、聞識多きか、曰く、否、

通し番号 786 章内番号 3 章通し番号 173 識別番号 12_13_3
1然則奚爲喜而不寐、
然らば則ち奚爲(なんす)れぞ喜びて寐(ねむ)らず、

通し番号 787 章内番号 4 章通し番号 173 識別番号 12_13_4
1曰、2其爲人也好善、
曰く、其人と爲りや善を好む、

通し番号 788 章内番号 5 章通し番号 173 識別番号 12_13_5
1好善足乎、
善を好めば足るか、

通し番号 789 章内番号 6 章通し番号 173 識別番号 12_13_6
1曰、2好善優於天下、3而況魯國乎、
曰く、善を好めば天下に優たり、而して況んや魯国をや、

通し番号 790 章内番号 7 章通し番号 173 識別番号 12_13_7
1夫苟好善、2則四海之内、3皆將輕千里而來、4告之以善、
夫(それ)苟(もし)善を好めば、則ち四海の内、皆将に千里を軽しとして来たり、之に告げるに善を以てす、

通し番号 791 章内番号 8 章通し番号 173 識別番号 12_13_8
1夫苟不好善、2則人將曰、3訑訑、4予旣已知之矣、5訑訑之聲音顏色、6距人於千里之外、7士止於千里之外、8則讒諂面諛之人至矣、9與讒諂面諛之人居、10國欲治、11可得乎、
夫(それ)苟(もし)善を好まざれば、則ち人将に曰わんとす、訑訑(いい)として、予は既已(すで)に之を知る、訑訑(いい)の声音顔色は、人を千里の外に距(と)める、士千里の外に止(と)まれば、則ち讒諂(ざんてん)面諛(めんゆ)の人至る、讒諂(ざんてん)面諛(めんゆ)の人と居れば、国治まることを欲して、得べきか、


章番号 14 章通し番号 174

通し番号 792 章内番号 1 章通し番号 174 識別番号 12_14_1
1陳子曰、2古之君子、3何如則仕、4孟子曰、5所就三、6所去三、
陳子曰く、古の君子、何如(いかん)せば則ち仕う、孟子曰く、就(つ)く所三、去る所三、

通し番号 793 章内番号 2 章通し番号 174 識別番号 12_14_2
1迎之致敬以有禮、2言將行其言也、3則就之、4禮貌未衰、5言弗行也、6則去之、
之を迎えるに敬を致し以て礼有り、将に其言を行わんとすると言うならば、則ち之に就く、礼貌未だ衰えずとも、言行われざるや、則ち之を去る、

通し番号 794 章内番号 3 章通し番号 174 識別番号 12_14_3
1其次、2雖未行其言也、3迎之致敬以有禮、4則就之、5禮貌衰、6則去之、
其次は、未だ其言行わずと雖も、之を迎えるに敬を致し以て礼有れば、則ち之に就く、礼貌衰えば、則ち之を去る、

通し番号 795 章内番号 4 章通し番号 174 識別番号 12_14_4
1其下、2朝不食、3夕不食、4飢餓不能出門戶、5君聞之曰、6吾大者不能行其道、7又不能從其言也、8使飢餓於我土地、9吾恥之、10周之、11亦可受也、12免死而已矣、
其下、朝食せず、夕食せず、飢餓で門戸を出ること能わず、君之を聞きて曰く、吾大なるものは其道を行うこと能わず、又其言に従うこと能わざるなり、我が土地に飢餓せしむるは、吾之を恥ず、之を周(すく)えば、亦受けるべきなり、死を免れるのみ、


章番号 15 章通し番号 175

通し番号 796 章内番号 1 章通し番号 175 識別番号 12_15_1
1孟子曰、2舜發於畎畝之中、3傅說舉於版築之閒、4膠鬲舉於魚鹽之中、5管夷吾舉於士、6孫叔敖舉於海、7百里奚舉於市、
孟子曰く、舜は畎畝(けんぽ)の中に発(おこ)り、傅説(ふえつ)は版築の閒に挙げられ、膠鬲(こうかく)は魚塩の中に挙げられ、管夷吾は士に挙げられ、孫叔敖(そんしゅくごう)は海に挙げられ、百里奚(ひゃくりけい)は市に挙げられる、

通し番号 797 章内番号 2 章通し番号 175 識別番号 12_15_2
1故天將降大任於是人也、2必先苦其心志、3勞其筋骨、4餓其體膚、5空乏其身、6行拂亂其所爲、7所以動心忍性、8曾益其所不能、
故に天将に大任を是人に降さんとするや、必ず先ず其心志を苦しめ、其筋骨を労し、其体膚を餓やし、其身を空乏し、行えば其爲す所を拂乱(ふつらん)す、以て心を動かし性を忍び、其能わざる所を曽益(ぞうえき)する所なり、

通し番号 798 章内番号 3 章通し番号 175 識別番号 12_15_3
1人恒、2過然後能改、3困於心、4衡於慮、5而後作、6徵於色、7發於聲、8而後喩、
人は恒(よ)く、過ちて然る後能く改む、心に困(くる)しみ、慮に衡(よこたわ)り、而して後作(おこ)る、色に徵し、声に発して、而して後喩(さと)る、

通し番号 799 章内番号 4 章通し番号 175 識別番号 12_15_4
1入則無法家拂士、2出則無敵國外患者、3國恒亡、
入れば則ち法家拂士(ひつし)無く、出ずれば則ち敵国外患無きものは、国恒(よ)く亡ぶ、

通し番号 800 章内番号 5 章通し番号 175 識別番号 12_15_5
1然後知生於憂患而死於安樂也、
然る後知る、生ずは憂患に於てなり、死すは安楽に於てなり、


章番号 16 章通し番号 176

通し番号 801 章内番号 1 章通し番号 176 識別番号 12_16_1
1孟子曰、2敎亦多術矣、3予不屑之敎誨也者、4是亦敎誨之而已矣、
孟子曰く、教え亦多術なり、予之を教誨するを屑(いさぎよ)しとせざるは、是れ亦之を教誨(きょうかい)するのみ、


13 盡心章句上 jìn xīn zhāng jù shàng

章番号 1 章通し番号 177

通し番号 802 章内番号 1 章通し番号 177 識別番号 13_1_1
1孟子曰、2盡其心者、3知其性也、4知其性、5則知天矣、
孟子曰く、其心を尽す者は、其性を知るなり、其性を知れば、則ち天を知る、

通し番号 803 章内番号 2 章通し番号 177 識別番号 13_1_2
1存其心、2養其性、3所以事天也、
其心を存し、其性を養うは、以て天に事える所なり、

通し番号 804 章内番号 3 章通し番号 177 識別番号 13_1_3
1殀壽不貳、2脩身以俟之、3所以立命也、
殀寿(ようじゅ)貳(に)とせず、身を脩め以て之を俟(ま)つ、以て命を立てる所なり、


章番号 2 章通し番号 178

通し番号 805 章内番号 1 章通し番号 178 識別番号 13_2_1
1孟子曰、2莫非命也、3順受其正、
孟子曰く、命に非ざる莫きなり、順(したが)い其正を受ける、

通し番号 806 章内番号 2 章通し番号 178 識別番号 13_2_2
1是故知命者、2不立乎巖牆之下、
是の故に命を知る者は、巌牆(がんしょう)の下に立たず、

通し番号 807 章内番号 3 章通し番号 178 識別番号 13_2_3
1盡其道而死者、2正命也、
其道を尽して死ぬは、正命なり、

通し番号 808 章内番号 4 章通し番号 178 識別番号 13_2_4
1桎梏死者、2非正命也、
桎梏(しっこく)して死するは、正命に非ざるなり、


章番号 3 章通し番号 179

通し番号 809 章内番号 1 章通し番号 179 識別番号 13_3_1
1孟子曰、2求則得之、3舍則失之、4是求有益於得也、5求在我者也、
孟子曰く、求めれば則ち之を得る、舍(す)てれば則ち之を失う、是れ求めて得るに益有るなり、求めることが我に在るものなり、

通し番号 810 章内番号 2 章通し番号 179 識別番号 13_3_2
1求之有道、2得之有命、3是求無益於得也、4求在外者也、
之を求めるに道有り、之を得るに命有り、是れ求めて得るに益無きなり、求めることが外に在るものなり、


章番号 4 章通し番号 180

通し番号 811 章内番号 1 章通し番号 180 識別番号 13_4_1
1孟子曰、2萬物皆備於我矣、
孟子曰く、万物皆我に備わる、

通し番号 812 章内番号 2 章通し番号 180 識別番号 13_4_2
1反身而誠、2樂莫大焉、
身に反(かえ)りて誠、楽(たの)しみ焉(これ)より大なるは莫し、

通し番号 813 章内番号 3 章通し番号 180 識別番号 13_4_3
1強恕而行、2求仁莫近焉、
恕を強(つと)めて行う、仁を求めるは焉(これ)より近きは莫し、


章番号 5 章通し番号 181

通し番号 814 章内番号 1 章通し番号 181 識別番号 13_5_1
1孟子曰、2行之而不著焉、3習矣而不察焉、4終身由之、5而不知其道者衆也、
孟子曰く、之を行いて著(あきら)かならず、習いて察(つまびら)かならず、終身之に由りて、其道を知らざる者衆(おお)きなり、


章番号 6 章通し番号 182

通し番号 815 章内番号 1 章通し番号 182 識別番号 13_6_1
1孟子曰、2人不可以無恥、3無恥之恥、4無恥矣、
孟子曰く、人以て恥無かるべからず、恥ずること無きを之恥ずれば、恥無し、


章番号 7 章通し番号 183

通し番号 816 章内番号 1 章通し番号 183 識別番号 13_7_1
1孟子曰、2恥之於人大矣、
孟子曰く、恥の人に於るや大なり、

通し番号 817 章内番号 2 章通し番号 183 識別番号 13_7_2
1爲機變之巧者、2無所用恥焉、
機変の巧を爲す者は、恥を用いる所無し、

通し番号 818 章内番号 3 章通し番号 183 識別番号 13_7_3
1不恥不若人、2何若人有、
恥じざるが人に若かざれば、何ぞ人に若くこと有らん、


章番号 8 章通し番号 184

通し番号 819 章内番号 1 章通し番号 184 識別番号 13_8_1
1孟子曰、2古之賢王好善而忘勢、3古之賢士何獨不然、4樂其道而忘人之勢、5故王公不致敬盡禮、6則不得亟見之、7見且猶不得亟、8而況得而臣之乎、
孟子曰く、古の賢王は善を好みて勢を忘る、古の賢士何ぞ独り然らざらん、其道を楽しみて人の勢を忘る、故に王公は敬を致し礼を尽さざれば、則ち亟(しばしば)之に見(あ)うことを得ず、見(あ)うこと且(すら)猶(なお)亟(しばしば)することを得ず、而して況んや得て之を臣とすることをや、


章番号 9 章通し番号 185

通し番号 820 章内番号 1 章通し番号 185 識別番号 13_9_1
1孟子謂宋句踐曰、2子好遊乎、3吾語子遊、
孟子、宋句践に謂いて曰く、子、遊を好む乎(かな)、吾子に遊を語らん、

通し番号 821 章内番号 2 章通し番号 185 識別番号 13_9_2
1人知之、2亦囂囂、3人不知、4亦囂囂、
人之を知る、亦(ただ)囂囂(ごうごう)たり、人知らず、亦(ただ)囂囂たり、

通し番号 822 章内番号 3 章通し番号 185 識別番号 13_9_3
1曰、2何如斯可以囂囂矣、3曰、4尊德樂義、5則可以囂囂矣、
曰く、何如(いか)なれば斯(すなわ)ち以て囂囂(ごうごう)たるべし、曰く、徳を尊(たっと)び義を楽しめば、則ち以て囂囂たるべし、

通し番号 823 章内番号 4 章通し番号 185 識別番号 13_9_4
1故士窮不失義、2達不離道、
故に士は窮して義を失わず、達して道を離れず、

通し番号 824 章内番号 5 章通し番号 185 識別番号 13_9_5
1窮不失義、2故士得己焉、3達不離道、4故民不失望焉、
窮して義を失わず、故に士は己を得る、達して道を離れず、故に民は望みを失わず、

通し番号 825 章内番号 6 章通し番号 185 識別番号 13_9_6
1古之人、2得志、3澤加於民、4不得志、5脩身見於世、6窮則獨善其身、7達則兼善天下、
古の人は、志を得れば、沢民に加わる、志を得ざれば、身を脩め世に見(あらわ)る、窮すれば則ち独り其身を善くす、達すれば則ち天下を兼(おな)じく善くす、


章番号 10 章通し番号 186

通し番号 826 章内番号 1 章通し番号 186 識別番号 13_10_1
1孟子曰、2待文王而後興者、3凡民也、4若夫豪傑之士、5雖無文王猶興、
孟子曰く、文王を待ちて後興る者は、凡民なり、夫(かの)豪傑の士の若きは、文王無しと雖も猶興る、


章番号 11 章通し番号 187

通し番号 827 章内番号 1 章通し番号 187 識別番号 13_11_1
1孟子曰、2附之以韓魏之家、3如其自視欿然、4則過人遠矣、
孟子曰く、之に附すに韓魏の家を以てす、如(も)し其自ら視ること欿然(かんぜん)たらば、則ち人に過ぐること遠し、


章番号 12 章通し番号 188

通し番号 828 章内番号 1 章通し番号 188 識別番号 13_12_1
1孟子曰、2以佚道使民、3雖勞不怨、4以生道殺民、5雖死不怨殺者、
孟子曰く、佚道以て民を使えば、労すと雖も怨みず、生道以て民を殺せば、死すと雖も殺す者を怨まず、


章番号 13 章通し番号 189

通し番号 829 章内番号 1 章通し番号 189 識別番号 13_13_1
1孟子曰、2霸者之民、3驩虞如也、4王者之民、5皞皞如也、
孟子曰く、霸者の民は、驩虞如(かんぐじょ)なり、王者の民は、皞皞如(こうこうじょ)なり、

通し番号 830 章内番号 2 章通し番号 189 識別番号 13_13_2
1殺之而不怨、2利之而不庸、3民日遷善而不知爲之者、
之を殺して怨みず、之を利して庸とせず、民日に善に遷(うつ)りて之を爲すものを知らず、

通し番号 831 章内番号 3 章通し番号 189 識別番号 13_13_3
1夫君子所過者化、2所存者神、3上下與天地同流、4豈曰小補之哉、
夫(それ)君子は過ぎる所の者化し、存する所のもの神なり、上下天地と流れを同じくす、豈之を小補すと曰わんや、


章番号 14 章通し番号 190

通し番号 832 章内番号 1 章通し番号 190 識別番号 13_14_1
1孟子曰、2仁言、3不如仁聲之入人深也、
孟子曰く、仁言は、仁声の人に入るの深きに如かざるなり、

通し番号 833 章内番号 2 章通し番号 190 識別番号 13_14_2
1善政、2不如善敎之得民也、
善政は、善教の民を得るに如かざるなり、

通し番号 834 章内番号 3 章通し番号 190 識別番号 13_14_3
1善政民畏之、2善敎民愛之、3善政得民財、4善敎得民心、
善政は民之を畏る、善教は民之を愛す、善政は民の財を得る、善教は民の心を得る、


章番号 15 章通し番号 191

通し番号 835 章内番号 1 章通し番号 191 識別番号 13_15_1
1孟子曰、2人之所不學而能者、3其良能也、4所不慮而知者、5其良知也、
孟子曰く、人の学ばずして能くする所のものは、其良能なり、慮らずして知る所のものは、其良知なり、

通し番号 836 章内番号 2 章通し番号 191 識別番号 13_15_2
1孩提之童、2無不知愛其親也、3及其長也、4無不知敬其兄也、
孩提(がいてい)の童、其親を愛することを知らざる無きなり、其長ずるに及ぶや、其兄を敬することを知らざる無きなり、

通し番号 837 章内番号 3 章通し番号 191 識別番号 13_15_3
1親親、2仁也、3敬長、4義也、5無他、6達之天下也、
親を親(あい)するは、仁なり、長を敬するは、義なり、他無し、之を天下に達するなり、


章番号 16 章通し番号 192

通し番号 838 章内番号 1 章通し番号 192 識別番号 13_16_1
1孟子曰、2舜之居深山之中、3與木石居、4與鹿豕遊、5其所以異於深山之野人者幾希、6及其聞一善言、7見一善行、8若決江河、9沛然莫之能禦也、
孟子曰く、舜が深山の中に居り、木石と居り、鹿豕(ろくし)と遊ぶ、其以て深山の野人と異なる所のものは幾希(すくな)し、其一善言を聞き、一善行を見るに及び、江河を決するが若し、沛然として之を能く禦(とど)めること莫きなり、


章番号 17 章通し番号 193

通し番号 839 章内番号 1 章通し番号 193 識別番号 13_17_1
1孟子曰、2無爲其所不爲、3無欲其所不欲、4如此而已矣、
孟子曰く、其爲さざる所を爲すこと無し、其欲さざる所を欲すること無し、此如きのみ、


章番号 18 章通し番号 194

通し番号 840 章内番号 1 章通し番号 194 識別番号 13_18_1
1孟子曰、2人之有德慧術知者、3恒存乎疢疾、
孟子曰く、人の德慧術知有る者、恒(つね)にに疢疾(ちんしつ)に存す、

通し番号 841 章内番号 2 章通し番号 194 識別番号 13_18_2
1獨孤臣孼子、2其操心也危、3其慮患也深、4故達、
独り孤臣孼子(げっし)は、其心を操(と)るや危(はや)く、其患を慮るや深し、故に達す、


章番号 19 章通し番号 195

通し番号 842 章内番号 1 章通し番号 195 識別番号 13_19_1
1孟子曰、2有事君人者、3事是君則爲容悅者也、
孟子曰く、君に事(つか)える人なる者有り、是君に事えれば則ち容悦を爲す者なり、

通し番号 843 章内番号 2 章通し番号 195 識別番号 13_19_2
1有安社稷臣者、2以安社稷爲悅者也、
社稷を安んずる臣なる者有り、社稷を安んずるを以て悦と爲す者なり、

通し番号 844 章内番号 3 章通し番号 195 識別番号 13_19_3
1有天民者、2達可行於天下、3而後行之者也、
天民なる者有り、達して天下に行うべくして、後に之を行う者なり、

通し番号 845 章内番号 4 章通し番号 195 識別番号 13_19_4
1有大人者、2正己而物正者也、
大人なる者有り、己を正して物正しき者なり、


章番号 20 章通し番号 196

通し番号 846 章内番号 1 章通し番号 196 識別番号 13_20_1
1孟子曰、2君子有三樂、3而王天下不與存焉、
孟子曰く、君子に三楽有り、而して天下に王たるは与(あずか)り存せず、

通し番号 847 章内番号 2 章通し番号 196 識別番号 13_20_2
1父母倶存、2兄弟無故、3一樂也、
父母倶(とも)に存し、兄弟故無し、一楽なり、

通し番号 848 章内番号 3 章通し番号 196 識別番号 13_20_3
1仰不愧於天、2俯不怍於人、3二樂也、
仰いで天に愧(は)じず、俯して人に怍(は)じず、二楽なり、

通し番号 849 章内番号 4 章通し番号 196 識別番号 13_20_4
1得天下英才而敎育之、2三樂也、
天下の英才を得て之を教育する、三楽なり、

通し番号 850 章内番号 5 章通し番号 196 識別番号 13_20_5
1君子有三樂、2而王天下不與存焉、
君子三楽有り、而るに天下に王たるは与(あずか)り存せず、


章番号 21 章通し番号 197

通し番号 851 章内番号 1 章通し番号 197 識別番号 13_21_1
1孟子曰、2廣土衆民、3君子欲之、4所樂不存焉、
孟子曰く、広き土(ち)衆(おお)き民、君子之を欲す、楽しむ所は存らず、

通し番号 852 章内番号 2 章通し番号 197 識別番号 13_21_2
1中天下而立、2定四海之民、3君子樂之、4所性不存焉、
天下に中(ちゅう)して立ち、四海の民を定む、君子之を楽しむ、性とする所は存せず、

通し番号 853 章内番号 3 章通し番号 197 識別番号 13_21_3
1君子所性、2雖大行不加焉、3雖窮居不損焉、4分定故也、
君子が性とする所は、大いに行われると雖も加わらず、窮居すると雖も損(へ)らず、分定まる故なり、

通し番号 854 章内番号 4 章通し番号 197 識別番号 13_21_4
1君子所性、2仁義禮智、3根於心、4其生色也、5睟然見於面、6盎於背、7施於四體、8四體不言而喩、
君子が性とする所は、仁義礼智が、心に根ざす、其色を生ずるや、睟然(すいぜん)として面(おもて)に見(あらわ)れ、背に盎(あふ)れ、四体に施(ゆきわた)る、四体言わずして喩(さと)る、


章番号 22 章通し番号 198

通し番号 855 章内番号 1 章通し番号 198 識別番号 13_22_1
1孟子曰、2伯夷辟紂、3居北海之濱、4聞文王作興曰、5盍歸乎來、6吾聞、7西伯善養老者、8大公辟紂、9居東海之濱、10聞文王作興曰、11盍歸乎來、12吾聞、13西伯善養老者、14天下有善養老、15則仁人以爲己歸矣、
孟子曰く、伯夷紂を辟(さ)け、北海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞きて曰く、曰く盍(なん)ぞ帰らざる(来)、吾聞く、西伯善く老を養う者と、大公紂を辟(さ)け、東海の浜(ほとり)に居る、文王作興すると聞き、曰く盍(なん)ぞ帰らざる、吾聞く、西伯善く老を養う者と、天下善く老を養うこと有れば、則ち仁人以て己の帰と爲す、

通し番号 856 章内番号 2 章通し番号 198 識別番号 13_22_2
1五畝之宅、2樹牆下以桑、3匹婦蠶之、4則老者足以衣帛矣、5五母雞、6二母彘、7無失其時、8老者足以無失肉矣、9百畝之田、10匹夫耕之、11八口之家可以無飢矣、
五畝(ほ)の宅、牆(かき)の下に樹(う)えるに桑を以てす、匹婦之を蚕(さん)すれば、則ち老なる者以て帛(きぬ)を衣るに足る、五母雞(けい)、二母彘(てい)、其時を失うこと無ければ、老なる者以て肉を失うこと無きに足る、百畝の田、匹夫之を耕せば、八口の家以て飢えること無かるべし、

通し番号 857 章内番号 3 章通し番号 198 識別番号 13_22_3
1所謂西伯善養老者、2制其田里、3敎之樹畜、4導其妻子、5使養其老、6五十非帛不煖、7七十非肉不飽、8不煖不飽、9謂之凍餒、10文王之民、11無凍餒之老者、12此之謂也、
謂う所の西伯善く老を養うは、其田里を制し、之に樹畜を教え、其妻子を導き、其老を養わしむ、五十は帛(きぬ)に非ざれば煖(あたたま)らず、七十は肉に非ざれば飽かず、煖(あたたま)らず飽かず、之を凍餒(とうだい)と謂う、文王の民は、凍餒の老いる者無し、此を之謂うなり、


章番号 23 章通し番号 199

通し番号 858 章内番号 1 章通し番号 199 識別番号 13_23_1
1孟子曰、2易其田疇、3薄其稅斂、4民可使富也、
孟子曰く、其田疇(ちゅう)を易(おさ)め、其税斂(れん)を薄(かる)くす、民富ましむべきなり、

通し番号 859 章内番号 2 章通し番号 199 識別番号 13_23_2
1食之以時、2用之以禮、3財不可勝用也、
之を食するに時を以てし、之を用いるに礼を以てすれば、財勝(あ)げて用うべからざるなり、

通し番号 860 章内番号 3 章通し番号 199 識別番号 13_23_3
1民非水火不生活、2昏暮叩人之門戶、3求水火、4無弗與者、5至足矣、6聖人治天下、7使有菽粟如水火、8菽粟如水火、9而民焉有不仁者乎、
民水火あるに非ざれば生活せず、昏暮(こんぼ)に人の門戸を叩(たた)き、水火を求む、与ざる者無し、至りて足る、聖人天下を治める、菽粟(しゅくぞく)をして水火の如く有らしむ、菽粟水火の如ければ、民焉ぞ不仁なる者有らんや、


章番号 24 章通し番号 200

通し番号 861 章内番号 1 章通し番号 200 識別番号 13_24_1
1孟子曰、2孔子登東山而小魯、3登太山而小天下、4故觀於海者難爲水、5遊於聖人之門者難爲言、
孟子曰く、孔子東山に登りて魯を小とす、太山に登りて天下を小とす、故に海を観る者は水と爲し難し、聖人の門に遊ぶ者は言と爲し難し、

通し番号 862 章内番号 2 章通し番号 200 識別番号 13_24_2
1觀水有術、2必觀其瀾、3日月有明、4容光必照焉、
水を観るに術有り、必ず其瀾(らん)を観る、日月明有り、容光必ず照らす、

通し番号 863 章内番号 3 章通し番号 200 識別番号 13_24_3
1流水之爲物也、2不盈科不行、3君子之志於道也、4不成章不達、
流水の物爲(た)るや、科(あな)を盈(み)たさざれば行かず、君子の道を志すや、章を成さざれば達せず、


章番号 25 章通し番号 201

通し番号 864 章内番号 1 章通し番号 201 識別番号 13_25_1
1孟子曰、2雞鳴而起、3孳孳爲善者、4舜之徒也、
孟子曰く、雞鳴(けいめい)にして起き、孳孳(しし)として善を爲す者は、舜の徒なり、

通し番号 865 章内番号 2 章通し番号 201 識別番号 13_25_2
1雞鳴而起、2孳孳爲利者、3蹠之徒也、
雞鳴にして起き、孳孳(しし)として利を爲す者は、蹠(せき)の徒なり、

通し番号 866 章内番号 3 章通し番号 201 識別番号 13_25_3
1欲知舜與蹠之分、2無他、3利與善之閒也、
舜と蹠の分を知らんと欲せば、他無し、利と善の間なり、


章番号 26 章通し番号 202

通し番号 867 章内番号 1 章通し番号 202 識別番号 13_26_1
1孟子曰、2楊子取爲我、3拔一毛而利天下、4不爲也、
孟子曰く、楊子は我が爲に取る、一毛を拔いて天下を利するは、爲さざるなり、

通し番号 868 章内番号 2 章通し番号 202 識別番号 13_26_2
1墨子兼愛、2摩頂放踵利天下、3爲之、
墨子兼愛す、頂を摩(ま)し踵(かかと)に放(いた)り天下を利すは、之を爲す、

通し番号 869 章内番号 3 章通し番号 202 識別番号 13_26_3
1子莫執中、2執中爲近之、3執中無權、4猶執一也、
子莫(しばく)は中を執(と)る、中を執るは之に近しと爲す、中を執り権無ければ、猶一を執るがごときなり、

通し番号 870 章内番号 4 章通し番号 202 識別番号 13_26_4
1所惡執一者、2爲其賊道也、3舉一而廢百也、
一を執るを悪(にく)む所は、其道を賊(そこな)う爲なり、一を挙げて百を廃するなり、


章番号 27 章通し番号 203

通し番号 871 章内番号 1 章通し番号 203 識別番号 13_27_1
1孟子曰、2飢者甘食、3渴者甘飮、4是未得飮食之正也、5飢渴害之也、6豈惟口腹有飢渴之害、7人心亦皆有害、
孟子曰く、飢える者食を甘(うま)しとす、渴する者飮を甘(うま)しとす、是れ未だ飮食の正を得ざるなり、飢渴之を害するなり、豈(あに)惟口腹のみ飢渴の害有らんや、人心亦皆害有り、

通し番号 872 章内番号 2 章通し番号 203 識別番号 13_27_2
1人能無以飢渴之害爲心害、2則不及人不爲憂矣、
人能く飢渴の害以て心の害と爲すこと無ければ、則ち人に及ばざるを憂いと爲さず、


章番号 28 章通し番号 204

通し番号 873 章内番号 1 章通し番号 204 識別番号 13_28_1
1孟子曰、2柳下惠不以三公易其介、
孟子曰く、柳下恵は三公以て其介を易(か)えず、


章番号 29 章通し番号 205

通し番号 874 章内番号 1 章通し番号 205 識別番号 13_29_1
1孟子曰、2有爲者辟若掘井、3掘井九軔、4而不及泉、5猶爲棄井也、
孟子曰く、爲す有る者は辟(たと)えば井を掘るが若し、井を掘ること九軔(じん)、而るに泉(せん)に及ばざれば、猶井を棄てると爲すがごときなり、


章番号 30 章通し番号 206

通し番号 875 章内番号 1 章通し番号 206 識別番号 13_30_1
1孟子曰、2堯舜性之也、3湯武身之也、4五霸假之也、
孟子曰く、堯舜は之を性とするなり、湯武は之を身とするなり、五霸は之を仮るなり、

通し番号 876 章内番号 2 章通し番号 206 識別番号 13_30_2
1久假而不歸、2惡知其非有也、
久しく仮りて帰(かえ)さず、悪ぞ其有に非ざるを知らんや、


章番号 31 章通し番号 207

通し番号 877 章内番号 1 章通し番号 207 識別番号 13_31_1
1公孫丑曰、2伊尹曰、3予不狎于不順、4放太甲于桐、5民大悅、6太甲賢又反之、7民大悅、
公孫丑曰く、伊尹曰く、予不順に狎(な)れず、太甲を桐に放つ、民大いに悦ぶ、太甲賢にして又之を反す、民大いに悦ぶ、

通し番号 878 章内番号 2 章通し番号 207 識別番号 13_31_2
1賢者之爲人臣也、2其君不賢、3則固可放與、
賢者の人臣爲るや、其君賢ならざれば、則ち固より放つべきか、

通し番号 879 章内番号 3 章通し番号 207 識別番号 13_31_3
1孟子曰、2有伊尹之志、3則可、4無伊尹之志、5則簒也、
孟子曰く、伊尹の志有れば、則ち可、伊尹の志無ければ、則ち簒(さん)なり、


章番号 32 章通し番号 208

通し番号 880 章内番号 1 章通し番号 208 識別番号 13_32_1
1公孫丑曰、2詩曰、3不素餐兮、4君子之不耕而食、5何也、6孟子曰、7君子居是國也、8其君用之、9則安富尊榮、10其子弟從之、11則孝弟忠信、12不素餐兮、13孰大於是、
公孫丑曰く、詩に曰う、素餐(そさん)せず、君子の耕さずして食すは、何ぞや、孟子曰く、君子が是国に居るや、其君之を用いれば、則ち安富尊栄なり、其子弟之に従えば、則ち孝弟忠信なり、素餐せず、孰(いず)れか是より大ならん、


章番号 33 章通し番号 209

通し番号 881 章内番号 1 章通し番号 209 識別番号 13_33_1
1王子墊問曰、2士何事、
王子墊(てん)問いて曰く、士は何をか事とする、

通し番号 882 章内番号 2 章通し番号 209 識別番号 13_33_2
1孟子曰、2尙志、
孟子曰く、志を尚(たか)くす、

通し番号 883 章内番号 3 章通し番号 209 識別番号 13_33_3
1曰、2何謂尙志、3曰、4仁義而已矣、5殺一無罪、6非仁也、7非其有而取之、8非義也、9居惡在、10仁是也、11路惡在、12義是也、13居仁由義、14大人之事備矣、
曰く、何をか志を尚(たか)くすると謂う、曰く、仁義のみ、一無罪を殺すは、仁に非ざるなり、其有に非ずして之を取るは、義に非ざるなり、居悪(いずく)にか在る、仁是れなり、路悪(いずく)にか在る、義是れなり、仁に居り義に由る、大人の事備わる、


章番号 34 章通し番号 210

通し番号 884 章内番号 1 章通し番号 210 識別番号 13_34_1
1孟子曰、2仲子不義與之齊國而弗受、3人皆信之、4是舍簞食豆羹之義也、5人莫大焉亡親戚君臣上下、6以其小者信其大者、7奚可哉、
孟子曰く、仲子は不義にして之に斉国を与えて受けず、人皆之を信ず、是れ簞食(たんし)豆羹(とうこう)を舍(す)てるの義なり、人は親戚君臣上下亡き焉(より)大なるは莫(な)し、其小なるものを以て其大なるのものを信ず、奚ぞ可ならんや、


章番号 35 章通し番号 211

通し番号 885 章内番号 1 章通し番号 211 識別番号 13_35_1
1桃應問曰、2舜爲天子、3皐陶爲士、4瞽瞍殺人、5則如之何、
桃応問いて曰く、舜天子爲(た)り、皐陶(こうよう)士爲(た)り、瞽瞍(こそう)人を殺せば、則ち之を如何(いかん)、

通し番号 886 章内番号 2 章通し番号 211 識別番号 13_35_2
1孟子曰、2執之而已矣、
孟子曰く、之を執(とら)えるのみ、

通し番号 887 章内番号 3 章通し番号 211 識別番号 13_35_3
1然則舜不禁與、
然らば則ち舜禁ぜざるか、

通し番号 888 章内番号 4 章通し番号 211 識別番号 13_35_4
1曰、2夫舜惡得而禁之、3夫有所受之也、
曰く、夫(それ)舜悪ぞ得て之を禁ぜん、夫(それ)之を受ける所有るなり、

通し番号 889 章内番号 5 章通し番号 211 識別番号 13_35_5
1然則舜如之何、
然らば則ち舜之を如何(いかん)、

通し番号 890 章内番号 6 章通し番号 211 識別番号 13_35_6
1曰、2舜視棄天下、3猶棄敝蹝也、4竊負而逃、5遵海濱而處、6終身訢然、7樂而忘天下、
曰く、舜は天下を棄てるを視ること、猶敝(へい)蹝(し)を棄てるがごときなり、竊(ひそ)かに負いて逃れ、海の浜(ほとり)に遵(そ)いて処(お)り、終身訢(きん)然と、楽しみて天下を忘る、


章番号 36 章通し番号 212

通し番号 891 章内番号 1 章通し番号 212 識別番号 13_36_1
1孟子自范之齊、2望見齊王之子、3喟然歎曰、4居移氣、5養移體、6大哉居乎、7夫非盡人之子與、
孟子范(はん)自(よ)り斉に之(ゆ)く、斉王の子を望み見て、喟然(きぜん)として歎じて曰く、居は気を移し、養は体を移す、大なるかな居乎(や)、夫(それ)尽(ことごと)く人の子に非ざるか、

通し番号 892 章内番号 2 章通し番号 212 識別番号 13_36_2
1孟子曰、
孟子曰く、

通し番号 893 章内番号 3 章通し番号 212 識別番号 13_36_3
1王子宮室車馬衣服、2多與人同、3而王子若彼者、4其居使之然也、5況居天下之廣居者乎、
王子は宮室車馬衣服、多く人と同じ、而るに王子彼(かの)若きは、其居之をして然らしむるなり、況んや天下の広居に居る者をや、

通し番号 894 章内番号 4 章通し番号 212 識別番号 13_36_4
1魯君之宋、2呼於垤澤之門、3守者曰、4此非吾君也、5何其聲之似我君也、6此無他、7居相似也、
魯君宋に之く、垤沢(てつたく)の門に於て呼ぶ、守る者曰く、此は吾君に非ざるなり、何ぞ其声の我君に似るや、此は他無し、居相似たるなり、


章番号 37 章通し番号 213

通し番号 895 章内番号 1 章通し番号 213 識別番号 13_37_1
1孟子曰、2食而弗愛、3豕交之也、4愛而不敬、5獸畜之也、
孟子曰く、食(やしな)いて愛せざるは、豕(ぶた)として之に交わるなり、愛して敬せざるは、獣として之を畜(やしな)うなり、

通し番号 896 章内番号 2 章通し番号 213 識別番号 13_37_2
1恭敬者、2幣之未將者也、
恭敬は、幣の未だ將(ささ)げざるものなり、

通し番号 897 章内番号 3 章通し番号 213 識別番号 13_37_3
1恭敬而無實、2君子不可虛拘、
恭敬にして実無ければ、君子虛にして拘(とど)めるべからず、


章番号 38 章通し番号 214

通し番号 898 章内番号 1 章通し番号 214 識別番号 13_38_1
1孟子曰、2形色、3天性也、4惟聖人、5然後可以踐形、
孟子曰く、形色は、天性なり、惟聖人にして、然る後以て形を践(ふ)むべし、


章番号 39 章通し番号 215

通し番号 899 章内番号 1 章通し番号 215 識別番号 13_39_1
1齊宣王欲短喪、2公孫丑曰、3爲朞之喪、4猶愈於已乎、
斉の宣王は喪を短くせんと欲す、公孫丑曰く、朞(き)の喪を爲すは、猶已(や)むに愈(まさ)るか、

通し番号 900 章内番号 2 章通し番号 215 識別番号 13_39_2
1孟子曰、2是猶或紾其兄之臂、3子謂之姑徐徐云爾、4亦敎之孝弟而已矣、
孟子曰く、是れ猶或るひと其兄の臂(うで)を紾(ねじ)るに、子之に姑(しばら)く徐徐にせよと謂うがごとし(云爾)、亦(ただ)之に孝弟を教えるのみ、

通し番号 901 章内番号 3 章通し番号 215 識別番号 13_39_3
1王子有其母死者、2其傅爲之請數月之喪、3公孫丑曰、4若此者、5何如也、
王子其母死す者有り、其傅(ふ)之が爲に数月の喪を請う、公孫丑曰く、此若きもの、何如(いかん)、

通し番号 902 章内番号 4 章通し番号 215 識別番号 13_39_4
1曰、2是欲終之、3而不可得也、4雖加一日愈於已、5謂夫莫之禁而弗爲者也、
曰く、是れ之を終えるを欲して、得(う)べからざるなり、一日を加うと雖も已(や)むに愈(まさ)る、夫(かの)之を禁ずる莫(な)くて爲さざる者を謂うなり、


章番号 40 章通し番号 216

通し番号 903 章内番号 1 章通し番号 216 識別番号 13_40_1
1孟子曰、2君子之所以敎者五、
孟子曰く、君子の以て教える所のもの五なり、

通し番号 904 章内番号 2 章通し番号 216 識別番号 13_40_2
1有如時雨化之者、
時雨之を化すが如きもの有り、

通し番号 905 章内番号 3 章通し番号 216 識別番号 13_40_3
1有成德者、2有達財者、
徳を成すもの有り、財を達するもの有り、

通し番号 906 章内番号 4 章通し番号 216 識別番号 13_40_4
1有答問者、
問うに答えるもの有り、

通し番号 907 章内番号 5 章通し番号 216 識別番号 13_40_5
1有私淑艾者、
私(ひそ)かに淑(よ)くし艾(おさ)める者有り、

通し番号 908 章内番号 6 章通し番号 216 識別番号 13_40_6
1此五者、2君子之所以敎也、
此五なるものは、君子の以て教える所なり、


章番号 41 章通し番号 217

通し番号 909 章内番号 1 章通し番号 217 識別番号 13_41_1
1公孫丑曰、2道則高矣、3美矣、4宜若登天然、5似不可及也、6何不使彼爲可幾及、7而日孳孳也、
公孫丑曰く、道は則ち高し、美(うるわ)し、宜(ほとんど)天に登るが若き然(なり)、及ぶべからざるに似るなり、何ぞ彼をして幾(ちか)づき及ぶべきを爲して、日に孳孳(しし)せざらしめざるや、

通し番号 910 章内番号 2 章通し番号 217 識別番号 13_41_2
1孟子曰、2大匠不爲拙工改廢繩墨、3羿不爲拙射變其彀率、
孟子曰く、大匠は拙工の爲に縄墨(じょうぼく)を改め廃せず、羿(げい)は拙射の爲に其彀率(こうりつ)を変ぜず、

通し番号 911 章内番号 3 章通し番号 217 識別番号 13_41_3
1君子引而不發、2躍如也、3中道而立、4能者從之、
君子は引きて発さず、躍如(やくじょ)なり、道に中(あた)りて立つ、能なる者之に従う、


章番号 42 章通し番号 218

通し番号 912 章内番号 1 章通し番号 218 識別番号 13_42_1
1孟子曰、2天下有道、3以道殉身、4天下無道、5以身殉道、
孟子曰く、天下道有れば、道以て身に殉(したが)わしむ、天下道無ければ、身以て道に殉わしむ、

通し番号 913 章内番号 2 章通し番号 218 識別番号 13_42_2
1未聞以道殉乎人者也、
未だ道以て人に殉(したが)わしめるものを聞かざるなり、


章番号 43 章通し番号 219

通し番号 914 章内番号 1 章通し番号 219 識別番号 13_43_1
1公都子曰、2滕更之在門也、3若在所禮、4而不答、5何也、
公都子曰く、滕更(とうこう)の門に在るや、礼とする所在るが若し、而るに答えず、何ぞや、

通し番号 915 章内番号 2 章通し番号 219 識別番号 13_43_2
1孟子曰、2挾貴而問、3挾賢而問、4挾長而問、5挾有勳勞而問、6挾故而問、7皆所不答也、8滕更有二焉、
孟子曰く、貴を挾(さしはさ)みて問う、賢を挾(さしはさ)みて問う、長を挾(さしはさ)みて問う、勲労有るを挾(さしはさ)みて問う、故を挾(さしはさ)みて問う、皆答えざる所なり、滕更は二有り、


章番号 44 章通し番号 220

通し番号 916 章内番号 1 章通し番号 220 識別番号 13_44_1
1孟子曰、2於不可已而已者、3無所不已、4於所厚者薄、5無所不薄也、
孟子曰く、已(や)むべからずに於て已むは、已まざる所無し、厚き所のものに於て薄きは、薄からざる所無きなり、

通し番号 917 章内番号 2 章通し番号 220 識別番号 13_44_2
1其進銳者、2其退速、
其進むこと鋭(はや)きは、其退くこと速(はや)し、


章番号 45 章通し番号 221

通し番号 918 章内番号 1 章通し番号 221 識別番号 13_45_1
1孟子曰、2君子之於物也、3愛之而弗仁、4於民也、5仁之而弗親、6親親而仁民、7仁民而愛物、
孟子曰く、君子の物に於るや、之を愛して仁ならず、民に於るや、之を仁(いつくし)みて親(した)しまず、親(しん)に親しみて民を仁(いつくし)む、民を仁(いつくし)みて物を愛す、


章番号 46 章通し番号 222

通し番号 919 章内番号 1 章通し番号 222 識別番号 13_46_1
1孟子曰、2知者無不知也、3當務之爲急、4仁者無不愛也、5急親賢之爲務、6堯舜之知而不徧物、7急先務也、8堯舜之仁不徧愛人、9急親賢也、
孟子曰く、知者は知らざる無きなり、当に務むべし之急と爲す、仁者愛さざる無きなり、急に賢に親しむ之務めと爲す、堯舜の知にして物に徧(あまね)からず、先務を急とするなり、堯舜の仁にして人を愛すること徧(あまね)からず、親賢を急とするなり、

通し番号 920 章内番号 2 章通し番号 222 識別番号 13_46_2
1不能三年之喪、2而緦、3小功之察、4放飯流歠、5而問無齒決、6是之謂不知務、
三年の喪を能(よ)くせずして、緦(し)、小功之察す、放飯流歠(せつ)して、歯決無きを問う、是を之務めを知らずと謂う、


14 盡心章句下 jìn xīn zhāng jù xià

章番号 1 章通し番号 223

通し番号 921 章内番号 1 章通し番号 223 識別番号 14_1_1
1孟子曰、2不仁哉、3梁惠王也、4仁者以其所愛、5及其所不愛、6不仁者以其所不愛、7及其所愛、
孟子曰く、不仁なるかな、梁の恵王や、仁者は其愛する所以て、其愛さざる所に及ぼす、不仁者は其愛さざる所を以て、其愛する所に及ぼす、

通し番号 922 章内番号 2 章通し番号 223 識別番号 14_1_2
1公孫丑曰、2何謂也、3梁惠王以土地之故、4糜爛其民而戰之、5大敗、6將復之、7恐不能勝、8故驅其所愛子弟以殉之、9是之謂以其所不愛、10及其所愛也、
公孫丑曰く、何の謂(いい)ぞや、梁の恵王は土地の故を以て、其民を糜爛(びらん)して之を戦わす、大敗す、将に之に復(むく)わんとす、勝つ能わざるを恐る、故に其愛する所の子弟を駆り以て之に殉(したが)わしむ、是を之其愛さざる所を以て、其愛する所に及ぼすと謂うなり、


章番号 2 章通し番号 224

通し番号 923 章内番号 1 章通し番号 224 識別番号 14_2_1
1孟子曰、2春秋無義戰、3彼善於此、4則有之矣、
孟子曰く、春秋義戦無なし、彼が此より善きは、則ち之有り、

通し番号 924 章内番号 2 章通し番号 224 識別番号 14_2_2
1征者上伐下也、2敵國不相征也、
征は上が下を伐つなり、敵(たぐい)する国は相征さざるなり、


章番号 3 章通し番号 225

通し番号 925 章内番号 1 章通し番号 225 識別番号 14_3_1
1孟子曰、2盡信書、3則不如無書、
孟子曰く、尽く書を信ずるは、則ち書無きに如かず、

通し番号 926 章内番号 2 章通し番号 225 識別番号 14_3_2
1吾於武成、2取二三策而已矣、
吾武成に於て、二三策を取るのみ、

通し番号 927 章内番号 3 章通し番号 225 識別番号 14_3_3
1仁人無敵於天下、2以至仁伐至不仁、3而何其血之流杵也、
仁人は天下に敵無し、至仁以て至不仁を伐つ、而るに何ぞ其血の杵(きね)を流さんや、


章番号 4 章通し番号 226

通し番号 928 章内番号 1 章通し番号 226 識別番号 14_4_1
1孟子曰、2有人曰、3我善爲陳、4我善爲戰、5大罪也、
孟子曰く、人有りて曰く、我善く陳を爲す、我善く戦いを爲す、大罪なり、

通し番号 929 章内番号 2 章通し番号 226 識別番号 14_4_2
1國君好仁、2天下無敵焉、
国君が仁を好めば、天下に敵無し、

通し番号 930 章内番号 3 章通し番号 226 識別番号 14_4_3
1南面而征北狄怨、2東面而征西夷怨、3曰、4奚爲後我、
南面して征すれば北狄怨む、東面して征すれば西夷怨む、曰く、奚爲(なんすれ)ぞ我を後にす、

通し番号 931 章内番号 4 章通し番号 226 識別番号 14_4_4
1武王之伐殷也、2革車三百兩、3虎賁三千人、
武王の殷を伐つや、革車三百両、虎賁(こほん)三千人、

通し番号 932 章内番号 5 章通し番号 226 識別番号 14_4_5
1王曰、2無畏、3寧爾也、4非敵百姓也、5若崩厥角稽首、
王曰く、畏れること無かれ、爾(なんじ)を寧(やす)んずるなり、百姓に敵するに非ざるなり、崩(くず)るが若く角(ひたい)を厥(たお)し稽首す、

通し番号 933 章内番号 6 章通し番号 226 識別番号 14_4_6
1征之爲言、2正也、3各欲正己也、4焉用戰、
征の言爲(た)るは、正なり、各(おのおの)己を正さんと欲するなり、焉ぞ戦いを用いん、


章番号 5 章通し番号 227

通し番号 934 章内番号 1 章通し番号 227 識別番号 14_5_1
1孟子曰、2梓匠輪輿、3能與人規矩、4不能使人巧、
孟子曰く、梓匠(ししょう)輪輿(りんよ)、能く人に規矩を与える、人をして巧ならしめること能わず、


章番号 6 章通し番号 228

通し番号 935 章内番号 1 章通し番号 228 識別番号 14_6_1
1孟子曰、2舜之飯糗茹草也、3若將終身焉、4及其爲天子也、5被袗衣、6鼓琴、7二女果、8若固有之、
孟子曰く、舜の糗(ほしいい)を飯(た)べ草を茹(た)べるや、将に身を終えんとするが若し、其天子と爲るに及ぶや、袗衣(しんい)を被(き)、琴を鼓(ひ)き、二女果(はべ)る、固より之を有するが若し、


章番号 7 章通し番号 229

通し番号 936 章内番号 1 章通し番号 229 識別番号 14_7_1
1孟子曰、2吾今而後知殺人親之重也、3殺人之父、4人亦殺其父、5殺人之兄、6人亦殺其兄、7然則非自殺之也、8一閒耳、
孟子曰く、吾今にして後、人の親(しん)を殺すの重きを知るなり、人の父を殺せば、人亦其父を殺す、人の兄を殺せば、人亦其兄を殺す、然らば則ち自ら之を殺すに非ざるや、一間のみ、


章番号 8 章通し番号 230

通し番号 937 章内番号 1 章通し番号 230 識別番号 14_8_1
1孟子曰、2古之爲關也、3將以禦暴、
孟子曰く、古の関を爲(つく)るや、将に以て暴を禦(ふせ)がんとす、

通し番号 938 章内番号 2 章通し番号 230 識別番号 14_8_2
1今之爲關也、2將以爲暴、
今の関を爲(つく)るや、将に以て暴を爲さんとす、


章番号 9 章通し番号 231

通し番号 939 章内番号 1 章通し番号 231 識別番号 14_9_1
1孟子曰、2身不行道、3不行於妻子、4使人不以道、5不能行於妻子、
孟子曰く、身道を行わざれば、妻子に於ても行われず、人を使うに道以てせざれば、妻子に於ても行うこと能わず、


章番号 10 章通し番号 232

通し番号 940 章内番号 1 章通し番号 232 識別番号 14_10_1
1孟子曰、2周于利者、3凶年不能殺、4周于德者、5邪世不能亂、
孟子曰く、利に周(いた)る者は、凶年殺すこと能わず、徳に周(いた)る者は、邪世乱すこと能わず、


章番号 11 章通し番号 233

通し番号 941 章内番号 1 章通し番号 233 識別番号 14_11_1
1孟子曰、2好名之人、3能讓千乘之國、4苟非其人、5簞食豆羹見於色、
孟子曰く、名を好むの人は、能く千乗の国を讓る、苟(もし)其人に非ざれば、簞食(たんし)豆羹(とうこう)色に見(あらわ)る、


章番号 12 章通し番号 234

通し番号 942 章内番号 1 章通し番号 234 識別番号 14_12_1
1孟子曰、2不信仁賢、3則國空虛、
孟子曰く、仁賢を信じざれば、則ち国空虚なり、

通し番号 943 章内番号 2 章通し番号 234 識別番号 14_12_2
1無禮義、2則上下亂、
礼義無ければ、則ち上下乱る、

通し番号 944 章内番号 3 章通し番号 234 識別番号 14_12_3
1無政事、2則財用不足、
政事無ければ、則ち財用足らず、


章番号 13 章通し番号 235

通し番号 945 章内番号 1 章通し番号 235 識別番号 14_13_1
1孟子曰、2不仁而得國者、3有之矣、4不仁而得天下、5未之有也、
孟子曰く、不仁にして国を得る者、之有り、不仁にして天下を得るは、未だ之有らざるなり、


章番号 14 章通し番号 236

通し番号 946 章内番号 1 章通し番号 236 識別番号 14_14_1
1孟子曰、2民爲貴、3社稷次之、4君爲輕、
孟子曰く、民は貴(たっと)しと爲す、社稷は之に次ぐ、君は軽しと爲す、

通し番号 947 章内番号 2 章通し番号 236 識別番号 14_14_2
1是故得乎丘民而爲天子、2得乎天子爲諸侯、3得乎諸侯爲大夫、
是故に丘民に得る、而して天子と爲る、天子に得て諸侯と爲る、諸侯に得て大夫と爲る、

通し番号 948 章内番号 3 章通し番号 236 識別番号 14_14_3
1諸侯危社稷、2則變置、
諸侯が社稷を危うくすれば、則ち変えて置く、

通し番号 949 章内番号 4 章通し番号 236 識別番号 14_14_4
1犧牲旣成、2粢盛旣潔、3祭祀以時、4然而旱乾水溢、5則變置社稷、
犧牲既に成る、粢盛(しせい)既に潔(きよ)し、祭祀は時を以てす、然り而して旱乾(かんかん)水溢(すいいつ)すれば、則ち社稷を変えて置く、


章番号 15 章通し番号 237

通し番号 950 章内番号 1 章通し番号 237 識別番号 14_15_1
1孟子曰、2聖人、3百世之師也、4伯夷、5柳下惠是也、6故聞伯夷之風者、7頑夫廉、8懦夫有立志、9聞柳下惠之風者、10薄夫敦、11鄙夫寬、12奮乎百世之上、13百世之下、14聞者莫不興起也、15非聖人而能若是乎、16而況於親炙之者乎、
孟子曰く、聖人は、百世の師なり、伯夷、柳下恵是れなり、故に伯夷の風を聞く者は、頑夫(がんぷ)は廉、懦夫(だふ)は志を立つること有り、柳下恵の風を聞く者は、薄夫は敦(あつ)く、鄙夫(ひふ)は寬(ひろ)し、百世の上に奮い、百世の下、聞く者興起せざる莫きなり、聖人に非ずして能く是の若きか、而るに況んや之に親炙(しんしゃ)する者に於てをや、


章番号 16 章通し番号 238

通し番号 951 章内番号 1 章通し番号 238 識別番号 14_16_1
1孟子曰、2仁也者、3人也、4合而言之、5道也、
孟子曰く、仁なるは、人なり、合わせて之を言えば、道なり、


章番号 17 章通し番号 239

通し番号 952 章内番号 1 章通し番号 239 識別番号 14_17_1
1孟子曰、2孔子之去魯曰、3遲遲吾行也、4去父母國之道也、5去齊、6接淅而行、7去他國之道也、
孟子曰く、孔子が魯を去るに曰く、遅遅として吾行くなり、父母の国を去るの道なり、斉を去るに、淅を接(う)けて行く、他国を去るの道なり、


章番号 18 章通し番号 240

通し番号 953 章内番号 1 章通し番号 240 識別番号 14_18_1
1孟子曰、2君子之戹於陳蔡之閒、3無上下之交也、
孟子曰く、君子が陳蔡の間に於て戹(くる)しむは、上下の交無きなり、


章番号 19 章通し番号 241

通し番号 954 章内番号 1 章通し番号 241 識別番号 14_19_1
1貉稽曰、2稽大不理於口、
貉稽曰く、稽大いに口に理ならず、

通し番号 955 章内番号 2 章通し番号 241 識別番号 14_19_2
1孟子曰、2無傷也、3士憎茲多口、
孟子曰く、傷むこと無かれ、士は茲(この)多口に憎まれる、

通し番号 956 章内番号 3 章通し番号 241 識別番号 14_19_3
1詩云、2憂心悄悄、3慍于羣小、4孔子也、5肆不殄厥慍、6亦不隕厥問、7文王也、
詩に云う、憂う心が悄悄(しょうしょう)、羣小に慍(いか)られる、孔子なり、肆(つい)に厥(その)慍(いか)りを殄(た)たず、亦厥(その)問を隕(お)とさず、文王なり、


章番号 20 章通し番号 242

通し番号 957 章内番号 1 章通し番号 242 識別番号 14_20_1
1孟子曰、2賢者以其昭昭、3使人昭昭、4今以其昏昏、5使人昭昭、
孟子曰く、賢者は其昭昭以て、人をして昭昭せしむ、今は其昏昏以て、人をして昭昭せしむ、


章番号 21 章通し番号 243

通し番号 958 章内番号 1 章通し番号 243 識別番号 14_21_1
1孟子謂高子曰、2山徑之蹊、3閒介然用之而成路、4爲閒不用、5則茅塞之矣、6今茅塞子之心矣、
孟子は高子に謂いて曰く、山径の蹊(けい)、間(しばら)く介然として之を用いて路を成す、間(しばら)く用いざるを爲せば、則ち茅(ちがや)之を塞(ふさ)ぐ、今茅子の心を塞ぐ、


章番号 22 章通し番号 244

通し番号 959 章内番号 1 章通し番号 244 識別番号 14_22_1
1高子曰、2禹之聲、3尙文王之聲、
高子曰く、禹の声、文王の声に尚(まさ)る、

通し番号 960 章内番号 2 章通し番号 244 識別番号 14_22_2
1孟子曰、2何以言之、3曰、4以追蠡、
孟子曰く、何を以て之を言う、曰く、追(たい)の蠡(むしば)むを以てなり、

通し番号 961 章内番号 3 章通し番号 244 識別番号 14_22_3
1曰、2是奚足哉、3城門之軌、4兩馬之力與、
曰く、是奚ぞ足らんや、城門の軌は、両馬の力か、


章番号 23 章通し番号 245

通し番号 962 章内番号 1 章通し番号 245 識別番号 14_23_1
1齊饑、2陳臻曰、3國人皆以、4夫子將復爲發棠、5殆不可復、
斉饑える、陳臻(ちんしん)曰く、国人皆以(おも)えらく、夫子(ふうし)将に復(また)爲に棠(とう)を発せんとす、殆ど復(ふたた)びすべからず、

通し番号 963 章内番号 2 章通し番号 245 識別番号 14_23_2
1孟子曰、2是爲馮婦也、3晉人有馮婦者、4善搏虎、5卒爲善士、6則之野、7有衆逐虎、8虎負嵎、9莫之敢攖、10望見馮婦、11趨而迎之、12馮婦攘臂下車、13衆皆悅之、14其爲士者笑之、
孟子曰く、是れ馮婦(ひょうふ)を爲すなり、晋人馮婦なる者有り、善く虎を搏(とら)う、卒に善士と爲る、則ち野に之(ゆ)く、衆虎を逐う有り、虎嵎(ぐう)に負(よ)り、之に敢えて攖(ふ)れること莫し、馮婦を望見して、趨(はし)りて之を迎う、馮婦臂(うで)を攘(まく)り下車す、衆皆之を悦ぶ、其士爲る者之を笑う、


章番号 24 章通し番号 246

通し番号 964 章内番号 1 章通し番号 246 識別番号 14_24_1
1孟子曰、2口之於味也、3目之於色也、4耳之於聲也、5鼻之於臭也、6四肢之於安佚也、7性也、8有命焉、9君子不謂性也、
孟子曰く、口の味に於る、目の色に於る、耳の声に於る、鼻の臭(におい)に於る、四肢の安佚に於るは、性なり、命有り、君子は性と謂わざるなり、

通し番号 965 章内番号 2 章通し番号 246 識別番号 14_24_2
1仁之於父子也、2義之於君臣也、3禮之於賓主也、4智之於賢者也、5聖人之於天道也、6命也、7有性焉、8君子不謂命也、
仁の父子に於る、義の君臣に於る、礼の賓主に於る、智の賢者に於る、聖人の天道に於るは、命なり、性有り、君子は命と謂わざるなり、


章番号 25 章通し番号 247

通し番号 966 章内番号 1 章通し番号 247 識別番号 14_25_1
1浩生不害問曰、2樂正子何人也、3孟子曰、4善人也、5信人也、
浩生不害問いて曰く、楽正子何人ぞや、孟子曰く、善人なり、信人なり、

通し番号 967 章内番号 2 章通し番号 247 識別番号 14_25_2
1何謂善、2何謂信、
何をか善と謂う、何をか信と謂う、

通し番号 968 章内番号 3 章通し番号 247 識別番号 14_25_3
1曰、2可欲之謂善、
曰く、欲すべし之善と謂う、

通し番号 969 章内番号 4 章通し番号 247 識別番号 14_25_4
1有諸己之謂信、
諸(これ)を己に有(たも)つ之信と謂う、

通し番号 970 章内番号 5 章通し番号 247 識別番号 14_25_5
1充實之謂美、
充実する之美と謂う、

通し番号 971 章内番号 6 章通し番号 247 識別番号 14_25_6
1充實而有光輝之謂大、
充実して光輝有り之大と謂う、

通し番号 972 章内番号 7 章通し番号 247 識別番号 14_25_7
1大而化之之謂聖、
大にして之を化す之聖と謂う、

通し番号 973 章内番号 8 章通し番号 247 識別番号 14_25_8
1聖而不可知之之謂神、
聖にして之を知るべからず之神と謂う、

通し番号 974 章内番号 9 章通し番号 247 識別番号 14_25_9
1樂正子、2二之中、3四之下也、
楽正子、二の中、四の下なり、


章番号 26 章通し番号 248

通し番号 975 章内番号 1 章通し番号 248 識別番号 14_26_1
1孟子曰、2逃墨必歸於楊、3逃楊必歸於儒、4歸斯受之而已矣、
孟子曰く、墨を逃(のが)れば必ず楊に帰す、楊を逃れば必ず儒に帰す、帰すれば斯(すなわ)ち之を受くるのみ、

通し番号 976 章内番号 2 章通し番号 248 識別番号 14_26_2
1今之與楊墨辯者、2如追放豚、3旣入其苙、4又從而招之、
今の楊墨と弁ずる者は、放豚(とん)を追うが如し、既に其苙(おり)に入る、又(さら)に従(よ)りて之を招(つな)ぐ、


章番号 27 章通し番号 249

通し番号 977 章内番号 1 章通し番号 249 識別番号 14_27_1
1孟子曰、2有布縷之征、3粟米之征、4力役之征、5君子用其一、6緩其二、7用其二而民有殍、8用其三而父子離、
孟子曰く、布(ふ)縷(る)の征、粟米の征、力役の征有り、君子其一を用い、其二を緩(ゆる)くす、其二を用いて民殍(ひょう)有り、其三を用いて父子離る、


章番号 28 章通し番号 250

通し番号 978 章内番号 1 章通し番号 250 識別番号 14_28_1
1孟子曰、2諸侯之寶三、3土地、4人民、5政事、6寶珠玉者、7殃必及身、
孟子曰く、諸侯の宝三、土地、人民、政事なり、珠玉を宝とする者は、殃(わざわい)必ず身に及ぶ、


章番号 29 章通し番号 251

通し番号 979 章内番号 1 章通し番号 251 識別番号 14_29_1
1盆成括仕於齊、2孟子曰、3死矣盆成括、4盆成括見殺、5門人問曰、6夫子何以知其將見殺、7曰、8其爲人也小有才、9未聞君子之大道也、10則足以殺其軀而已矣、
盆成括(ぼんせいかつ)斉に仕う、孟子曰く、死なん盆成括、盆成括殺さ見(る)、門人問いて曰く、夫子何を以て其将に殺されんとするを知るか、曰く、其人と爲りや小し才有り、未だ君子の大道を聞かざるなり、則ち以て其軀(み)を殺すに足るのみ、


章番号 30 章通し番号 252

通し番号 980 章内番号 1 章通し番号 252 識別番号 14_30_1
1孟子之滕、2館於上宮、3有業屨於牖上、4館人求之弗得、
孟子滕に之き、上宮に館す、業屨(く)牖上(ゆうじょう)に有り、館人之を求め得ず、

通し番号 981 章内番号 2 章通し番号 252 識別番号 14_30_2
1或問之曰、2若是乎從者之廋也、3曰、4子以是爲竊屨來與、5曰、6殆非也、7夫子之設科也、8往者不追、9來者不距、10苟以是心至、11斯受之而已矣、
或るひと之を問いて曰く、是の若きか従者の廋(かく)すや、曰く、子是れ屨(くつ)を竊(ぬす)む爲に来ると以(おも)えるか、曰く、殆(ほとん)ど非なり、夫子(ふうし)の科を設けるや、往く者追わず、来る者距(こば)まず、苟(もし)是心以て至れば、斯(すなわ)ち之を受けるのみ、


章番号 31 章通し番号 253

通し番号 982 章内番号 1 章通し番号 253 識別番号 14_31_1
1孟子曰、2人皆有所不忍、3達之於其所忍、4仁也、5人皆有所不爲、6達之於其所爲、7義也、
孟子曰く、人皆忍びざる所有り、之を其忍ぶ所に達するは、仁なり、人皆爲さざる所有り、之を其爲す所に達するは、義なり、

通し番号 983 章内番号 2 章通し番号 253 識別番号 14_31_2
1人能充無欲害人之心、2而仁不可勝用也、3人能充無穿踰之心、4而義不可勝用也、
人能く人を害するを欲すること無しの心を充(み)たせば、仁勝(あ)げて用うべからざるなり、人能く穿踰(せんゆ)無しの心を充たせば、義勝げて用うべからざるなり、

通し番号 984 章内番号 3 章通し番号 253 識別番号 14_31_3
1人能充無受爾汝之實、2無所往而不爲義也、
人能く爾汝(じじょ)を受けること無しの実を充たせば、往く所として義と爲さざる無きなり、

通し番号 985 章内番号 4 章通し番号 253 識別番号 14_31_4
1士未可以言而言、2是以言餂之也、3可以言而不言、4是以不言餂之也、5是皆穿踰之類也、
士未だ以て言うべからずして言う、是れ言以て之を餂(と)るなり、以て言うべくして言わず、是れ言わざる以て之を餂(と)るなり、是れ皆穿踰の類なり、


章番号 32 章通し番号 254

通し番号 986 章内番号 1 章通し番号 254 識別番号 14_32_1
1孟子曰、2言近而指遠者、3善言也、4守約而施博者、5善道也、6君子之言也、7不下帶而道存焉、
孟子曰く、言近くして指遠きは、善言なり、守り約にして施(ゆきわた)ること博(ひろ)きは、善道なり、君子の言や、帯を下らずして道存す、

通し番号 987 章内番号 2 章通し番号 254 識別番号 14_32_2
1君子之守、2脩其身而天下平、
君子の守り、其身を脩めて天下平かなり、

通し番号 988 章内番号 3 章通し番号 254 識別番号 14_32_3
1人病舍其田而芸人之田、2所求於人者重、3而所以自任者輕、
人其田を舍(す)てて人の田を芸(くさぎ)るを病とす、人に求める所のもの重くして、以て自ら任ずる所のもの軽し、


章番号 33 章通し番号 255

通し番号 989 章内番号 1 章通し番号 255 識別番号 14_33_1
1孟子曰、2堯舜、3性者也、4湯武、5反之也、
孟子曰く、堯舜は、性なるものなり、湯武は、之に反るなり、

通し番号 990 章内番号 2 章通し番号 255 識別番号 14_33_2
1動容周旋中禮者、2盛德之至也、3哭死而哀、4非爲生者也、5經德不回、6非以干祿也、7言語必信、8非以正行也、
動容周旋して礼に中(あた)る者は、盛德の至りなり、死を哭して哀(かな)しむは、生きる者の爲に非ざるなり、徳を経(つね)とし回(よこし)まならざるは、以て禄を干(もと)めるに非ざるなり、言語必ず信なるは、以て行を正しくするに非ざるなり、

通し番号 991 章内番号 3 章通し番号 255 識別番号 14_33_3
1君子行法、2以俟命而已矣、
君子は法を行い、以て命を俟(ま)つのみ、


章番号 34 章通し番号 256

通し番号 992 章内番号 1 章通し番号 256 識別番号 14_34_1
1孟子曰、2說大人、3則藐之、4勿視其巍巍然、
孟子曰く、大人に説くは、則ち之を藐(ちい)さくする、其巍巍(ぎぎ)然を視ることが勿(な)し、

通し番号 993 章内番号 2 章通し番号 256 識別番号 14_34_2
1堂高數仞、2榱題數尺、3我得志弗爲也、4食前方丈、5侍妾數百人、6我得志弗爲也、7般樂飮酒、8驅騁田獵、9後車千乘、10我得志弗爲也、11在彼者、12皆我所不爲也、13在我者、14皆古之制也、15吾何畏彼哉、
堂の高さが数仞(じん)、榱(たるき)の題が数尺は、我は志を得るとも爲さざるなり、食が前に方丈、侍妾が数百人は、我は志を得るとも爲さざるなり、般楽(はんらく)飲酒し、駆騁(くてい)田猟し、後車が千乗は、我は志を得るも爲さざるなり、彼に在るもの、皆我爲さざる所なり、我に在るもの、皆古の制なり、吾何ぞ彼を畏れんや、


章番号 35 章通し番号 257

通し番号 994 章内番号 1 章通し番号 257 識別番号 14_35_1
1孟子曰、2養心莫善於寡欲、3其爲人也寡欲、4雖有不存焉者、5寡矣、6其爲人也多欲、7雖有存焉者、8寡矣、
孟子曰く、心を養うは寡欲より善きは莫し、其人と爲りや寡欲なれば、存せざるもの有りと雖も、寡(すくな)し、其人と爲りや多欲なれば、存するもの有りと雖も、寡し、


章番号 36 章通し番号 258

通し番号 995 章内番号 1 章通し番号 258 識別番号 14_36_1
1曾皙嗜羊棗、2而曾子不忍食羊棗、
曽皙(そうせき)は羊棗(ようそう)を嗜(たしな)む、而して曽子は羊棗を食べるを忍びず、

通し番号 996 章内番号 2 章通し番号 258 識別番号 14_36_2
1公孫丑問曰、2膾炙與羊棗孰美、3孟子曰、4膾炙哉、5公孫丑曰、6然則曾子何爲食膾炙而不食羊棗、7曰、8膾炙所同也、9羊棗所獨也、10諱名不諱姓、11姓所同也、12名所獨也、
公孫丑問いて曰く、膾(かい)炙(しゃ)と羊棗と孰か美(うま)し、孟子曰く、膾炙かな、公孫丑曰く、然らば則ち曽子何爲(なんすれ)ぞ膾炙を食べて羊棗を食べざる、曰く、膾炙は同じくする所なり、羊棗は独りする所なり、名を諱(い)みて姓を諱(い)まず、姓は同じくする所なり、名は独りする所なり、l


章番号 37 章通し番号 259

通し番号 997 章内番号 1 章通し番号 259 識別番号 14_37_1
1萬章問曰、2孔子在陳曰、3盍歸乎來、4吾黨之士狂簡、5進取、6不忘其初、7孔子在陳、8何思魯之狂士、
万章問いて曰く、孔子陳に在りて曰く、盍(なん)ぞ帰らざる(来)、吾党の士は狂簡にして、進みて取り、其初を忘れず、孔子陳に在りて、何ぞ魯の狂士を思う、

通し番号 998 章内番号 2 章通し番号 259 識別番号 14_37_2
1孟子曰、2孔子不得中道而與之、3必也狂獧乎、4狂者進取、5獧者有所不爲也、6孔子豈不欲中道哉、7不可必得、8故思其次也、
孟子曰く、孔子中道を得て之に与(くみ)せざれば、必ずや狂獧(乎)、狂なる者は進みて取り、獧なる者は爲さざる所有るなり、孔子豈中道を欲さざらんや、必ずしも得べからず、故に其次を思うなり、

通し番号 999 章内番号 3 章通し番号 259 識別番号 14_37_3
1敢問、2何如斯可謂狂矣、
敢えて問う、何如なれば斯(すなわ)ち狂と謂うべし、

通し番号 1000 章内番号 4 章通し番号 259 識別番号 14_37_4
1曰、2如琴張、3曾皙、4牧皮者、5孔子之所謂狂矣、
曰く、琴張、曽皙、牧皮の如き者、孔子の謂う所の狂なり、

通し番号 1001 章内番号 5 章通し番号 259 識別番号 14_37_5
1何以謂之狂也、
何を以て之を狂と謂うや、

通し番号 1002 章内番号 6 章通し番号 259 識別番号 14_37_6
1曰、2其志嘐嘐然曰、3古之人、4古之人、5夷考其行、6而不掩焉者也、
曰く、其志嘐嘐然(こうこうぜん)として曰く、古の人、古の人、其行を夷考して、掩(おお)わざるものなり、

通し番号 1003 章内番号 7 章通し番号 259 識別番号 14_37_7
1狂者又不可得、2欲得不屑不潔之士而與之、3是獧也、4是又其次也、
狂なる者又得べからず、不潔を屑(いさぎよ)しとせざるの士を得て之に与することを欲す、是れ獧(けん)なり、是れ又其次なり、

通し番号 1004 章内番号 8 章通し番号 259 識別番号 14_37_8
1孔子曰、2過我門而不入我室、3我不憾焉者、4其惟郷原乎、5郷原、6德之賊也、7曰、8何如斯可謂之郷原矣、
孔子曰く、我門を過ぎて我室に入らず、我憾(うら)みざる者は、其惟郷原(乎)、郷原は、徳の賊なり、曰く、何如(いかん)すれば斯(すなわ)ち之を郷原と謂うべし、

通し番号 1005 章内番号 9 章通し番号 259 識別番号 14_37_9
1曰、2何以是嘐嘐也、3言不顧行、4行不顧言、5則曰、6古之人、7古之人、8行何爲踽踽涼涼、9生斯世也、10爲斯世也、11善斯可矣、12閹然媚於世也者、13是郷原也、
曰く、何を以て是れ嘐嘐(こうこう)たるや、言は行を顧みず、行は言を顧みず、則ち曰く、古の人、古の人、行何爲(なんすれ)ぞ踽踽(くく)涼涼(りょうりょう)たる、斯(この)世に生まれるや、斯世を爲すなり、善しとせらるれば斯(すなわ)ち可なり、閹然(えんぜん)として世に媚びる者は、是れ郷原なり、

通し番号 1006 章内番号 10 章通し番号 259 識別番号 14_37_10
1萬章曰、2一郷皆稱原人焉、3無所往而不爲原人、4孔子以爲德之賊、5何哉、
万章曰く、一郷皆原人と称(い)う、往く所として原人と爲さざる無し、孔子以て徳の賊と爲す、何ぞや、

通し番号 1007 章内番号 11 章通し番号 259 識別番号 14_37_11
1曰、2非之無舉也、3刺之無刺也、4同乎流俗、5合乎汙世、6居之似忠信、7行之似廉潔、8衆皆悅之、9自以爲是、10而不可與入堯舜之道、11故曰、12德之賊也、
曰く、之を非(そし)るに挙げること無きなり、之を刺(せめ)るに刺(せめ)ること無きなり、流俗に同じ、汙世に合う、之に居り忠信に似る、之を行い廉潔に似る、衆皆之を悦ぶ、自ら以て是と爲して、与(とも)に堯舜の道に入るべからず、故に曰く、徳の賊なり、

通し番号 1008 章内番号 12 章通し番号 259 識別番号 14_37_12
1孔子曰、2惡似而非者、3惡莠、4恐其亂苗也、5惡佞、6恐其亂義也、7惡利口、8恐其亂信也、9惡鄭聲、10恐其亂樂也、11惡紫、12恐其亂朱也、13惡郷原、14恐其亂德也、
孔子曰く、似て非なるものを悪(い)む、莠(ゆう)を悪むは、其の苗を乱すを恐れるなり、佞を悪むは、其義を乱すを恐れるなり、利口を悪むは、其信を乱すを恐れるなり、鄭声を悪むは、其楽を乱すを恐れるなり、紫を悪むは、其朱を乱すを恐れるなり、郷原を悪むは、其徳を乱すを恐れるなり、

通し番号 1009 章内番号 13 章通し番号 259 識別番号 14_37_13
1君子反經而已矣、2經正、3則庶民興、4庶民興、5斯無邪慝矣、
君子は経に反るのみ、経正しければ、則ち庶民興る、庶民興れば、斯(すなわ)ち邪慝(とく)無し、


章番号 38 章通し番号 260

通し番号 1010 章内番号 1 章通し番号 260 識別番号 14_38_1
1孟子曰、2由堯舜至於湯、3五百有餘歳、4若禹、5皐陶、6則見而知之、7若湯、8則聞而知之、
孟子曰く、堯舜由り湯に至る、五百有余歳なり、禹、皐陶(こうよう)の若きは、則ち見て之を知る、湯の若きは、則ち聞きて之を知る、

通し番号 1011 章内番号 2 章通し番号 260 識別番号 14_38_2
1由湯至於文王、2五百有餘歳、3若伊尹、4萊朱、5則見而知之、6若文王、7則聞而知之、
湯由(よ)り文王に至る、五百有余歳なり、伊尹、萊朱(らいしゅ)の若きは、則ち見て之を知る、文王の若きは、則ち聞きて之を知る、

通し番号 1012 章内番号 3 章通し番号 260 識別番号 14_38_3
1由文王至於孔子、2五百有餘歳、3若太公望、4散宜生、5則見而知之、6若孔子、7則聞而知之、
文王由り孔子に至る、五百有余歳、太公望、散宜生(さんぎせい)の若きは、則ち見て之を知る、孔子の若きは、則ち聞きて之を知る、

通し番号 1013 章内番号 4 章通し番号 260 識別番号 14_38_4
1由孔子而來至於今、2百有餘歳、3去聖人之世、4若此其未遠也、5近聖人之居、6若此其甚也、7然而無有乎爾、8則亦無有乎爾、
孔子由(よ)り而来(じらい)今に至る、百有余歳なり、聖人の世を去ること、此若く其(それ)未だ遠からざるなり、聖人の居に近きこと、此若く其甚だしきなり、然り而して有ること無ければ(乎)(爾)、則ち亦有ること無し(乎)(爾)、